崩壊学園wiki
九天の上
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ニューヨーク。
とあるホテル。
「バシャッ……。」
顔を洗うと、水の凍えるような冷たさを顔に感じた。まるで死を思わせるような冷たさだ。
思い返してみると、あの大戦の時も似たように感じた。
胃の下の方がぎゅっと収縮し、皮膚は緊張し、体が氷のように冷たかった。
死、犠牲、別れ。
瞬時に記憶の一番深い場所へと滑り落ちていく。
とあるホテル。
「バシャッ……。」
顔を洗うと、水の凍えるような冷たさを顔に感じた。まるで死を思わせるような冷たさだ。
思い返してみると、あの大戦の時も似たように感じた。
胃の下の方がぎゅっと収縮し、皮膚は緊張し、体が氷のように冷たかった。
死、犠牲、別れ。
瞬時に記憶の一番深い場所へと滑り落ちていく。
九霄
クッ…我は一体何を考えているんだ……まるで自分ではないみたいだ。
救世主たるもの、この程度のことで意気消沈していてはならないのだ。
クッ…我は一体何を考えているんだ……まるで自分ではないみたいだ。
救世主たるもの、この程度のことで意気消沈していてはならないのだ。
すぐに考えを断ち切った。
そして鏡に映る自分を見ながら明るい笑顔をしてみせた。
そして鏡に映る自分を見ながら明るい笑顔をしてみせた。
九霄
ふう…。顔を洗ったらだいぶスッキリした。
—— これは群星の頂きに湧く聖なる泉の水に違いない!きっと救世主へ捧げる貢物なのだ!
ふう…。顔を洗ったらだいぶスッキリした。
—— これは群星の頂きに湧く聖なる泉の水に違いない!きっと救世主へ捧げる貢物なのだ!
ピンポーン。
九霄
……誰だろう?
……誰だろう?
顔に残った水滴もそのままに、九電は洗面所を出て床に広げられたスーツケースをまたいで玄関までやってきた。
ドアを開けると、そこにはスーツ姿の女性が立っていた。
ドアを開けると、そこにはスーツ姿の女性が立っていた。
???
こんにちは。あなたが……達菜寺九霄さんですか?
こんにちは。あなたが……達菜寺九霄さんですか?
九霄
お主は……。
お主は……。
鉄師一夏
私は人類契約連盟、通称「人契連」の「陽光と共に:戦後特殊人物ケアプロジェクト」担当、人契連初級エージェントの鉄師一夏といいます。
私は人類契約連盟、通称「人契連」の「陽光と共に:戦後特殊人物ケアプロジェクト」担当、人契連初級エージェントの鉄師一夏といいます。
そう言うと、彼女は胸につけたIDを九電に見せた。しかし九香は彼女が胸につけたバッジに最初から気付いていた。
鉄師一夏
これからしばらくの間、私が九霄さんと人契連の間のやり取りを担当させてもらいます。
これからしばらくの間、私が九霄さんと人契連の間のやり取りを担当させてもらいます。
九霄
ケアプロジェクト?……ああ、我が血縁が言っていたあのプロジェクトのことか。大学の学費を払ってもらえるとかいう。
ケアプロジェクト?……ああ、我が血縁が言っていたあのプロジェクトのことか。大学の学費を払ってもらえるとかいう。
鉄師一夏
そうです。あなたがもらえる戦後手当は最高レベルなんですよ。
そうです。あなたがもらえる戦後手当は最高レベルなんですよ。
九霄
そのプロジェクトの担当者がお主だったのか。てっきり、我は何かの押し売りかと思ったぞ!
そのプロジェクトの担当者がお主だったのか。てっきり、我は何かの押し売りかと思ったぞ!
鉄師一夏
—— ここだとなんですので、中に入ってお話してもいいですか?
—— ここだとなんですので、中に入ってお話してもいいですか?
九霄
……ふむ、よかろう。
……ふむ、よかろう。
鉄師一夏は頷くと九霄にお辞儀をし、靴にカバーをかぶせ部屋の中へと入った。
中に入ると彼女は胸につけたバッジを回転させた。
中に入ると彼女は胸につけたバッジを回転させた。
九霄
それは何だ?
それは何だ?
