ひょんなことから女の子
クロ/クロ Extra『XX XX XX(1)』
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296 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex1 [出戻り御免] 投稿日: 2006/09/07(木) 01:18:22.19 ID:iFNBOrZ/0
俺「えー、葛さん」
葛「はい~」
俺「ちょっと聞きたいことがあるんですが」
葛「なんでしょう~」
俺「その手に持ってる赤い三角の布はなんだぁっ!?」
葛「…………」
葛「青の方が良かったですか?」
俺「赤さはどうでもいい!」
俺「えー、葛さん」
葛「はい~」
俺「ちょっと聞きたいことがあるんですが」
葛「なんでしょう~」
俺「その手に持ってる赤い三角の布はなんだぁっ!?」
葛「…………」
葛「青の方が良かったですか?」
俺「赤さはどうでもいい!」
ここはデパートのスポーツ用品店――というか水着のコーナー。
葛はすでに自分の水着を持っているので、今日は買い物についてきてるだけだ。
つまりコイツが今手にしているのは俺用の水着な訳で。
妙に浅黒い色をした、半分マネキンのようなハンガーに掛かっているのは、
真っ赤な下地に白いハイビスカス柄の三角ビキニだった。
葛はすでに自分の水着を持っているので、今日は買い物についてきてるだけだ。
つまりコイツが今手にしているのは俺用の水着な訳で。
妙に浅黒い色をした、半分マネキンのようなハンガーに掛かっているのは、
真っ赤な下地に白いハイビスカス柄の三角ビキニだった。
葛「着てみて下さいよ~」
俺「うるせぇ!」
俺「うるせぇ!」
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Extra『XX XX XX』
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298 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex2 投稿日: 2006/09/07(木) 01:25:14.51 ID:iFNBOrZ/0
俺が女の身体になってから、早くも1年が経とうとしていた。
俺が女の身体になってから、早くも1年が経とうとしていた。
時の流れは想像より激しいもので、
ここ半年だけ見ても生活の様相はかなり変わった。
そもそも俺を観察対象とした実験は半年間の契約だったし、
実際それは半年前に終了したのだ。
ここ半年だけ見ても生活の様相はかなり変わった。
そもそも俺を観察対象とした実験は半年間の契約だったし、
実際それは半年前に終了したのだ。
同時に、3つ並んで借りられていた部屋の内、1つが引き払われた。
俺の部屋の隣、天才が住んでいた部屋。
今、そこは空室になっている。
俺の部屋の隣、天才が住んでいた部屋。
今、そこは空室になっている。
半年前、女の身体になった天才は――
天「派手だね。それ着るの?」
俺「着ねぇよ!」
俺「着ねぇよ!」
以来、俺の部屋で一緒に暮らしていた。
実験の新たな観察対象は天才本人。
葛は前回の実験でデータのまとめを任されていたこともあり、
今回も観察のチーフとして実験に参加している。
期間は不明。
成長期である天才にどういった影響が出てくるか分からないためだ。
葛は前回の実験でデータのまとめを任されていたこともあり、
今回も観察のチーフとして実験に参加している。
期間は不明。
成長期である天才にどういった影響が出てくるか分からないためだ。
まぁ要するに、色々変わった部分もあるにはあるが、
本質的な部分は何も変っていなかったりもする。
本質的な部分は何も変っていなかったりもする。
