ひょんなことから女の子
クロ/クロ Extra『XX XX XX(4)』
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952 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex48 投稿日: 2006/09/27(水) 18:59:08.74 ID:JntQyqUm0
俺「……暑ぃ」
深夜、寝苦しさに目を覚ます。
冷房は適温。だが、アルコールを入れすぎたのが原因か、どうにも身体が熱っぽい。
薄目を空けると、蛍光灯の光が目を射した。
枕元の携帯を手に取り、目を限界まで細めて見る。
――深夜2時。
また半端な時間に起きちまったな。
明日――いや、もう今日か――のためにも寝ときたいんだが……。
隣を見ると天才が胎児のように丸まって寝息を立てている。
ふすまの向こうも、人の動いている気配はない。
遠くから蝉の鳴き声が聞こえた。
俺「……暑ぃ」
深夜、寝苦しさに目を覚ます。
冷房は適温。だが、アルコールを入れすぎたのが原因か、どうにも身体が熱っぽい。
薄目を空けると、蛍光灯の光が目を射した。
枕元の携帯を手に取り、目を限界まで細めて見る。
――深夜2時。
また半端な時間に起きちまったな。
明日――いや、もう今日か――のためにも寝ときたいんだが……。
隣を見ると天才が胎児のように丸まって寝息を立てている。
ふすまの向こうも、人の動いている気配はない。
遠くから蝉の鳴き声が聞こえた。
酒をもう少し入れて、無理にでも寝ちまうか。
さっきは理性を保たなければならなかったが、今なら心配はないしな。
俺は足の低い椅子を窓際まで引っ張って行くと、それに腰掛け、
そこらに転がる酒瓶を物色する。
――ウォッカか……これにしよう。
コップの1/4ほどまでウォッカを入れる。
その上からオレンジジュースを注ごうと、紙パックを手に持ったが、どうも軽い。
案の定、コップの半分ほど注いだ時にジュースはなくなってしまった。
くそ……。
さっきは理性を保たなければならなかったが、今なら心配はないしな。
俺は足の低い椅子を窓際まで引っ張って行くと、それに腰掛け、
そこらに転がる酒瓶を物色する。
――ウォッカか……これにしよう。
コップの1/4ほどまでウォッカを入れる。
その上からオレンジジュースを注ごうと、紙パックを手に持ったが、どうも軽い。
案の定、コップの半分ほど注いだ時にジュースはなくなってしまった。
くそ……。
953 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex49 投稿日: 2006/09/27(水) 19:02:17.15 ID:JntQyqUm0
俺はウォッカとジュースが1対1くらいの割合になってしまったコップと、
空になったジュースのパックをその辺に置いて、他に飲めそうな物がないか探す。
瓶の酒はそのまま飲むにはキツいし、カクテルの作り方なんてほとんど知らねぇんだよなぁ。
モスコミュールとかってどうやって作るんだ?
俺はとりあえず手当たり次第、そこらのジュースにウォッカを混ぜて飲むことにした。
俺はウォッカとジュースが1対1くらいの割合になってしまったコップと、
空になったジュースのパックをその辺に置いて、他に飲めそうな物がないか探す。
瓶の酒はそのまま飲むにはキツいし、カクテルの作り方なんてほとんど知らねぇんだよなぁ。
モスコミュールとかってどうやって作るんだ?
俺はとりあえず手当たり次第、そこらのジュースにウォッカを混ぜて飲むことにした。
――と、天才が寝返りをうった。
ん~、小さく声を漏らすと、目をこすりながら起き上がる。
天「……起きてたの?」
俺「なんか寝付けなくてな。――お前は?」
天「……といれ」
なるほど。
俺「ジュースの飲み過ぎだろ」
天「んー、かも」
寝起き特有の間延びした調子で話す天才。
目が開いてないぞ。
天「……のど渇いた」
誰にともなく呟いて、天才は俺の隣に歩いてくる。
転がっているオレンジジュースのパックを名残惜しげに持ち上げる。
天「全部飲んじゃったの?」
天才は視線をわずかにさまわよせると、ある一点で止めた。
天「これ、もらうよ」
言うが早いか、天才はオレンジ色の液体が入ったコップを持ち上げる。
俺「あ、待て、バカ」
ん~、小さく声を漏らすと、目をこすりながら起き上がる。
天「……起きてたの?」
俺「なんか寝付けなくてな。――お前は?」
天「……といれ」
なるほど。
俺「ジュースの飲み過ぎだろ」
天「んー、かも」
寝起き特有の間延びした調子で話す天才。
目が開いてないぞ。
天「……のど渇いた」
誰にともなく呟いて、天才は俺の隣に歩いてくる。
転がっているオレンジジュースのパックを名残惜しげに持ち上げる。
天「全部飲んじゃったの?」
天才は視線をわずかにさまわよせると、ある一点で止めた。
天「これ、もらうよ」
言うが早いか、天才はオレンジ色の液体が入ったコップを持ち上げる。
俺「あ、待て、バカ」
954 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex50 投稿日: 2006/09/27(水) 19:07:07.47 ID:JntQyqUm0
制止は間に合わなかった。
天才はコップの半分ほどまで入っていたそれを、一息に飲み干してしまった。
俺の頭にまとわりついていたほどよい眠さと酔いが、一瞬で吹き飛んだ。
天「……何、これ?」
飲み終えてしまってから、さすがに違和感に気付いたらしい、天才が眉をひそめる。
俺「あのな……」
思わず両手で目を覆う俺。
俺でも知ってるような古典中の古典だぞ。
しかも引っかかるんじゃなく、自分から飛び込んできやがった。
俺は天才の手にしているコップを指差した。
俺「それ、酒」
天才が飲んだのはウォッカとオレンジジュースのカクテル『スクリュードライバー』。
――通称『レディキラー』だ。
しかも、度数の高い特別製だ。
制止は間に合わなかった。
天才はコップの半分ほどまで入っていたそれを、一息に飲み干してしまった。
俺の頭にまとわりついていたほどよい眠さと酔いが、一瞬で吹き飛んだ。
天「……何、これ?」
飲み終えてしまってから、さすがに違和感に気付いたらしい、天才が眉をひそめる。
俺「あのな……」
思わず両手で目を覆う俺。
俺でも知ってるような古典中の古典だぞ。
しかも引っかかるんじゃなく、自分から飛び込んできやがった。
俺は天才の手にしているコップを指差した。
俺「それ、酒」
天才が飲んだのはウォッカとオレンジジュースのカクテル『スクリュードライバー』。
――通称『レディキラー』だ。
しかも、度数の高い特別製だ。
天「……え」
ぼんやりと俺とコップを交互に見る天才。
俺の目の前で、天才の顔がみるみる赤くなっていく。
反比例するように、俺は自分の顔が青くなっていくのを感じた。
ぼんやりと俺とコップを交互に見る天才。
俺の目の前で、天才の顔がみるみる赤くなっていく。
反比例するように、俺は自分の顔が青くなっていくのを感じた。
354 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex51 投稿日: 2006/09/30(土) 19:34:40.38 ID:uAPsulZp0
天「……暑い」
浴衣の胸元を撫でる天才。
俺「そりゃなぁ……」
ウォッカとジュースが半々――それでも度数が2~30%はあるのか?
