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第二十九章-第二幕- 推論するマシン





数は少ないものの、今後の直接脅威となる
空中型イグジスターを殲滅するためだけに送り込まれた
無人機軍団を援護して、アンリエッタ姫と、その副官である
アイゼンカグラは魔王城へと合流を急ぐ。
ずずん!

まずはエリミノイドを搭載した戦艦群が、
続けてガンシップが滑走路へと着陸を終了した。
最後にアンリ姫の操縦するライディング・フレーム『ナイトメア』と、
アイゼンカグラ及び天馬ヒナタが着陸する。
「戦艦内のイグジスター潜入検査を決行する。見つけ次第、処分だ!」
「はっ!」
ゲイルの指示に従い、アサルトライフルを持った魔神軍の一般兵や、
マージギルドの軍団が、一応戦艦の中を検査する。
もし万一中に入っていたら被害を広げる危険性があるからだ。
蛇足であると分かってはいるが、万難を排すのは当然であった。

「ふわぁ、暑かったのじゃ」
「タオルをどうぞ、姫様」
サッ、とタオルを出してくるアイゼンカグラ。
「うむ、ありがとうなのじゃ」
顔を拭き拭き、レオナに真っ先に近付いてくる。
「レオナ、息災なのじゃな。相変わらず元気そうで何よりなのじゃ!」
「うん、あたしは元気ッスよ!
 イノちゃんとっても良くしてくれるし!」
にこにこと再会を喜ぶ二人だが、そうのんびりとした状態でもない。
「で、アンリ姫は今まで何してたんでしたっけ?」
エナが申し訳なさそうに問う。
「おお、そうそう。まずはえーと……
そう。北北西の方向を見るのじゃ!」
そう言われてエナは、望遠鏡で遠くを見る。
「あれ? あれって船じゃないですか?」
「うむ! 勇者軍の敗残兵をまとめて
 ここへ連れてきておったのじゃ!
 途端の緊急事態で一旦置いてきたが、改めて合流させるぞ!」
「スターリィフィールド家の役割はサブメンバーの総指揮だからな」
エリックが当然、という風に頷く。

「それだけではないぞ。先程も言ったが、奴等の目を盗んで
 メシア・タイプのスーパーコンピュータで演算を行っておった。
 その結果も、きちんと端末にコピーしてきたのじゃ!」
ばーん! という効果音が出そうな勢いで
アンリ姫は端末を取り出した。
……だが、勇者軍も魔神軍も、一同しーんとしていた。
「……あれ?」
アンリ姫は首をかしげる。
「姫……『何の演算なのか』という主語が抜けております」
「おお、そうか! そうじゃな!」
慌ててダバダバと走り出し、魔王の腕を引っ張る。
「魔王殿! スクリーンのある部屋へ案内せよ!
 この現状と推論、急ぎ発表せねばならぬ故!」
「お、おお?」
強引に腕を引っ張られて、よたよたしながら走る魔王。
「……やれやれ」
肩をすくめながら、ロバート達も追従するのだった。

「では、スクリーンに投影させるのじゃ!」
アンリ姫の手によって、巨大スクリーンに投影される映像。
「これは惑星アースのイグジスター分布図じゃ。
 そなた達にもみんな同じような映像が行き渡っておろう。
 じゃが、変化に気付いておるかの?」
アンリ姫が饒舌に説明を始めた。
「変化?」
一同、同時に疑問を口にする。
「うむ、億単位にまで増えたイグジスターが、
 急に出現をやめた事じゃ。メシアの推論によれば、
 これは『頭打ち』になっておる可能性がある」
「何ですって?」
これには一番間近でこのデータを見てきたウォルフ王子が訝る。
まさか頭打ちになる可能性があるとは、思ってもみなかった。
「そなたが一番驚いてどうするのじゃ、王子」
「す、すみません。続きをどうぞ」
「うむ。メシア・タイプの推論によれば、
 宇宙空間に次元ゲートが開き、そこからイグジスターが
 直接叩き込まれている可能性が高い、との推論が立ったのじゃ。
 しかしイグジスターとて必ずしも無限ではない。
 どこかで仮に『生産』されているとしても、
 加減も考えずドカスカ投入しておれば、
 必ず頭打ちになるのじゃ」
「ははあ」
カイトが感心したように唸る。
「となれば篭城だけに作戦を絞ってもしょうがなかろう?
 出来るだけ削り、隙を突いて、何とか次元ゲートへ
 直接攻撃を仕掛けられれば、とは思うのじゃが……
 入ったが最後、どこへ飛ばされるかも分からぬ故に、危険が高い。
 何よりアースの中のイグジスターを減らさねば
 それ以前の問題。対策も何も話にならぬのじゃ」
「だったら篭城戦というか、持久戦というべきだろうな……」
カイトが冷静に呟く。
「とにかくイグジスターの数を減らそう。話はそこからだ」
レイビーも同意した。

