ひょんなことから女の子
クロ/クロ Extra『XX XX XX(5)』
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794 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex67 投稿日: 2006/10/03(火) 21:44:52.58 ID:yOhGxSIj0
波音と、蝉の鳴き声と、人の声と、太陽の温度。
窓の外が活気に満ちてくるのを感じる。
――朝か。
手探りで携帯を取り上げて見ると、時計は8時を回っていた。
結構寝たなぁ。
二日酔い気味なのか、わずかに頭が重い。
昨日はちょっと飲み過ぎたかな……。
昨日……
俺「!」
跳ね起きた俺は眼鏡を手に取り、自分の胸元をたしかめる。
小さい紫の跡が、昨晩の出来事を証明するように残っていた。
傍らを見下ろすと、天才がすぅすぅと寝息を立てていた。
昨晩の荒れっぷりが嘘だったような、穏やかな寝顔。
俺の手に、足に、唇に、天才が触れた感覚が蘇る。
頬が熱くなり、意識が一気に覚醒していくのを感じた。
俺、なんか大変なことしてしまったような……。
波音と、蝉の鳴き声と、人の声と、太陽の温度。
窓の外が活気に満ちてくるのを感じる。
――朝か。
手探りで携帯を取り上げて見ると、時計は8時を回っていた。
結構寝たなぁ。
二日酔い気味なのか、わずかに頭が重い。
昨日はちょっと飲み過ぎたかな……。
昨日……
俺「!」
跳ね起きた俺は眼鏡を手に取り、自分の胸元をたしかめる。
小さい紫の跡が、昨晩の出来事を証明するように残っていた。
傍らを見下ろすと、天才がすぅすぅと寝息を立てていた。
昨晩の荒れっぷりが嘘だったような、穏やかな寝顔。
俺の手に、足に、唇に、天才が触れた感覚が蘇る。
頬が熱くなり、意識が一気に覚醒していくのを感じた。
俺、なんか大変なことしてしまったような……。
立ち上がった俺は、隣の部屋に続くふすまをこっそり開けてみる。
葛は……まだ寝てる、よな。
葛は明るい部屋の真ん中できっちり真っ直ぐに眠っている。
温泉の時も思ったけど、コイツ妙に寝相いいんだよな。
ともあれ、あれだけ酒を入れてたんだし、完全に潰れていたと願いたい。
話を聞かれてたら、その、なんだ、恥ずかしい。つうか死ぬ。
葛は……まだ寝てる、よな。
葛は明るい部屋の真ん中できっちり真っ直ぐに眠っている。
温泉の時も思ったけど、コイツ妙に寝相いいんだよな。
ともあれ、あれだけ酒を入れてたんだし、完全に潰れていたと願いたい。
話を聞かれてたら、その、なんだ、恥ずかしい。つうか死ぬ。
796 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex68 投稿日: 2006/10/03(火) 21:53:06.60 ID:yOhGxSIj0
俺はカーテンと窓を開けた。
まだどこか酒臭い部屋の空気と入れ替わりに、夏の海の匂いが入ってくる。
天才を起こそうと、タオルケットを引っぺがす。
こっちはそれなりに寝相が悪い。
丸まって寝ている天才の浴衣は、帯のところまで見事にめくれていた。
俺「…………」
見なかったことにしてタオルケットをかけ直そうとすると、天才の身体がわずかに動いた。
見慣れない色が視界に映る。
……ん、尻の辺りに何か……。
俺はカーテンと窓を開けた。
まだどこか酒臭い部屋の空気と入れ替わりに、夏の海の匂いが入ってくる。
天才を起こそうと、タオルケットを引っぺがす。
こっちはそれなりに寝相が悪い。
丸まって寝ている天才の浴衣は、帯のところまで見事にめくれていた。
俺「…………」
見なかったことにしてタオルケットをかけ直そうとすると、天才の身体がわずかに動いた。
見慣れない色が視界に映る。
……ん、尻の辺りに何か……。
俺「うおぁあぁ!!」
つい大声を出してしまった。
お前、結局何もはかねぇで寝たのかよ!
いや、それはどうでもいい!
問題はシーツと浴衣だ。
つい大声を出してしまった。
お前、結局何もはかねぇで寝たのかよ!
いや、それはどうでもいい!
問題はシーツと浴衣だ。
――血がついている。
お、おおぉぉぉ!?
もう一度見たが、間違いない。血だ。
しかも足の付け根から腿にかけて、血が伝って流れた跡がある。
――俺は昨日、何もしてないよな!?