お子様がいきなり飲む物じゃない。
見れば、天才はもう一方の手で腹を押さえている。
俺「大丈夫か……?」
天「……お腹痛い」
寝てる間に冷やしたか、それとも酒が原因か。
俺「とりあえずトイレ行ってこいよ」
俺は視線で部屋の隅を示す。
天才は頷くが、その場を動こうとしない。
そして、俺がどうしたのか聞こうとした瞬間、小さく呟いた。
天「……ついてきて」
俺「なんでだよ」
いや、すぐそこだろ。
天「いいからー」
俺が動く素振りを見せないでいると、天才はその場でもじもじし始める。
このままじゃ漏らしかねない。
……やれやれ、しょうがねぇな。
俺「分かったよ」
俺はアルコールで上手く動かない身体に鞭打って立ち上がった。
天「……暑い」
浴衣の胸元を撫でる天才。
俺「そりゃなぁ……」
ウォッカとジュースが半々――それでも度数が2~30%はあるのか?
お子様がいきなり飲む物じゃない。
見れば、天才はもう一方の手で腹を押さえている。
俺「大丈夫か……?」
天「……お腹痛い」
寝てる間に冷やしたか、それとも酒が原因か。
俺「とりあえずトイレ行ってこいよ」
俺は視線で部屋の隅を示す。
天才は頷くが、その場を動こうとしない。
そして、俺がどうしたのか聞こうとした瞬間、小さく呟いた。
天「……ついてきて」
俺「なんでだよ」
いや、すぐそこだろ。
天「いいからー」
俺が動く素振りを見せないでいると、天才はその場でもじもじし始める。
このままじゃ漏らしかねない。
……やれやれ、しょうがねぇな。
俺「分かったよ」
俺はアルコールで上手く動かない身体に鞭打って立ち上がった。
トイレは部屋の入り口の隣にあり、本間とはふすまで仕切られている。
ここにある物陰が怖かったのか……。
天「外で待っててよ」
と、念を押してから、天才はトイレのドアを閉めた。
ここにある物陰が怖かったのか……。
天「外で待っててよ」
と、念を押してから、天才はトイレのドアを閉めた。
355 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex52 投稿日: 2006/09/30(土) 19:36:10.05 ID:uAPsulZp0
待つことしばし。
俺「……長ぇな」
思わず声に出してしまった。
大か? それともトイレで寝てんじゃねぇのか?
いぶかしがっていると、トイレの水を流す音がした。
天才がドアを開け、外に出て来る。
天「……お待たせ」
俺「おう」
…………。
……で、なんでお前はカニ歩きなんだ。
挙動が明らかにおかしい。
後ろ手に何かを隠しているみたいだが……。
俺「何持ってんだ?」
俺は天才の背後に回り込む。
天「あ、駄目!」
天才はすぐに身を翻したが、遅かった。
俺の目に飛び込んできたのは、リボンがついた薄ピンク色の布――
パンツだった。
…………。
……そうか。ギリギリアウトか。
俺「……いや、なんか、悪ぃ」
見てはいけないものを見てしまった気持ちで、俺は目を逸らす。
天「ちょっ、ちょっとだけだよ」
天「ていうか、君が付いてきてくれないのが悪いんでしょ」
頬を膨らませた天才に、俺はふくらはぎを蹴られた。
理不尽だ。
待つことしばし。
俺「……長ぇな」
思わず声に出してしまった。
大か? それともトイレで寝てんじゃねぇのか?