鉄師一夏
これは人契連のマイクロボディカメラです。この先の会話の状況はこれで記録させていただきます。
これは人契連のマイクロボディカメラです。この先の会話の状況はこれで記録させていただきます。
九霄
えっ、そんなことまでする必要があるのか?
えっ、そんなことまでする必要があるのか?
鉄師一夏
……これも必要な手続きなのです。
……これも必要な手続きなのです。
九霄
はいはい。じゃあ始めてくれ。
はいはい。じゃあ始めてくれ。
鉄師一夏
わかりました。では先ず、「ケアプロジェクト」を適用する上で必要な質問に答えて頂きます……蓬莱寺九霄さん、なぜあなたは昨日、暮らしている長空市を離れ、人契連の本部のあるこのニューヨークを訪れたのですか?
特に……今のこの敏感な時期に。
わかりました。では先ず、「ケアプロジェクト」を適用する上で必要な質問に答えて頂きます……蓬莱寺九霄さん、なぜあなたは昨日、暮らしている長空市を離れ、人契連の本部のあるこのニューヨークを訪れたのですか?
特に……今のこの敏感な時期に。
九霄
敏感な時期?そんなこと……我の自由ではないか。
敏感な時期?そんなこと……我の自由ではないか。
鉄師一夏
それは……「ケアプロジェクト」の契約に、長旅をする際には毎回、行先と理由を説明しなければならないと定められているからです。具体的には第三章第十二条の第二項に書かれています。
それに契約の「違約に関する規則」の章にも、契約内容に違反した場合、その程度に基づき相当額の手当を差し引くと定められています。
それは……「ケアプロジェクト」の契約に、長旅をする際には毎回、行先と理由を説明しなければならないと定められているからです。具体的には第三章第十二条の第二項に書かれています。
それに契約の「違約に関する規則」の章にも、契約内容に違反した場合、その程度に基づき相当額の手当を差し引くと定められています。
九霄
ちょっと待て!それを見せてくれ……ああっ、本当だ!
でもこの契約書、100ページくらいあって、誰もそんな細かい所まで覚えていられないだろう——
ちょっと待て!それを見せてくれ……ああっ、本当だ!
でもこの契約書、100ページくらいあって、誰もそんな細かい所まで覚えていられないだろう——
鉄師一夏
ですが契約は契約ですから仕方ないのです。仕事だから仕方ないのと同じです……さて——ではあなたの今回の旅程について説明してください。
ですが契約は契約ですから仕方ないのです。仕事だから仕方ないのと同じです……さて——ではあなたの今回の旅程について説明してください。
九霄
えっ、話の続きは?まあいいや……ハア。人契連の本部がある都市に来た理由なんてない。
もうすぐ大学も始まるし、大学に通い始める前に何かいい思い出を作れればと思って旅行に来ただけだ。
それに、ここにはシーリンとイザーリンもいるから。ここにくれば友達に会えると思って。
どうだ、この理由で十分だろう!
えっ、話の続きは?まあいいや……ハア。人契連の本部がある都市に来た理由なんてない。
もうすぐ大学も始まるし、大学に通い始める前に何かいい思い出を作れればと思って旅行に来ただけだ。
それに、ここにはシーリンとイザーリンもいるから。ここにくれば友達に会えると思って。
どうだ、この理由で十分だろう!
鉄師一夏
……。
……。
鉄師一夏が下を向くと、胸につけたバッジ型のカメラが水色の光を放った。しばらくすると光が消え、元の状態に戻った。
鉄師一夏
回答ありがとうございます。今の理由は認められたようです。
いずれにしても達菜寺九霄さん、これからの三日間は遠出せず、付近を行動する分には構いませんが、他の契約内容に違反しないようにだけは注意してください。
それと今後、あなたの活動によっていらぬ誤解や危険が生じたりしないよう、これから三日間は私が人契連からの派遣者として、あなたの身の安全を片時も離れずお守りいたします。
恐らく、私のような一般人にあなたをお守りすることなどできないと思われるかもしれませんが、業務マニュアルに書いてあることですのでご了承ください。
回答ありがとうございます。今の理由は認められたようです。
いずれにしても達菜寺九霄さん、これからの三日間は遠出せず、付近を行動する分には構いませんが、他の契約内容に違反しないようにだけは注意してください。
それと今後、あなたの活動によっていらぬ誤解や危険が生じたりしないよう、これから三日間は私が人契連からの派遣者として、あなたの身の安全を片時も離れずお守りいたします。
恐らく、私のような一般人にあなたをお守りすることなどできないと思われるかもしれませんが、業務マニュアルに書いてあることですのでご了承ください。
九霄
…… 守るって?つまり監視したいだけだろう!