302 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex3 投稿日: 2006/09/07(木) 01:30:18.34 ID:iFNBOrZ/0
葛「あ、先生のもこっちに用意してありますよ~」
と、葛は天才の手を引くと、試着室に引っ張り込んでしまった。
葛のことだから、ロクでもないのをチョイスしてそうだな……。
――たとえば、フリフリのフリルが付きまくった奴とか。
まぁ天才は元が元だし、よほど変じゃなけりゃ大抵の水着は似合うだろうが。
葛「あ、先生のもこっちに用意してありますよ~」
と、葛は天才の手を引くと、試着室に引っ張り込んでしまった。
葛のことだから、ロクでもないのをチョイスしてそうだな……。
――たとえば、フリフリのフリルが付きまくった奴とか。
まぁ天才は元が元だし、よほど変じゃなけりゃ大抵の水着は似合うだろうが。
天才は半年前から随分体型が変わった。
手術の影響か、思春期の体質変化か、生活環境の変化か、あるいは精神的な変化か、
――とにかくその辺の理由で、拒食や偏食が改善されたのが大きな原因だろう。
半年前までの天才は、食が細い上に液体や果物系ばっか喰ってたしな。
あの肌の下に骨が透けそうだった身体は、
段々と女の子らしい柔らかさを持ち始めている。
手術の影響か、思春期の体質変化か、生活環境の変化か、あるいは精神的な変化か、
――とにかくその辺の理由で、拒食や偏食が改善されたのが大きな原因だろう。
半年前までの天才は、食が細い上に液体や果物系ばっか喰ってたしな。
あの肌の下に骨が透けそうだった身体は、
段々と女の子らしい柔らかさを持ち始めている。
お陰で天才は着る服の幅が広がった。
半年前までは季節を問わず長袖長ズボンだったのが、
今日でいえば、モスグリーンのノースリーブシャツに
デニムのスカートという出で立ちだ。
半年前までは季節を問わず長袖長ズボンだったのが、
今日でいえば、モスグリーンのノースリーブシャツに
デニムのスカートという出で立ちだ。
そんな背景もあり、
今年の夏こそは海へ行こうという葛の提案に、天才は二つ返事でOKを出した。
しかし、天才は水着を持っていない。
そこで今日の買い物に至る訳だ。
今年の夏こそは海へ行こうという葛の提案に、天才は二つ返事でOKを出した。
しかし、天才は水着を持っていない。
そこで今日の買い物に至る訳だ。
――で、俺も巻き添えを喰って自分の水着を買うハメになっていたりする。
303 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex4 投稿日: 2006/09/07(木) 01:36:03.65 ID:iFNBOrZ/0
葛「じゃ~ん。どうですか~?」
葛が効果音付きで試着室のカーテンを開けた。
俺「…………」
ついでに俺の口が開いた。
葛「じゃ~ん。どうですか~?」
葛が効果音付きで試着室のカーテンを開けた。
俺「…………」
ついでに俺の口が開いた。
葛が天才に選んだ水着。
それは競泳用のように飾り気のない、真っ白なワンピースの水着だった。
白い水着に白い肌、白金の髪。
わずかに赤く染まった頬と、ブルーの瞳だけが色彩を放っている。
それは競泳用のように飾り気のない、真っ白なワンピースの水着だった。
白い水着に白い肌、白金の髪。
わずかに赤く染まった頬と、ブルーの瞳だけが色彩を放っている。
…………。
天「……どう?」
もじもじと自分の指を弄びながら、上目遣いに天才が聞いてくる。
…………。
俺「あ、あぁ……似合ってる……」
……やべぇ……これは……
天「……どう?」
もじもじと自分の指を弄びながら、上目遣いに天才が聞いてくる。
…………。
俺「あ、あぁ……似合ってる……」
……やべぇ……これは……
目覚めそうだ。
って、待て! 違うだろ!