酔っぱらってたって、そんな記憶をなくすようなことはなかったし、
覚えてる限りそんなことしなかっただろ!
俺「おまっ、なんでっ……!」
天「……んぅ」
俺が一人でうろたえていると、天才が身じろぎを一つした。
もう一度見たが、間違いない。血だ。
しかも足の付け根から腿にかけて、血が伝って流れた跡がある。
――俺は昨日、何もしてないよな!?
酔っぱらってたって、そんな記憶をなくすようなことはなかったし、
覚えてる限りそんなことしなかっただろ!
俺「おまっ、なんでっ……!」
天「……んぅ」
俺が一人でうろたえていると、天才が身じろぎを一つした。
805 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex69 投稿日: 2006/10/03(火) 22:35:33.47 ID:yOhGxSIj0
天「うるさいなー。どうしたの?」
目を覚まし、まぶたをこすりながらぼやく天才。
俺「いや、それ……」
天「んー?」
俺が問題の場所を指差すと、天才は浴衣の裾を直した。
天「……見ないでよ」
俺「そうじゃねぇ!」
俺「尻の下! 下見てみろ!」
天「え?」
天才はその場から身を起こして横に転がると、シーツを見た。
天「……えぇ?」
目を白黒させ、今度は身をひねって自分の浴衣の背面を見る。
細い眉がひそめられた。
浴衣のすき間から股間に手を差し込む天才。
手を引き出すと、その指先には血がついていた。
天「――なんで?」
俺に聞かれたって分かんねぇよ。
天「だって、え? 君……あの後って……寝た、でしょ?」
なんで疑問形なんだ。
あんな話をしといて実は寝てる間に――みたいな真似はしねぇよ。
俺「寝たよな――いや、眠るって意味でな?」
天「だよ、ね?」
俺「つうか怪我とかはないのか?」
天「……大丈夫みたい。痛いところはないし」
じゃあ、これは一体……。
天「うるさいなー。どうしたの?」
目を覚まし、まぶたをこすりながらぼやく天才。
俺「いや、それ……」
天「んー?」
俺が問題の場所を指差すと、天才は浴衣の裾を直した。
天「……見ないでよ」
俺「そうじゃねぇ!」
俺「尻の下! 下見てみろ!」
天「え?」
天才はその場から身を起こして横に転がると、シーツを見た。
天「……えぇ?」
目を白黒させ、今度は身をひねって自分の浴衣の背面を見る。
細い眉がひそめられた。
浴衣のすき間から股間に手を差し込む天才。
手を引き出すと、その指先には血がついていた。
天「――なんで?」
俺に聞かれたって分かんねぇよ。
天「だって、え? 君……あの後って……寝た、でしょ?」
なんで疑問形なんだ。
あんな話をしといて実は寝てる間に――みたいな真似はしねぇよ。
俺「寝たよな――いや、眠るって意味でな?」
天「だよ、ね?」
俺「つうか怪我とかはないのか?」
天「……大丈夫みたい。痛いところはないし」
じゃあ、これは一体……。
808 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex70 投稿日: 2006/10/03(火) 22:50:25.24 ID:yOhGxSIj0
――って、ちょっと待て。
俺「それ、まだ乾いてないのか?」
俺は天才に確認する。
天才は自分の指を少しこすり合わせた。
乾きかけの血の上を指先がすべる。
天「――そうみたいだね」
これが昨晩の話なら、とっくに乾いてるよな。
というと、今しがた出たばっかか。
天「あ」
天才が何かに気付いたように、自分の下腹を押さえた。
天「今、なんか……お腹が……」
俺「なぁ、それ……」
天「もしかして――」
天才が小さな声で、俺の言葉を引き継いだ。
――って、ちょっと待て。
俺「それ、まだ乾いてないのか?」
俺は天才に確認する。
天才は自分の指を少しこすり合わせた。
乾きかけの血の上を指先がすべる。
天「――そうみたいだね」
これが昨晩の話なら、とっくに乾いてるよな。
というと、今しがた出たばっかか。
天「あ」
天才が何かに気付いたように、自分の下腹を押さえた。
天「今、なんか……お腹が……」
俺「なぁ、それ……」
天「もしかして――」
天才が小さな声で、俺の言葉を引き継いだ。
天「生、理?」
818 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex71 投稿日: 2006/10/03(火) 23:24:02.81 ID:yOhGxSIj0
俺「――みたい、だな」
俺は安堵の息を吐き出した。
良かった。怪我じゃなかったか。
それにオレが何かしちまった訳でもないようだ。
――いや、自分の行動に自信がない訳じゃないんだが、
血が出てるって事実があったら、うろたえるのも仕方がないだろう。
ともあれ、なるほど。
最近の成長の加速と体重の増加、それに昨日の情緒不安定に腹痛。
考えてみれば、様々な要因がこの結論を証拠づけている気がした。
天才はまだ生理が来てなかったので、可能性をすっかり失念していた。
しかし、だとしたら参ったな。俺、ナプキン持ってきてたか?
