ひょんなことから女の子
クロ/クロ Extra『XX XX XX(3)』
最終更新:
Bot(ページ名リンク)
-
view
233 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex32 投稿日: 2006/09/22(金) 21:42:55.66 ID:QD2MzKdM0
天「――わ」
天才が歓声を上げた。
俺らが泊まる旅館は、海を見下ろす一段高い崖の上に建っている。
部屋の窓からは水平線に沈む夕陽を拝むことができた。
……相変わらず、アイツの選ぶ宿はいい宿だな。
この旅館を始め、旅行のプランは例によって葛が決めた。
いや、決めてあった、といった方が正しいだろうか。
聞くところによると、ここの旅館は春先からすでに予約を取ってあったらしい。
――天才の許可なんてもらわなくっても、端っから来る気満々だったんじゃねぇか。
天「――わ」
天才が歓声を上げた。
俺らが泊まる旅館は、海を見下ろす一段高い崖の上に建っている。
部屋の窓からは水平線に沈む夕陽を拝むことができた。
……相変わらず、アイツの選ぶ宿はいい宿だな。
この旅館を始め、旅行のプランは例によって葛が決めた。
いや、決めてあった、といった方が正しいだろうか。
聞くところによると、ここの旅館は春先からすでに予約を取ってあったらしい。
――天才の許可なんてもらわなくっても、端っから来る気満々だったんじゃねぇか。
部屋の電気を点け、荷物を下ろす。
顔を上げれば、天才が窓のサッシに手をかけ、身を乗り出していた。
天「綺麗だねー」
俺「落ちるなよ」
顔を上げれば、天才が窓のサッシに手をかけ、身を乗り出していた。
天「綺麗だねー」
俺「落ちるなよ」
ふと天才が窓の真下へ視線を落とした。
天「――あれは?」
俺「ん?」
俺は天才の隣に腰を下ろし、サッシに肘をつく。
天才の視線を目で追うと、旅館のすぐ下の道をぞろぞろと人が歩いているのが見えた。
人の足は一方へ向いていて、逆方向へ進む人はほとんどいない。
警官に似た服の警備員が誘導棒を振っていた。
俺「どっか近所で祭でもやってるのかもな」
浴衣を着てる奴もちらほらいるし、きっとそうだろう。
俺「疲れてるし、行く気はしねぇなぁ」
天「…………」
天「――あれは?」
俺「ん?」
俺は天才の隣に腰を下ろし、サッシに肘をつく。
天才の視線を目で追うと、旅館のすぐ下の道をぞろぞろと人が歩いているのが見えた。
人の足は一方へ向いていて、逆方向へ進む人はほとんどいない。
警官に似た服の警備員が誘導棒を振っていた。
俺「どっか近所で祭でもやってるのかもな」
浴衣を着てる奴もちらほらいるし、きっとそうだろう。
俺「疲れてるし、行く気はしねぇなぁ」
天「…………」
234 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex33 投稿日: 2006/09/22(金) 21:48:11.70 ID:QD2MzKdM0
天「ごめんね」
突然うつむいた天才に、俺は疑問符を投げかける。
俺「何が?」
天「……だって……私のせいでお祭に行けないんでしょ」
俺「…………」
ふぅー、と、俺は大仰にため息をついた。
やれやれ、相変わらずこういう時に詰まらないことを考えるな。
俺「お前、祭に行きたいのか?」
天「だって、せっかくのお祭りだよ?」
俺「お前がどうしても行きたいっていうなら、暗闇恐怖症を直すしかないな」
俺「時間はあるんだし、ゆっくりな」
俺「行くのは来年だって、その次だっていいだろ」
天「私じゃなくて、君は……」
俺は大袈裟に肩をすくめてみせた。
できるだけ平然として見えるように言い放つ。
俺「お前がいない祭なんか楽しくねぇし」
俺「そんな祭に行きたいとは思わねぇな」
天「……でも」
俺「あぁ、お前と行けば楽しそうだな」
俺「恐怖症を治すなら手伝うぞ?」
俺は何でもないことだと言わんばかりに、天才に笑いかけた。
天「…………」
天「……ありがと」
半ばべそをかいていた天才は、かぶりを振って窓から離れた。
そして、くるりと振り返ると、無理矢理に笑い返してみせる。
夕陽に染められ朱が差したその姿に、俺は息を呑んだ。
そんな俺と目が合うと、天才は少しだけ目を細めた。
天「ごめんね」
突然うつむいた天才に、俺は疑問符を投げかける。
俺「何が?」
天「……だって……私のせいでお祭に行けないんでしょ」
俺「…………」
ふぅー、と、俺は大仰にため息をついた。
やれやれ、相変わらずこういう時に詰まらないことを考えるな。
俺「お前、祭に行きたいのか?」
天「だって、せっかくのお祭りだよ?」
俺「お前がどうしても行きたいっていうなら、暗闇恐怖症を直すしかないな」
俺「時間はあるんだし、ゆっくりな」
