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第二十九章-第二幕- 民政部の真意(前編)






勇者軍主力部隊は、アンノウン・ベビーの説得に
半分成功しかけたものの、アンノウン・ベビーの知能の問題で
惜しくも逃走されてしまう。そこに民政部兵士の報告を受けた
ヴェルファイア首相以下、民政部幹部六名が登場した。
「さて、それでは先陣を切らせてもらうか、突撃だ、行け」
ヴェルファイア首相は、自ら先陣を切る。
愛竜コモドが唸りをあげ、またしても突撃してくる。
「来るか! 騎兵と動物は退けーッ!」
ヴァジェスの指示で一部の味方を退却させようとしたが、
そうはいかない、とばかりに次はレオンハルトと、
その愛馬であるエルトリオンが動く。
「悪いが多対一を大人しくやるつもりもないのだよ。
 乱戦に付き合ってもらうぞ、勇者軍!!」
エルトリオンが退いた騎兵部隊へ向かって突っ込む。
それを合図に、残り四名も一斉に動き出した。

「ちぃっ、最初から乱戦に持ち込む腹か!」
コンラッドがミミックマンの攻撃を捌きながら愚痴を垂れる。
ミミックマンはコンラッドを模倣しきっている。
「乱戦が自分達だけの得意技と思うんじゃねぇ!」
相変わらずの見事なモノマネである。挙動まで同じだ。
「気持ち悪いんだよ、その技ッ!」
「ならば、こういうのはどうだっ!」
ミミックマンは瞬時にリゼルへと化けてみせる。
「姿はモノマネですが、
 こういうオリジナルもあります!
 ロスト・マジック! バスターキャノン!」
「何ぃっ!?」
バスターキャノン。失われし魔法の一つ。
無属性魔法同士を掛け合わせる事で、
より柔軟性に長けた魔法として放つ術である。
バスターは単体低威力魔法。キャノンは単体中威力魔法。
つまりバスターキャノンとは、中威力のまま、
低威力魔法並みに牽制と乱射が出来てしまう魔法なのだ。
それ故に魔力の消耗も激しいはずだが、彼の得意技のようでもある。
「コンラッドさん、退いて!」
そこにフローベールとバスクが乱入する。
「騎兵のモノマネは出来ないはず!」
「そこがお前の弱点なのは分かってる!」
コンラッドが別の方面へ攻撃対象を切り替え、
二人同時に仕掛けようとしたが、ミミックマンは動じない。
「サウザンドビジョン!」
ミミックマンが猛烈に分身し、その全てが別個のモノマネをする。
驚異的という他無い魔技であった。しかも騎兵が混じっている。
前回の弱点は払拭されていたようだ。
「えっ、何!?」
「分身! 実体があるのか!?」
実体は無かったようだが、分身の群れから本物が躍り出る。
どうやったのか知らないが、ペガサスまでモノマネ済みだ。
「一身是槍・雀蜂の舞!」
「一身是槍・雀蜂の舞!」
フローベール、ミミックマン、本物と偽者の同じ技が
真正面からぶつかり合う。スピードが速すぎて常人には理解不能だ。
「あうッ!」
「そこだ!」
続いてバスクに化けてそのままフローベールを追撃にかかる。
「俺のデータにはお前の技も入っている。通用しない!」
バスクの口調で騎乗したまま襲い掛かるミミックマン。
「そうはいくか! 今こそ俺の技の真価の発揮される時!」
バスクは棒を握り、下馬して縦方向へ回転しながら突撃した。
「何っ!?」
ミミックマンはその鮮やかな動きに見惚れた。
あわよくば自分のものにしようと欲をかいたのだ。
それが、間違いである。
どががッ!
数発ほど縦回転の攻撃が決まり、そのまま着地することなく、
バスクは棒を垂直に突き立て、そのまま横回転を始めた。
ずがががッ!
反動と勢いで棒を回転しながら昇って行くバスク。
頂点に達したところで棒を引っこ抜き、
そのまま大きく横になぎ払いで叩きつける。
「究極! 縦横無尽撃!」
ずがんッ!
「がっは!」
ミミックマンは大きく吹き飛び、起き上がれなくなった。
「凄い……」
フローベールも驚いたが、これが地下で学んだ技なのだろう。
それを納得し、すぐさま次の戦いへ動こうとする。

