晴れぬ雷雲 ◆aWSXUOcrjU
かつり、かつりと靴音が響く。
間もなく黎明に差し掛かる頃、未だ暗い夜空の下を、
エデンが1人歩いている。
「………」
行くあてがあるわけでもなかった。
目的などあるはずもなかった。
ただただ、あの不愉快な娘と、離れたかっただけだったのだ。
(今頃)
今頃、他の連中は、どこで何をしているのだろうか。
このゲームに呼ばれた者同士、愚かにも殺し合いに及んでいるのだろうか。
一瞬だけ、それが気にかかった。
結局のところ、それくらいしか、エデンには考えるべきことがなかった。
「――ねぇ、君さ!」
その時。
ふと、背後から声が聞こえた気がした。
ぴくりと柳眉が微かに動き、歩む靴音がぴたりと止まった。
どうやら呼ばれているらしいと理解する。面倒くさいと思いながらも、無視もできず、振り返る。
「よかった、気がついた」
東洋人の男だった。
黒いライダージャケットを纏い、にこやかに笑う若者が、振り返った先に立っていた。
歳はエデンよりも、10歳近く上だろうか。先ほどの娘と同じように、顔には笑みが浮かんでいる。
それでも、不思議と不快ではなかった。
「ああ、そうだ……あのさ、さっきあっちの方で、でっかい穴を見たんだけど」
南方を指差しながら、男が言う。
ちょうど数時間ほど前に、戦闘を行った場所だ。
大穴というのは、エデンの技――トニトルイ・フェラカーラスの痕跡のことだろう。
「あれって……もしかして、君が?」
「……そうだ」
自分でも驚くほどだった。
黒髪と黒装束の男の問いに、エデンは自然と答えていた。
「そっか。……ひょっとして、あれで、誰かを……」
「殺してはいない」
「そうなんだ」
何故だろう。
今更他人との会話になど、意味があるとも思えないのに。
それでも何故か、この男には、自然にぺらぺらと口が回る。
「って、まさか君、未確認とかじゃあ……!」
「……僕は聖闘士だ。そんな風に呼ばれたことはない」
未確認、という言葉が意味するものは、エデンにはよく分からなかった。
それは聖闘士という言葉を知らず、目の前で首を傾げている男と、恐らくは同じなのだろう。
それでも、言葉の調子から、不愉快な意味合いが込められているのは分かった。
だからこそ、わざわざ聖闘士の名前を出し、エデンはムキになって訂正したのだ。
「でも、そっか……何て言うか、凄いね」
その時だ。
はっ、と目を見開いたのは。
ぴくり、と肩が震えたのは。
凄い、だと。
今、この男はそう言ったのか。
己に宿されたこの力を、こいつは凄いと言ったのか。
こんな――アリア1人守れなかった力を、凄い力などと評したのか。
「……何が分かる」
気付けば、エデンの声色は、明確な怒りに震えていた。
◆
映画館からしばらく歩いて、
五代雄介が見たものは、巨大なクレーターだった。
そんなものを作れる者が、自分とダグバ以外にいるとは、到底信じられたものではなかった。
それでも、目の前にある以上は現実だ。そしてそれがあるからには、それを作った者がいる。
すなわち、明確な殺意を持って、これだけの技を放った者がいる。
それは失態と言うほかなかった。
映画に見とれていたうちに、自分のいたすぐ近くの場所で、既に殺し合いが起きていたのだ。
止められなかったのは五代の怠慢であり、死人が出たのなら、五代の責任だった。
「貴様に何が分かるというんだ」
その後に、最初に出会ったのが、この水色の髪の少年だ。
まさかと思いながら声をかけたが、彼はやったのは自分だと明言した。
「強くあれと皆が言った……だが……強くあったその先に、何があった……」
その彼が、怒りに震えている。
何気なく五代の放った一言が、何故か握り拳を震わせている。
何がまずかったのだろうか。一瞬、五代は反応に迷った。
「彼女1人守れない力に……一体、何の意味がある……!」
しかし、答えはすぐに出た。
そう唸る少年の顔には、怒り以外の感情が――無念が色濃く浮かんでいたのだ。
じわり、と掌に痛みが滲んだ。
その姿には、覚えがあった。
恐らく大切な人間の命を、救えずに喪ってしまったことがあるのだろう。
「……分かるよ。何となく、だけど」
