ひょんなことから女の子
クロ/クロ 7『XX*n(後編)』
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78 名前: 長目 『クロ/クロ』7-1 投稿日: 2006/08/25(金) 04:08:22.54 ID:qv9NKE/+0
俺「おー」
浴場へ続く扉を開けた俺は、広がる景色に歓声を上げた。
檜作りの浴場は、半ばから岩の露天風呂に変わり、
その向こうには日本の山々が紅く色づいている。
近くに川があるのか、ざあざあと水の流れる音が聞こえていた。
一言で表すなら、絶景だ。
天「わ」
天才も俺に続いて声を上げた。
温泉になんて興味はこれっぽっちもなかったんだが、これは良いなぁ。
俺「おー」
浴場へ続く扉を開けた俺は、広がる景色に歓声を上げた。
檜作りの浴場は、半ばから岩の露天風呂に変わり、
その向こうには日本の山々が紅く色づいている。
近くに川があるのか、ざあざあと水の流れる音が聞こえていた。
一言で表すなら、絶景だ。
天「わ」
天才も俺に続いて声を上げた。
温泉になんて興味はこれっぽっちもなかったんだが、これは良いなぁ。
ゆうに2、30人は入れそうな湯船を見ると、白くにごった湯がたっぷりと張られていた。
にごり湯か。幸いと見るべきだな。
にごり湯か。幸いと見るべきだな。
葛「あ~、お二人とも、こっちですよ~!」
湯船から葛がばしゃばしゃと手を振っていた。
はしゃぐな恥ずかしい!
ていうか、前隠せ!
湯船から葛がばしゃばしゃと手を振っていた。
はしゃぐな恥ずかしい!
ていうか、前隠せ!
…………。
……やっぱ、アイツ胸でけぇなぁ。
……やっぱ、アイツ胸でけぇなぁ。
79 名前: 長目 『クロ/クロ』7-2 投稿日: 2006/08/25(金) 04:10:13.12 ID:qv9NKE/+0
俺「よし、じゃあできるだけ自然に、そして後手に回らないように」
天「そうだね。先手を打っていった方がいいでしょ」
互いに頷いて、風呂場に足を踏みいれた。
俺「よし、じゃあできるだけ自然に、そして後手に回らないように」
天「そうだね。先手を打っていった方がいいでしょ」
互いに頷いて、風呂場に足を踏みいれた。
平日の夕暮れ、一般の観光客といっても、大した人数はいない。
俺たちを除けばせいぜい4、5人だ。
つうか、ほら、その、な、いるのはみんなオバサンかオバアサンな訳で。
現実を思い知ったというか、期待を裏切られたというか、なんというか。
ともあれ、人数が少ないのは何よりだ。
俺たちを除けばせいぜい4、5人だ。
つうか、ほら、その、な、いるのはみんなオバサンかオバアサンな訳で。
現実を思い知ったというか、期待を裏切られたというか、なんというか。
ともあれ、人数が少ないのは何よりだ。
天「日本だと、湯船に浸かる前に身体を洗うんだよね?」
俺「あぁ、アメリカだと湯船で洗うんだっけか」
天「うん」
アメリカ式の方が都合がいいんだろうけどなぁ。
そこは郷に入りては、って奴だ。
俺「俺が背中洗ってやるよ。そこに座ってくれ」
俺は椅子を二つ取ると、湯船に背を向ける角度で天才を座らせる。
すると、背後からザバザバと湯をかき分ける音と共に、
葛「私はユウキちゃんのお背中流しますよ~」
という葛の声がした。
マジか。
俺「あぁ、アメリカだと湯船で洗うんだっけか」
天「うん」
アメリカ式の方が都合がいいんだろうけどなぁ。
そこは郷に入りては、って奴だ。
俺「俺が背中洗ってやるよ。そこに座ってくれ」
俺は椅子を二つ取ると、湯船に背を向ける角度で天才を座らせる。
すると、背後からザバザバと湯をかき分ける音と共に、
葛「私はユウキちゃんのお背中流しますよ~」
という葛の声がした。
マジか。
80 名前: 長目 『クロ/クロ』7-3 投稿日: 2006/08/25(金) 04:13:10.27 ID:qv9NKE/+0
横目にチラりと振り返ると、ちょうど葛がこちらに歩いてくるところだった。
赤く上気した肉感的な肌。
出るところは惜しみなく出て、引っ込むところはきっちり引っ込んでいる、
見事なスタイルだ。
中でも、一歩ごとに揺れる胸にはつい目が行ってしまう。
俺「待て! お前、ちょっとは前隠せよ!」
慌てて前へ向き直る俺。
葛「ま~ま~、いいじゃないですか~」
葛「私ももう、何回もユウキちゃんの裸を見てますし~」