いぶかしがっていると、トイレの水を流す音がした。
天才がドアを開け、外に出て来る。
天「……お待たせ」
俺「おう」
…………。
……で、なんでお前はカニ歩きなんだ。
挙動が明らかにおかしい。
後ろ手に何かを隠しているみたいだが……。
俺「何持ってんだ?」
俺は天才の背後に回り込む。
天「あ、駄目!」
天才はすぐに身を翻したが、遅かった。
俺の目に飛び込んできたのは、リボンがついた薄ピンク色の布――
パンツだった。
…………。
……そうか。ギリギリアウトか。
俺「……いや、なんか、悪ぃ」
見てはいけないものを見てしまった気持ちで、俺は目を逸らす。
天「ちょっ、ちょっとだけだよ」
天「ていうか、君が付いてきてくれないのが悪いんでしょ」
頬を膨らませた天才に、俺はふくらはぎを蹴られた。
理不尽だ。
395 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex53 投稿日: 2006/09/30(土) 23:57:24.12 ID:uAPsulZp0
バッグの中の洗濯物袋に下着を押し込んでいる天才。
その横を通り過ぎた俺は、元の椅子に座って、酒盛りを再開する。
天「――寝ないの?」
着替えを終えたのか、天才が俺の傍らに立った。
俺「寝るために飲んでるんだ」
天「ふーん」
すとん、と、天才は俺のひざの上に腰を下ろした。
天「こうやって座るの、最近少ないよね」
俺「重くなったしな」
天「成長したって言って欲しいな」
天才が俺の腕をつねった。
天才はこの半年で随分と大きくなった。
――今は身長が141cm、体重は31kgだ。
この半年で10cm近く身長が伸びているが、それには理由がある。
性別変換手術は細胞分裂を加速し利用しているため、およそ半年~1年分の成長を
一気にすることになるからだ。
俺「痛ぇって」
俺が天才の手を振り払うと、天才は少しだけうつむいた。
……ん?
俺「どうしたんだ? 酔ったのか?」
天「そうだね、酔っぱらってるかも」
くすりと笑う天才。
だがその笑みは、楽しいというよりも自嘲しているようで……。
バッグの中の洗濯物袋に下着を押し込んでいる天才。
その横を通り過ぎた俺は、元の椅子に座って、酒盛りを再開する。
天「――寝ないの?」
着替えを終えたのか、天才が俺の傍らに立った。
俺「寝るために飲んでるんだ」
天「ふーん」
すとん、と、天才は俺のひざの上に腰を下ろした。
天「こうやって座るの、最近少ないよね」
俺「重くなったしな」
天「成長したって言って欲しいな」
天才が俺の腕をつねった。
天才はこの半年で随分と大きくなった。
――今は身長が141cm、体重は31kgだ。
この半年で10cm近く身長が伸びているが、それには理由がある。
性別変換手術は細胞分裂を加速し利用しているため、およそ半年~1年分の成長を
一気にすることになるからだ。
俺「痛ぇって」
俺が天才の手を振り払うと、天才は少しだけうつむいた。
……ん?
俺「どうしたんだ? 酔ったのか?」
天「そうだね、酔っぱらってるかも」
くすりと笑う天才。
だがその笑みは、楽しいというよりも自嘲しているようで……。
天「あの時の言葉、全部覚えてるよ」
唐突に天才は語り出した。
天「“身体に触れられるのが嫌なら、絶対に触れないと誓う”」
天「でもね――それじゃ分からないよ」
天才は半身をひねってこちらを仰ぎ見た。
天「“好き”って言葉には、色んな意味があるんだよ?」
唐突に天才は語り出した。
天「“身体に触れられるのが嫌なら、絶対に触れないと誓う”」
天「でもね――それじゃ分からないよ」
天才は半身をひねってこちらを仰ぎ見た。
天「“好き”って言葉には、色んな意味があるんだよ?」
396 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex54 投稿日: 2006/09/30(土) 23:59:13.34 ID:uAPsulZp0
天「さっきさ……」
天「キョウコちゃんに“付き合ってる”って言われた時、ちょっとうろたえたでしょ」
俺は、ぎくりとした。
天「あれはどうして?」
大きな天才の瞳が、俺の目をのぞき込む。
俺は天才の問いを反芻し、自問する。
――あの時の違和感、あれはなんだったんだ?
俺「…………」
天「私の勘違いなのかな」
天「“好き”って言葉も、“一緒にいたい”って言葉も……」
天「恋愛対象として、だと思ってたよ」
天才の言葉は、少なからず俺を驚かせた。
俺「いや、それであってる」
俺「俺はお前が好きだ――恋愛対象として」
言葉を口に出していくにつれて、自分の中に答えが生まれてくる。
そうだ、あの時は……
俺「俺は“付き合う”って言葉に違和感があって……」
俺「お前とは、彼氏と彼女なんかじゃなくて、もっと近い距離だと思ってたから――」
天「何が近いの?」
天才が、俺の台詞を遮った。
天「一緒に暮らし始めてしばらく経つけど」
天「むしろ遠くなってるように感じるよ」
俺「……!」
天「さっきさ……」
天「キョウコちゃんに“付き合ってる”って言われた時、ちょっとうろたえたでしょ」
俺は、ぎくりとした。
天「あれはどうして?」
大きな天才の瞳が、俺の目をのぞき込む。
俺は天才の問いを反芻し、自問する。
――あの時の違和感、あれはなんだったんだ?
