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第九章-第四幕- 白虹騎士・ホワイトナイト





シドミード王の先見性と、アイゼンカグラの機転によって
メガ・アルバトロスもろとも、ホワイトナイトを葬り去ったかと思いきや、
爆発に巻き込まれながらも無事に着陸した彼は、
いよいよ憎悪と憤怒を剥き出しにして、屈辱を晴らすべく、
勇者軍にその暴虐の牙を向けようとしていた。
「出でよ、白虹騎!」
ホワイトナイトがそう言うと、新たに白い騎馬用鎧が湧き出し、
黒いゲル状の何かがその中に流れ込み、軍馬のような形を模倣する。
それに飛び乗ると、ホワイトナイトはマルチプルブリンガーを
弓形態に換装し、それを構えて射撃体勢を取った。
しかし、敢えてすぐに仕掛けず、ゆっくりと馬を歩ませる。
それで相手を威圧でもするかのように。
「既に貴様等は気付いているはずだ。我々がこの惑星アースの
 生命体ではないことを。それは、それでいい。
 我々は貴様等をもう侮らない。その証左となるのみだからな。
 だが、貴様等が我々を小馬鹿にするなど、屈辱なのだよ……!
 所詮、生態系の中でしか生きられぬ矮小な生物風情が……!」
「その矮小な生物に散々してやられたのはどこの誰です!」
今一度、窘めるように、しかし厳しく言い放つウォルフ王子。
「黙れ! 我々は世の理さえ超越した存在……
 人々の負の念が生み出した存在だ!
 生命風情が、上位種たる我等に逆らうか!
 大人しく、貴様等は我々に捕食されておれば良い!
 支配者と、被支配者の力の差も理解できぬ愚物めが……」

「黙るのは貴様だ! 侵略出来てもいない分際で、
 勝手にこの惑星アースの支配者気取りたぁ笑わせるぜ!」
ずだん! と地面を踏み鳴らすロバート。
それだけで軽く地割れが起こっている。
「そうだ……俺が許しちゃいけねぇのはシドミード王じゃない。
 手前ェのような、ただの驕り高ぶった支配者気取りのクソ野郎だ!
 シドミード王には手段はともかく、支配者の器量はあった!
 だが、貴様にそれは無い、誰も認めやしない!
 孤独な裸の王様風情が何を気取ってやがる、あぁ!?」
ロバートは、遂に剣を抜いた。本気になったのだ。
「憤怒、憎悪を糧に育って、蔓延りのさばる歪みの輩、
 俺と俺等の反逆で、力と技と機智とを絡め、
 貴様を討つべく刃となりて、全て穿たれ、葬るのみ!
 怒涛反逆ストレンジャー! もう止まると思うんじゃねぇぞ!
 野郎共! 文句は後で聞く! 俺に続きやがれぇーッ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉーッ!!」
もはや是も非も無い。間違いなく最後の相手であろう。
それにここまで惑星アースの生命に対して敵対姿勢を
剥き出しにした相手だ。勇者軍であるかないかなど関係無く、
この相手の存在を許すわけなどなかった。
勇者軍主力部隊は、アイゼンカグラを守りながら、
その大半が一気にホワイトナイトへ雪崩れ込む。

「うらぁぁぁぁー!」
ローザがまず、真っ先に打ち合う。
相手が騎兵なので、リーチも、攻撃範囲も相手が上だ。
それでもローザは懸命に一撃を加えようと奮闘する。
「いい腕だ。素直に認めるが……!」
そこへクロカゲ、レオナが一斉に飛び込む。
「滅!」
「逃がさないッス!」
「ちいッ!」
流石に騎乗している関係上、三名もの攻撃を同時には受けきれず、
白虹騎を下がらせることで、なんとか回避に成功する。
「そこだ……もらった!」
マリーとウォルフ王子がその回避先を予測し、先手を打つ。
二人の攻撃がまともに命中し、それなりに鎧に傷を付けた。
「やれ……なくはありません!」
その大きさに一瞬怯んだエナだったが、
マリー達の勇姿を見て、すぐに気を取り直す。
回復魔法でエリックと一緒に支援しつつ、時折ソーサーを飛ばして
ホワイトナイトの動きを撹乱してやったりした。
それが功を奏して、アンリ姫が飛び込む隙が出来た。
「グランドランチャー!」
まともに被弾し、大きくよろけるホワイトナイト。
落馬とまではいかないが、やはりダメージは通っている。