「よし、無制限通信を全世界に発信してくれ。
 未だに地上に残っている人類には地下、
 ないし空中都市への避難を!
 非戦闘員は可能な限り安全区域に非難し、
 絶対に無茶をさせないでくれ!」
「了解!」
オペレータの声が高らかに響く。
「あとは、イグジスターの数をどう減らすかですねー」
同席中のノーラがぼやく。
決定打に欠けるのは相変わらずであった。
「戦術の常道を突けば良い。相手はどうせ無秩序の集団だ。
 兵力の少ない箇所をピンポイントに突きまくる他あるまいな。
 少しずつではあるが、頭打ちなら
 そうそう押しきられる可能性も低い。
 無論、我等怪物族や他の種族も戦闘には出す。
 少数精鋭の勇者軍と魔神軍が動きやすいようにフォローしよう」
怪物王ドラキュラが的確な策を挙げてくる。
「いいと思うか、カイト?」
「大丈夫そう、レイビー?」
ロバート、イノはそれぞれの軍師に問う。
「ああ。まず問題無いはずだ。人命優先なのは変えないけどね」
「可能な限りに、な」
二人も同意したので、すんなりと決まった。

そしてその数分後……
「勇者軍予備役部隊、到着しました!」
オペレータの声と同時に、
どかどかと船から降りる勇者軍予備役部隊。
「おお、大丈夫か、貴様等!
 よくも生き残りやがったモンだぜ!」
「はっ、隊長!! 我等一同、寡兵敵せずと判断し、
 勇者軍特務戦技教導隊指導要項01番<一致団結>に基き、
 一直線に船舶まで撤退した次第であります!!」
びしり、と敬礼してのける勇者軍予備役一同。
「そうだ! それでこそ俺の軍!
 負ける戦いなんざわざわざ挑むモンじゃねぇ!
 全員で結束して逆襲してやりゃいいんだよ、な!?」
「はっ!!」
またもやびしり、と敬礼する。実に鮮やかだ。
「ようし、お前等は小休止してからすぐに主力部隊へ合流!
 魔神軍と協力して、事に当たるぞ!
 作戦はカイトから聞け!」
「サー、イエッサー!!」
それだけ聞くと、予備役部隊は即座に会議室へ移動する。

「よく統制が取れている。流石は勇者軍ね」
「あん?」
イノが感心したように、ポメを撫でている
ロバートに語りかけてくる。
ちなみに傍では何故かクロカゲが昼寝しているが、
別段、それはどうでも良かったりする。
「統制も何もあるかよ。あいつ等は全員自然体だ。
 たとえ、上官が俺じゃなくったって、同じだぜ」
「そこまでの結束を、今の魔神軍に求めるのは酷よ?
 珍しく賞賛しているんだから、真面目に受け取りなさい」
「やなこった。誉められて嬉しいガラかよ」
けっ、とばかりに舌打ちしてから、またポメを撫で始める。
「……なんで、猫なの? 自由と混沌の象徴だからなの?」
「そんな小難しい理屈なわけあるか。
 じゃあお前はクロが秩序と束縛の象徴だから飼うのか?
 アホらしいっての。可愛いが正義だ」
と言いつつ、カジカジとかじられていたりする。
甘噛みというレベルではない。既にロバートは血まみれだ。
「……血、出てるんだけど」
「いつもの事だ。ってか痛いわ! 馬鹿が!!」
そう言いながら、ロバートはポメの頭をはたく。
「ふぎゃ!!」
ポメも負けじと、更にロバートの手をじわじわとかじる。
「飼い猫に手を噛まれたり、
 自分の愛剣に襲われたり、難儀な人よね」
「うるせぇ」
またポメを力任せに押し付けて、何とか噛むのをやめさせる。
「まあ、それでこそロバートね。当てにさせてもらうから」
「言ってやがれ。俺と互角以上のくせに」
悪態をつきながらも、二人はお互いに離れていった。

交わるはずの無かった運命が、今、確実に交差する。
そして、カイトとレイビーの会議は、大詰めを迎えていた。
いよいよ作戦の最終プランが固まる。



<第二十九章-第三幕- へ続く>
最終更新:2012年07月02日 21:43