だが、バスクは騎乗するなり、いきなり横転する。
「バスク!?」
フローベールが手を貸そうとすると、ベアトリスも横転した。
「ブービートラップ!?」
ギースが察知し、すぐに罠の解除に向かう。
「ゼクウ、ギースの援護を!」
セシリアの指示でゼクウが援護に向かう。
だが、そのゼクウに手斧が飛んできた。
「愚!」
ゼクウはその斧を素手で白刃取りしてみせる。
手裏剣を叩き込むと、そこからフィアナ=マーベルが出てきた。
迷彩の得意な女幹部である。随分と久しぶりだ。
だが、フィアナは更に迷彩をかけて動いてくる。
肉眼ではほとんど確認不能なレベルなのは相変わらずだ。
「はははは、インビジブル・トラップを食らいなよ!」
ゼクウが激して動こうとした瞬間、転倒する。
いつの間にか、新たな罠が仕掛けられているのだ。
どうやら迷彩のまま動いて、気付かれぬ間に罠を仕掛けている。
それに引っ掛かり次第、得意の手斧が飛んでくるという技だ。
見れば、シエルなど他数名も引っ掛かっている。
「地上からでは埒が明きません。ヴァジェスさん!」
イシターがヴァジェスを呼ぶ。
「ドラグーン化を解くんだな、分かったぜ!」
ヴァジェスはワイバーン形態に戻る。
すると、イシターがひょいとその上に乗っかってきた。
「おい、ドラゴンナイト気取りか!?」
「いい策を思いついたんです。説明は後! 上へ!!」
「お、おう!」
ヴァジェスはイシターを乗せて飛翔。
空中に踊り出ると、イシターの指示が飛ぶ。
「合図で、レーザー・ブレスを! 今!!」
「がぁぁぁぁッ!」
ヴァジェスのレーザー・ブレスと同時に、
イシターはミスト・ブレスを吐く。
猛烈な霧が周囲にたちこめ、それをレーザーが加熱。
ずどがぁぁぁぁぁぁぁぁん!
フィアナがいると思しき周辺で大規模な水蒸気爆発。
「いました、そこです! ヴァジェスさん!」
「おうよ!」
意図がようやく読めたヴァジェスはそのまま突貫。
槍から棒へ持ち替えたイシターが騎乗したまま殴打。
フィアナはようやく戦闘不能に陥ってくれた。
その頃にはようやく、罠から味方が脱出をし始めていた。

「ふう、ようやく片付いたか」
一息ついたヴァジェスとイシターだったが、そこに
ミサイルが叩き込まれ、まともに被弾するヴァジェス。
「ぬぐぁッ!?」
「ヴァジェスさん!? 一旦下がりましょう、このままでは!」
「分かってる、くそっ!」
仕掛けてきたのは『ホークマンEXエディション』に搭乗している
メロウ=クミンだ。ミサイルも機体からのものである。
「二名、離脱。次のターゲットはどこ?」
冷静に次の目標を探すメロウ。目に付いたのは
懸命にシエルを救助中のジークと、ライナス、リュミエルの三名だ。
「仕掛ける」
それだけ言うと、メロウは機体の高度を下げ、
一気にライナスへと襲い掛かる。ヒートランスだ。
「カオスリキッド、発動!」
ライナスはすぐに反撃態勢に入り、ヒートランスを一刀両断。
「やる」
すぐに距離を取り、メロウはアサルトライフルを
三点バースト射撃にしてライナスを狙い撃ちにする。
「くっ、こう距離を取られてちゃどうしようもないわ!」
リュミエルも反撃の術を持たない。
「支援に入るわ!」
ルシアが弓での応射を行う。だがメロウはすぐに背中の
バックパックから何らかの武器を取り出した。
「ワンバウンドミサイル、投擲」
ホークマンEXの腕がミサイルを地面に叩きつける。
バウンドした直後、点火してミサイルが襲い来る。
それまでの軌道が無茶苦茶で、撃ち落とすのは無理だった。
「させない!」
リュミエルが必死に防御結界で防護。
ルシアにかろうじて反撃の隙を作らせてやった。
だが、ワンバウンドミサイルが次々と叩き込まれる。
リュミエルの防御結界も限界に近い。
「疾風剣!」
が、ライナスが前に出てワンバウンドミサイルを切り刻む。
これにより、リュミエルの負担が大きく軽減された。
「今だ!」
「今よ!」
二人の声援を受け、ルシアはボイルドアーチを準備。
すぐさま狙いを絞り、精密射撃で叩き込む。
「ボイルドアーチ!」
動力ケーブルらしきものを正確に撃ち抜いたのか、
ホークマンEXエディションはパワーが無くなり、墜落。
「敗北ね」
あくまでも冷静なまま、メロウは速やかに脱出した。
これで、メロウも戦闘不能になったに等しい。

敵は残り三名、しかし勇者軍も多数の負傷者を出している。
乱戦は多大なる混乱を生み出しつつ、推移する――



最終更新:2011年09月24日 21:32