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眠れる獅子 ◆aWSXUOcrjU




 かちかち、かち、と音が聞こえる。
 白地の壁で覆われた、冷たく無機質な空間の中に、不揃いなリズムの音が響く。
 灰色の光を放つ機械が、所狭しと並ぶ只中に、1つの後ろ姿があった。
 足元にデイパックを置いた、黒いTシャツ姿の少年だ。
 少年はやがて、機械のキーボードを叩く手を止めると、
「……かぁっ! だーめだ、全然分かんねぇ」
 その手を明るい茶髪へ添えて、がしがしと乱暴に掻き毟った。
「こんなモンのために、随分時間を無駄にしちまったなぁ」
 首輪をもう片方の手でいじるのは、仔獅子座(ライオネット)の聖闘士・蒼摩だ。
 悪戯っぽい顔つきを、憮然とした表情に歪ませると、適当な機械に腰を下ろす。
 壊れたらどうするのだ、という考えは、微塵も持ち合わせていないようだ。
 そもそも機械などというものは、南国の田舎育ちの蒼摩にとっては、全くの専門外なのである。
(聖闘士も近代化するってんなら、こういうところをしてくれねぇとな)
 母校パライストラを想いながら、蒼摩はコンピューターを前に思考する。
 当代のアテナが就いて以降、聖闘士の育成システムは、急速に近代化したのだそうだ。
 かつては、今のように効率化されたカリキュラムではなく、かなり荒っぽいやり方で、聖闘士を鍛えていたのだという。
 それだけ近代的なシステムを意識して、改革を推し進めているのなら、
 せめてパソコンの1つでも、教えてくれればよかったのに――そう考えてしまうのは、やはり自分が現代っ子だからだろうか。
(結局分かったことっつったら、こいつが俺の手に負える代物じゃねぇってことくらいか)
 薔薇の女が己に科した、忌まわしい拘束を見下ろす。
 蒼摩がスタート地点として飛ばされたのは、マップ上の端も端という、B-1の軍事基地だった。
 あんな処刑シーンを見せられては、どうしても首輪が気になって仕方がない。
 そう考えた彼は、整備用の工具を漁り、意を決して首輪の解体作業に乗り出した。
 しかし、どうにも上手くいかない。螺子を外してしまおうにも、螺子どころか継ぎ目すら見当たらない。
 こうなると手探りでいじるよりも、一度この首輪の構造を、きっちりと調べておかなければ。
 そうして彼は地図を頼りに、このA-1の研究所にやって来て、首輪を機械にかけて分析しようとしたのだ。
 その結果がどうなったのかは、ふてくされた現状の通りである。
「ま、腐っててもしょうがねえ! 機械が使えねぇんだったら、使える奴を連れてくるしかねぇんだ」
 そう言って蒼摩は身を起こすと、機械から床へと飛び降りた。
 何せ状況が状況だ。無理やり殺し合いを強いられても、承服できないという人間もいるだろう。
 こうした機械に詳しい人間が、その承服できない側にいたならば、協力を取りつけることもできるはずだ。
「こんなところで、モタモタしてる場合じゃねえからな……」
 蒼摩とて、殺し合いに乗るのは反対だ。
 地上の愛と平和を守る戦士が、守るべき人々の命を奪うことなど、到底許容できるはずもない。
 何より今は、新生十二宮に守られたバベルの塔が、地上の小宇宙を吸い上げている真っ最中である。
 この場に集められた人々を――そして全ての人類を救うためにも、この殺し合いを打倒し、十二宮に戻らなければ。
「見てろよ、速攻でぶっ飛ばしてやる!」
 ばし、と拳で音を立てる。
 開いた左の掌に、握った右拳をぶつける。
 まずは首輪を解除して、主催者とフェアに戦える状況を作ること。
 そして没収された聖衣を回収し、万全の戦闘態勢を取ることだ。
 決意を込めて宣言すると、蒼摩はデイパックを背負い直し、研究室を後にした。