俺「…………」
天「私の勘違いなのかな」
天「“好き”って言葉も、“一緒にいたい”って言葉も……」
天「恋愛対象として、だと思ってたよ」
天才の言葉は、少なからず俺を驚かせた。
俺「いや、それであってる」
俺「俺はお前が好きだ――恋愛対象として」
言葉を口に出していくにつれて、自分の中に答えが生まれてくる。
そうだ、あの時は……
俺「俺は“付き合う”って言葉に違和感があって……」
俺「お前とは、彼氏と彼女なんかじゃなくて、もっと近い距離だと思ってたから――」
天「何が近いの?」
天才が、俺の台詞を遮った。
天「一緒に暮らし始めてしばらく経つけど」
天「むしろ遠くなってるように感じるよ」
俺「……!」
397 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex55 投稿日: 2006/10/01(日) 00:00:43.45 ID:JPeka9Vg0
天才は身体をひねると、俺に身を預けた。
天「ずるいよね」
俺「何がだよ……」
天「だって……いつもそうでしょ」
天「――いつだって私から、一方通行で」
天「君はいつも、口ばっかりで……」
天「――触れて欲しい時があっても、必ず私から言わなきゃいけない」
天「ほんとは、私も恥ずかしいんだからね」
俺「……だってお前、それは……」
天「言いたいことは分かってるよ」
天「私は“まだ子どもだし、心に傷があるし”……でしょ?」
天「……でも」
天「本当に、それだけなの?」
俺「待て。どういう……」
天「だって、他に誰かいる時はいつも素っ気なくて、こうしてくれるのは二人の時だけで……」
天「なんだか……」
そこで天才はのどまで出かかった言葉をぐっとこらえたようだった。
だが、とうとう耐えきれなくなったように吐き出す。
天「――なんだか、口先で丸め込まれてるみたいだよ」
俺「――っ!」
頭をカナヅチか何かで殴られたような気がした。
俺が、天才を……?
堰を切ったように、天才の言葉は止めどなく溢れ出す。
天「ねえ、正直に言って」
天「私を大事にしてくれてるから何もしないの?」
天「――本当は、一線を引いてるんじゃないの?」
天才は身体をひねると、俺に身を預けた。
天「ずるいよね」
俺「何がだよ……」
天「だって……いつもそうでしょ」
天「――いつだって私から、一方通行で」
天「君はいつも、口ばっかりで……」
天「――触れて欲しい時があっても、必ず私から言わなきゃいけない」
天「ほんとは、私も恥ずかしいんだからね」
俺「……だってお前、それは……」
天「言いたいことは分かってるよ」
天「私は“まだ子どもだし、心に傷があるし”……でしょ?」
天「……でも」
天「本当に、それだけなの?」
俺「待て。どういう……」
天「だって、他に誰かいる時はいつも素っ気なくて、こうしてくれるのは二人の時だけで……」
天「なんだか……」
そこで天才はのどまで出かかった言葉をぐっとこらえたようだった。
だが、とうとう耐えきれなくなったように吐き出す。
天「――なんだか、口先で丸め込まれてるみたいだよ」
俺「――っ!」
頭をカナヅチか何かで殴られたような気がした。
俺が、天才を……?
堰を切ったように、天才の言葉は止めどなく溢れ出す。
天「ねえ、正直に言って」
天「私を大事にしてくれてるから何もしないの?」
天「――本当は、一線を引いてるんじゃないの?」
398 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex56 投稿日: 2006/10/01(日) 00:02:38.50 ID:JPeka9Vg0
俺「そんなこと――」
とっさに出かかった否定の言葉を、俺は最後まで言うことができなかった。
俺の口が、天才の唇で塞がれていた。
天「…………」
俺「……!」
俺はとっさに顔を背けて、唇を離す。
俺「お前……」
今、舌を……。
天「やっぱり……いや……?」
天才は笑った、さっきと同じな声で、自嘲するような表情を見せて。
目元には、涙が浮かんでいた。
天「ごめんね。しょうがないよね……」
天「私の身体……汚いから……」
……!!
俺「待て! 何言ってんだ!」
つい声を荒げてしまう。
汚い!? そんな訳ねぇだろ!?
俺「そんなこと思ってねぇよ!」
天「だって、じゃあなんで何もしてくれないの!?」
天才の甲高い叫びに、俺は声を詰まらせた。
刹那、蝉の声すらも止んだ気がした。
波の音だけが、ひどく耳障りなノイズとして聞こえる。
やがて、しぼり出すような、かすかな声が聞こえた。
俺「そんなこと――」
とっさに出かかった否定の言葉を、俺は最後まで言うことができなかった。
俺の口が、天才の唇で塞がれていた。
天「…………」
俺「……!」
俺はとっさに顔を背けて、唇を離す。
俺「お前……」
今、舌を……。
天「やっぱり……いや……?」
天才は笑った、さっきと同じな声で、自嘲するような表情を見せて。
目元には、涙が浮かんでいた。
天「ごめんね。しょうがないよね……」
天「私の身体……汚いから……」
……!!
俺「待て! 何言ってんだ!」
つい声を荒げてしまう。
汚い!? そんな訳ねぇだろ!?
俺「そんなこと思ってねぇよ!」
天「だって、じゃあなんで何もしてくれないの!?」
天才の甲高い叫びに、俺は声を詰まらせた。
刹那、蝉の声すらも止んだ気がした。
波の音だけが、ひどく耳障りなノイズとして聞こえる。
やがて、しぼり出すような、かすかな声が聞こえた。
天「……言葉だけだと不安だよ」
399 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex57 投稿日: 2006/10/01(日) 00:04:18.55 ID:JPeka9Vg0
天才が椅子のひじ掛けに手をついて、上半身を起こした。
立てた片ひざが、俺の両足の間に差し込まれる。
浴衣のすき間から、天才の白い肌が覗いた。
――待て。
なんでお前下に何も着けてねぇんだよ……!
ゆっくりと俺の腿の上にまたがる天才。
すり、と俺の腿を、天才のそこがわずかになぞった。
産毛のような薄くやわらかい毛が肌をくすぐる。
白くさらさらの、しかし、しっとりとした肌。
俺「……!」
心臓が一度、跳ね上がるように鼓動を打った。
――待て、待て待て待て!