…… 守るって?つまり監視したいだけだろう!
鉄師一夏
そういうことは心の中にしまっておいて頂ければと。
そういうことは心の中にしまっておいて頂ければと。
九霄
……。
はいはい、わかったわかった。じゃあ好きなだけ守ってくれ。だが「片時も離れず守る」って……お主はどこで生活するつもりだ?この部屋はせまいし流石に無理じゃないか?
……。
はいはい、わかったわかった。じゃあ好きなだけ守ってくれ。だが「片時も離れず守る」って……お主はどこで生活するつもりだ?この部屋はせまいし流石に無理じゃないか?
鉄師一夏
心配ご無用です。人類契約連盟は運用の完壁な近代的な組織ですから。もう隣に部屋を確保してあります。
心配ご無用です。人類契約連盟は運用の完壁な近代的な組織ですから。もう隣に部屋を確保してあります。
そう言うと鉄師一夏はお辞儀をした。しかしその角度は基準とされる角度に達していなかった。
鉄師一夏
それではすみませんが、一度失礼させて頂きます。まだ他にやらなければならない事がありますので。
これからの三日間についてはとにかく……何か活動の計画がありましたら事前に私に伝えるようお願いします。誤って契約に違反してしまい、いらぬ損失を彼らないためにも。
私のことはどうか影か何かとでも思ってください。私に与えられた任務にご協力頂けますと幸いです。
それではすみませんが、一度失礼させて頂きます。まだ他にやらなければならない事がありますので。
これからの三日間についてはとにかく……何か活動の計画がありましたら事前に私に伝えるようお願いします。誤って契約に違反してしまい、いらぬ損失を彼らないためにも。
私のことはどうか影か何かとでも思ってください。私に与えられた任務にご協力頂けますと幸いです。
そう言うと鉄師一夏は部屋を離れ、出る際に九霄の部屋の扉を閉めていった。
九霄
なんなんだあいつ……。
なんなんだあいつ……。
九霄は彼女が出ていった方を見てため息をついた。
九霄
「ケアプロジェクト」とかなんとか、どうして突然——
「ケアプロジェクト」とかなんとか、どうして突然——
ため息をついていると、手元のイヤホンから音が鳴った。よく見る番号からの電話だ。
九霄
もしもし、シーリン……。
ああ、ニューヨークについた。
……漫画フェア?もちろん我も行くぞ!
ククク—— この救世主様が、この達菜寺九霄様が、絶対に姿を見せに行かねばならんのだ!
もしもし、シーリン……。
ああ、ニューヨークについた。
……漫画フェア?もちろん我も行くぞ!
ククク—— この救世主様が、この達菜寺九霄様が、絶対に姿を見せに行かねばならんのだ!
翌日。
九霄は服装を整え、出かける準備を終えた。
鉄師一夏が九霄のことを見ている。
九霄は服装を整え、出かける準備を終えた。
鉄師一夏が九霄のことを見ている。
九霄
応援ライトも……手袋も……OK。準備万端!
漫画フェア〜漫画フェア〜、今行くぞ!
応援ライトも……手袋も……OK。準備万端!
漫画フェア〜漫画フェア〜、今行くぞ!
鉄師一夏
暑いですね……。
暑いですね……。
九霄
あれ、一夏、顔色がすごく悪いけど?
あれ、一夏、顔色がすごく悪いけど?
鉄師一夏
あの…… そういう親しい呼び方はしないでもらえないでしょうか。
あの…… そういう親しい呼び方はしないでもらえないでしょうか。
九霄
親しい親しくないとか関係ないぞ。フルネームで呼ぶのが面倒なだけだ。
親しい親しくないとか関係ないぞ。フルネームで呼ぶのが面倒なだけだ。
鉄師一夏
……。
……。
九霄
その表情…… お主、我を漫画フェアに行かせたくないのか?