救える力を持ちながら、果たせなかったやるせなさは、五代雄介にも覚えがあった。
「何を……?」
「俺もさ、そういうことあったんだ。守れたかもしれない人を守れなくて、すっごく悔しいって思った」
そのことを考えなかったのは謝ると、非礼を詫びながら、五代が言う。
思い返すのは、もうすっかりと、遠い日のように感じるようになった記憶。
九郎ヶ岳で命を落とした、夏目幸吉教授の葬儀で、遺族が流した悲しみの涙だ。
泣きじゃくる娘の姿を見た時、悔しさとやるせなさが、胸を襲った。
犠牲になる人々のことも考えず、勝手に戦いを迷っていた自分が、情けなくて仕方がなかった。
「でも……だからこそ、そうやって自分を否定することは、しないでほしいな」
だからこそ、五代は思うのだ。
悲しみも後悔も分かるが、そのために歩みを止めるのは、きっと誤りではないのかと。
「もちろん、悲しいのは分かるよ。そうやって、立ち止まりたくなるのも。
だけど、君が自分のせいでそうなったって、亡くなってしまった人が知ったら……その人は、もっと悲しいと思う」
「………」
「迷ってもさ、いいとは思うんだ。割り切っちゃいけないこともあると思う。
それでも……迷いの中で立ち止まって、何もできなくなっちゃったら、意味がないって思うから」
自分の将来について悩んでいた、霧島拓という少年がいた。
彼には、たとえ答えが出ずとも、出るまで悩めばいいと言った。
それでもそれは、迷いの中で、塞ぎ込めばいいということではない。
迷いと悩みを重ねながらも、前に進むことだけは、忘れていてはならないのだ。
でなければ、きっと、同じ悲劇が、延々と繰り返されてしまうから。
「……僕は……」
気付けば、少年の顔からは、先ほどの怒気が抜けていた。
整った睫毛の下で、所在なさげに視線を逸らしていた。
憂いを帯びた少年が、しばし沈黙した刹那。
「……っ!?」
がつん、とアスファルトを蹴る音と共に。
びゅん、と鋭い風が鳴り。
街の影から少年の背後へ、勢いよく飛び出してきた影があった。
◆
「危ない!」
最初にこちらに気付いたのは、黒い髪の若者だった。
水色の髪の少年は、若者の声を聞くや否や、素早くその場から身をかわした。
存外、すばしっこい小僧だ。先ほどの怯えた少女とは、度胸も身体能力も違うらしい。
黒い法衣を夜風に揺らせ、白夜の魔獣――
レギュレイスは、静かに標的を見定めた。
「未確認か!?」
「ホラーだ。そのような無粋な呼び名は知らぬ」
黒髪の男が、妙な名前で自分を呼んだ。
ホラーと似たような存在を、この男は見たことがあるのだろうか。
あるいは、先ほどの映像に現れた、あの白い魔人がそうだったのかもしれない。
いずれにせよ、勘違いされたままでは不愉快だ。どうせ殺す相手だとしても、そこだけは即座に訂正した。
「……くっ!」
瞬間、闇夜に光が走る。
黒髪の若者の腰元に、銀色のベルトが顕現する。
右手を前に、左手を腰に。
両手で独特なポーズを取り、ゆっくりとしたポーズでスライドさせる。
「変身ッ!!」
叫びと共に、右手が引かれた。
左手に被せるように添えられ、次の瞬間には両の腕が、大きく勢いよく開かれた。
同時にほとばしるのは、赤い光だ。
男の全身が黒く覆われ、その上に真紅の鎧が現れた。
黒い顔面、真っ赤な複眼。
銀色の牙が鋭く光り、金色の角が大きくせり出す。
瞬く間に、男の容貌は、異形の怪人へと変化していた。
「なっ……!?」
これは同行していた少年にとっても、未知の現象だったらしい。
静かな印象を受けた顔立ちが、一瞬、驚愕の色に染まった。
「魔戒騎士……では、なさそうだな」
顔の形だけを見るならば、その様はまるでクワガタムシだ。
狼を象った騎士鎧とは、似ているようで似つかない。
それでも、わざわざ変身したからには、並の人間よりも強いと見ていいだろう。
先ほどの鋼牙との戦いもある。油断を繰り返すわけにもいかない。
背中の剣呑な触手を広げ、白夜の魔獣レギュレイスは、戦闘態勢を取って2人を見据えた。
【1日目・黎明/E-3】
【エデン@聖闘士星矢Ω】
【状態】精神疲労(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3(オリオン聖衣はない)