俺「行くのは来年だって、その次だっていいだろ」
天「私じゃなくて、君は……」
俺は大袈裟に肩をすくめてみせた。
できるだけ平然として見えるように言い放つ。
俺「お前がいない祭なんか楽しくねぇし」
俺「そんな祭に行きたいとは思わねぇな」
天「……でも」
俺「あぁ、お前と行けば楽しそうだな」
俺「恐怖症を治すなら手伝うぞ?」
俺は何でもないことだと言わんばかりに、天才に笑いかけた。
天「…………」
天「……ありがと」
半ばべそをかいていた天才は、かぶりを振って窓から離れた。
そして、くるりと振り返ると、無理矢理に笑い返してみせる。
夕陽に染められ朱が差したその姿に、俺は息を呑んだ。
そんな俺と目が合うと、天才は少しだけ目を細めた。
235 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex34 投稿日: 2006/09/22(金) 21:50:34.18 ID:QD2MzKdM0
天「やっぱり君って、優しいよね」
天「……こういう時だけだけど」
俺「後半は余計だ」
俺が眉をしかめると、天才はさっきと打って変わった自慢げな顔で笑った。
天「よく見てるでしょ?」
くそ、なんか悔しいな。
お返しとばかりに、俺は前々から思っていたことを口にした。
俺「お前こそ、ほとんどこういう時にしか笑わないよな」
天「え?」
不意をつかれた風に、きょとんとする天才。
俺「前はこんな顔ばっかしてたんだけどな」
と、俺は自分の眉尻を指で吊り上げて見せる。
俺「最近はこんな顔か」
今度は顔の力を抜いて、気の抜けたような顔を作って見せた。
天「ええー、私、そんな顔してた?」
俺「してた」
天「嘘」
俺「嘘じゃねぇよ。人のことを見てるのはお前だけだと思うな」
ふふん、と、俺は自慢げに鼻を鳴らす。
天「……そっか」
天才は小さく呟いた。
天「でもさ」
――天才は前屈みになると、窓のへりに座った俺と、目線の高さを合わせる。
天「君といる時は笑ってるんでしょ?」
俺「ん、お、おぅ」
天「じゃあ、君のお陰かな……」
天「やっぱり君って、優しいよね」
天「……こういう時だけだけど」
俺「後半は余計だ」
俺が眉をしかめると、天才はさっきと打って変わった自慢げな顔で笑った。
天「よく見てるでしょ?」
くそ、なんか悔しいな。
お返しとばかりに、俺は前々から思っていたことを口にした。
俺「お前こそ、ほとんどこういう時にしか笑わないよな」
天「え?」
不意をつかれた風に、きょとんとする天才。
俺「前はこんな顔ばっかしてたんだけどな」
と、俺は自分の眉尻を指で吊り上げて見せる。
俺「最近はこんな顔か」
今度は顔の力を抜いて、気の抜けたような顔を作って見せた。
天「ええー、私、そんな顔してた?」
俺「してた」
天「嘘」
俺「嘘じゃねぇよ。人のことを見てるのはお前だけだと思うな」
ふふん、と、俺は自慢げに鼻を鳴らす。
天「……そっか」
天才は小さく呟いた。
天「でもさ」
――天才は前屈みになると、窓のへりに座った俺と、目線の高さを合わせる。
天「君といる時は笑ってるんでしょ?」
俺「ん、お、おぅ」
天「じゃあ、君のお陰かな……」
236 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex35 投稿日: 2006/09/22(金) 21:51:42.22 ID:QD2MzKdM0
少しの間、沈黙が降りてきた。
外からは人々の喧噪と波の音が聞こえてくる。
少しの間、沈黙が降りてきた。
外からは人々の喧噪と波の音が聞こえてくる。
俺も天才もその場を動かない。
しばらくの間、ただお互いの瞳を見つめ合う。
天才の頬が赤いのは、夕陽のためだけではないだろう。
しばらくの間、ただお互いの瞳を見つめ合う。
天才の頬が赤いのは、夕陽のためだけではないだろう。
やがて、意を決したように、天才が自分の唇をきゅっと結んだ。
不安定な前屈みの体勢を支えるように、俺のひざに手を置く。
……二人の距離が徐々に縮まる。
もう少しで、まぶたを閉じても大丈夫な距離。
その吐息が俺の唇にかかり……
不安定な前屈みの体勢を支えるように、俺のひざに手を置く。
……二人の距離が徐々に縮まる。
もう少しで、まぶたを閉じても大丈夫な距離。
その吐息が俺の唇にかかり……
天「あっ」
と、天才が小さく声をあげた。
その表情は驚き。
直後に響いたのは、ドン、という爆発音。
窓が衝撃にびりびりと震えた。
と、天才が小さく声をあげた。
その表情は驚き。
直後に響いたのは、ドン、という爆発音。
窓が衝撃にびりびりと震えた。
237 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex36 投稿日: 2006/09/22(金) 21:56:38.20 ID:QD2MzKdM0
