第二十九章-第一幕- ライディング・フレームの戦
大方の人類が食い尽くされるか、
逃げ延びるか、戦力のある所に合流し、
恒星サンシャイン系における人類の数は、
もはや本来の三割にまで激減していた。
単純に兵力差としても、人類の兵力は
出せてもせいぜいが四、五千万。
本当に戦力として使える人数と
なると一千万人にも満たないだろう。
それに対し、
イグジスターは全てが戦力であり、推定で十億にもなる。
この戦況に対し、
生命連合は遂に無人兵器群を出立させた。
エリミノイドを多数搭載した戦艦を擁する無人兵器群が向かうのは、
まず篭城する際に最大の障害となる空中戦が出来るイグジスターが
多数寄り集まる部分の箇所……場所にしてみれば
ダイギン共和国のもっとも広大な山脈である、レッグ山脈。
かの有名な
デス・ボルガノンよりはいくらか離れているものの、
カルナード港からやたらと遠いわけでもない、そんな距離だ。
どうやら
亜人族のハーピィや怪物族の
ガルーダなど、
翼を持つ種族を丸呑みしたイグジスターの集団ばかりが集まり、
離島へ直接攻撃を仕掛けるべく、一同に集結し始めているらしい。
幸い避難指示の方が早かったおかげで、数としてはそう多くもないが、
だからと言って兵器に直接攻撃出来る存在であることには変わりない。
陸上におびただしい数を見せるイグジスターの中にも
弓や銃を持った人間の擬態イグジスターがワラワラと姿を見せる。
その頃、
魔王城の通信施設から、それを制御している
カイトとレイビーがプログラム的な意味から指示を出させる。
「戦艦は一時退避して後方から
援護射撃のみを頼むよ!」
「
ガンシップは飛行イグジスターのみを、
エリミノイドは地上の擬態イグジスターを狙うのだ!」
その指示を送信し、ほぼリアルタイムで兵器に伝える。
「ファイアリング・ロック・オープン、レディ」
火器制限解除を通達された兵器群の銃砲が火を噴く。
たちまちガンシップによって空中イグジスターが撃墜されゆく。
「エリミノイド、リリース」
戦艦からリリースされた人型無人兵器、エリミノイドが
時折撃破されるものの、概ね順調に擬態イグジスターを始末していく。
丸呑みという原型イグジスターの戦法はまったく通用しない。
これはほぼ一方的な狩りになっていたが、
いかんせん数が違いすぎる。
投入したエリミノイドは多数が撃破されていった。
一方のガンシップも空中イグジスターの直接攻撃によって多数撃墜。
このままでは空中イグジスター全滅を待つまでもなく、
返り討ちに遭うのは必定であった。
「くっ、数が足らない……」
冷や汗を垂らすカイト。するとそこに緊急警報。
「何だ?」
レイビーが問う。正体を確かめつつ、
魔神軍のオペレータが叫ぶ。
「所属不明体、戦闘空域内に来訪、
無機物が一つ、生命体が二つ!」
「ガンシップに手を出させるな! 正体を確かめろ!
ガンシップに取り付けさせた
外部スピーカと集音マイクを使って構わん!」
「はい! こちら生命連合! 貴官の所属と目的をどうぞ!」
その声は、遥か数百キロメートル先の戦場へあっという間に届く。
「繰り返す、こちら生命連合、
貴官の所属と目的を答えて下さい!」
そして戦場で声を聞く彼の者達。
「やあやあ、遠からん者は音に聞け!
近くば寄って目に物を見るのじゃ!
わらわこそは
勇者軍メインメンバー、
アンリエッタ=スターリィフィールドなのじゃ!」
巨大な人型兵器、ライディング・フレームに乗って
同じく外部スピーカから応えたのは、まさかのアンリ姫である。
「その側近、
メゴ=アイゼンカグラもお忘れなく。
独自任務を終え、これから私達は援護行動に移ります」
「アンリにメゴか! 貴様等、今まで何をしてやがった!?」
気色ばむロバートとエリックに、
アンリはからからと笑って答える。
「そう気色ばむでない、ロブ。
わらわとメゴもこれまで戦っておった。
イグジスターの狙いを掻い潜りながら、
メシア・タイプにアクセスするのは、
さすがのわらわ達も骨が折れたのじゃ」
「メシア・タイプにだと?」
エリックが訝る。メシア・タイプのスーパーコンピュータは
まさしく万能に近い機能を持つ
惑星アース管理用のマシンだ。
それに今更、何の用事があったのか、と。
「それを今答えておる時間は無い。
既にこのライディング・フレームとメゴは囲まれておる故に!