おあいこってことで~、と言いながら、椅子を手にして俺の背後に腰を下ろす。
驚いたことに(後で冷静になってみれば自分の時もそうだったのだが)
性的興奮はほとんど覚えなかった。
ただ、裸を見てしまったことに対する罪悪感というか、背徳感というか、
そういったものによって動悸が速まる。
横目にチラりと振り返ると、ちょうど葛がこちらに歩いてくるところだった。
赤く上気した肉感的な肌。
出るところは惜しみなく出て、引っ込むところはきっちり引っ込んでいる、
見事なスタイルだ。
中でも、一歩ごとに揺れる胸にはつい目が行ってしまう。
俺「待て! お前、ちょっとは前隠せよ!」
慌てて前へ向き直る俺。
葛「ま~ま~、いいじゃないですか~」
葛「私ももう、何回もユウキちゃんの裸を見てますし~」
おあいこってことで~、と言いながら、椅子を手にして俺の背後に腰を下ろす。
驚いたことに(後で冷静になってみれば自分の時もそうだったのだが)
性的興奮はほとんど覚えなかった。
ただ、裸を見てしまったことに対する罪悪感というか、背徳感というか、
そういったものによって動悸が速まる。
俺と葛はそれぞれ、タオルを手に取るとボディソープをつけ、背中を洗い始める。
人に背中を流されるのって、むずがゆいようなくすぐったいような感じだな。
俺「あぁ、そうだ。先に言っておくことがある」
葛「はい~?」
俺「俺ら、前は自分で洗うからな」
天「そうだね。私も自分でやる」
葛「…………」
俺「残念そうな顔をするな!」
つい、振り返ってツッ込んでしまった。
危ねぇ! やっぱり考えてやがったな!
人に背中を流されるのって、むずがゆいようなくすぐったいような感じだな。
俺「あぁ、そうだ。先に言っておくことがある」
葛「はい~?」
俺「俺ら、前は自分で洗うからな」
天「そうだね。私も自分でやる」
葛「…………」
俺「残念そうな顔をするな!」
つい、振り返ってツッ込んでしまった。
危ねぇ! やっぱり考えてやがったな!
81 名前: 長目 『クロ/クロ』7-4 投稿日: 2006/08/25(金) 04:16:22.95 ID:qv9NKE/+0
背中を流し終えたら、葛を湯船に戻らせる。
俺と天才は二人揃って、湯船に背を向けたまま自分の身体を洗った。
背中を流し終えたら、葛を湯船に戻らせる。
俺と天才は二人揃って、湯船に背を向けたまま自分の身体を洗った。
泡を洗い流したら、次は湯船に入る訳だが……
俺「やっぱタオル浸けたら駄目なんだろうなぁ……」
天「そういえば扉に書いてあったね。駄目かな」
俺「まぁ、そういうマナーなんだ、仕方がない」
ちょっと考えて、俺たちは風呂の隅から湯船に入ることにした。
俺は自分の身体を使って、天才の身体が死角になるように隠す。
湯船に浸かってしまうと、にごった湯で身体はほとんど見えなくなった。
とりあえず、この状態でいる限りは安全な訳だ。
俺「やっぱタオル浸けたら駄目なんだろうなぁ……」
天「そういえば扉に書いてあったね。駄目かな」
俺「まぁ、そういうマナーなんだ、仕方がない」
ちょっと考えて、俺たちは風呂の隅から湯船に入ることにした。
俺は自分の身体を使って、天才の身体が死角になるように隠す。
湯船に浸かってしまうと、にごった湯で身体はほとんど見えなくなった。
とりあえず、この状態でいる限りは安全な訳だ。
俺「はぁぁぁ~」
肩まで湯に浸かった俺は、ため息半分で声を漏らす。
……せっかくの温泉だってのにちっとも気が休まらねぇなぁ。
このあとは――湯船から上がって、身体を拭いて、服を着て……それでクリアか。
と、脳内でプランを組み立てていると、葛がこちらにやってきた。
葛「ユウキちゃん、おじさんみたいですよ~?」
ほっといてくれ。
肩まで湯に浸かった俺は、ため息半分で声を漏らす。
……せっかくの温泉だってのにちっとも気が休まらねぇなぁ。
このあとは――湯船から上がって、身体を拭いて、服を着て……それでクリアか。
と、脳内でプランを組み立てていると、葛がこちらにやってきた。
葛「ユウキちゃん、おじさんみたいですよ~?」
ほっといてくれ。
82 名前: 長目 『クロ/クロ』7-5 投稿日: 2006/08/25(金) 04:19:04.59 ID:qv9NKE/+0
葛は天才の反対側、俺を中央に据えるように座った。