俺「今のは――」
俺は窓の外へと振り返る。
空には幾つもの白煙の塊。
下の道で何人かが足を速め、何人かが足を止めた。
天「花火?」
俺「みたいだな」
俺「今のは――」
俺は窓の外へと振り返る。
空には幾つもの白煙の塊。
下の道で何人かが足を速め、何人かが足を止めた。
天「花火?」
俺「みたいだな」
葛「あらあら~。始まりましたね~」
突然葛の声がした。
見れば、少し部屋のドアが開いている。
両手が買い物袋で塞がっている葛は、尻でドアを押し開きながら入ってきた。
天「おかえり」
葛「はい~」
俺「なぁ、葛、この辺で祭でもあんのか?」
葛「お祭りは地元の小さなものがありますよ~」
葛「でも、メインは花火大会ですね~。総数1万発だそうですよ~」
答えながら、葛は荷物をテーブルの横に下ろした。
俺「なるほどな」
これなら夜、外に出られない天才でも楽しめるな。
突然葛の声がした。
見れば、少し部屋のドアが開いている。
両手が買い物袋で塞がっている葛は、尻でドアを押し開きながら入ってきた。
天「おかえり」
葛「はい~」
俺「なぁ、葛、この辺で祭でもあんのか?」
葛「お祭りは地元の小さなものがありますよ~」
葛「でも、メインは花火大会ですね~。総数1万発だそうですよ~」
答えながら、葛は荷物をテーブルの横に下ろした。
俺「なるほどな」
これなら夜、外に出られない天才でも楽しめるな。
俺「――で」
俺「その荷物はなんだぁっ!」
俺は葛が今下ろしたばかりの買い物袋を指差した。
葛「うふふふ~」
俺「誤魔化せるかっ!」
天「すごい量だね」
白いビニール袋越しに見えるのは大小様々な瓶や缶。
見れば分かる――酒だ。
俺「その荷物はなんだぁっ!」
俺は葛が今下ろしたばかりの買い物袋を指差した。
葛「うふふふ~」
俺「誤魔化せるかっ!」
天「すごい量だね」
白いビニール袋越しに見えるのは大小様々な瓶や缶。
見れば分かる――酒だ。
239 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex37 投稿日: 2006/09/22(金) 21:59:16.81 ID:QD2MzKdM0
一応、天才用のジュースも幾つかあるみたいだが、とにかく酒の数が多い。
缶のチューハイ、ビール、小瓶のカクテル、その他諸々……。
俺「なんでビールが一缶しかねぇんだ?」
葛「私、ビールは好きじゃないんですよ~」
お前の好みかよ。
俺「つうか、こんなに飲むのか?」
葛「本当はつぶれてもいいように明日にしようと思ったんですけどね~」
葛「今日はちょっと聞きたいことができたので、我慢できませんでした~」
葛は普段の3倍くらいつやつやしている。
――昼間の海での話か……。
俺は半眼になると、話を逸らすように新たな質問を投げかけた。
俺「つうか、お前このタイミングで出てきたってことは……」
葛「いえいえ~、あんまり良い雰囲気だったので出て行くのも気が引けまして~」
俺「だからって見てんなよ!」
葛「うふふふふ~。見せつけられちゃいました~」
両頬に手を当てて、いやんいやんと身体をくねらせる葛。
なんかムカツクなぁ。
俺「いい歳して、そんなリアクションもねぇだろ」
葛「そうですよね~。ユウキちゃんは先生くらいのちっちゃい子がいいんですもんね~」
俺「待て! 人聞きの悪いことを言うな!」
くそ、墓穴か!
葛「その辺はあとで詳しく聞かせてもらいますからね~?」
きらんきらんに輝いた笑顔で俺を見る葛。
――いっそ酒の飲み過ぎで何もかも忘れてくれ、頼むから。
一応、天才用のジュースも幾つかあるみたいだが、とにかく酒の数が多い。
缶のチューハイ、ビール、小瓶のカクテル、その他諸々……。
俺「なんでビールが一缶しかねぇんだ?」
葛「私、ビールは好きじゃないんですよ~」
お前の好みかよ。
俺「つうか、こんなに飲むのか?」
葛「本当はつぶれてもいいように明日にしようと思ったんですけどね~」
葛「今日はちょっと聞きたいことができたので、我慢できませんでした~」
葛は普段の3倍くらいつやつやしている。
――昼間の海での話か……。
俺は半眼になると、話を逸らすように新たな質問を投げかけた。
俺「つうか、お前このタイミングで出てきたってことは……」
葛「いえいえ~、あんまり良い雰囲気だったので出て行くのも気が引けまして~」
俺「だからって見てんなよ!」
葛「うふふふふ~。見せつけられちゃいました~」
両頬に手を当てて、いやんいやんと身体をくねらせる葛。
なんかムカツクなぁ。
俺「いい歳して、そんなリアクションもねぇだろ」
葛「そうですよね~。ユウキちゃんは先生くらいのちっちゃい子がいいんですもんね~」
俺「待て! 人聞きの悪いことを言うな!」
くそ、墓穴か!