「どうした! 騎乗してむしろ鈍ってるんじゃないか!?」
またも小馬鹿にするようにからかいつつ、ロバートが迫る。
「それは認めるが、調子に乗るな!」
ホワイトナイトは急に手綱を握り、大きく後退する。
距離を取って反撃に移るつもりなのだ。
「フラッシュ・アサルトだ!」
奥技の構えである。一切の容赦が無い。
様々な属性の魔力弾を野放図にばら撒く。
魔力弾は浮遊機雷のようにふらふらと動き、油断ならない。
自らの苦手な属性の魔力弾に当たれば、
やはりただでは済まないだろう。
より一層、ホワイトナイトへ距離を詰めにくくなった。
「ちいッ!」
無謀な接近を諦め、ロバートも一旦距離を取る。
が、ホワイトナイトは一気に前進の構えを見せた。
「突撃ぃッ!」
ホワイトナイトは弓を乱射しつつ突進。
更に途中で銃に換装し直して、それも猛連射する。
近付けない、その上突撃しながらの遠距離射撃と、
付け入る隙の無い厄介なコンビネーションだった。
「最初にとどめを刺されたい者、出て来い!」
と言いつつ、ホワイトナイトはエリックに狙いを定めた。
「俺か……! 避けきれるか!?」
ニノンの翼を地上展開し、周囲を駆け回って回避行動を取る。
「近接!」
するとホワイトナイトはいきなり射撃をやめて、
マルチプルブリンガーを槍に換装し、一気に突っ込んで来た。
逃げても、その方向を予測し、的確に突っ込んで来る。
「なんとぉーッ!!」
地上での回避は困難だと判断し、多少無理して
ニノンの翼で一気に空中へ飛び上がるエリック。
随分と魔力を消耗したが、第一撃で戦闘不能になる愚は避けた。
「ちいッ、姑息な!」
と言いつつ、自らも大きく距離を取る。
エリックもそれを見て、ようやく地上に降りる事が出来た。
危うく避けたが、それでも消耗は激しく、
二回目に同じ事が続くかどうかは分からない。
「なんて……厄介な攻撃パターンだ!」
息をあげつつも、エリックがぼやく。
「おっさんの言う通りだ。本当に鬱陶しいぜ……!」
ロバートも攻めあぐねて、ぼやくしかなかった。
「何かあれを打破するなり何なり出来る策は無いのか……!?」
「……せめてカオスリキッドを持ってきていれば……!」
ここまでの大事になるとは予想していなかったらしく、
メインメンバーのほとんどが、家宝を持ってきていなかった。
それは即ち、戦力減を意味する事態である。

少ない人数、無敵の攻撃フォーメーションを使う相手、
そして虎の子たる家宝はニノンの翼以外に無い上、自由に使えない。
迂闊に近寄れば敵の奥技の餌食は必定。八方塞がりだった。
「ふむ、ならば手を打たせてもらおうかな」
と、ちょっと困ったような顔をしながら、
今まで静観していたカイトがぽつりと呟き、そして――
「悪いけど、一分ほど時間が欲しい。後は任せたよ」
と言いながら、カイトは明後日の方向に逃げ出した。
「このホワイトナイトから逃げられると思うのか、愚物め!」
ホワイトナイトは再びフラッシュ・アサルトの構えを取り、
逃げるカイトへ向かって一直線に突き進む態勢を取った。
「カイトさん、避けてぇー!」
エナの必死の叫びも聞いているのかいないのか、
まるでこちらを心配するように時々振り返ってはまた逃げる。
そんな意味不明な行動をカイトは取っていた。
「そのような鈍足ではますます逃げられまい! 愚かな!」
ホワイトナイトは魔力弾をふたたびばら撒き、
勇者軍主力部隊の動きを牽制した。
「フラッシュ・アサルト!」
そして、白虹騎とホワイトナイトがカイトへ向かって駆け出す。

だが、ホワイトナイトには見えていないし、見えるわけがない。
その時、後ろを向いているカイトが、密かにほくそ笑んでいることなど。
腹黒き狐のような策士もまた、今牙と爪を剥こうとしていた。



<第九章-第五幕-へ続く>
最終更新:2011年12月10日 21:49