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第十四章-第三幕- チルド・シティにて






勇者軍主力部隊は、チルド・シティへと到着し、
とりあえず当ても無いので、ここに勇者軍関係者がいないかどうか、
数日間の期間を置いて探索を続ける事にした。
その間、キョウカ王妃には宿に隠れてもらって、
猫達の世話をしてもらう方向で話がまとまったのであった。
オフィス街を歩くジルベルトとソニア。
繁華街を(遊びつつ)歩くコンラッドとバスク。
商店街を物資補充しながら歩くフローベールとメイベル。
そしてスラム街を見て回るテディとドルカス。
市庁舎を直接訪ねるヴァジェスとゼクウ。
それぞれが一緒の目的を果たすために、全員で動き出した。

オフィス街のジルベルトとソニアはまったく手柄が無く、
何時間も当ても無く探すだけの徒労に終わったが、
また親睦が深まったようなのでそれはそれで良いとしておく。

繁華街を歩いているコンラッドとバスクだが、
どうも目に付くアミューズメントセンターが気になるようだ。
これもまあ、年頃ということなのであろう。
すると、コンラッドの目にある人物が映る。
何やら変装というか、違う服を着て
誤魔化そうとしているのだろうが、
明らかにヘタクソでバレバレなのである。見覚えがあった。
「……あのー、レイリアさん?」
「わっ!?」
いきなり、レイリアらしき人物が驚く。
どうやらこちらには気付いてもいなかったらしい。
懸命に周囲を警戒していたらしいが、これでは本末転倒である。
「……ん? コンラッド君? と誰?」
「あー、コレは俺のダチで、バスク=ランドルフ。
 鉄人ジェイラスってのの曾孫らしいです」
「あ、じゃあ味方なんだ! 良かったー!
 ねー聞いて聞いて! あたし達今必死に逃げてんの。
 なんかずっとあたしやエイリアを探してる人達を見かけるし、
 ジルベルト君の所在とか知ってるんだったら教えてよう!」
よほどしんどい目に遭ってきたのだろう。
これだけ杜撰な変装でよくもまあ見つからなかったものだが、
精神的にかなり追い詰められた生活を強いられていたようである。
「分かりました。今ちょうど主力部隊として行軍中だから、
 隊長との合流地点に連れて行きますよ。
 あと、キョウカ王妃もいますから」
と、バスク。
「へ? キョウカちゃんがいるの? なんで?」
「なんでと言われても、成り行き上というか……」
困り果てているバスクに、コンラッドがフォローを入れる。
(ちゃん付けなのか……)
と内心バスクは思ったが、一応口には出さなかった。
「やっぱりその慌てた様子だと
 ロクにニュースも聞いてないみたいッスね。
 敵は惑星アース国際平和機構とアーム城も同時に襲撃して、
 かろうじてキョウカ王妃も脱出してきてんですよ」
「ええええええ!? そりゃ大変だ!
 エイリア探さないと、エイリアを!」
「落ち着いてくれって。騒ぐとバレるから。
 他に連れはいるのか?」
「うん、お兄がいるの。
 サイモン=アニーズィっていうハーフエルフ」
「……また大変になりやがった」
そう言うと、コンラッドは肩をすくめるのだった。

商店街のフローベールとメイベルは、捜索をうっかり忘れて
普通に買い物を楽しんでいたりするのだが、まあこれも
精神的な休養の一環と見ておくのが賢明であろう事は明らかである。
なのでここでは触れない事にしておく。

一方、スラム街に向かったテディとドルカスは、
これまた見覚えのある顔を発見していた。レイリアよりは
幾分上手に変装してはいるものの、腰に下げた武器が明らかに
本人だと語っているようなもので、やはりお粗末である。
「……エイリア? 何してんの?」
びくり、と一瞬激しく反応するが、
ゆっくり振り向くと表情が変わる。
嘘がつけない性格なのは姉妹揃って同じである。
「テディにドルカス? よくここが分かったわね?」
一応は相手の顔を見て安心したエイリアが小声で言う。
どうやらエイリアの猫かぶりはまだ続いているらしかった。
「あ、いや。ここに誰かいるかもしれんとは思っていたが、
 あんたと会ったのは偶然だ。その様子だと、レイリアの方も
 主力部隊の誰かに見つかっているんだろうな」
「主力部隊が来てるの? 良かった……やっと安心出来そうね」
「それだけじゃないわ。キョウカ王妃も来てるのよ」
「あの惑星アース国際平和機構長官も? なんでまた」
「まあ色々とね。襲われたのはそっちだけじゃないって事よ」
熟考するエイリア。そして――
「まさか、惑星アース国際平和機構も襲撃されたのか!?」
すぐ地に戻る。
「そうだ。それにアーム城も同時に襲われている。
 キョウカ王妃はかろうじて脱出し、主力部隊に合流した。
 レイリアの他に連れがいるなら、すぐに呼んで欲しい」
「いる。サイモン兄さんは、市庁舎に滞在中だ。
 誰か使いをやって、すぐに合流させてくれ」
「その必要は無い。既に二名程が市庁舎に向かっている。
 どうやら分散作戦が功を奏しているようだな」
と、テディが一人で頷いてみせる。
「兄さん……」
エイリアは心配げに呟くが、すぐに意識を切り替える。
「さあ、キョウカ王妃の待つ宿へ急ごう、エイリア」
「ええ、案内をお願いね」
三人はすぐさま市街中心部の宿へと向かう。