葛「その辺はあとで詳しく聞かせてもらいますからね~?」
きらんきらんに輝いた笑顔で俺を見る葛。
――いっそ酒の飲み過ぎで何もかも忘れてくれ、頼むから。
535 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex38 投稿日: 2006/09/24(日) 18:18:50.39 ID:29gJmiON0
天「これジュース?」
天「……じゃないね」
『お酒』と大きく書かれたラベルを見た天才は、
名残惜しげにメロンの写真がプリントされた缶を置いた。
コップに濃縮還元のオレンジジュースを注ぐ。
天「これジュース?」
天「……じゃないね」
『お酒』と大きく書かれたラベルを見た天才は、
名残惜しげにメロンの写真がプリントされた缶を置いた。
コップに濃縮還元のオレンジジュースを注ぐ。
旅館の夕食を平らげた俺たちは、そのまま宴会に突入していた。
肴は花火。
開け放った窓の向こうで色とりどりの光が瞬く。
天「わ、綺麗」
天才は文字通り子どものように目を輝かせて、窓の外を見詰めている。
俺はテーブルに肘をつきながらビールの缶をちびちびやっていた。
いや、良い眺めだ。
肴は花火。
開け放った窓の向こうで色とりどりの光が瞬く。
天「わ、綺麗」
天才は文字通り子どものように目を輝かせて、窓の外を見詰めている。
俺はテーブルに肘をつきながらビールの缶をちびちびやっていた。
いや、良い眺めだ。
俺は小さな声で聞いた。
俺「お前、花火もスケジュールの内だな?」
葛「えぇ~。もちろんですぅ~」
やっぱりか。
さっきの夕陽に、この花火の見え方。
そりゃぁ数ヶ月も前から予約が要る訳だ。
俺「お前、花火もスケジュールの内だな?」
葛「えぇ~。もちろんですぅ~」
やっぱりか。
さっきの夕陽に、この花火の見え方。
そりゃぁ数ヶ月も前から予約が要る訳だ。
536 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex39 投稿日: 2006/09/24(日) 18:21:27.49 ID:29gJmiON0
……しかし、
俺「お前、酒強ぇなぁ……」
葛「そうですかぁ~?」
俺はその辺に立ち並ぶ空けられた缶やら瓶やらを眺める。
コイツだけですでに5、6本は空けてるが、顔色一つ変わらない。
葛「ユウキちゃんもどうぞぉ~」
俺「いや、俺はこれでいい」
カクテルの瓶を勧める葛に、俺は右手に持ったビールの500ml缶を振って答えた。
俺はあまり酒に強い方ではない。
つうか女の身体になってからまともに酒を飲んだことがない。
しかも今日はチャンポン確定だ。
ここでつぶれたらどうなるか……。
葛「先生もどうですかぁ~?」
俺「勧めんなっ!」
天「遠慮しておくよ」
天「匂いだけで酔っちゃいそうだしね」
苦笑する天才。
今この場にいるから分からないが、外から部屋に入ったらもの凄い匂いなんだろうな、ここ。
天才が窓際にいるのも、そういう理由なのかも知れない。
俺は外の空気を吸おうと、天才の隣へ四つんばいに這って行った。
天「お酒臭いよ」
鼻をつまむ天才。
俺「気にすんな」
俺は窓際に腰を下ろす。
葛「むぅ~」
と、背後で葛がうめくのが聞こえた。
……しかし、
俺「お前、酒強ぇなぁ……」
葛「そうですかぁ~?」
俺はその辺に立ち並ぶ空けられた缶やら瓶やらを眺める。
コイツだけですでに5、6本は空けてるが、顔色一つ変わらない。
葛「ユウキちゃんもどうぞぉ~」
俺「いや、俺はこれでいい」
カクテルの瓶を勧める葛に、俺は右手に持ったビールの500ml缶を振って答えた。
俺はあまり酒に強い方ではない。
つうか女の身体になってからまともに酒を飲んだことがない。
しかも今日はチャンポン確定だ。
ここでつぶれたらどうなるか……。
葛「先生もどうですかぁ~?」
俺「勧めんなっ!」
天「遠慮しておくよ」
天「匂いだけで酔っちゃいそうだしね」
苦笑する天才。
今この場にいるから分からないが、外から部屋に入ったらもの凄い匂いなんだろうな、ここ。
天才が窓際にいるのも、そういう理由なのかも知れない。
俺は外の空気を吸おうと、天才の隣へ四つんばいに這って行った。
天「お酒臭いよ」
鼻をつまむ天才。
俺「気にすんな」
俺は窓際に腰を下ろす。
葛「むぅ~」
と、背後で葛がうめくのが聞こえた。
537 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex40 投稿日: 2006/09/24(日) 18:27:25.80 ID:29gJmiON0
楽しい出来事というのは時の経過を忘れさせる。
いつの間にか時計の針は進み、花火で上がったテンションと、
目の前に酒があるという誘惑に負けて数本の小瓶を空けた頃――
天才が一際大きな歓声を上げた。
天「見て! すごいよ!」
俺「おぉぉぉ」
夜の闇が昼間と見まごうほどの光に照らされるのを見た。
空一面を覆う黄金色の花火に、色とりどりの花火がアクセントを添える。
その光と腹の底に響く音が、今こそクライマックスなのだと告げていた。
――そしてほどなく、夜の祭は終わりを告げた。
楽しい出来事というのは時の経過を忘れさせる。
いつの間にか時計の針は進み、花火で上がったテンションと、
目の前に酒があるという誘惑に負けて数本の小瓶を空けた頃――
天才が一際大きな歓声を上げた。
天「見て! すごいよ!」
俺「おぉぉぉ」
夜の闇が昼間と見まごうほどの光に照らされるのを見た。
空一面を覆う黄金色の花火に、色とりどりの花火がアクセントを添える。
その光と腹の底に響く音が、今こそクライマックスなのだと告げていた。
――そしてほどなく、夜の祭は終わりを告げた。
俺「綺麗だったなー」
天「うん」
天「…………」
花火の余韻に浸っていると、天才が身震いを一つ。
祭りの後の夜の空。海との境目をなくした闇がそこにある。
俺は網戸とカーテンを閉めた。
そして、俺たちは部屋へと振り返り――
俺「げ」
天「うわ」
そこに広がる光景に、思わず声を漏らした。
累々と積み上がる瓶と缶――もちろん、飲んだのはすべて葛だ。
カクテルの瓶は全滅で、葛は今、コップでジンと天才用のオレンジジュースを混ぜていた。
問題はその目。
完全にできあがっている。溶けていると言ってもいいだろう。
葛「あらぁ~、もぅ~終わっちゃいましたかぁ~?」
微妙にろれつも回ってねぇし。
やべぇ、自分たちが飲まなければいいと高をくくっていたが……誤算だったか……。
天「うん」
天「…………」
花火の余韻に浸っていると、天才が身震いを一つ。
祭りの後の夜の空。海との境目をなくした闇がそこにある。
俺は網戸とカーテンを閉めた。
そして、俺たちは部屋へと振り返り――
俺「げ」
天「うわ」
そこに広がる光景に、思わず声を漏らした。
累々と積み上がる瓶と缶――もちろん、飲んだのはすべて葛だ。
カクテルの瓶は全滅で、葛は今、コップでジンと天才用のオレンジジュースを混ぜていた。
問題はその目。
完全にできあがっている。溶けていると言ってもいいだろう。
葛「あらぁ~、もぅ~終わっちゃいましたかぁ~?」
微妙にろれつも回ってねぇし。
やべぇ、自分たちが飲まなければいいと高をくくっていたが……誤算だったか……。
547 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex41 [単発連載] 投稿日: 2006/09/24(日) 19:05:21.49 ID:29gJmiON0
葛「さぁてとぉ~」
ゆらり、と葛が――姿勢を正そうとしたんだろうか――上半身を揺すらせた。
天「だ、大丈夫?」
天才が心配そうに葛の元へと歩み寄る。
待て! 今近付くのはマズい!