俺「こんなんどこにも置いてなかっただろ。どっから探してきたんだよ!」
葛「うふふ~?」
俺「誤魔化すな!」
俺「こんなんどこにも置いてなかっただろ。どっから探してきたんだよ!」
葛「うふふ~?」
俺「誤魔化すな!」
304 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex5 投稿日: 2006/09/07(木) 01:42:04.86 ID:iFNBOrZ/0
夕暮れの帰り道。
街路樹で騒ぎ立てるクマゼミの声に紛れて、遠くからヒグラシの鳴き声も聞こえる。
夕暮れの帰り道。
街路樹で騒ぎ立てるクマゼミの声に紛れて、遠くからヒグラシの鳴き声も聞こえる。
結局、天才はチェック柄のタンキニ(とかいうらしい、
上がキャミソールのようになっているセパレートの水着)を買った。
まぁ妥当なチョイスだろう。
上がキャミソールのようになっているセパレートの水着)を買った。
まぁ妥当なチョイスだろう。
葛「楽しみですねぇ~」
天「そうだね」
俺「あー……そうだなー……」
天「私、こういう水着は初めてだし。ちょっと緊張するな」
俺「そりゃそうだろうなぁ……」
天「君ー、ちょっと元気ないよ?」
俺「いや、だってなぁ……」
天「そうだね」
俺「あー……そうだなー……」
天「私、こういう水着は初めてだし。ちょっと緊張するな」
俺「そりゃそうだろうなぁ……」
天「君ー、ちょっと元気ないよ?」
俺「いや、だってなぁ……」
俺の手にはさっきの店の買い物袋。
その中身は赤いビキニだ。
しかも上は三角、下はローライズ。
その中身は赤いビキニだ。
しかも上は三角、下はローライズ。
葛に押し負けて試着をした時、すでに敗北は決定していたんだろう。
そりゃぁ、天才に良い笑顔で「似合ってるよ」とか言われたら……買うだろ。
そりゃぁ、天才に良い笑顔で「似合ってるよ」とか言われたら……買うだろ。
俺「……なんでこう、俺って乗せられやすいんだろ……」
天「別にいいでしょ。本当に似合ってるんだし」
俺「…………」
天「別にいいでしょ。本当に似合ってるんだし」
俺「…………」
女の身体になって早一年。
まだまだ慣れないことは山ほどあるらしい。
まだまだ慣れないことは山ほどあるらしい。
553 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex6 投稿日: 2006/09/08(金) 23:35:35.53 ID:3TGnzgCu0
部屋に戻った俺は、天才が晩飯を作っているのを尻目に、自分の買い物袋を開けた。
部屋に戻った俺は、天才が晩飯を作っているのを尻目に、自分の買い物袋を開けた。
何度見ても変わらない。
赤いビキニだ。
赤いビキニだ。
これが自分の物――自分が着るのだ、という事実には違和感を禁じ得ない。
新たな女物に手を出す時にはいつも覚える感覚なのだが、
どうにもこれが自分のものだと信じられないのだ。
新たな女物に手を出す時にはいつも覚える感覚なのだが、
どうにもこれが自分のものだと信じられないのだ。
だが、俺だって馬鹿じゃない。
そういう時の克服法はすでに心得ている。
鏡に自分と持っている物をセットで映すのだ。
自分の今の姿を再認識した上で、手にした物とのバランスを見る。
これで大体の違和感はクリアできる。
……まぁ、以前は鏡の中の姿が自分なのだと捉えられず、
自我がゲシュタルト崩壊を起こしそうになったこともあったが。
そういう時の克服法はすでに心得ている。
鏡に自分と持っている物をセットで映すのだ。
自分の今の姿を再認識した上で、手にした物とのバランスを見る。
これで大体の違和感はクリアできる。
……まぁ、以前は鏡の中の姿が自分なのだと捉えられず、
自我がゲシュタルト崩壊を起こしそうになったこともあったが。
水着を手に姿見の前に立つと、晩飯の乗ったトレイを両手に天才がリビングに入ってきた。
天「――もう着るの?」
俺「着ねぇよ」