こんだけ広々とした風呂で、そんなにくっつくこともあるまいに。
というか、その、すぐ隣に座られると……
胸が気になってしまう訳で。
どうしても視界の隅に映るそれを、ちらちらと盗み見てしまう。
白いお湯から顔を覗かせる、桜色に染まった二つの丘が――
葛「どうです~? 綺麗ですか~?」
俺「うおっ!?」
葛「? どうしました~?」
俺「ん、あぁ、いや、なんだって?」
葛「景色ですよ~。ここの宿は、景色には定評があるんだそうです~」
俺「うん、そうだな。良い景色だよ。最初見た時は感動した」
俺はどうにか平静を装って、話題に乗っていく。
俺「そういえば、どこかに川が流れてるのか? さっきから音がしてるが」
葛「みたいですねぇ~。どこなんでしょうか~」
川を探す気なのか、葛が立ち上がって奥の方へ歩き始めた。
葛は天才の反対側、俺を中央に据えるように座った。
こんだけ広々とした風呂で、そんなにくっつくこともあるまいに。
というか、その、すぐ隣に座られると……
胸が気になってしまう訳で。
どうしても視界の隅に映るそれを、ちらちらと盗み見てしまう。
白いお湯から顔を覗かせる、桜色に染まった二つの丘が――
葛「どうです~? 綺麗ですか~?」
俺「うおっ!?」
葛「? どうしました~?」
俺「ん、あぁ、いや、なんだって?」
葛「景色ですよ~。ここの宿は、景色には定評があるんだそうです~」
俺「うん、そうだな。良い景色だよ。最初見た時は感動した」
俺はどうにか平静を装って、話題に乗っていく。
俺「そういえば、どこかに川が流れてるのか? さっきから音がしてるが」
葛「みたいですねぇ~。どこなんでしょうか~」
川を探す気なのか、葛が立ち上がって奥の方へ歩き始めた。
し 、 尻 !
突然現れた絶景に思考が飛びそうになる。
あぁぁ! 岩に身を乗り出すな! 危ねぇ! 色んな意味で! 特に俺が!
あぁぁ! 岩に身を乗り出すな! 危ねぇ! 色んな意味で! 特に俺が!
83 名前: 長目 『クロ/クロ』7-6 投稿日: 2006/08/25(金) 04:21:06.70 ID:qv9NKE/+0
――と、葛と入れ替わりに、オバサンの一人がこちらに寄ってきた。
オバサンは持ち前の気兼ねのなさで話しかけてくる。
オ「まー可愛い子だねぇ。外人さん? ハロー?」
ひどいカタカナ英語だな。ハローって……。
それを受けた天才は、きょとんとした顔をすると俺に振り返った。
天「Hey, What did she say to me?(ねえ、なんて言ってるの?)」
不意に英語を話し出す天才。
湯船の下では、つんつんと何か合図でもするように俺の腕をつつく。
なるほど。日本語を話せない風を装えば、もう話しかけてこないだろうということか。
俺「あ、あー、この子あんまり日本語分からないんですよー」
オ「あら、そうなの?」
……ていうか、俺も今コイツがなんて言ったか分からないんだが。
俺「遠い親戚の子なんですけど、たまたま日本に来てまして」
俺「せっかくだから日本の文化を体験してもらおうと――」
俺がその場しのぎの作り話を一通り聞かせている間、
天才は人見知りをする子どものように、俺の影に隠れていた。
オ「ふーん、そうー」
と、やがてオバサンは興味を失ったのか、話を切り上げると、
俺たちのそばを離れて、そのまま風呂から上がって行ってしまった。
――と、葛と入れ替わりに、オバサンの一人がこちらに寄ってきた。
オバサンは持ち前の気兼ねのなさで話しかけてくる。
オ「まー可愛い子だねぇ。外人さん? ハロー?」
ひどいカタカナ英語だな。ハローって……。
それを受けた天才は、きょとんとした顔をすると俺に振り返った。
天「Hey, What did she say to me?(ねえ、なんて言ってるの?)」
不意に英語を話し出す天才。
湯船の下では、つんつんと何か合図でもするように俺の腕をつつく。
なるほど。日本語を話せない風を装えば、もう話しかけてこないだろうということか。
俺「あ、あー、この子あんまり日本語分からないんですよー」
オ「あら、そうなの?」
……ていうか、俺も今コイツがなんて言ったか分からないんだが。
俺「遠い親戚の子なんですけど、たまたま日本に来てまして」
俺「せっかくだから日本の文化を体験してもらおうと――」
俺がその場しのぎの作り話を一通り聞かせている間、
天才は人見知りをする子どものように、俺の影に隠れていた。
