プライド ◆aWSXUOcrjU
「――貴方はこのゲームについて、どう思いますか?」
それが
パルス・アベルの第一声だった。
「……何だお前は」
鬱陶しげに見下ろすのは、このデスゲームが始まってから、アベルが最初に見つけた男だ。
すらりとしたスマートな体格に、ぴっちりとした黒衣を纏っていた。
肩ほどの長さまで伸びた銀髪が、さらさらと潮風に揺れている。
その下から覗く瞳は、鋭い。
射竦められたそれだけで、刃物を突き立てられたと錯覚するような、冷たく苛烈な眼光だ。
「私の名はアベル。あの女が始めたこのゲームからの、一刻も早い脱出を願う者です」
三重連太陽系のことは、敢えて口にはせずに名乗った。
この男が三重連太陽系について、知っているかどうかは定かではない。
勇者王・
獅子王凱らのように、地球から来た者であるのなら、一分の知識もないと考える方が自然だ。
取って殺すというわけではないのだ。であれば、不要な混乱を招く表現は、避けた方が無難だと言える。
「下らない」
にべもなく、切り捨てるように。
「お前達の命など知ったことか。殺し合いなど、お前達で勝手にしていろ」
急速に冷めていく青い瞳が、アベルを見下ろしながら、そう返した。
「ですが貴方としても、この場に長く留まることが、得策ということにはならないでしょう?」
「……何が言いたい」
「協力していただきたいのです」
それがアベルの目的だ。
創造主たる彼女にとって、下等人類を殺すことなど、容易い。
それでも、己1人の手で、残り34人を殺すとなると、必然、その難易度は増してくる。
この広大なフィールドの中、参加者を探して回るのは、なかなかに骨が折れるのだ。かかる時間も馬鹿にならない。
「共に他の参加者を殺して、このゲームを手早く終わらせるために」
だからこそ、アベルは協力者を求めた。
正確には、自分に代わって獲物を探す、駒を求めて声をかけた。
ゲームを早期に終了させ、三重連太陽系への帰還を、一分一秒でも早くするために。
「俺とお前が生き残ったとして、その後はどうする。どの道出られる者は1人だけだ」
もっともな疑問だ。
黒ずくめの男の言葉にも、一理はあった。
元いた場所に帰れる者は、殺し合いを優勝した1人だけだ。
男とアベルのどちらかは、必然、死ななければならない。
「その時には、潔く決着をつけましょう。誰にも邪魔をされることなく、どちらが出られるかを賭けて」
「できると思うか」
それまで勝ち残れると思うか、ではなく。
俺と渡り合えると思うか、と問うた。
どう見ても強そうには思えない、幼い童女の姿をしたアベルに対して。
「もちろんです」
貴方と渡り合うことも。
それまでに勝ち残ることも、だ。
血の色にぎらついた瞳を細め、童女は黒ずくめの男へと言う。
己が力と策謀への、持てる自信の全てを込めて。
「……
キャシャーンという男だけは、俺のもとへ連れてこい。俺と同じ姿をした、黒髪と白い服の男だ」
どれほどの沈黙が続いただろうか。
それだけを最後にアベルに告げると、男は髪を翻し、その場を去った。
すたすた、すたすたという足音と共に、黒ずくめの細い後ろ姿が、闇の向こうへと溶けていった。
「お分かりいただけたようですね」
にやり、と笑みを浮かべながら、無人の虚空へと呟く。
そこそこに腕が立ちそうで、そこそこに殺気を放った男――彼ならば話が通じると、確信した上での誘いだった。
結果として、男はアベルの要求を、恐らくは了承し、狩り場へと向かった。
命をどうでもいいと思うことは、殺しても構わないと思うことと同義だ。
そう判断しての交渉は、どうやら実を結んだようだった。
「まぁ、せいぜい期待させてもらうとしましょう」
最後に生き残るべくは自分だ。
たとえ下等種のゲームだとしても、偉大にして崇高なる創造神こそが、勝利するには相応しいのだ。