自分の荷物を漁ってみる。
……ない、か。
葛だったら持ってるだろうか?
俺は隣の部屋のふすまを開けると、首だけを突っ込んだ。
俺「おーい、葛ぁ、起きろー!」
葛「ん……なんですか~」
起きかけだったのか、単に寝覚めが良いのか、葛はあっさりと反応を返してきた。
日頃から口調がこんなだから、しっかり目が覚めたのかどうかは疑わしいが。
構わず俺は聞くことにした。
俺「お前さ、ナプキンかなんか持ってないか?」
葛「はい~?」
俺「いや、コイツがな――」
言いつつ、天才に振り返る。
そして、俺はそのまま硬直した。
俺「……おい?」
天「……うっ……ひくっ……」
天才が、その場で泣き出していた。
俺「――みたい、だな」
俺は安堵の息を吐き出した。
良かった。怪我じゃなかったか。
それにオレが何かしちまった訳でもないようだ。
――いや、自分の行動に自信がない訳じゃないんだが、
血が出てるって事実があったら、うろたえるのも仕方がないだろう。
ともあれ、なるほど。
最近の成長の加速と体重の増加、それに昨日の情緒不安定に腹痛。
考えてみれば、様々な要因がこの結論を証拠づけている気がした。
天才はまだ生理が来てなかったので、可能性をすっかり失念していた。
しかし、だとしたら参ったな。俺、ナプキン持ってきてたか?
自分の荷物を漁ってみる。
……ない、か。
葛だったら持ってるだろうか?
俺は隣の部屋のふすまを開けると、首だけを突っ込んだ。
俺「おーい、葛ぁ、起きろー!」
葛「ん……なんですか~」
起きかけだったのか、単に寝覚めが良いのか、葛はあっさりと反応を返してきた。
日頃から口調がこんなだから、しっかり目が覚めたのかどうかは疑わしいが。
構わず俺は聞くことにした。
俺「お前さ、ナプキンかなんか持ってないか?」
葛「はい~?」
俺「いや、コイツがな――」
言いつつ、天才に振り返る。
そして、俺はそのまま硬直した。
俺「……おい?」
天「……うっ……ひくっ……」
天才が、その場で泣き出していた。
826 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex72 投稿日: 2006/10/04(水) 00:28:11.28 ID:6c6/RurC0
俺は天才の傍らにひざをつき、その顔を覗き込んだ。
俺「どうした? つらいのか?」
天才は首を横に振る。
天「違うよ……」
拭っても拭っても、次から次へと溢れてくる涙。
その理由を計りかねていると、天才は小さく答えを漏らした。
天「嬉しいんだよ……」
ぐしぐしと涙を拭った天才は、俺にしがみ付いてきた。
俺の胸に顔を埋めたまま、言葉を続ける。
天「私……ちゃんと、女の人になれたんだ……」
天「良かった……良かったよぅ」
俺「……そうか」
二次性徴前の手術、急激な身体変化。
日頃は平静を装っていても、その内側に不安がないはずはない。
しかし今日やっと、女の身体になった証――初潮が天才にも訪れたのだ。
安堵と喜び。
――それが涙の理由だった。
俺「おめでとう」
そう告げて、俺はそっと天才の頭をなでてやった。
俺は天才の傍らにひざをつき、その顔を覗き込んだ。
俺「どうした? つらいのか?」
天才は首を横に振る。
天「違うよ……」
拭っても拭っても、次から次へと溢れてくる涙。
その理由を計りかねていると、天才は小さく答えを漏らした。
天「嬉しいんだよ……」
ぐしぐしと涙を拭った天才は、俺にしがみ付いてきた。
俺の胸に顔を埋めたまま、言葉を続ける。
天「私……ちゃんと、女の人になれたんだ……」
天「良かった……良かったよぅ」
俺「……そうか」
二次性徴前の手術、急激な身体変化。
日頃は平静を装っていても、その内側に不安がないはずはない。
しかし今日やっと、女の身体になった証――初潮が天才にも訪れたのだ。
安堵と喜び。
――それが涙の理由だった。
俺「おめでとう」
そう告げて、俺はそっと天才の頭をなでてやった。
直後、葛がのそのそと隣の部屋から出てきた。
葛「あの~、先生がどうしたんですか~?」
と言いつつ、部屋をぐるり見回した葛は、その場で動きを止めた。
そして、突然叫んだ。
葛「せっ、先生とユウキちゃんが大人の関係に~!」
俺「いやそれはもうやったから」
葛「も、“もうやった”ってどういうことですかぁ~!?」
俺「そういう意味じゃねぇっ!」
起き抜けからエキサイトする葛に負けじと、俺は大声でツッコミを入れた。
あぁもう! 台無しだ!!