思わず身を引き、しかし、すぐに背もたれにぶつかって止まる。
天才が俺の手を取った。
指先に口づける。
天「ねえ……私のこと本当に好きなら……君からも、触って」
天才が俺の胸にしなだれかかる。
プラチナブロンドが俺の胸元をくすぐる。
じわりと潤んだ瞳が俺を見上げていた。
天「ごめんね」
天「きっとお酒のせいだから」
天「だから……」
俺「…………」
天才が椅子のひじ掛けに手をついて、上半身を起こした。
立てた片ひざが、俺の両足の間に差し込まれる。
浴衣のすき間から、天才の白い肌が覗いた。
――待て。
なんでお前下に何も着けてねぇんだよ……!
ゆっくりと俺の腿の上にまたがる天才。
すり、と俺の腿を、天才のそこがわずかになぞった。
産毛のような薄くやわらかい毛が肌をくすぐる。
白くさらさらの、しかし、しっとりとした肌。
俺「……!」
心臓が一度、跳ね上がるように鼓動を打った。
――待て、待て待て待て!
思わず身を引き、しかし、すぐに背もたれにぶつかって止まる。
天才が俺の手を取った。
指先に口づける。
天「ねえ……私のこと本当に好きなら……君からも、触って」
天才が俺の胸にしなだれかかる。
プラチナブロンドが俺の胸元をくすぐる。
じわりと潤んだ瞳が俺を見上げていた。
天「ごめんね」
天「きっとお酒のせいだから」
天「だから……」
俺「…………」
400 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex58 投稿日: 2006/10/01(日) 00:06:03.17 ID:JPeka9Vg0
俺「……謝るなよ」
身を起こした俺は、天才の腰に手を回す。
……かち。
俺「俺の方こそ……悪い」
俺「不安にさせたよな」
天「ううん……いいよ……」
俺は天才の耳たぶに、首筋に、鎖骨に唇を這わせる。
かちかち……。
俺「……でも……」
そっと、天才の胸元に手を伸ばし――
俺は天才の肩口に顔を埋め、言った。
俺「……謝るなよ」
身を起こした俺は、天才の腰に手を回す。
……かち。
俺「俺の方こそ……悪い」
俺「不安にさせたよな」
天「ううん……いいよ……」
俺は天才の耳たぶに、首筋に、鎖骨に唇を這わせる。
かちかち……。
俺「……でも……」
そっと、天才の胸元に手を伸ばし――
俺は天才の肩口に顔を埋め、言った。
俺「怖いなら、無理しなくてもいいんだぞ」
かちかちと、音がする。
鳴っているのは、天才の歯だった。
天「あ、あれ……?」
かちかちかちかちかち。
天才は、ぶるぶると震える自分の手を、抱き込むように押さえつける。
だが、震えは収まらない。
天「怖く、なんかっ……怖く……」
天「だって……っ! ユウキくん、でしょ……」
天「――おにぃちゃん、じゃない……っ、でしょ……!」
天「なのに……どうして……っ!」
天才は、震える指で俺の手を取ると、強引に自分の胸に押しつけた。
熱と、柔らかさと、その奥にある堅さと……恐怖が手のひらに伝わる。
天「ほ、ら、いいから、私のことはっ、気にしないでいっ、ぃいから……」
天「触ってよ……っ!」
鳴っているのは、天才の歯だった。
天「あ、あれ……?」
かちかちかちかちかち。
天才は、ぶるぶると震える自分の手を、抱き込むように押さえつける。
だが、震えは収まらない。
天「怖く、なんかっ……怖く……」
天「だって……っ! ユウキくん、でしょ……」
天「――おにぃちゃん、じゃない……っ、でしょ……!」
天「なのに……どうして……っ!」
天才は、震える指で俺の手を取ると、強引に自分の胸に押しつけた。
熱と、柔らかさと、その奥にある堅さと……恐怖が手のひらに伝わる。
天「ほ、ら、いいから、私のことはっ、気にしないでいっ、ぃいから……」
天「触ってよ……っ!」
401 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex59 投稿日: 2006/10/01(日) 00:08:21.82 ID:JPeka9Vg0
俺はこのまま、ただコイツを抱けばいいんだろう。
彼氏と彼女なら普通のことだ。
年齢なんか関係ない。身体が女同士だって構わない。
だけど……
俺「何度でもいうぞ」
俺「俺はお前が好きだ」
俺「でも、やっぱり、こんなのはダメだ」
俺は天才の肩を掴むとその身体を引き離した。
天「……っ」
天才がまぶたをきつく閉じた。
目の端には涙が浮かんでいる。
――分かっている、この状況で触れるのを拒否することがどんなに残酷か。
俺だってそんな顔を見るのが辛い。
だけど……ダメだ。
天「……どうして?」
天「隣にキョウコちゃんがいるから? 身体が女の子同士だから?」
天「――それとも、やっぱり私、が……っ」
俺「違う」
今度は俺が天才の声を遮った。
俺「好きだから――だから、こんな抱き方はしたくないんだよ」
俺は単に意固地になってるだけかも知れない。
酒のせいで頭が回ってないだけかも知れない。
でも、確信に近い考えがある――
俺「お前は、今、不安から逃げたいだけだろ」
俺「ここで一線を越えたら、お前はもう戻って来れない気がする」
もしここで、コイツを抱いてしまったら――
そんな安心を与えてしまったら――
コイツはきっとこれから先、人のぬくもりに依存するようになる。
天「……っ」
俺はこのまま、ただコイツを抱けばいいんだろう。
彼氏と彼女なら普通のことだ。
年齢なんか関係ない。身体が女同士だって構わない。
だけど……
俺「何度でもいうぞ」
俺「俺はお前が好きだ」
俺「でも、やっぱり、こんなのはダメだ」