その表情…… お主、我を漫画フェアに行かせたくないのか?
鉄師一夏
…… なんと言いますか……そのような催し物は、青少年の情操を陶治し、同年代の人々の親交を深めることにつながるとは思いますが、今のように風当りの強い時期に行くとなりますと、私がいいと言ってもケアプロジェクトの担当者は……。
…… なんと言いますか……そのような催し物は、青少年の情操を陶治し、同年代の人々の親交を深めることにつながるとは思いますが、今のように風当りの強い時期に行くとなりますと、私がいいと言ってもケアプロジェクトの担当者は……。
九霄
チッ、活動の目的を事前に言えばいいと言っておきながら、今さらそんな文句を言うのか。結局、我をがんじがらめにして、身動きできないように監視したいだけだろう!
チッ、活動の目的を事前に言えばいいと言っておきながら、今さらそんな文句を言うのか。結局、我をがんじがらめにして、身動きできないように監視したいだけだろう!
鉄師一夏
いえ、私ではなく……。
いえ、私ではなく……。
九霄
はあ……。もういい、お主に対して怒っても仕方がないことは分かってる。
ところで一夏、九霄様はこれから漫画フェアに行ってシーリンと会う。何があろうと今日は絶対行くから。
お主はどうするのだ?我と一緒に車に乗って行くか、それともここに残るか?
はあ……。もういい、お主に対して怒っても仕方がないことは分かってる。
ところで一夏、九霄様はこれから漫画フェアに行ってシーリンと会う。何があろうと今日は絶対行くから。
お主はどうするのだ?我と一緒に車に乗って行くか、それともここに残るか?
鉄師一夏
……はあ。わかりました。これも仕事ですからね。
下に車を停めていますので、会場まで一緒に行きましょう。
……はあ。わかりました。これも仕事ですからね。
下に車を停めていますので、会場まで一緒に行きましょう。
……。
巨大な横断幕が会場の上の方に掲げられている。左から右に向かって「HOUKAI SHOW」と書いてある横断幕が日に照らされ輝いている。
「人類の崩壊との戦いを記念し、人類を救った英雑に敬意を」と題した大規模な漫画フェアだ。入り口からでもたくさんの不思議な恰好をしたコスプレイヤー達が見える。
コスプレの内容がなんなのか、一目でわかった。
巨大な横断幕が会場の上の方に掲げられている。左から右に向かって「HOUKAI SHOW」と書いてある横断幕が日に照らされ輝いている。
「人類の崩壊との戦いを記念し、人類を救った英雑に敬意を」と題した大規模な漫画フェアだ。入り口からでもたくさんの不思議な恰好をしたコスプレイヤー達が見える。
コスプレの内容がなんなのか、一目でわかった。
九霄
キアナに芽衣、イザーリン、それから……おお!九霄様のコスプレもいるぞ。しかも一番多そうだ!
崩壊の英雄達以外のコスプレも見かけるな——「九つの昼夜」のエリスとか「永夜魔王城」のコンスタンティンとか。それに……むっ、あれはなんだ?
キアナに芽衣、イザーリン、それから……おお!九霄様のコスプレもいるぞ。しかも一番多そうだ!
崩壊の英雄達以外のコスプレも見かけるな——「九つの昼夜」のエリスとか「永夜魔王城」のコンスタンティンとか。それに……むっ、あれはなんだ?
鉄師一夏
クラ——
クラ——
九霄
あっそうだ。思い出した。「星の群島」に出てくるクラファティラだ!
あっそうだ。思い出した。「星の群島」に出てくるクラファティラだ!
九香は興奮してうれしそうに無数のコスプレイヤーのいる会場へと入っていった。そばにいる鉄師一夏はすごく退屈そうだ。
鉄師一夏
……蓬莱寺さん、失礼ですが一つ質問していいですか?……あなたは……人々が浮かれすぎているとは思いませんか?
……蓬莱寺さん、失礼ですが一つ質問していいですか?……あなたは……人々が浮かれすぎているとは思いませんか?
九霄
どうしてだ?
どうしてだ?