【思考】
基本:殺し合いに乗る気も、殺し合いを止める気もない
1:ホラーなる怪物(=レギュレイス)を追い払う
2:あの男(=五代)は、前に進むべきだと言うが……
【備考】
※第28話「最強の軍団! 黄金聖闘士集結!」終了直後からの参戦です
【五代雄介@仮面ライダークウガ】
【状態】クウガ・ライジングマイティ
【装備】アークル
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いを止める
1:少年(=エデン)を守りつつ、ホラーなる怪物(=レギュレイス)を迎撃する
2:他の参加者を探す
3:ダグバと戦う時までは封印するが、その時が来たら、迷うことなく凄まじき戦士に変身する
【備考】
※EPISODE48「空我」にて、九郎ヶ岳に向かっている最中からの参戦です
【レギュレイス@牙狼-GARO- 白夜の魔獣】
【状態】ダメージ(小)
【装備】無し
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3、カラクリの仮面×2
【思考】
基本:生還して一族の復活を果たす
1:赤鎧の戦士(=五代)と少年(=エデン)を殺す
2:他の参加者は基本殺害。素材次第でアオムシやカラクリにする
3:魔戒騎士(鋼牙)はいずれ殺す。魔戒剣は可能ならこちらの手に収めたい
【備考】
※死亡後からの参戦です
◆
「……今の、聞こえたか?」
道路を歩む足を止め、
天羽奏が問い掛けてきた。
もちろん、
土宮神楽の方も、その物音は察知していた。
「はい……多分、戦いの音でしょうね」
デパートを出て西へ向かい、ちょうどその先から聞こえてきたのは、電気の走るような音だ。
漏電、というわけではあるまい。一面真っ暗闇のこの街には、電気が通っているのかどうかすら疑わしい。
となると、その手の力を使う何者かが、この先で戦っているのだろう。
待っているのは、自分達のような霊能力者か、あるいは悪霊のような怪物か。
「こりゃあちょっと、急いだ方がよさそうだな」
「ええ。行きましょう」
いずれにせよ、それだけ激しい戦闘が起きているのは確かだ。
無用な死者が出る可能性は大いにある。それは何としても避けなければならない。
現状の装備には不安も残るが、かと言ってじっとしているわけにもいくまい。
神楽は奏の提案に従い、音のする方へと走り出した。
◆
「フフ……」
迷える聖闘士エデンと古代戦士クウガ――その両名に対峙するレギュレイス。
戦闘の音を聞きつけて、現場へと急行する、土宮神楽と天羽奏。
それら全ての戦況を、高みから見下ろす者がいた。
「これだけの数が会するとなれば、なかなか面白いことになりそうだ」
よもや始まったばかりの序盤から、これほどの数が一か所に集うことになるとは。
丸眼鏡を白く光らせて、笑みと共に下界を見下ろすのは、特異災害対策機動部二課の櫻井了子だ。
未知の技術体系を研究する、異端技術の第一人者。FG式回天特機装束・シンフォギアシステムの産みの親。
(とはいえ、ネフシュタンの鎧なき今、不用意な手出しは命取り……ここは慎重にいかせてもらおうか)
しかし、それは世を忍ぶ仮の姿。
その真なる名を、フィーネと言う。
終わりを示すその名前は、滅びの鐘の鳴らし手の証。
かつての妄執に取り憑かれ、忌まわしき月の破壊を目論む、愛憎に狂った巫女である。
現生人類に対して、さして思い入れもないフィーネは、この場でもゲームに乗ることを選んだ。
己の愛と憎しみを、速やかに完結させるためには、二課への即時帰還が最善と考えたからだ。
そのために何人の人間が死のうが、彼女には知ったことではない。
どうせ月を破壊すれば、その余波で地球環境は破綻し、大勢の人間が死ぬことになるのだ。
せいぜい気がかりな存在といえば、聖遺物融合症例の被験者――
立花響くらいのものだろう。
彼女の処遇をどうすべきかは、おいおい考えていけばいい。
(……だが)
それでも、1つ気になることがある。
自分の進退とは関係なしに、どうしても腑に落ちないことが、この場には1つだけ存在する。
(何故、彼女が生きている?)