俺は天才の肩を掴むとその身体を引き離した。
天「……っ」
天才がまぶたをきつく閉じた。
目の端には涙が浮かんでいる。
――分かっている、この状況で触れるのを拒否することがどんなに残酷か。
俺だってそんな顔を見るのが辛い。
だけど……ダメだ。
天「……どうして?」
天「隣にキョウコちゃんがいるから? 身体が女の子同士だから?」
天「――それとも、やっぱり私、が……っ」
俺「違う」
今度は俺が天才の声を遮った。
俺「好きだから――だから、こんな抱き方はしたくないんだよ」
俺は単に意固地になってるだけかも知れない。
酒のせいで頭が回ってないだけかも知れない。
でも、確信に近い考えがある――
俺「お前は、今、不安から逃げたいだけだろ」
俺「ここで一線を越えたら、お前はもう戻って来れない気がする」
もしここで、コイツを抱いてしまったら――
そんな安心を与えてしまったら――
コイツはきっとこれから先、人のぬくもりに依存するようになる。
天「……っ」
402 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex60 投稿日: 2006/10/01(日) 00:11:26.21 ID:JPeka9Vg0
俺「お前は、今まで奪われてばかりで――それしかないって勘違いしてるんだろ」
俺「でも、何かを求められることだけが、好きって気持ちを伝える方法じゃない」
俺「……俺を、信じてくれ……お前が好きだ」
俺「ずっと一緒にいるから……」
天「……やだよ……」
俺「…………」
天「そんな理屈聞きたくない……!」
天才はいやいやと首を左右に振る。
天「じゃあ、何かを与えるのが“好き”ってこと?」
天「君は何をくれるの? 言葉? プレゼント?」
天「そんなのもの方が、よっぽど信じられないよ!」
涙声で天才が訴える。
天「うくっ……ぅう……」
とうとうぐずり始めてしまった天才。
俺はその頭を撫でようとして、手を振り払われた。
俺「ごめん」
俺「傷付けないって約束したのにな」
天「…………」
俺「でも、俺はまだ、お前を抱けない」
天「…………」
もはや何を否定したいのかも分からないほど、天才はしきりに首を横に振る。
俺「…………」
俺は、意を決して言った。
俺「それでも……どうしても、不安なら……代わりに、俺から奪っていい」
天「……え?」
どういうこと?――と、天才が顔を上げた。
俺「――俺の身体を好きにしていい」
天「……!」
俺「俺の女の『初めて』をお前にやるよ」
俺「お前は、今まで奪われてばかりで――それしかないって勘違いしてるんだろ」
俺「でも、何かを求められることだけが、好きって気持ちを伝える方法じゃない」
俺「……俺を、信じてくれ……お前が好きだ」
俺「ずっと一緒にいるから……」
天「……やだよ……」
俺「…………」
天「そんな理屈聞きたくない……!」
天才はいやいやと首を左右に振る。
天「じゃあ、何かを与えるのが“好き”ってこと?」
天「君は何をくれるの? 言葉? プレゼント?」
天「そんなのもの方が、よっぽど信じられないよ!」
涙声で天才が訴える。
天「うくっ……ぅう……」
とうとうぐずり始めてしまった天才。
俺はその頭を撫でようとして、手を振り払われた。
俺「ごめん」
俺「傷付けないって約束したのにな」
天「…………」
俺「でも、俺はまだ、お前を抱けない」
天「…………」
もはや何を否定したいのかも分からないほど、天才はしきりに首を横に振る。
俺「…………」
俺は、意を決して言った。
俺「それでも……どうしても、不安なら……代わりに、俺から奪っていい」
天「……え?」
どういうこと?――と、天才が顔を上げた。
俺「――俺の身体を好きにしていい」
天「……!」
俺「俺の女の『初めて』をお前にやるよ」
403 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex61 投稿日: 2006/10/01(日) 00:12:24.11 ID:JPeka9Vg0
白々しく輝く蛍光灯が、薄暗い影を落としている。
布団の上に腰を下ろした俺は、天才を招くように手を伸ばす。
天才が無言で、俺の上にのしかかった。
俺を布団に寝そべらせると、腹の上に馬乗りになる。
その身体は小さくて軽く、容易にはねのけることもできる。
だが、俺はされるがままでいた。
天才が上半身を前にかがめた。
俺の唇を小さくついばむ。
柔らかい唇が、俺の行為を真似るように首筋を伝う。
天「…………」
ゆっくりと俺の浴衣の前がはだけられ、胸が外気にさらされた。
俺にとっても、天才にとってもすでに見慣れたはずのそれは、妙に白く光って見えた。
天才の息を呑む音が聞こえる。
おそるおそるといった風に、天才の手が俺の乳房に伸びた。
熱を持った指先が、続いて手のひらが、そっと触れる。
少し力を込められると、俺の胸が白い手の中で押しつぶされ、形を変える。
天「君の心臓、すごく早い」
俺「当たり前だろ」
さっきから俺の心臓は壊れそうなほどに早く打っている。
俺「――好きな奴の手なんだから」
ぴたりと、天才の手が止まった。
俺「……?」
天「……違う……」
白々しく輝く蛍光灯が、薄暗い影を落としている。
布団の上に腰を下ろした俺は、天才を招くように手を伸ばす。
天才が無言で、俺の上にのしかかった。
俺を布団に寝そべらせると、腹の上に馬乗りになる。
その身体は小さくて軽く、容易にはねのけることもできる。
だが、俺はされるがままでいた。
天才が上半身を前にかがめた。
俺の唇を小さくついばむ。