オ「ふーん、そうー」
と、やがてオバサンは興味を失ったのか、話を切り上げると、
俺たちのそばを離れて、そのまま風呂から上がって行ってしまった。
ふと周囲を見渡せば、もう俺たちの他には誰もいなくなっていた。
空もいつの間にか夕闇が降りてきている。
ふー……ひとまずセーフか。
あとは風呂から上がる時に俺が葛の気を引いていればいい。
とりあえずの峠は越えたな。
そう思うと、俺はようやっと温泉と景色を楽しむことができた。
空もいつの間にか夕闇が降りてきている。
ふー……ひとまずセーフか。
あとは風呂から上がる時に俺が葛の気を引いていればいい。
とりあえずの峠は越えたな。
そう思うと、俺はようやっと温泉と景色を楽しむことができた。
84 名前: 長目 『クロ/クロ』7-7 投稿日: 2006/08/25(金) 04:23:50.74 ID:qv9NKE/+0
風呂から無事上がった俺たちは、ようやっと旅行を楽しめるテンションになっていた。
俺「よし、あとは遊ぶだけか」
葛「その前に夕ご飯ですよ~」
――そうだった。
風呂から無事上がった俺たちは、ようやっと旅行を楽しめるテンションになっていた。
俺「よし、あとは遊ぶだけか」
葛「その前に夕ご飯ですよ~」
――そうだった。
食事は大広間にお膳が並べられているものを想像していたが、
そうではなく、個室に持ってきてもらうタイプのものだった。
色鮮やかな懐石や鍋がテーブル一面に広げられる。
また豪華だなぁ。
葛「いただきます~」
天「いただきます」
お吸い物を一口。結構うまい。
さすがは葛が選んだ宿だけのことはある。
――で、問題は、だ。
俺「お前、相変わらず箸だけは上達しないよなぁ」
天「う、うるさいね」
葛「先生~、食べさせてあげましょうか~?」
天「いいよ。自分で頑張る」
天「……んんー……っ」
妙なうなり声を上げながら、天才はどうにか味噌が乗った大根を持ち上げ……
そして、和え物が入った小鉢の中に落とした。
俺「くっ……!」
天「笑わないの!」
お、久し振りにキンキン声を聞いた。
だけど、俺が男だった時のそれよりも、可愛く聞こえるから不思議だな。
そうではなく、個室に持ってきてもらうタイプのものだった。
色鮮やかな懐石や鍋がテーブル一面に広げられる。
また豪華だなぁ。
葛「いただきます~」
天「いただきます」
お吸い物を一口。結構うまい。
さすがは葛が選んだ宿だけのことはある。
――で、問題は、だ。
俺「お前、相変わらず箸だけは上達しないよなぁ」
天「う、うるさいね」
葛「先生~、食べさせてあげましょうか~?」
天「いいよ。自分で頑張る」
天「……んんー……っ」
妙なうなり声を上げながら、天才はどうにか味噌が乗った大根を持ち上げ……
そして、和え物が入った小鉢の中に落とした。
俺「くっ……!」
天「笑わないの!」
お、久し振りにキンキン声を聞いた。
だけど、俺が男だった時のそれよりも、可愛く聞こえるから不思議だな。
85 名前: 長目 『クロ/クロ』7-8 投稿日: 2006/08/25(金) 04:26:35.69 ID:qv9NKE/+0
その後は卓球をしたり、古いアーケードゲームをやったりと、
いかにも温泉宿らしい遊びをして過ごした。
その後は卓球をしたり、古いアーケードゲームをやったりと、
いかにも温泉宿らしい遊びをして過ごした。
葛が持ってきたUNOを、敷いた布団の上でやっていると、天才があくびを一つする。
時計を見れば、時間は10時を回っていた。
俺「眠いか?」
天「うん、ちょっと。いつもは寝てる時間だし」
俺「じゃぁ、そろそろ寝るか」
葛「そうですか~。じゃあ、消しますね~?」
と、立ち上がった葛が電気のひもに手を伸ばす。
俺「あ、待った」
葛「はい?」
俺はチラリと天才の方を見た。
これは言わないとダメだよな。
俺「コイツは、暗闇が駄目なんだ。だから電気は消さないで欲しい」
葛「あら~。そうなんですか~?」
天「うん、ごめんね」
葛「いえ~、いいですよ~」
笑って、葛は布団の中に入り込んだ。
俺たちもそれにならう。
それを見届けた葛は、布団をかぶった状態で「うふふ~」と嬉しそうに笑った。
なんだか嫌な予感がするな。
葛「じゃあ~、お泊まりの定番イベントといきましょうか~」
不意に葛はそんなことを言い出した。
定番イベント? なんだ?