見よ、このライディング・フレームの勇姿を! その名も……」
「待て! 名前を言うな! 死亡フラグが立つぞ!」
実際、前の二度の戦いでは登場するや否や撃墜されている。
ペットネームを言う暇もなく、である。
「今は大丈夫なのじゃ、わらわが乗っておる故に!
さあ行くのじゃ、ライディング・フレーム『
ナイトメア』よ!」
実際動かしているのは彼女自身なのだが、
気合を入れ直すアンリ姫。
「では、任務完了後、お会いしましょう」
天馬ヒナタに乗ったアイゼンカグラも一礼し、援護に入る。
突然出てきた巨大な『ナイトメア』に飛行イグジスターも一瞬驚くが、
すぐに最優先ターゲットとして認識し、一斉に襲い掛かる。
「このナイトメアを甘く見るでないぞ!
怪球ミーム、ダイレクトコネクト!」
「みー」
スターリィフィールド家の家宝、
怪球ミームをナイトメアのメイン
コンピュータに直結させ、
空間認識能力を飛躍的に向上させる。
「リコイル・バレット・ジェネレータ・システム!
ファイアリング・ロック・オープン! バースト!!」
あの伝説のRBGシステムが解放され、
頭から腕から足から背中から一気に砲門が開き、
砲撃の反動で一気に吹き飛ぶナイトメア。
それを正式モーションとして、空中イグジスターの群れを吹き飛ばす。
「ぎぎゃああああ!」
後方から多数の空中イグジスターが向かうが、
足から砲撃し、急制動をかけて強引にバックするナイトメア。
その勢いと衝撃だけで轢き潰され、
多数の空中イグジスターがまた消し飛ぶ。
「右からです、姫様!」
メゴの警告に従い、今度は右腕の砲門から一気にバースト、
左へ押し流された機体により、
またも空中イグジスターが轢き潰される。
消し残しを、メゴが随時攻撃して撃破していく。
また砲門から撃ち出された砲弾は地上へ大体落下し、
ミームコネクトの空間認識能力により、
エリミノイドに当たらないよう、
正確に擬態イグジスターを撃ち抜き、更に効率が上がる。
数万キロ向こうから、アンリ姫に指示を飛ばすカイト。
『ガンシップ、戦艦、エリミノイド、共にナイトメアと連携させて!
そうすれば、この局地戦に勝ち目が見えてくるかもしれない!』
「分かったのじゃ、カイト!
ミームコネクト! 無線ネットワークモード!!」
ナイトメアとミームのネットワークにより、
全マシンが一丸となって動く。
「RGBシステム、ソニックランナーモード、オン!!」
アンリ姫は全砲門をフル稼働させ、ソニックランナーと呼ばれる
伝説の攻撃法を披露し、超音速強制的一撃離脱戦法を展開する。
どう見ても物理法則を無視したような動きにおいて、
どのイグジスターもナイトメアを捉える事が出来ず、
一方的に屠られ放題となっていた。
そこにガンシップの攻撃が加わり、
数分後には空中イグジスターは一通りいなくなってしまった。
かしゅん、かしゅん。
「およ、実体弾が弾切れしたのじゃ」
トリガーを引いても、砲門が空回りするばかり。
RBGシステムがそれに伴い強制的にクローズされる。
「姫様、弾薬も魔力も底を尽きかけています。
戦略目標を達成した以上、
この場に留まるのは得策ではありません。
エリミノイドの乗艦を援護しつつ、我々も退きましょう」
「じゃな!」
エリミノイドは低空で待機している戦艦に次々乗艦する。
それを妨害しようとする敵を蹴散らしつつ、
ナイトメアに乗ったアンリ姫、天馬ヒナタに乗ったアイゼンカグラ、
そして無人兵器群はある程度以上無事な状態で、戦域を離脱する。
『アンリ姫、アイゼンカグラ補佐官、無事かい?』
「わらわもメゴも無事なのじゃ、
確か魔王城とやらにいるのじゃな?」
『ああ。魔神軍に所属しているイノやレオナもいるよ?』
「おお、それは楽しみじゃな! すぐ行くぞ!」
『うん、待ってるよ』
カイトからの通信が切れたので、アンリ姫はうきうきし始めた。
「あはっ、久しぶりの皆との対面なのじゃ、楽しみじゃな、メゴ!」
「メゴはやめろっつってんでしょうが、この成金チビ。
遊びに行くのではないのですよ?」
「むむむ、メゴは堅物なのじゃな!」
「いいから、急ぎますよ」
「うむ」
無人兵器群を連れたアンリ姫とアイゼンカグラが、
快活とした勢いで魔王城に合流する。
これで役者は概ね揃ったと言える。
あとは、アンリ姫の話が重要だというように、
カイトやレイビーには思えるのだった。
最終更新:2017年11月12日 00:10