柔らかい唇が、俺の行為を真似るように首筋を伝う。
天「…………」
ゆっくりと俺の浴衣の前がはだけられ、胸が外気にさらされた。
俺にとっても、天才にとってもすでに見慣れたはずのそれは、妙に白く光って見えた。
天才の息を呑む音が聞こえる。
おそるおそるといった風に、天才の手が俺の乳房に伸びた。
熱を持った指先が、続いて手のひらが、そっと触れる。
少し力を込められると、俺の胸が白い手の中で押しつぶされ、形を変える。
天「君の心臓、すごく早い」
俺「当たり前だろ」
さっきから俺の心臓は壊れそうなほどに早く打っている。
俺「――好きな奴の手なんだから」
ぴたりと、天才の手が止まった。
俺「……?」
天「……違う……」
404 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex62 投稿日: 2006/10/01(日) 00:13:19.63 ID:JPeka9Vg0
俺の胸を包む天才の手が、小さくわなないていた。
天「そうだよ……これじゃ同じだよ……」
天「身体だけ女の子になっても……これじゃあ……」
ぽとりと、雫が俺の胸の上に落ちた。
俺の胸を包む天才の手が、小さくわなないていた。
天「そうだよ……これじゃ同じだよ……」
天「身体だけ女の子になっても……これじゃあ……」
ぽとりと、雫が俺の胸の上に落ちた。
天「私……お兄ちゃんと同じことしてる……」
俺「違う。これは俺があげるんだ。お前の兄貴とは――」
天「同じなの!」
涙混じりの金切り声が、俺の声を遮る。
天「本当は、君が私を嫌いじゃないのは分かってるんだよ」
天「私、自分が不安だからって、君の気持ちを盾にしてるだけなんだ……」
俺「…………」
天「どうしよう……私……」
天「……君に、触れられない……」
顔を両手で覆う天才。
嗚咽が、手の間からこぼれる。
俺はいつもそうしていたように、天才を静かに抱きしめた。
背中をさすりながら、あやすように語りかける。
俺「焦らなくていい」
俺「今じゃなくてもいい」
俺「ゆっくりでいいんだよ」
俺「俺は必ず側にいるから」
俺「お前が、大丈夫になるまで……ずっと待ってるから」
天「同じなの!」
涙混じりの金切り声が、俺の声を遮る。
天「本当は、君が私を嫌いじゃないのは分かってるんだよ」
天「私、自分が不安だからって、君の気持ちを盾にしてるだけなんだ……」
俺「…………」
天「どうしよう……私……」
天「……君に、触れられない……」
顔を両手で覆う天才。
嗚咽が、手の間からこぼれる。
俺はいつもそうしていたように、天才を静かに抱きしめた。
背中をさすりながら、あやすように語りかける。
俺「焦らなくていい」
俺「今じゃなくてもいい」
俺「ゆっくりでいいんだよ」
俺「俺は必ず側にいるから」
俺「お前が、大丈夫になるまで……ずっと待ってるから」
405 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex63 投稿日: 2006/10/01(日) 00:17:44.27 ID:JPeka9Vg0
俺「不安だとか、寂しいとか、そういうのを紛らわせたいんじゃなくて」
俺「ただ好きだから、したいって風に思える時が来たら」
俺「ちゃんと、しような――」
俺は天才の髪をそっとなでる。
俺「約束する」
俺「不安だとか、寂しいとか、そういうのを紛らわせたいんじゃなくて」
俺「ただ好きだから、したいって風に思える時が来たら」
俺「ちゃんと、しような――」
俺は天才の髪をそっとなでる。
俺「約束する」
クサいことを言っていると、自分でも思う。
世の中のすべてが、そんな綺麗な話じゃない。
身体を重ねるということは、子どもの夢みたいに甘いだけのものじゃない。
俺だって、そして、天才はもっと、それを嫌というほど知っている。
だけど――
甘くないのがすべてでもない。
今まで辛い思いをしてきたコイツには、それ以上に甘い思いをして欲しい。
俺は、本気でそう思っている。
世の中のすべてが、そんな綺麗な話じゃない。
身体を重ねるということは、子どもの夢みたいに甘いだけのものじゃない。
俺だって、そして、天才はもっと、それを嫌というほど知っている。
だけど――
甘くないのがすべてでもない。
今まで辛い思いをしてきたコイツには、それ以上に甘い思いをして欲しい。
俺は、本気でそう思っている。
……どれくらいそうしていただろうか。
いつしか、天才は泣き止んでいた。
俺「……落ち着いたか?」
天「うん……ありがとうね」
俺「あぁ、気にすんな」
天「……あのさ、今さっき言ったこと、ほんとにしてくれる?」
俺「ん? どれだ?」
天「全部」
天「“ずっと待ってる”って、“ちゃんとしよう”って――」
俺「――あぁ」
俺「本当だ」
いつしか、天才は泣き止んでいた。
俺「……落ち着いたか?」
天「うん……ありがとうね」
俺「あぁ、気にすんな」
天「……あのさ、今さっき言ったこと、ほんとにしてくれる?」
俺「ん? どれだ?」
天「全部」
天「“ずっと待ってる”って、“ちゃんとしよう”って――」
俺「――あぁ」
俺「本当だ」
406 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex64 投稿日: 2006/10/01(日) 00:21:49.54 ID:JPeka9Vg0
天「じゃあ、予約ね」
そう言って天才は、泣きはらした顔を俺の胸に埋めた。
俺「あ、おい」
天才は俺の胸――左の乳房の内側に口づける。