葛「ユウキちゃんは好きな子って誰ですか~?」
そうきたか。
時計を見れば、時間は10時を回っていた。
俺「眠いか?」
天「うん、ちょっと。いつもは寝てる時間だし」
俺「じゃぁ、そろそろ寝るか」
葛「そうですか~。じゃあ、消しますね~?」
と、立ち上がった葛が電気のひもに手を伸ばす。
俺「あ、待った」
葛「はい?」
俺はチラリと天才の方を見た。
これは言わないとダメだよな。
俺「コイツは、暗闇が駄目なんだ。だから電気は消さないで欲しい」
葛「あら~。そうなんですか~?」
天「うん、ごめんね」
葛「いえ~、いいですよ~」
笑って、葛は布団の中に入り込んだ。
俺たちもそれにならう。
それを見届けた葛は、布団をかぶった状態で「うふふ~」と嬉しそうに笑った。
なんだか嫌な予感がするな。
葛「じゃあ~、お泊まりの定番イベントといきましょうか~」
不意に葛はそんなことを言い出した。
定番イベント? なんだ?
葛「ユウキちゃんは好きな子って誰ですか~?」
そうきたか。
86 名前: 長目 『クロ/クロ』7-9 投稿日: 2006/08/25(金) 04:28:44.94 ID:qv9NKE/+0
俺「待て。なんでそんな話になるんだ。中学生か俺らは」
葛「え~? 研究室は女の子ばかりですし、気になる子くらいいないんですか~?」
俺「そうじゃなくてだな」
俺は助けを求めようと、ちらり、と天才の方を見る。
待て! その何かを期待するような目はなんだ!
俺「待て。なんでそんな話になるんだ。中学生か俺らは」
葛「え~? 研究室は女の子ばかりですし、気になる子くらいいないんですか~?」
俺「そうじゃなくてだな」
俺は助けを求めようと、ちらり、と天才の方を見る。
待て! その何かを期待するような目はなんだ!
俺「そういうお前はどうなんだよ?」
と、俺は葛に返してやる。
すると葛は、布団の下で小首を傾げてから、
葛「私が言ったら、ユウキちゃんも言って下さいよ?」
と、さらに返してきた。
葛「うふふ~、私はですね~」
葛「お二人のことが大好きなんですよ~」
俺「待て。そんなんアリか?」
葛「先生はどうですか~?」
天「うん。私も、二人のことが好きだよ」
あ、この! お前もか!
葛「さぁ、私たちは言いましたよ~」
葛「ユウキちゃんの好きな子は~、だ、れ、で、す、か~?」
な、なんだそりゃぁ……。
天「…………」
お前もこっちみんなよぉ……。
……あぁ、もう、しょうがねぇなぁー……。
俺「……おー……俺ーも、お前らのことが……好き、だよ……」
俺「……これでいいのかっ!?」
うーわ! うーわ! 恥ずかしいっ! 死ぬっ!