あの男も、その難度を下げるための駒でしかなく、いずれ蹴り捨てる石くれでしかない。
だとしても、わざわざ仕事を与えたからには、多少は働きを期待することにしよう。
男の消えた暗闇を見据え、少女はくすくすと笑った。
◆
(奴の言うことにも、一理はある)
それが黒衣と銀髪の男――
ディオの導いた結論だった。
確かにこんな遊戯ごときに、躍起になってやろうという気は起きない。
死人などその辺りを探してみれば、ごろごろ転がっているゴミのようなものだ。
それをわざわざゲームに仕立てて、ゴミを増やそうなどというのは、下らないことこの上ない。
(だが、そんな遊びに付き合わされるのも癪だ)
あの生意気な童女と話しているうちに、込み上げてきたのがその念だ。
このディオを捕えて島に閉じ込め、意のままに操ろうなどという、見下げた根性への怒りだ。
こんなふざけた島などには、一秒たりとも長居したくない。
とっととゲームを終わらせて、あのふざけた女の顔に、一撃入れてやらねば気が済まない。
(望みどおり乗ってやる)
赤毛の童女へと、内心で告げた。
(だが、お前との契約を果たした時……その時が同時に、お前の最期だ)
あの小娘が見た目によらず、そこそこなやり手であろうことは理解している。
恐らくは、戦闘用ロボットか何かなのだろう。見た目こそ小さな子供だったが、その身から漂う気配は只者ではない。
だとしても、負けるつもりは毛頭ない。
敗北が許されるはずもないのだ。
天上天下、最強の存在として君臨すべきは、このディオを置いて他にいないのだから。
(そして、キャシャーン)
しかしそのディオの王座を、唯一脅かす存在がいる。
同じ姿を持ちながら、常に己の前に立ってきた、忌々しき兄弟機にして好敵手――キャシャーン。
いつか決着をつけなければならないと、心に誓ってきた相手だったが、よもやこんなところに居合わせていたとは。
(傷は癒えた。今度こそ、奴と決着をつけてみせる)
かつてキャシャーンによって負わされた傷は、あのホールで目覚めた時には、いつの間にか完治していた。
であれば、今こそが最大の好機だ。
今度こそキャシャーンを打ち倒し、自らの優位性を証明してみせる。
(俺が俺であるために)
同じ姿を持ちながら、自分は何度となく負け続けた。
キャシャーンの名ばかりが世に広がり、自分は二番手に立ち続けた。
己の存在意義諸共、奪われたような心地だった。
奴をこの手で倒さない限り、自分は自分でいられない。
奴に挑むことをやめた時、己は己でなくなってしまう。
だからこそ、キャシャーンは己が手で倒す。
他の誰にも邪魔させはしない。他の奴らなどどうでもいいが、キャシャーンの命だけは別だ。
何よりも、己が悲願を成し遂げるために、ディオは平野を進んでいった。
【1日目・深夜/E-6 平原】
【パルス・アベル@勇者王ガオガイガーFINAL】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:殺し合いを速やかに終わらせ、三重連太陽系へと帰還する
1:基本的に皆殺し
2:効率よく参加者を減らすため、交渉ができそうなマーダーとは協力関係を取りつける
3:キャシャーンに会ったら……?
【備考】
※FINAL.06「我が名はG(ジェネシック)」開始直前からの参戦です
※ディオから、キャシャーンの外見特徴を聞きました
【ディオ@キャシャーン Sins】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:キャシャーンと決着をつける
1:基本的に皆殺し。できることなら、さっさとゲームを終わらせたい
2:終わらせたら主催者を殺す
3:アベルには好きにさせる。ただし、最後に生き残った時には殺す
【備考】
※第16話「信じる力のために」終了直後からの参戦です
最終更新:2013年02月20日 02:20