ちゅ、と、音が聞こえる。
ややあって唇を離すと、天才は表情をはにかみ混じりの笑顔に変えた。
天「……キスマーク、つけちゃった」
天才の指が、口づけの跡をなぞる。
印の向こうにあるのは心臓。
まるで、指先で心音を感じるように――
天「もう、私のもの、だよ……」
そう囁いた。
天「じゃあ、予約ね」
そう言って天才は、泣きはらした顔を俺の胸に埋めた。
俺「あ、おい」
天才は俺の胸――左の乳房の内側に口づける。
ちゅ、と、音が聞こえる。
ややあって唇を離すと、天才は表情をはにかみ混じりの笑顔に変えた。
天「……キスマーク、つけちゃった」
天才の指が、口づけの跡をなぞる。
印の向こうにあるのは心臓。
まるで、指先で心音を感じるように――
天「もう、私のもの、だよ……」
そう囁いた。
俺「…………」
天「あ」
俺は天才の胸元に顔を近づけた。
少し着崩れた浴衣のすき間から覗く、白く透き通る肌。
そこに唇触れさせ、吸う。
最初は弱く、次第に強く。
天「ん……」
くすぐったそうに、天才が声を漏らした。
ふと思う。
――そういえば、心臓って、英語でハートっていうんだよな。
昔の人が、心がそこにあると信じた場所。
俺は唇の力を強めた。
なめらかな肌の、その奥に触れるように。
天「あ」
俺は天才の胸元に顔を近づけた。
少し着崩れた浴衣のすき間から覗く、白く透き通る肌。
そこに唇触れさせ、吸う。
最初は弱く、次第に強く。
天「ん……」
くすぐったそうに、天才が声を漏らした。
ふと思う。
――そういえば、心臓って、英語でハートっていうんだよな。
昔の人が、心がそこにあると信じた場所。
俺は唇の力を強めた。
なめらかな肌の、その奥に触れるように。
407 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex65 投稿日: 2006/10/01(日) 00:29:14.76 ID:HpbiNVbx0
天「……強く吸いすぎでしょ、これ」
天才の胸元に、濃い赤紫の跡が残っている。
俺「いや、つい……」
天「あーあ、これはしばらく消えないね」
口調とは裏腹に、嬉しそうに微笑する天才。
天「……強く吸いすぎでしょ、これ」
天才の胸元に、濃い赤紫の跡が残っている。
俺「いや、つい……」
天「あーあ、これはしばらく消えないね」
口調とは裏腹に、嬉しそうに微笑する天才。
俺「あ」
俺は重大な事実に気が付いた。
俺「明日、水着……」
ビーチで思いっ切りアピールですか?
……変な目で見られそうだな……。
どうすっか……。
天「私は平気だけど」
俺「お前の水着は隠れるからいいよなぁ」
天「そういう意味じゃないんだけどね」
天「私のが隠れちゃうのはちょっと残念かな」
俺「待て」
天「君は……いや?」
赤い顔をして、潤んだ瞳で上目遣いに覗き込んでくる天才。
……反則だ。
お前、その顔、大半は酒のせいだろ。
…………。
いい歳してキスマークってのも恥ずかしいんだが……。
俺「まぁ、いいか」
結局、俺はいつも最後には笑って許してしまうのだ。
俺は重大な事実に気が付いた。
俺「明日、水着……」
ビーチで思いっ切りアピールですか?
……変な目で見られそうだな……。
どうすっか……。
天「私は平気だけど」
俺「お前の水着は隠れるからいいよなぁ」
天「そういう意味じゃないんだけどね」
天「私のが隠れちゃうのはちょっと残念かな」
俺「待て」
天「君は……いや?」
赤い顔をして、潤んだ瞳で上目遣いに覗き込んでくる天才。
……反則だ。
お前、その顔、大半は酒のせいだろ。
…………。
いい歳してキスマークってのも恥ずかしいんだが……。
俺「まぁ、いいか」
結局、俺はいつも最後には笑って許してしまうのだ。
408 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex66 投稿日: 2006/10/01(日) 00:30:00.07 ID:HpbiNVbx0
俺が浴衣の合わせを正していると、天才がその裾を引っ張った。
天「あのね……」
俺「ん?」
天「私も、ホントはずるいから」
天「まだ君には言ってないことがあるんだ」
俺「なんだ?」
天「あ、でも、今まではっきりしなかった君も悪いんだからね」
と、頬を膨らませた天才は、俺の胸を叩く。
俺「なんの話だよ」
天「恋愛対象としての話」
俺「…………」
天「気になる?」
俺「気になる」
妙にもったいぶる天才に、俺は即答した。
天「これを言っちゃったら、後に引けなくなっちゃうけど」
天「それでも聞きたい?」
俺「聞きたい」
天「言葉はあてにならないかもよ?」
俺「俺は信じる」
天「じゃあ、しょうがないね」
天才は俺の首に手を回すと、目を見詰めてくる。
俺が浴衣の合わせを正していると、天才がその裾を引っ張った。
天「あのね……」
俺「ん?」
天「私も、ホントはずるいから」
天「まだ君には言ってないことがあるんだ」
俺「なんだ?」
天「あ、でも、今まではっきりしなかった君も悪いんだからね」
と、頬を膨らませた天才は、俺の胸を叩く。
俺「なんの話だよ」
天「恋愛対象としての話」
俺「…………」
天「気になる?」
俺「気になる」
妙にもったいぶる天才に、俺は即答した。
天「これを言っちゃったら、後に引けなくなっちゃうけど」
天「それでも聞きたい?」
俺「聞きたい」
天「言葉はあてにならないかもよ?」
俺「俺は信じる」
天「じゃあ、しょうがないね」
天才は俺の首に手を回すと、目を見詰めてくる。
そして、微笑むと、告げた。
天「――あなたが好きです」