一方で、市庁舎を直接訪問したヴァジェスとゼクウは
応対に出た役人を早速困らせていた。
「長」
「いや、だからそれじゃ伝わらないだろ!?
 急ぎの用だから市長を出してくれって言わないとよ!
 ていうかお前、なんでここ担当になったよ!?」
律儀にいちいちツッコミを入れるヴァジェスに困惑する役人。
「え、ええと。市長に取り次げばよろしいのですかね?」
「おう、そうだそうだ。頼むから急ぎの用だと伝えてくれ。
 俺は元竜王ヴァジェス=バハムートの子で、
 勇者軍主力部隊所属だ。これだけ言えば、
 大体事の重大さは伝わるだろ、な?」
「もう伝わっていますよ」
……と、突然横からしゃしゃり出てきたのは偉そうな男だった。
「私がこのチルド・シティの市長です。そしてこの方は
 あなた方のお仲間という事で間違いありませんね?」
「ヴァジェス、来てくれたのかい!?」
「サイモン、お前もここにいやがったか!!」
市長の横から出てきたのは緑の髪のハーフエルフ、
ルスト家当主、セシリアの夫、サイモン=アニーズィである。
二人の護衛として一緒に脱出してきたが、出稼ぎ時代に築いた
独自のパイプで市長を頼り、
こうしてかくまってもらっていたようだ。
「お前が一緒なら頼もしい限りだが、レイリアとエイリアは?
 一緒じゃなかったのかよ? あ、こっちは仲間のゼクウな」
仲間の紹介をしつつ、状況説明を求めるヴァジェス。
「よろしく、ゼクウ君。それはともかくとして、
 レイリアとエイリアは市民に化かして隠れさせている。
 二人一緒だと逆に発見されやすいから別行動してもらってる。
 ここから呼び出す事は可能だけど、どうする?」
「無」
無用、と言いたいのだろう。
自分の端末のメール履歴を見せる。
コンラッドからはレイリア発見、
テディからはエイリア確保の知らせ。
それを見たサイモンはようやく胸を撫で下ろした。
「で、僕も気になっている。敵は一体何なんだ。
 市長から聞いた限りでは、敵は惑星アース国際平和機構本部や、
 アーム城にまで攻勢をかけてきたっていうらしいじゃないか。
 どういう事か、事情を知っているなら教えて欲しいよ」
「なら、俺と一緒にキョウカ王妃の待つ宿へ合流しろ。
 そこでレイリアとエイリアにも聞いてもらいたい事がある。
 ジルベルトもいるし、戦力の集結具合もまずまずだ。
 これからは共に行動するのが一番安全だろうな」
そこまで聞くと、サイモンは頷き、市長を振り返る。
「分かった。お世話になるよ。
 市長、今までの匿い、ありがとうございます」
「君には先代市長から随分世話になっている。
 これで恩返しが出来たとは思わんが、まあ今は行くといい」
「はい! 平和になったらまた来ます!」
サイモンはヴァジェス達と合流し、
急いで宿へ向かったのであった。

そして全員が集まった席で事情をあらかた聞いた三人は驚く。
「遺伝子技術と遺伝子調整生物の全撲滅が目的とはね。 
 しかも物のついでみたいに、ナノ・マシンも敵視か。
 ネイチャー・ファンダメンタルとはとんでもない相手だな」
と、サイモン。
「一緒に行動するのがいいのは分かるけど、
 これからどうすんの?」
レイリアも疑問をぶつける。
「第一にキョウカ王妃を安全に
 イスティーム王とユイナ王女の元に届ける。
 その途上で敵に対する手掛かりも
 出来るだけ探す。これが第二。
 可能なら更に総反撃に出る事も考えよう。
 これが第三だ。いいな?」
エイリアの的確な意見にジルベルトが頷く。
「まだある。第四にストレンジャーソードの確保だ。
 いざ戦える状況にあってもこれが無くては話にならん。
 それに、メインメンバーにも
 それぞれ新しい力が必要になるだろう。
 いよいよアレを使う状況かもしれん。
 各家の前当主共に持ってこさせよう」
と、ヴァジェスが言う。
「何をだ?」
「テディ、まだ知らなくていい。
 メインメンバー各家に残された、
 ストレンジャーソード、ニノンの翼に匹敵する
 最高峰クラスの装備を持ち出すということだけ、
 念頭に置いておけば、それでいいんだ」
「そんなものがあったのか!?」
「通常規模の戦闘ならこの二つがあれば充分だからな。
 デメリットも大きい品だから本当は使いたくないが、
 四の五のと言ってはいられん。
 ジルベルト、エリシャに連絡を送れ!
 そしてロゼッタ、イスティーム、
 カリン、レノールに指示を出させろ!」
『はーい』
と、早速ジルベルトはメールを打つ作業に入る。
「新しい力、か……」
テディが呟く中、事態は緊迫の様相を呈し始める。
キョウカ王妃は、その話の流れを不安げに見つめ、
猫を抱く事しか出来なかった。



<第十五章-第一幕-へと続く>
最終更新:2011年03月26日 21:49