俺「着ねぇよ」
554 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex7 投稿日: 2006/09/08(金) 23:40:23.86 ID:3TGnzgCu0
晩飯を喰い終わってからしばし。
晩飯を喰い終わってからしばし。
俺が用を足してトイレから出ると、天才が脱衣所に立っていた。
カゴにパジャマが入っているのを見ると、トイレ待ちではなく、風呂に入るようだ。
カゴにパジャマが入っているのを見ると、トイレ待ちではなく、風呂に入るようだ。
俺「なんだ、もう入るのか?」
天「うん。今日はちょっと汗かいちゃったから」
俺「そうか」
天「……見てないでよ」
口早に告げると、天才は俺を脱衣所から閉め出した。
天「うん。今日はちょっと汗かいちゃったから」
俺「そうか」
天「……見てないでよ」
口早に告げると、天才は俺を脱衣所から閉め出した。
リビングに戻った俺は、TVのスイッチを入れる。
次から次へチャンネルを変えてみるが、特に興味をひかれる番組はなく、
とりあえずお笑い芸人が何組も出ているバラエティ番組にチャンネルを合わせた。
TVの音と、時折背後から聞こえるばしゃばしゃという水音をBGMに、
天才の今日の食事や大まかな運動量などをメモし、ファイルに綴じる。
次から次へチャンネルを変えてみるが、特に興味をひかれる番組はなく、
とりあえずお笑い芸人が何組も出ているバラエティ番組にチャンネルを合わせた。
TVの音と、時折背後から聞こえるばしゃばしゃという水音をBGMに、
天才の今日の食事や大まかな運動量などをメモし、ファイルに綴じる。
続いて俺は、自分の基礎体温表を開いた。
もう実験は終わったので体温なんか計る必要はないんだが、
これがあるとそれなりに便利なので習慣としてつけ続けていた。
――見てみると、旅行の期間中に生理の心配はなさそうだ。
あれがあるとせっかく海に行っても見学だしなぁ。
こういうのがすぐ分かるなら、毎朝起き抜けに体温計をくわえていた甲斐もあるというものだ。
もう実験は終わったので体温なんか計る必要はないんだが、
これがあるとそれなりに便利なので習慣としてつけ続けていた。
――見てみると、旅行の期間中に生理の心配はなさそうだ。
あれがあるとせっかく海に行っても見学だしなぁ。
こういうのがすぐ分かるなら、毎朝起き抜けに体温計をくわえていた甲斐もあるというものだ。
555 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex8 投稿日: 2006/09/08(金) 23:44:14.54 ID:3TGnzgCu0
そうこうしている内に、いつのまにか番組は違うものに変わっていた。
天才はまだ風呂から出てこない。
――随分と長いな。
時計を見ると、天才が風呂に入ってから、すでに長針が3/4以上回っていた。
そうこうしている内に、いつのまにか番組は違うものに変わっていた。
天才はまだ風呂から出てこない。
――随分と長いな。
時計を見ると、天才が風呂に入ってから、すでに長針が3/4以上回っていた。
俺は背後――バスルームの方へと振り返る。
視界の隅には今日の戦果である買い物袋。
俺はふと、天才の買い物袋が開いているのに気が付いた。
視界の隅には今日の戦果である買い物袋。
俺はふと、天才の買い物袋が開いているのに気が付いた。
このマンションは家賃が高いだけあって、各部屋の設備も充実している。
たとえばバスルームだと、浴槽は大人が足を伸ばしても十分に余るほどに広い。
まさか、な。
俺は脱衣所まで歩いて行くと、その扉を開けた。
そこで俺が見たものは――
たとえばバスルームだと、浴槽は大人が足を伸ばしても十分に余るほどに広い。
まさか、な。
俺は脱衣所まで歩いて行くと、その扉を開けた。
そこで俺が見たものは――
湯船でバタ足をしている水着姿の天才だった。
俺「……待て。何してんだ」