「ヘヘヘ……」
 静まり返った軍事基地に、不気味な笑いが木霊する。
 厳格な気配の漂う場所には、似つかわしくない不審な声だ。
 そしてその笑い声の持ち主の容姿もまた、あまりにも異様なものだった。
「バボボギギ、ジャバギバ」
 舐めまわすように眼球を動かすのは、まさに極彩色の男だった。
 筋骨隆々とした裸の上半身に、色とりどりのマフラーと、工事現場のロープを巻き付けている。
 右腕に嵌めた腕章は、素肌にピンを留めたものだ。銀色に光る細い針が、痛々しく皮膚を貫いている。
 血走った眼光をぎらつかせる頭部には、チューブをぐるぐると巻きつけた、白いヘルメットを被っていた。
 その様はまるで昆虫の触角――否、ヤドカリの眼球だ。
 彼こそはヤドカリ怪人メ・ギャリド・ギ。
 中流階級のメ族に位置する、グロンギ族の狩人である。
「リントロ、ゴロギソギロロゾ、ヅブスロンザ」
 彼はグロンギ族の中にあっても、特異な思考を持った個体だった。
 リント――すなわち現代人の文化に、大きな関心を抱いているのだ。
 その素肌に留めた腕章も、工事現場で働く人間達を面白がり、興味本位で突き立てたものである。
 そんな好奇心旺盛のギャリドが、現在興味を寄せていたのは、基地に並ぶ車両の数々だ。
 『悪魔の背中』を自称する彼は、乗り物に乗り込みバックしながら、リントを圧殺することを好んでいる。
 それ故に現代においても、リントのトラックを盗んで、ゲゲルに興じていた彼だったが、
 この場に用意されていた車のインパクトは、それすらも遥かに凌ぐものだった。
 鈍色に光る装甲車両は、トラックよりも重厚で、何より頑強な作りをしていた。
 遠い古代の戦場で、石のローラーを引いていた頃からは、想像もつかなかった代物だ。
(これで好きに殺ってもいいんだろ、バルバ?)
 格好の玩具を品定めしながら、ギャリドは胸中でバルバに問う。
 このようなゲゲルの存在は、今日まで彼女らラ族からは、一言も聞かされていなかった。
 最初こそはその理不尽さに、不快感を覚えたものだったが、それもあっという間に吹き飛んでしまった。
 こんな強力な得物を使って、リントを殺し放題できるというのだ。
 であれば、普通にゲゲルに興じるよりも、遥かに楽しめるではないか。
「感謝、感激ってやつだ」
 リントの言葉で喝采を上げ、ギャリドは格納庫の闇へと消える。
 手首に巻いたブレスレットが、差し込む月明かりを受けて、最後にきらりと光を放つ。
 ギャリドは知らない。たまたま支給品を漁って見つけたそれが、大きな意味を持つアイテムであることを。
 それこそが灼熱の青銅聖衣――ライオネットの聖衣を宿した、蒼摩の聖衣石であることを。
 炎の仔獅子は、今は静かに、宵闇の中で眠っていた。
 山吹色に燃え盛る牙を、鋭く研ぎ続けながら。


【1日目・黎明/A-1 研究所・研究室】

【蒼摩@聖闘士星矢Ω】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3、工具一式
【思考】
基本:殺し合いを打倒し、十二宮に戻る
1:首輪を解除したい。そのために、首輪を分析する機械を使える人間を探す
2:ライオネット聖衣を回収したい
3:戦えない者は保護して回る
【備考】
※第36話「気高きプライド! ミケーネ、王者の拳!」終了直後からの参戦です
※首輪には継ぎ目や螺子がなく、一見しただけでは解体できないことに気付きました


【1日目・黎明/B-1 基地・格納庫】

【メ・ギャリド・ギ@仮面ライダークウガ】
【状態】健康
【装備】ライオネット聖衣@聖闘士星矢Ω
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:ゲゲルを楽しむ
1:ゲゲルに使う車両を選ぶ
【備考】
※EPISODE15「装甲」にて、バルバらと会って別れた直後からの参戦です

【ライオネット聖衣@聖闘士星矢Ω】
仔獅子座の青銅聖衣。蒼摩が装着する。待機形態はブレスレット型。

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最終更新:2013年07月07日 02:23