第三十章-第二幕- イグジステンスサッカー
勇者軍と
魔神軍、そしてその他の連合構成員達の攻撃によって
サイレン砂丘の
イグジスター達の大半が殲滅されつつあったが、
いつまでも制圧できない苛立ちをそのまま反映するように、
全世界のイグジスターが数箇所に一斉に集まり、
超巨大イグジスター、いや、
イグジステンスサッカーへと変貌した。
まさしくそれは、者の存在ごと吸収する化け物以外の何でもない。
この脅威に、彼等はこれより立ち向かう。
「……行くぞ、おらぁぁぁぁぁッ!」
ロバートはそのイグジステンスサッカーを最大脅威と見なし、
一直線に突っ込んで行く。
「待て、ロブ、一人で突撃など、無謀な真似をするな、
俺達は奴の手の内すら知らんのだぞ!?」
エリックの制止によって、かろうじて足を止めるロバート。
「止まりなさい。あちらの言う通りね」
イノもその言葉を聞き、魔神軍の足を止めさせた。
すると、イグジステンスサッカーは足の無い人型のような形を取る。
流石にあの体躯では二足歩行は困難なのだろう。
だが、巨人を思わせるそれは、まさしく恐怖の対象だった。
イグジステンスサッカーは緩慢に見える動きで右腕を振りかぶる。
しかし実際は凄まじいスピードであり、巨大さ故に脅威だ。
「いかん、全軍、回避しろーッ!!」
「ぎゃあああああああああッ!!?」
レイビーの指揮で、全軍慌てて退避しようとするが、
急な指示に対応しきれなかった、
アーマーナイトギルドの兵員約二十名ほどが捕獲され、
そのまま口元まで運ばれ、抵抗する暇も無く丸呑みにされた。
「ちいッ、なんてこった!
下手な武器なんざ要らないってのかYO!
原始的な分だけ凄まじく性質が悪いZE、あいつはYO!」
ラケルもかなり接近していたが、独特の身のこなしだけで
何とか振り切ることに成功していた。巻き込まれていれば
同様の運命を辿っていただろう。
「来るぞ!」
イグジステンスサッカーは敢えて融合しなかった直衛の
原型イグジスターを引き連れ、ゆるりゆるりと進軍してくる。
原型イグジスターが撹乱している隙に、
イグジステンスサッカーが巨大な腕をもって敵を捕食する。
最悪のフォーメーションが展開されてしまっていた。
「近付かないで攻撃するのじゃ! 全員、魔法でも銃でも弓でも
何でもいいから、あのでかいのに叩き込むのじゃ!」
アンリ姫の戦術思考共有によって、
ありとあらゆる武器や兵器、魔法がイグジステンスサッカーに
叩き込まれていく。が、それは届くことはなかった。
ばきぃん!!
豪快な音と共に、巨大な
リフレクトフォースと
リフレクトフィールドの二重結界が展開されている。
パワーが凄まじく、スタミナも異様にあるので、
出力自体が半端ではない。生半可な攻撃は何一つ通らないのだ。
「警告!」
戦艦のオペレータから警告が届く。
「何ですか?」
カイトが応答する。
「惑星ムーン、及び周辺コロニーからの援護攻撃です。
コンマ三メートル以内の誤差で宇宙から直接叩き込むそうです。
至急、周辺から兵員の退避をお願いします!!」
「分かりました。各員、退避!」
カイトの戦艦からの指示に従い、一同大きく距離を取る。
直後。
ガカッ!!
ズバァァァァァァァァァアン!
