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第三十章-第三幕- 勇者軍の限界





勇者軍は合体したイグジステンスサッカーに向かって、
二重結界を叩き壊すべく、遂にロバートの最終究極奥技、
惑星両断剣を叩き込む。しかし結界を一枚破壊したものの、
二枚目までを貫くには至らず、更に敵はその無尽蔵のスタミナで
結界を即座に再展開してしまうのだった。
「ライブチャージャー! ロブの補給を急げ……! 急げ……!」
ローザがライブチャージャーでロバートの魔力を補給するが、
ペースがやや遅く、惑星両断剣のチャージは間に合わない。
もたついている間に、イグジステンスサッカーは
結界の再展開を終えた。
それに遅れること、ほぼ十秒後にロバートの回復は完了する。
「クソったれが! 正真正銘の化け物だ!」
歯噛みするロバートは一度振り向き、全員に指示を出した。

「宇宙に連絡だ! もう一回マスドライバーと
 レーザー兵器を叩き込ませろ!
 それに合わせて俺が惑星両断剣を撃つ、
 貴様等はありとあらゆる遠距離魔法や銃砲などを、
 同時に叩き込め! いいな!?」
完全に冷静さを失って、ロバートが激する。
「いいだろう、だが万全を期す、
 一度これを使え……カオスリキッド!」
マリーがエネミーイーターを一度封印し、
鞘の魔力で威力を増強させる。
「戻れ、カオスリキッド!」
それが終わると、マリーはカオスリキッドを戻した。
「わ、私も準備します……!」
エナは十五枚のソーサー全てに魔法を封入した。
「エナ、それは何だ!?」
エリックが驚き、ソーサーを見る。
「一回だけ魔法を封入できるように改良してもらったんです。
 弾数は各一発ずつですけど、ビットとして使用出来ます。
 これをもって、私の奥技とさせてもらいますね……!」
「カイトさん、聞こえましたか!?」
ウォルフ王子は再度のマスドライバー発射要請を
出してもらうつもりだ。
『分かってる。タイミングは上手く合わせてくれ。
 宇宙の施設は、どうにかして当てる、とだけ言っている』
「はい!」
ウォルフ王子は、家宝の幻杖レプリアーツを取り出した。
「ロブ、私も合わせます。キャパシティを全て費やして、
 惑星両断剣を総帥に封入してもらった甲斐がありそうですしね」
「いいだろう、貴様ならではだ、任せる!」

「では、私達も援護しなくてはね。勇者軍と連携する」
イノはアックスボンバーを斧から砲撃モードに移行させる。
レイビーとノーラも魔法の準備を、
ラケルはその間の護衛を、ゲイルは弓を、
そしてレオナは撹乱用のナノ・マシン散布の準備を行う。

「魔法攻撃の出来る者、遠距離攻撃が主体の者も
 ロバート=ストレンジャーとイノ=ヘレティックに合わせろ!
 直接攻撃しか出来ない者は、全てその間の防衛に回す!」
怪物王ドラキュラの指示によって魔族や怪物族の者達が動く。
「魔王よ、我々も捕食に参加させてもらうぞ」
「来たか、神王よ。急激なフォールダウンは苦痛だっただろうに」
「四の五の言っている場合ではないからな」
一時的に魔族と化している神王が笑う。
「近距離なら我々の十八番だ! 守りきるぞ!」
亜人王も前線に出てきて、指揮を執る。
「各精霊は手近な者を守り、そして威力を高めましょう……!」
精霊王の指示で精霊達がけたたましく動き出す。
「私達も頑張ります、あなた!」
そこへ来訪したのは、やはりというか
ヴァジェスの妻、竜王妃イシュタリア=リヴァイアサンだ。
更に多くの竜族を引き連れてきている。
「なかなか悪くないタイミングだ。ロバートに合わせるぞ!
 姿は認識出来るか!? あの物騒な剣を持っている奴だ!」
「はい。皆さん、合わせましょう!」
「了解です!」
竜族も一斉にドラゴン・ブレスのスタンバイだ。
この火力はナインサークル中でも随一のものがある。