俺は自分自身の言葉に身悶えして、布団を頭からひっかぶった。
と、俺は葛に返してやる。
すると葛は、布団の下で小首を傾げてから、
葛「私が言ったら、ユウキちゃんも言って下さいよ?」
と、さらに返してきた。
葛「うふふ~、私はですね~」
葛「お二人のことが大好きなんですよ~」
俺「待て。そんなんアリか?」
葛「先生はどうですか~?」
天「うん。私も、二人のことが好きだよ」
あ、この! お前もか!
葛「さぁ、私たちは言いましたよ~」
葛「ユウキちゃんの好きな子は~、だ、れ、で、す、か~?」
な、なんだそりゃぁ……。
天「…………」
お前もこっちみんなよぉ……。
……あぁ、もう、しょうがねぇなぁー……。
俺「……おー……俺ーも、お前らのことが……好き、だよ……」
俺「……これでいいのかっ!?」
うーわ! うーわ! 恥ずかしいっ! 死ぬっ!
俺は自分自身の言葉に身悶えして、布団を頭からひっかぶった。
87 名前: 長目 『クロ/クロ』7-10 投稿日: 2006/08/25(金) 04:32:48.07 ID:qv9NKE/+0
翌日、俺たちは朝の風呂に始まり、昼は近くの自然公園の観光と土産物屋のはしご、
夜になれば温泉にゲームに枕投げと遊びつくし、
2泊3日の日程をあっというまに消化してしまった。
翌日、俺たちは朝の風呂に始まり、昼は近くの自然公園の観光と土産物屋のはしご、
夜になれば温泉にゲームに枕投げと遊びつくし、
2泊3日の日程をあっというまに消化してしまった。
宿をチェックアウトして帰りのバスに乗る頃にはもう全員がくたくたで、
一番後ろの席に陣取った俺たちは、その疲労した身体を硬い座席に預けていた。
葛にいたっては早くも窓際で寝こけている。
一番後ろの席に陣取った俺たちは、その疲労した身体を硬い座席に預けていた。
葛にいたっては早くも窓際で寝こけている。
俺と天才は反対側の窓際までスライドして行くと、こっそりと話をした。
俺「いやぁ、色々とバレずに済んで良かったな」
天「そうだね」
俺「しかしまぁ、アイツに引っ張り回されて散々だったよなぁ」
天「うん。でも楽しかったよ」
俺「そうか、良かった」
天「本当のことを言うとね、私、こんな風にみんなで旅行するのって初めてなんだ」
俺「そうなのか。家族とか友達とかとは行ったことないのか?」
天「……うん。うちはちょっと家庭の事情が複雑でね……」
天「それに、私飛び級でしょ? あまり友達ができなくって……」
俺「そうか……悪い、変なこと聞いて」
天「ううん。いいよ」
天「でね、だから今回はすごく楽しかった」
天「お風呂に入った時はすごく怖かったけどね」
と、天才は自分の手を胸に当て、思い出したようにくすり微笑とした。
俺「いやぁ、色々とバレずに済んで良かったな」
天「そうだね」
俺「しかしまぁ、アイツに引っ張り回されて散々だったよなぁ」
天「うん。でも楽しかったよ」
俺「そうか、良かった」
天「本当のことを言うとね、私、こんな風にみんなで旅行するのって初めてなんだ」
俺「そうなのか。家族とか友達とかとは行ったことないのか?」
天「……うん。うちはちょっと家庭の事情が複雑でね……」
天「それに、私飛び級でしょ? あまり友達ができなくって……」
俺「そうか……悪い、変なこと聞いて」
天「ううん。いいよ」
天「でね、だから今回はすごく楽しかった」
天「お風呂に入った時はすごく怖かったけどね」
と、天才は自分の手を胸に当て、思い出したようにくすり微笑とした。
――腕に重みがかかる。
天才が俺の腕にもたれかかっていた。
天才が俺の腕にもたれかかっていた。
88 名前: 長目 『クロ/クロ』7-11 投稿日: 2006/08/25(金) 04:35:31.84 ID:qv9NKE/+0
天才はいつも部屋でするように足をぶらぶらさせながら、俺の肩に頬をすり寄せた。
天「助かったよ。ありがとう。本当に」
そう言った天才は、あーあ、と冗談めかした声を漏らす。
天「君たちが私の家族だったら良かったのになぁ」
俺「なんだそれ。プロポーズか?」