せいぜい水着で風呂に入ってるくらいだと思っていたのだが、これはあまりに予想外だ。
つい笑うことも忘れて、呆然としてしまった。
天「!」
ばしゃっ、と一際派手な水音を立てて天才が振り返る。
天「あぁあ――ぁ、開けないでよっ!」
声が裏返ってるぞ。
俺「……楽しみなのは分かるが、風呂場で泳ぐこともないだろうに」
天「いいから、早く閉めてっ!」
天才が洗面器を掴んだので、俺は大人しく扉を閉めた。
磨りガラス越しに、天才が洗面器で湯船をばしゃんと叩くのが見えた。
せいぜい水着で風呂に入ってるくらいだと思っていたのだが、これはあまりに予想外だ。
つい笑うことも忘れて、呆然としてしまった。
天「!」
ばしゃっ、と一際派手な水音を立てて天才が振り返る。
天「あぁあ――ぁ、開けないでよっ!」
声が裏返ってるぞ。
俺「……楽しみなのは分かるが、風呂場で泳ぐこともないだろうに」
天「いいから、早く閉めてっ!」
天才が洗面器を掴んだので、俺は大人しく扉を閉めた。
磨りガラス越しに、天才が洗面器で湯船をばしゃんと叩くのが見えた。
556 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex9 投稿日: 2006/09/08(金) 23:50:54.85 ID:3TGnzgCu0
湯上がりの天才は、バスタオルで髪を拭きながら、対面の椅子に座った。
その紅潮した頬は湯にのぼせたからか、それとも衝撃映像を目撃されたからか。
天才のとがった唇から非難の言葉がこぼれた。
天「変態」
俺「待て。なんでだ」
天「――お風呂覗いたでしょ」
俺「水着着てただろ!」
天「それでもだよっ!」
天「ていうか、着てなかったらどうするの?」
俺「それはないだろ。そこの袋の中身も確認したし」
俺「つうか今さらだろ。何回か一緒に入ってんだし」
流石に「毎日見てるんだし」とは言わないでおいた。
あれは研究のためであって、流石に違うものだ。
湯上がりの天才は、バスタオルで髪を拭きながら、対面の椅子に座った。
その紅潮した頬は湯にのぼせたからか、それとも衝撃映像を目撃されたからか。
天才のとがった唇から非難の言葉がこぼれた。
天「変態」
俺「待て。なんでだ」
天「――お風呂覗いたでしょ」
俺「水着着てただろ!」
天「それでもだよっ!」
天「ていうか、着てなかったらどうするの?」
俺「それはないだろ。そこの袋の中身も確認したし」
俺「つうか今さらだろ。何回か一緒に入ってんだし」
流石に「毎日見てるんだし」とは言わないでおいた。
あれは研究のためであって、流石に違うものだ。
天才は「うー」と唸って、こちらを睨んでいる。
微妙に涙目だ。
……むぅ、この顔には弱い。
俺「分かった。悪かったよ」
と、両手を挙げて降参のポーズを取る俺。
俺「おわびに冷凍庫の俺のアイスやるから」
天「それはいいから。さっき見たことは全部忘れてよ」
俺「…………」
天「なんでそこで黙るの!」
バスタオルを投げつけてくる天才。
俺「分かったよ」
かすかにシャンプーの香りがするそれをのけながら聞く。
俺「で、じゃあ、アイスはいいのか?」
天「もちろんもらうよ」
もらうのかよ。
微妙に涙目だ。
……むぅ、この顔には弱い。
俺「分かった。悪かったよ」
と、両手を挙げて降参のポーズを取る俺。
俺「おわびに冷凍庫の俺のアイスやるから」
天「それはいいから。さっき見たことは全部忘れてよ」
俺「…………」
天「なんでそこで黙るの!」
バスタオルを投げつけてくる天才。
俺「分かったよ」
かすかにシャンプーの香りがするそれをのけながら聞く。
俺「で、じゃあ、アイスはいいのか?」
天「もちろんもらうよ」
もらうのかよ。
598 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex10 投稿日: 2006/09/09(土) 03:43:26.56 ID:Ty73O4Q+0
旅行前日の夜。
荷物の確認をした俺は、静かに寝室の戸を開けた。