そして、それらを全て線で繋ぐ者が、戦艦から降り、戦場に立つ。
「アンリエッタ=スターリィフィールド、参上なのじゃ!」
「私もいますよ」
アンリ姫とアイゼンカグラである。
アンリ姫も愛馬ポニーにまたがり、本格的に戦闘態勢である。
「ミーム!」
「みーっ!」
怪球ミームを取り出し、それを周囲に浮遊させる。
「S-LINKシステム! フルコネクトなのじゃ!!」
「みー」
戦術思考共有システムによって、
戦場全域と、衛星軌道兵器のシステムが
直結し、タイミングを完璧に計れるようになった。
これがミームのミームたる所以であり、真骨頂である。

『もうすぐ射出だよ! いつでもいけるかい!?』
カイトがスピーカーから呼ばわる。
「おうよ、いつでもどうぞ、だってんだ!」
『射出!』
まずは宇宙からマスドライバーを射出。レーザー兵器が来るのは
光速のため、同じタイミングで撃てばラグが生じすぎる。
『戦術思考カウントと落着予想時刻をリアルタイム共有、
 それとほぼ同時にレーザーも当てる!
 タイム・ラグ一切無しだ。上手くやってくれ!』
カイトの指示が的確に飛ぶ。

それを見て危機感でも募らせたのか、
急に活発になるイグジスター達。
魔力を展開している者達を狙い、盾になった者達を丸呑みする。
それらは元同胞に討たれ、あえなく散っていく。
「10!」
一体、どれほどの民が死んでいったのだろうか。
「9!」
一体、どれほどの兵が散っていったのだろうか。
「8!」
もはや惑星アースや周辺コロニーの人口は三割にまで激減し、
ここで負ければ、もはや惑星アースに未来は無い。
「7!」
それを考える余裕すらない哀しい時間がただ経過する。
「6!」
ただ本能で感じ取る。負けられない戦いである事を。
「5!」
ただ本能で感じ取る。これが今為せる
ナインサークルの全力である事を。
「封神封魔流最終究極奥技!」
ロバートの剣と、ウォルフ王子の杖が光り輝く。
タイムラグ誤差修正は完璧だ。
「惑星両断剣ッ!!」
そして二人の声が唱和すると同時に、レーザーが発射される。
「今!!」
イノ達の声も唱和し、各々の技が叩き込まれた。

ずばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!

とんでもない轟音と共に、レーザーとマスドライバーが同時着弾。
一気にリフレクトフィールドにダメージを与える。
直後、ロバートとウォルフ王子、二つの惑星両断剣が直撃。
貫通、とはいかなかったものの、完全に二重結界を叩き割った。
そこにほんのわずかな時間差で放たれた各員の攻撃が
イグジステンスサッカーを襲う。
「ぐぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
ありとあらゆる魔法や砲撃を叩き込まれ、イグジステンスサッカーは
もはや余力さえ失い、大きな損傷を受けており、穴だらけだ。
もう一押しすれば、あるいは押しきれる可能性が出てきた。
「よし、上手くいったか……!」
ロバートは疲労しきった顔で呟く。
無理も無い。この最終究極奥技は負担が大きい。
いくら回復しているとはいえ、連打するような技でもない。
「ぐっ!」
「ロブ、大丈夫か!?」
片膝をつくロバートを、すぐにローザが回復にかかる。
「俺の事はいい、今は押し切れ!!」
「お、おう!」

ロバートがそう言っている間に、場の雰囲気が変わった。
別のイグジステンスサッカーが
続々といびつな形状のまま現れたのだ。
わざわざ遠方から移動してきてまで、
こちらを生かして帰さないつもりである。
「く……はは……参ったな、こりゃあ……!」
苦笑しか出来ないほど、ロバートもまた極限状況だった。
「こっちが苦しい時ゃ相手も苦しい、たぁいかねぇか……!」
手は打ち尽くした。しかしこれである。
イグジステンスサッカー同士が融合し合い、更に巨大な一体の
イグジステンスサッカーとなっていく。
また護衛の原型イグジスターも
そこから分離し、ぽろぽろと数を増やしていく。
その異様な光景に、皆、絶望に包まれ始めていた。
ロバートでさえそうなのだから、皆そうに違いない。
誰もがそう思っていた。だが、例外もいる。

華奢な身体に大いなる可能性を秘めた少女が、ゆっくりと立つ。
朽ちかけた反逆の毒を、再び注ぎ込むために。



<第三十章-第四幕- へ続く>
最終更新:2012年07月02日 21:54