葛「うぅ~ふふぅふふふぅ~」
葛は意表をつく素早い動きで天才を腕の中に抱き込んだ。
まるで食虫植物かなんかだ。
天「お酒臭いよぅ……」
葛「先生ぇ~、ここからは恒例のぉ~秘密のお時間ですよぉ~」
葛は嬉しそうに天才に頬ずりをしている。ていうかなにが恒例なんだ。
天「くっ、くすぐったいって」
葛「うふふぅ~。さぁ~昼間の話をぉ~詳しく聞かせてもらいましょ~かぁ~」
天「昼間ってなんの話?」
葛「とぼけないでくださいよぉ~。せんせぇ~とぉ~、ユゥキちゃんのぉ~」
葛「ラヴなお話ですよぉ~。ラ・ヴ~」
自分で言って、きゃーきゃーと嬌声をあげる葛。
哀れ天才は、いつも自身がペン助にしているように抱きしめられ、もみくちゃにされる。
天「苦しぃ……」
うめいた天才は、俺に救いを求める視線を投げかけてきた。
天「た、助けて……」
俺「……ちょっと、トイレ」
天「見捨てないでよぉー!」
済まない、今の状態は俺にはどうにもできないんだ。
南無、と、合掌した俺は、トイレへと逃げ込んだ。
葛「さぁてとぉ~」
ゆらり、と葛が――姿勢を正そうとしたんだろうか――上半身を揺すらせた。
天「だ、大丈夫?」
天才が心配そうに葛の元へと歩み寄る。
待て! 今近付くのはマズい!
葛「うぅ~ふふぅふふふぅ~」
葛は意表をつく素早い動きで天才を腕の中に抱き込んだ。
まるで食虫植物かなんかだ。
天「お酒臭いよぅ……」
葛「先生ぇ~、ここからは恒例のぉ~秘密のお時間ですよぉ~」
葛は嬉しそうに天才に頬ずりをしている。ていうかなにが恒例なんだ。
天「くっ、くすぐったいって」
葛「うふふぅ~。さぁ~昼間の話をぉ~詳しく聞かせてもらいましょ~かぁ~」
天「昼間ってなんの話?」
葛「とぼけないでくださいよぉ~。せんせぇ~とぉ~、ユゥキちゃんのぉ~」
葛「ラヴなお話ですよぉ~。ラ・ヴ~」
自分で言って、きゃーきゃーと嬌声をあげる葛。
哀れ天才は、いつも自身がペン助にしているように抱きしめられ、もみくちゃにされる。
天「苦しぃ……」
うめいた天才は、俺に救いを求める視線を投げかけてきた。
天「た、助けて……」
俺「……ちょっと、トイレ」
天「見捨てないでよぉー!」
済まない、今の状態は俺にはどうにもできないんだ。
南無、と、合掌した俺は、トイレへと逃げ込んだ。
554 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex42 投稿日: 2006/09/24(日) 19:54:26.56 ID:29gJmiON0
約5分。
できるだけ時間を引き延ばして用を足した俺は、恐る恐る部屋の中へと戻った。
約5分。
できるだけ時間を引き延ばして用を足した俺は、恐る恐る部屋の中へと戻った。
葛「あぁ~、お帰りなさぁい~」
天「お帰り」
片や上機嫌、片や不機嫌。見事に明暗別れた言葉が出迎えてくれた。
葛は天才を手放すと、ざざざ、と俺の方へとすり寄ってくる。
葛「う・ふ・ふぅ~。聞いちゃいましたよぉ~?」
これだけの条件が揃ってて嫌な予感がしない理由はないが、一応問い返す。
俺「……何を」
葛「去年の温泉の時からぁ、お二人はそんな仲だったんですねぇ~」
ぷうっ!