冗談を飛ばしてやると、天才は笑って乗ってきた。
天「それもいいね。でも二人と結婚したら重婚罪でしょ」
天才はいつも部屋でするように足をぶらぶらさせながら、俺の肩に頬をすり寄せた。
天「助かったよ。ありがとう。本当に」
そう言った天才は、あーあ、と冗談めかした声を漏らす。
天「君たちが私の家族だったら良かったのになぁ」
俺「なんだそれ。プロポーズか?」
冗談を飛ばしてやると、天才は笑って乗ってきた。
天「それもいいね。でも二人と結婚したら重婚罪でしょ」
窓が俺の吐息で白く曇っていた。
それを見ていた天才が、窓に指で雪の結晶と雪だるまの絵を描いた。
天「そろそろ冬の仕度が要るね」
そういや冬服を買いに行かないとなぁ。
引っ込めた天才の手が、俺の手にちょんと触れる。
――瞬間、脳裏に天才の言葉が蘇った。
(天「今は君がいるでしょ?」)
……そうか、その手があったか。
俺「お前さ、いつも服はどうしてる?」
天「? お店で買ってるよ?」
俺「じゃぁ今度、一緒に冬服買いに行こう」
天才は少しだけ意外そうな顔をしたが、すぐ小さく微笑んで頷いた。
天「うん、いいよ」
それを見ていた天才が、窓に指で雪の結晶と雪だるまの絵を描いた。
天「そろそろ冬の仕度が要るね」
そういや冬服を買いに行かないとなぁ。
引っ込めた天才の手が、俺の手にちょんと触れる。
――瞬間、脳裏に天才の言葉が蘇った。
(天「今は君がいるでしょ?」)
……そうか、その手があったか。
俺「お前さ、いつも服はどうしてる?」
天「? お店で買ってるよ?」
俺「じゃぁ今度、一緒に冬服買いに行こう」
天才は少しだけ意外そうな顔をしたが、すぐ小さく微笑んで頷いた。
天「うん、いいよ」
やがて、バスは平地に出た。
激しい揺れやカーブがなくなったせいか、俺も天才もうとうととし始める。
かすかに右肩にかかる重みと温度が、増した気がした。
そちらを向くと、天才も応じて見上げてくる。
眠たげに、半ばまぶたの下ろされたその表情。
激しい揺れやカーブがなくなったせいか、俺も天才もうとうととし始める。
かすかに右肩にかかる重みと温度が、増した気がした。
そちらを向くと、天才も応じて見上げてくる。
眠たげに、半ばまぶたの下ろされたその表情。
89 名前: 長目 『クロ/クロ』7-12 投稿日: 2006/08/25(金) 04:40:25.01 ID:qv9NKE/+0
……それは、突然、しかし、じわりと染み出すように胸に浮かんだ思いだった。
心地よい疲労と睡魔のせいか、バスの座席の奥という閉塞した空間のせいか、
あるいは共に危機を乗り越えた安心感と連体感からか、
それとも、今までにないほどに近く、暖かく、コイツの存在を感じたせいか。
……それは、突然、しかし、じわりと染み出すように胸に浮かんだ思いだった。
心地よい疲労と睡魔のせいか、バスの座席の奥という閉塞した空間のせいか、
あるいは共に危機を乗り越えた安心感と連体感からか、
それとも、今までにないほどに近く、暖かく、コイツの存在を感じたせいか。
――キスしたい。
そう、思ってしまった。
自覚した瞬間、心臓が一つ大きく脈打つのを感じた。
かーっと顔全体が熱くなる。
待て待て待て。俺は今とんでもないことを考えたぞ?
かーっと顔全体が熱くなる。
待て待て待て。俺は今とんでもないことを考えたぞ?
…………。
驚きと恥ずかしさに一瞬だけ覚醒した意識は、しかし、疲労には勝てなかった。
眠気がすぐにまた俺のまぶたを下ろそうとする。
朦朧とする意識の中で、心臓だけが高鳴っているのを感じた。
身体を捻って窓に背中を預けると、
すでに眠りに落ちた天才がこちらに向かって倒れ込んできた。
眠気がすぐにまた俺のまぶたを下ろそうとする。
朦朧とする意識の中で、心臓だけが高鳴っているのを感じた。
身体を捻って窓に背中を預けると、
すでに眠りに落ちた天才がこちらに向かって倒れ込んできた。
――これなら、ノーカウントだよな?
などと言い訳にすらならない言い訳を考えながら、
俺は眠ってしまって首が支えられなくなった風をよそおって、
天才の額に唇を触れさせた。