それは眼下を走っている、天羽奏の存在だ。
薬物に身体を蝕まれ、ギアを纏う力すら失い、ノイズの群れと共に散った娘だ。
用済みの彼女がどうしたというわけではない。
死んだはずのあの娘が、ここにいることが問題なのだ。
これは一体どういうことか。
何故彼女が当時の容姿のまま、死の淵から蘇っているのだ。
(調べる価値はあるかもしれんな)
此度の寄り代となっている、了子の性が伝染ったのかもしれない。
自分の預かり知らぬ力が、他の者によって振るわれているのは、それはそれでなかなかに不快だ。
死者蘇生を実現する秘儀――あの主催者達の持つ力に、フィーネは関心を寄せつつあった。
【1日目・黎明/E-4】
【土宮神楽@喰霊-零-】
【状態】健康
【装備】殺生石(白叡)、トライアクセラー@仮面ライダークウガ
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2(武器に見えるものはない)
【思考】
基本:この殺し合いを止め、会場から脱出する
1:西で起きている戦いに介入する
2:殺し合いに乗っていない参加者を探して保護する
3:奏と行動を共にする。彼女が一度死んでいるというのが気になる
【備考】
※第12話「祈 焦(いのりこがれて)」にて、黄泉を追って山に入った直後からの参戦です
※
諫山黄泉が参加していることに気付いていません
※天羽奏から、ノイズ@戦姫絶唱シンフォギアについての、大まかな情報を聞かされました
【天羽奏@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康
【装備】ノースリーブとジーパン、スニーカー、天羽々斬@戦姫絶唱シンフォギア
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2、ステージ衣装一式、音楽雑誌
【思考】
基本:この殺し合いを止める
1:西で起きている戦いに介入する
2:殺し合いに乗っていない参加者を探して保護する
3:神楽と行動を共にする
4:天羽々斬を翼に届ける
5:あたしは死んだはず、なんだけどな……?
【備考】
※死亡直後からの参戦です。ツヴァイウィングのライブステージ衣装を着て参戦していました
※自分が死んでから、既に2年が経過していることを把握しています
※LiNKERの効果が切れかけています。ごく短時間しかシンフォギアを使えません
※
風鳴翼が参加させられているのではないかと考えています
【1日目・黎明/E-3東端 ビル屋上】
【櫻井了子(フィーネ)@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3(ネフシュタンの鎧はない)
【思考】
基本:殺し合いに優勝し、二課へ帰る
1:眼下で起こっている戦いを見守る。状況によっては自らも踏み込み、最善策を取る
2:響を生かすか殺すかについて検討
3:何故か蘇生している奏に興味。どんな手段で蘇ったのかが知りたい
【備考】
※第8話「陽だまりに翳りなく」終了直後からの参戦です
※櫻井了子の姿での参戦です。髪と瞳の色は、フィーネ本来のものと、自由に切り替えることができます
※立花響が参戦していることには気付いていますが、風鳴翼、
雪音クリス、
小日向未来は未確認です
最終更新:2013年07月07日 02:22