予想外の言葉に思わず吹いた。
天才を見やれば、唇を尖らせたままこちらをジト目で睨んでいる。
天「しかも、寝てる隙にしたんだよね」
葛「ええぇぇ~、ユーキちゃんそれは犯罪ですよぉ~」
俺「ばっ! あの時ってデコにだろ!」
天「キスはキスだもん」
俺「つうか、バラすかぁ!?」
天「昼間にお風呂の話をばらされたしね」
天「お返しだよ」
つん、とそっぽを向く天才。
あぁぁ、やべぇ、敵を増やしちまった……。
葛「あらあらぁ~、ケンカはだめですよぉ~」
葛「もっとぉ~仲のいいお話を聞かせてくださぃ~」
ふらんふらんと、頭を左右に揺らしながら笑う葛。
――酒のせいか、コイツのせいか、段々と頭痛がしてきた。
天「お帰り」
片や上機嫌、片や不機嫌。見事に明暗別れた言葉が出迎えてくれた。
葛は天才を手放すと、ざざざ、と俺の方へとすり寄ってくる。
葛「う・ふ・ふぅ~。聞いちゃいましたよぉ~?」
これだけの条件が揃ってて嫌な予感がしない理由はないが、一応問い返す。
俺「……何を」
葛「去年の温泉の時からぁ、お二人はそんな仲だったんですねぇ~」
ぷうっ!
予想外の言葉に思わず吹いた。
天才を見やれば、唇を尖らせたままこちらをジト目で睨んでいる。
天「しかも、寝てる隙にしたんだよね」
葛「ええぇぇ~、ユーキちゃんそれは犯罪ですよぉ~」
俺「ばっ! あの時ってデコにだろ!」
天「キスはキスだもん」
俺「つうか、バラすかぁ!?」
天「昼間にお風呂の話をばらされたしね」
天「お返しだよ」
つん、とそっぽを向く天才。
あぁぁ、やべぇ、敵を増やしちまった……。
葛「あらあらぁ~、ケンカはだめですよぉ~」
葛「もっとぉ~仲のいいお話を聞かせてくださぃ~」
ふらんふらんと、頭を左右に揺らしながら笑う葛。
――酒のせいか、コイツのせいか、段々と頭痛がしてきた。
562 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex43 投稿日: 2006/09/24(日) 20:43:55.39 ID:29gJmiON0
空気に当てられたのか、酒気だけで本当に酔ったのか、
天才の口は次第に軽くなっていった。
今や隣に座った葛と、顔を突き合わせて暴露トーク真っ盛りだ。
葛「えぇ~、じゃぁ~、告白はユゥキちゃんからですかぁ~」
天「うん。“お前のことが好きなんだ”――って」
葛「はぁぁぁ~、ストレートですねぇ~~」
天才の発言一つひとつに身をくねらせる葛。
悶えたいのはこっちだっつう……。
天「それが1月の真ん中ぐらいかな」
天「ほら一度、泊めてもらった日があったでしょ?」
天「雪が降ってて、私がずっと泣いちゃってた……」
葛「あぁ~、あの時のぉ~」
天「あの日にね、“これからも一緒にいてくれ”って言ってくれて」
葛「“一緒にいてくれ”ですかぁ~。いぃ~ですねぇ~」
天「――あれがなかったら、私は今頃ボストンに戻ってたと思うよ」
葛「あぁ~、じゃ~、センセ~がユーキちゃんの部屋に引っ越したのはぁ~」
天「うん。――わ、私の観察のため、っていうのもあったんだけどね」
流石に恥ずかしくなってきたのか赤い顔で、しかし、話をやめる気はないらしい天才。
俺「も、もうやめてくれぇ……」
俺はよろよろとテーブルの上で頭を抱えた。
そんな俺を見て、天才は悪戯っぽく微笑し、言った。
天「そう。初めてちゃんとしてくれたのは――実験の前だったよね」
葛「へ、えぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~っ!?」
突然葛が、今までにない大声を出した。
空気に当てられたのか、酒気だけで本当に酔ったのか、
天才の口は次第に軽くなっていった。
今や隣に座った葛と、顔を突き合わせて暴露トーク真っ盛りだ。
葛「えぇ~、じゃぁ~、告白はユゥキちゃんからですかぁ~」
天「うん。“お前のことが好きなんだ”――って」
葛「はぁぁぁ~、ストレートですねぇ~~」
天才の発言一つひとつに身をくねらせる葛。
悶えたいのはこっちだっつう……。
天「それが1月の真ん中ぐらいかな」
天「ほら一度、泊めてもらった日があったでしょ?」
天「雪が降ってて、私がずっと泣いちゃってた……」
葛「あぁ~、あの時のぉ~」
天「あの日にね、“これからも一緒にいてくれ”って言ってくれて」
葛「“一緒にいてくれ”ですかぁ~。いぃ~ですねぇ~」
天「――あれがなかったら、私は今頃ボストンに戻ってたと思うよ」
葛「あぁ~、じゃ~、センセ~がユーキちゃんの部屋に引っ越したのはぁ~」
天「うん。――わ、私の観察のため、っていうのもあったんだけどね」
流石に恥ずかしくなってきたのか赤い顔で、しかし、話をやめる気はないらしい天才。
俺「も、もうやめてくれぇ……」
俺はよろよろとテーブルの上で頭を抱えた。
そんな俺を見て、天才は悪戯っぽく微笑し、言った。
天「そう。初めてちゃんとしてくれたのは――実験の前だったよね」
葛「へ、えぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~っ!?」