開発を進めていた衛星レーザー兵器と、
ムーンからの
マスドライバーが
ほぼタイムラグ無しでイグジステンスサッカーに直撃する。
「やったか!?」
ヴァジェスが叫ぶが、爆風の中から出てきたのは、
リフレクトフォースとリフレクトフィールドに
若干の揺らぎが見られるものの、
まったく無傷のままのイグジステンスサッカーの姿だった。
流石に原型イグジスターはいくらか消滅しているものの、
肝心のフォースとフィールドも、すぐに修復されてしまう。
「…………消え失せろ、下等め!」
初めて言葉らしいものを発する。
擬態イグジスターの知能も持っているようだ。
そして、イグジステンスサッカーは魔法の展開を始める。
「各員、防御態勢!」
「リフレクトフィールド!!」
周囲の
ヒーラーが一致団結し、慌てて防御魔法を展開する。
「
インフェルノクライシス……!!」
ただの魔力弾のはずが、凄まじい破壊力の熱線と化し、
リフレクトフィールドを一撃で完全粉砕してしまった。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
周囲に転がり回り、竜族の援護を受けて
何とか起き上がるヒーラー一同。
この一撃だけで死亡してしまった者も決して少なくない。
「魔力弾であの破壊力だと……!?」
怪物王ドラキュラも戦慄する火力である。
「いかん、このまま手をこまねいていては打つ手が無くなる!
何が何でも奴の結界を打ち抜く以外に、手は無い!!」
妖精王ヴァルキリーもまた、危機感を募らせる。
「だったら俺の出番だな……!!」
エネミーイーターを抜き放ち、一度屈服させるロバート。
「やるのか、アレを」
ローザが言ってくるので、頷くロバート。
「ライブチャージャーの出番だ。フォローを頼むぜ」
「おうよ! 数射は出来るはずだ!」
「よっしゃあ!」
ロバートは剣を構えて、堂々と叫ぶ!
「イノ!
ナインサークルロード達も聞け!
今からアレを放つ! 直後に仕掛けろ!!」
「アレか!」
「アレだな」
「アレならいけるかもしれん!」
魔王、怪物王、ヴァジェスが瞬く間に同意してくる。
「アレって何?」
イノだけは見たことないので、疑問を投げかけるが、
考えている暇は無さそうなので、大人しく従う。
「
封神封魔流最終究極奥技!!」
ロバートは一気にエネミーイーターを振りかぶる。
「惑星! 両断剣ッ!!」
ずばしぃぃぃぃぃぃッ!!
ロバートの最後の切り札にして、人類史上最強の必殺技が
イグジステンスサッカーのド真ん中に向けて叩き込まれる。
がごぉぉぉぉぉぉん!!
凄まじい轟音と共に、リフレクトフィールドが叩き割られる。
続くリフレクトフォースにも、大きな打撃を与えたが、
それでも中身にはまったくダメージが通っていない。
「くっ、このペースで撃っていてはすぐ力尽きるぞ……!!」
そんなぼやきを言っている間にも、
ローザは懸命にライブチャージャーでロバートを回復する。
だが、イグジステンスサッカーも
リフレクトフィールドを再構成し、
打撃を受けたリフレクトフォースを修復しつつあった。
更にそれを同時進行しつつ、魔法を乱射して、
生命連合の軍を虐殺し始めるイグジステンスサッカー。
もちろん、捕食による丸呑みも忘れてはいない。
何より問題なのは最大のカウンター手段である魔族の捕食が、
リフレクトフィールドによって露骨に妨害されている事だ。
相対戦力はこちらが不利になる一方である。
だが……希望は未だ途絶えていない。
「諦めるな、小僧!」
「勇者軍の力、その程度ではあるまい」
そこへ神王、亜人王の率いる両種族が後詰めに現れた。
「助かるッス! 人手はいくらいてもいいッスからね!」
レオナも喜び、歓迎した。
勇者軍側に決定打が欠ける中、またも頼りになる増援が現れた。
既に死傷者の数も膨大になっているが、
何とかこの状況を打破しなければならない。
このプレッシャーに、一同は押し潰されそうになっていた。
味方が増えても状況は予断を許さない。
その事実が、一層重苦しい雰囲気を作っているのだから。
最終更新:2012年07月02日 21:52