鉄師一夏
それは……あなた達は長期間戦って、幾度となく危険を乗り越えて、やっとの思いで崩壊を駆逐し人類を救いました。
しかし今では、コスプレの対象になってしまうだなんて……流石に荘厳さに欠けているとは思いませんか?
あなたもご存じですよね?勝利を称える主な宣伝文句では、キアナ・カスラナさん、雷電芽衣さん、そして蓬莱寺九霄さん、あなたも……。
みなさんのご活躍と多大な犠牲あってこその勝利に対して、相応しい扱いがなされておりません。
しかも主な功績は、人契連の指導や調整が素晴らしかったことにあるとされているんですよ。一方の「真の英雑」達はといえば、プライバシーや安全にとても気を配っていて、一部の人は名前や写真を外部に出していないくらいです。
私の所属する部署の下の階にある部署は、そうした個人の映像や情報の削除を専門に行っています。
それは……あなた達は長期間戦って、幾度となく危険を乗り越えて、やっとの思いで崩壊を駆逐し人類を救いました。
しかし今では、コスプレの対象になってしまうだなんて……流石に荘厳さに欠けているとは思いませんか?
あなたもご存じですよね?勝利を称える主な宣伝文句では、キアナ・カスラナさん、雷電芽衣さん、そして蓬莱寺九霄さん、あなたも……。
みなさんのご活躍と多大な犠牲あってこその勝利に対して、相応しい扱いがなされておりません。
しかも主な功績は、人契連の指導や調整が素晴らしかったことにあるとされているんですよ。一方の「真の英雑」達はといえば、プライバシーや安全にとても気を配っていて、一部の人は名前や写真を外部に出していないくらいです。
私の所属する部署の下の階にある部署は、そうした個人の映像や情報の削除を専門に行っています。
九霄
——フン、そんなのは古臭い考え方だ。
お主は荘厳さがどうだとか言うが……崩壊と戦っている時にはそんなもの感じなかったぞ。
あの戦いはすごく不気味で、ゆがんだ戦いだった。
しかし、それまでの幸せや近くにいる仲間たち、あらゆる人々の幸せのことを考えて……ようやく今の今まで生きてこられた。
我にとっては荘厳かどうかなんてどうでもいい。
こうしてみんなの笑顔を見られることが、何よりも幸せで意義があることだと思う。
フハハ!…… 救世主は皆を守ることだけに幸せを感じ戦うのであって、皆が堅苦しい顔をしている世界のために戦っているわけではないのだ!
——フン、そんなのは古臭い考え方だ。
お主は荘厳さがどうだとか言うが……崩壊と戦っている時にはそんなもの感じなかったぞ。
あの戦いはすごく不気味で、ゆがんだ戦いだった。
しかし、それまでの幸せや近くにいる仲間たち、あらゆる人々の幸せのことを考えて……ようやく今の今まで生きてこられた。
我にとっては荘厳かどうかなんてどうでもいい。
こうしてみんなの笑顔を見られることが、何よりも幸せで意義があることだと思う。
フハハ!…… 救世主は皆を守ることだけに幸せを感じ戦うのであって、皆が堅苦しい顔をしている世界のために戦っているわけではないのだ!
鉄師一夏
……救われた人々が、あなた達のことをまったく英雄として認知していないとしても?
……救われた人々が、あなた達のことをまったく英雄として認知していないとしても?
九霄
それがどうした。
いまこの場所、この会場での皆の様子がすべてを表しているだろう?
それがどうした。
いまこの場所、この会場での皆の様子がすべてを表しているだろう?
九霄が入り口に向かうと、待っていたシーリンが九霄に手を振った。
シーリン
九霄様〜!こっちこっち!
九霄様〜!こっちこっち!
何かを考えるようにして九霄の後をついてきた鉄師一夏は、二人が会う様子を見ていた。
そして他に何も言葉を発さなかった。
だが……。
そして他に何も言葉を発さなかった。
だが……。
鉄師一夏
(荘厳かどうかは関係ないと?)
(とても気軽で大らかな心。)
(これこそが生まれた時から英雑となることが決まっていた、真の英雄たる者の考え方なのですか?)
(荘厳かどうかは関係ないと?)
(とても気軽で大らかな心。)
(これこそが生まれた時から英雑となることが決まっていた、真の英雄たる者の考え方なのですか?)