突然葛が、今までにない大声を出した。
823 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex44 投稿日: 2006/09/26(火) 18:35:58.08 ID:SJgssBwZ0
天「な、何?」
驚いた天才が身を引いた。
それに詰め寄る葛。
葛「はははは“初めてちゃんとした”ってぇ、何をしたんですかぁ~!?」
両肩を捕まれた天才は、自分の発した言葉に含まれる意味を理解したのか、
ぼっ、と一瞬で真っ赤になった。
天「そ、そういうんじゃないよ!」
天「――キ、キスだよ……その……くちびる、にって意味で……」
葛「……へ?」
葛の動きが、止まった。
俺「お前なぁ……何を想像してんだよ」
毒づく俺に、天才はこくこくと首を何度も縦に振って賛同する。
葛「あ、えぇ~、そ、そうですよねぇ~」
葛は天才の肩からぱっと手を放すと、あははぁ~、と取り繕うように笑った。
俺は半眼で言った。
俺「あのな、お前だって、コイツが……そういうの苦手なの知ってんだろ?」
思い出すだけで、胸の辺りが痛くなる。
実の兄に性的虐待を受けていた天才。
その傷跡は、深い。
――お前だってそれは見てただろうが。
葛「そうですよねぇ~」
ばつが悪そうに後頭部をかく葛。
葛「いえぇ~、お二人は付き合ってるんですしぃ~」
葛「それならOKなのかなぁ~なんて思ってしまいましたぁ~」
天「な、何?」
驚いた天才が身を引いた。
それに詰め寄る葛。
葛「はははは“初めてちゃんとした”ってぇ、何をしたんですかぁ~!?」
両肩を捕まれた天才は、自分の発した言葉に含まれる意味を理解したのか、
ぼっ、と一瞬で真っ赤になった。
天「そ、そういうんじゃないよ!」
天「――キ、キスだよ……その……くちびる、にって意味で……」
葛「……へ?」
葛の動きが、止まった。
俺「お前なぁ……何を想像してんだよ」
毒づく俺に、天才はこくこくと首を何度も縦に振って賛同する。
葛「あ、えぇ~、そ、そうですよねぇ~」
葛は天才の肩からぱっと手を放すと、あははぁ~、と取り繕うように笑った。
俺は半眼で言った。
俺「あのな、お前だって、コイツが……そういうの苦手なの知ってんだろ?」
思い出すだけで、胸の辺りが痛くなる。
実の兄に性的虐待を受けていた天才。
その傷跡は、深い。
――お前だってそれは見てただろうが。
葛「そうですよねぇ~」
ばつが悪そうに後頭部をかく葛。
葛「いえぇ~、お二人は付き合ってるんですしぃ~」
葛「それならOKなのかなぁ~なんて思ってしまいましたぁ~」
824 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex45 投稿日: 2006/09/26(火) 18:38:06.50 ID:SJgssBwZ0
俺「…………」
予想外の単語が出てきて、俺は一瞬言葉を詰まらせてしまった。
――そうか、世間一般の言葉を使えば俺らって“付き合ってる”んだよな。
どうもその言葉に違和感を覚えてしまった。
俺「たしかに……つー、付き合ってーはいるけどな」
俺「あれだ、プラトニックっていうか、精神的なもんなんだよ」
天「…………」
俺は天才と一緒に暮らしている半年間、そっちの方面で触れたことは一度もない。
告白したあの時に、そう誓ったからだ。
あえて口に出してはいないが、天才の傷が癒えるまでずっとそれを守るつもりだ。
――つうかそもそも、コイツは今まだ11歳だぞ。
それだけで色々と無理だ。
葛「じゃぁ~、それからはぁ~」
俺「ねぇよ、何も」
即否定した俺は、なぁ、と天才に振る。
天才は小さく頷いた。
……実際には、何回か良い雰囲気になった時にキスくらいはしてるんだけどな
――今日は花火と葛に邪魔されたが。
その辺は伏せといていいだろう。話がややこしくなりそうだし。
葛「そぉ~ですかぁ~、残念ですぅ~」
本当に残念そうに首を傾けた葛は、しばし黙考した後、
葛「……あぁ~」
ぽん、と手を打った。
葛「じゃぁ~、今日は良い機会ですねぇ~」
俺&天「何が」
俺と天才は思わず同時にツッコミを入れた。
俺「…………」
予想外の単語が出てきて、俺は一瞬言葉を詰まらせてしまった。
――そうか、世間一般の言葉を使えば俺らって“付き合ってる”んだよな。
どうもその言葉に違和感を覚えてしまった。
俺「たしかに……つー、付き合ってーはいるけどな」
俺「あれだ、プラトニックっていうか、精神的なもんなんだよ」
天「…………」
俺は天才と一緒に暮らしている半年間、そっちの方面で触れたことは一度もない。
告白したあの時に、そう誓ったからだ。
あえて口に出してはいないが、天才の傷が癒えるまでずっとそれを守るつもりだ。
――つうかそもそも、コイツは今まだ11歳だぞ。
それだけで色々と無理だ。
葛「じゃぁ~、それからはぁ~」
俺「ねぇよ、何も」
即否定した俺は、なぁ、と天才に振る。
天才は小さく頷いた。
……実際には、何回か良い雰囲気になった時にキスくらいはしてるんだけどな
――今日は花火と葛に邪魔されたが。