葛「あの~、先生がどうしたんですか~?」
と言いつつ、部屋をぐるり見回した葛は、その場で動きを止めた。
そして、突然叫んだ。
葛「せっ、先生とユウキちゃんが大人の関係に~!」
俺「いやそれはもうやったから」
葛「も、“もうやった”ってどういうことですかぁ~!?」
俺「そういう意味じゃねぇっ!」
起き抜けからエキサイトする葛に負けじと、俺は大声でツッコミを入れた。
あぁもう! 台無しだ!!
926 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex73 投稿日: 2006/10/05(木) 00:49:58.51 ID:520wx1i00
葛「冗談ですよ~」
と、笑いながら自分の荷物をごそごそやりだす葛。
ポーチから四角く折りたたまれたハンカチ――中にはナプキンが入っている――を
引っ張り出すと、それを天才に手渡す。
葛「はい、先生」
天「ありがとう」
葛「いえいえ~。おめでとうございます~」
葛「冗談ですよ~」
と、笑いながら自分の荷物をごそごそやりだす葛。
ポーチから四角く折りたたまれたハンカチ――中にはナプキンが入っている――を
引っ張り出すと、それを天才に手渡す。
葛「はい、先生」
天「ありがとう」
葛「いえいえ~。おめでとうございます~」
トイレに引っ込んだ天才を尻目に、俺は床にあぐらをかいた。
俺「で、じゃぁ、今日はどうすっか」
葛「これじゃ海には行けませんね~」
俺「どっか行けそうな場所はあるか?」
葛「そうですね~、ちょっと調べてみます~」
荷物からこの辺りの情報が載っているガイドブックを取り出して、読み始める葛。
そこに天才が戻ってきた。
俺「ちゃんと着けれたか?」
天「うん」
葛の手にある本を目にした天才は、申し訳なさそうな顔をした。
天「……ごめんね。せっかく海に来たのに」
葛「いえいえ~、いいんですよ~」
葛「海だけが旅行の目的じゃないですし、もう充分来た甲斐はありましたし~」
天「そう?」
葛「もう色々楽しいことはありましたから」
葛「何より~、先生がユウキちゃんと親密な関係になれたようですし~」
うふふ~、と笑う葛に俺は念のため釘を刺す。
俺「待て待て。何度も言うが、お前の思ってるようなことは何もなかったぞ?」
天「そうだよ」
同意する天才に、葛は小さく首をひねると、言った。
葛「え~、でも先生~、ユウキちゃんに告白してたじゃないですか~」
天「……へ?」
俺「で、じゃぁ、今日はどうすっか」
葛「これじゃ海には行けませんね~」
俺「どっか行けそうな場所はあるか?」
葛「そうですね~、ちょっと調べてみます~」
荷物からこの辺りの情報が載っているガイドブックを取り出して、読み始める葛。
そこに天才が戻ってきた。
俺「ちゃんと着けれたか?」
天「うん」
葛の手にある本を目にした天才は、申し訳なさそうな顔をした。
天「……ごめんね。せっかく海に来たのに」
葛「いえいえ~、いいんですよ~」
葛「海だけが旅行の目的じゃないですし、もう充分来た甲斐はありましたし~」
天「そう?」
葛「もう色々楽しいことはありましたから」
葛「何より~、先生がユウキちゃんと親密な関係になれたようですし~」
うふふ~、と笑う葛に俺は念のため釘を刺す。
俺「待て待て。何度も言うが、お前の思ってるようなことは何もなかったぞ?」
天「そうだよ」
同意する天才に、葛は小さく首をひねると、言った。
葛「え~、でも先生~、ユウキちゃんに告白してたじゃないですか~」
天「……へ?」
928 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex74 投稿日: 2006/10/05(木) 00:51:19.17 ID:520wx1i00
俺「げ」
コイツ、もしかして……。
天才がおそるおそるといった風に、問う。
天「……起きてた、の? あの時」
葛「あれだけ大きな声を出せば起きますよ~」