旅行前日の夜。
荷物の確認をした俺は、静かに寝室の戸を開けた。
皓々と輝く電気と、ぴったりとくっつけられた2つのベッド。
それが半年前からの俺の寝場所だった。
ベッドの一方では天才が小さく寝息を立てている。
それが半年前からの俺の寝場所だった。
ベッドの一方では天才が小さく寝息を立てている。
天才を起こさないように、そっと部屋の中へ入る。
少し肌寒い気がしたのでエアコンの温度を2度上げた。
天才のずれているタオルケットをかけ直してやろうと思い、窓側へ回ると、
うっすらと開かれたブルーの瞳がこちらを見ていた。
少し肌寒い気がしたのでエアコンの温度を2度上げた。
天才のずれているタオルケットをかけ直してやろうと思い、窓側へ回ると、
うっすらと開かれたブルーの瞳がこちらを見ていた。
俺は囁くような声で尋ねる。
俺「――起こしちまったか?」
天「ううん」
天「楽しみで寝つけなくって」
俺は天才のタオルケットをかけ直すと、その髪をそっとなでた。
俺「寝ておかないと、車で酔うぞ?」
天「そうなんだけどね」
俺「――起こしちまったか?」
天「ううん」
天「楽しみで寝つけなくって」
俺は天才のタオルケットをかけ直すと、その髪をそっとなでた。
俺「寝ておかないと、車で酔うぞ?」
天「そうなんだけどね」
わずかな沈黙の後、天才は聞いてきた。
天「ねぇ、君はどう? 楽しみじゃない?」
天「ねぇ、君はどう? 楽しみじゃない?」
599 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex11 投稿日: 2006/09/09(土) 03:47:07.46 ID:Ty73O4Q+0
意地の悪い質問だ。
女物の水着を着るにはまだまだ抵抗がある。
だがコイツと一緒に遊びに行けること自体は楽しみなのだ。
とはいえ、それを真っ正直に答えるのにもまた抵抗があるが。
俺「……どうだろうな」
そう言ってお茶を濁すと、天才は俺の心中を見透かしたようにくすくすと笑った。
天「君、素直じゃないよね」
俺「……それはねぇだろ」
俺が反射的に否定すると、天才は「ううん、そうだよ」とそれをさらに否定した。
天「私は君が知らない君のことも、知ってるんだから」
天「……たとえば――」
天「こういう時の君の声って、すごく優しいんだよ」
俺「…………」
天「知らなかったでしょ?」
天才は薄く開いていた瞳を弓なりに細めて微笑した。
天「私は好きだよ」
俺の知らないことが、もう一つある。
――こういう時のコイツは、どうしてこんなに可愛いんだろう。
意地の悪い質問だ。
女物の水着を着るにはまだまだ抵抗がある。
だがコイツと一緒に遊びに行けること自体は楽しみなのだ。
とはいえ、それを真っ正直に答えるのにもまた抵抗があるが。
俺「……どうだろうな」
そう言ってお茶を濁すと、天才は俺の心中を見透かしたようにくすくすと笑った。
天「君、素直じゃないよね」
俺「……それはねぇだろ」
俺が反射的に否定すると、天才は「ううん、そうだよ」とそれをさらに否定した。
天「私は君が知らない君のことも、知ってるんだから」
天「……たとえば――」
天「こういう時の君の声って、すごく優しいんだよ」
俺「…………」
天「知らなかったでしょ?」
天才は薄く開いていた瞳を弓なりに細めて微笑した。
天「私は好きだよ」
俺の知らないことが、もう一つある。
――こういう時のコイツは、どうしてこんなに可愛いんだろう。
何気なくあくびを一つ。
ふと見れば、天才もまたあくびをしていた。
目尻に浮かんだ涙をそっと指で拭ってやる。
天才がくすりと笑った。
天「うつっちゃったね」
俺「眠くなってきたか?」
天「……うん」
小さく頷いて天才は瞳を閉じた。
ふと見れば、天才もまたあくびをしていた。
目尻に浮かんだ涙をそっと指で拭ってやる。
天才がくすりと笑った。
天「うつっちゃったね」
俺「眠くなってきたか?」
天「……うん」
小さく頷いて天才は瞳を閉じた。
天「おやすみ」