その辺は伏せといていいだろう。話がややこしくなりそうだし。
葛「そぉ~ですかぁ~、残念ですぅ~」
本当に残念そうに首を傾けた葛は、しばし黙考した後、
葛「……あぁ~」
ぽん、と手を打った。
葛「じゃぁ~、今日は良い機会ですねぇ~」
俺&天「何が」
俺と天才は思わず同時にツッコミを入れた。
835 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex46 投稿日: 2006/09/26(火) 19:43:17.42 ID:SJgssBwZ0
今回の宿は個々の部屋に風呂がついていた。
それとはまた別に共同の風呂も2、3個あるらしく、葛はそちらに入りたがっていたが、
今日のところは部屋の風呂のみにさせておく。
いくらなんでも酒が入りすぎだ。
今回の宿は個々の部屋に風呂がついていた。
それとはまた別に共同の風呂も2、3個あるらしく、葛はそちらに入りたがっていたが、
今日のところは部屋の風呂のみにさせておく。
いくらなんでも酒が入りすぎだ。
花火が終わったのが9時過ぎ。色々話をして、風呂に入れば10時をとうに回っている。
天才のあくびが増え始める頃だ。
当の天才は部屋に置かれている大きなドライヤーを片手に、葛の髪を乾かしている。
葛「すみませんねぇ~」
天「いいから、頭を揺らさないでよ」
葛の髪は長い上にボリュームがあるので、乾かすのに時間がかかるようだった。
天「終わったよ」
と、あくび混じりにドライヤーを止める頃には、10時半を過ぎていた。
天才のあくびが増え始める頃だ。
当の天才は部屋に置かれている大きなドライヤーを片手に、葛の髪を乾かしている。
葛「すみませんねぇ~」
天「いいから、頭を揺らさないでよ」
葛の髪は長い上にボリュームがあるので、乾かすのに時間がかかるようだった。
天「終わったよ」
と、あくび混じりにドライヤーを止める頃には、10時半を過ぎていた。
葛「ありがと~ございますぅ~」
相変わらずのご機嫌テンションで立ち上がる葛。
何をするのかとそのまま見ていると、床に敷かれた布団を一枚抱え上げた。
そのままふらふらと千鳥足で歩き出す。
おいおい、その布団は今敷いたばっかだろうが。
俺「何してんだよ」
ついに前後不覚になったか?
相変わらずのご機嫌テンションで立ち上がる葛。
何をするのかとそのまま見ていると、床に敷かれた布団を一枚抱え上げた。
そのままふらふらと千鳥足で歩き出す。
おいおい、その布団は今敷いたばっかだろうが。
俺「何してんだよ」
ついに前後不覚になったか?
840 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex47 投稿日: 2006/09/26(火) 20:27:14.83 ID:SJgssBwZ0
葛は布団を抱えたまま、隣の部屋に入って行った。
葛「よ~いしょ~ぅ」
かけ声と共に畳の真ん中に布団を下ろす。
葛は俺たちの視線もどこ吹く風で、せっせとシーツを整え、枕と掛け布団を置き、
そして、最後にこちらに振り返るとにっこりと微笑んだ。
葛「ではではぁ~。お先に休ませていただきますねぇ~」
葛「あとはお二人でごゆっくりぃ~」
すーっ、とん、とふすまが閉じられた。
葛は布団を抱えたまま、隣の部屋に入って行った。
葛「よ~いしょ~ぅ」
かけ声と共に畳の真ん中に布団を下ろす。
葛は俺たちの視線もどこ吹く風で、せっせとシーツを整え、枕と掛け布団を置き、
そして、最後にこちらに振り返るとにっこりと微笑んだ。
葛「ではではぁ~。お先に休ませていただきますねぇ~」
葛「あとはお二人でごゆっくりぃ~」
すーっ、とん、とふすまが閉じられた。
…………。
俺たちはクリーム色の薄い扉を、半眼で眺める。
俺「……これは逆に気ぃ遣ってねぇよな」
天「セクハラで訴えたら勝てるよね」
…………。
……すっ。
俺「ちょっとだけすき間を空けんな!」
俺はふすまの向こうから覗く酔っぱらいの目に叫んだ。
音を立ててふすまを閉じてやる。
それからしばらくの間、俺はふすまを注視していたが、
ほどなくその向こうから寝息らしい音が聞こえてくると、
一気に疲労感が押し寄せてきた。
……段々とアホらしくなってきた。
つうか、やましいことをするつもりはねぇんだから、気にすることもねぇんだ。
俺「…………」
天「…………」
俺「……寝るか」
天「……そうだね」
俺たちはクリーム色の薄い扉を、半眼で眺める。
俺「……これは逆に気ぃ遣ってねぇよな」
天「セクハラで訴えたら勝てるよね」
…………。
……すっ。
俺「ちょっとだけすき間を空けんな!」
俺はふすまの向こうから覗く酔っぱらいの目に叫んだ。
音を立ててふすまを閉じてやる。
それからしばらくの間、俺はふすまを注視していたが、
ほどなくその向こうから寝息らしい音が聞こえてくると、
一気に疲労感が押し寄せてきた。
……段々とアホらしくなってきた。
つうか、やましいことをするつもりはねぇんだから、気にすることもねぇんだ。
俺「…………」
天「…………」
俺「……寝るか」
天「……そうだね」