天「い、いつから?」
葛「え~と~、“なんで何もしてくれないの?”の辺りですかね~」
……そうかー。聞こえてましたかー。そりゃぁ聞こえますよねー。
葛は頬を染めて、指先をもじもじさせる。
葛「先生って意外と積極的といいますか~、大胆ですよね~」
天「…………」
天才が目を丸く見開いて硬直している。
俺「……おい?」
どうしたのかと声をかけたその瞬間、
ぷしゅうぅぅーと湯気でも吹き出しそうな勢いで、天才の顔が真っ赤になった。
天「あ、あ、ああのあぁぁ! あああれは酔っぱらっちゃってたかりゃれっ……!」
噛んでる噛んでる。
葛「そうですね~。“きっとお酒のせいだから”ですよね~」
あちゃぁ、墓穴だ。
天「うゃぁああぁぁぁ! 言わないでぇぇぇ!」
耳を塞いで悶絶する天才。その度合いたるや風呂で泳いでいた時の比ではない。
なかなか珍しい光景だ。
……まぁ、自爆だよな。
そう考えていると、きっ! と、天才は俺を睨んだ。
天「もう、君のせいだよ!――バカぁっ!」
天才がぽかぽかと俺の腕を叩く。
俺「待て! なんで俺なんだよっ!」
痛ぇ痛ぇ! お前それ手加減してねぇだろ!
俺「げ」
コイツ、もしかして……。
天才がおそるおそるといった風に、問う。
天「……起きてた、の? あの時」
葛「あれだけ大きな声を出せば起きますよ~」
天「い、いつから?」
葛「え~と~、“なんで何もしてくれないの?”の辺りですかね~」
……そうかー。聞こえてましたかー。そりゃぁ聞こえますよねー。
葛は頬を染めて、指先をもじもじさせる。
葛「先生って意外と積極的といいますか~、大胆ですよね~」
天「…………」
天才が目を丸く見開いて硬直している。
俺「……おい?」
どうしたのかと声をかけたその瞬間、
ぷしゅうぅぅーと湯気でも吹き出しそうな勢いで、天才の顔が真っ赤になった。
天「あ、あ、ああのあぁぁ! あああれは酔っぱらっちゃってたかりゃれっ……!」
噛んでる噛んでる。
葛「そうですね~。“きっとお酒のせいだから”ですよね~」
あちゃぁ、墓穴だ。
天「うゃぁああぁぁぁ! 言わないでぇぇぇ!」
耳を塞いで悶絶する天才。その度合いたるや風呂で泳いでいた時の比ではない。
なかなか珍しい光景だ。
……まぁ、自爆だよな。
そう考えていると、きっ! と、天才は俺を睨んだ。
天「もう、君のせいだよ!――バカぁっ!」
天才がぽかぽかと俺の腕を叩く。
俺「待て! なんで俺なんだよっ!」
痛ぇ痛ぇ! お前それ手加減してねぇだろ!
929 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex75 投稿日: 2006/10/05(木) 00:58:09.23 ID:520wx1i00
葛「あら~、そろそろ9時ですか~」
葛に倣って壁の時計を見上げると、たしかに短い針がきっかり水平になっていた。
葛「そろそろお風呂が開く時間ですね~。ちょっとさっぱりし行ってきます~」
俺「おう」
葛「お二人はどうしますか~?」
天「…………」
天才が俺の浴衣の裾を掴んだ。
今、俺と葛を二人にしたらどうなるかと、気が気ではないのだろう。
天「……うー」
俺の背後に半分隠れながら涙目で葛を睨む天才。
やれやれ。
俺「俺らはいいや。コイツ今アレ着けたばっかだし。つうか湯船無理だし」
葛「そうですね~。ではちょっと失礼して行ってきますね~」
そう言って、手早く着替えをまとめると、葛は部屋のドアを開けた。
葛「あら~、そろそろ9時ですか~」
葛に倣って壁の時計を見上げると、たしかに短い針がきっかり水平になっていた。
葛「そろそろお風呂が開く時間ですね~。ちょっとさっぱりし行ってきます~」
俺「おう」
葛「お二人はどうしますか~?」
天「…………」
天才が俺の浴衣の裾を掴んだ。
今、俺と葛を二人にしたらどうなるかと、気が気ではないのだろう。
天「……うー」
俺の背後に半分隠れながら涙目で葛を睨む天才。
やれやれ。
俺「俺らはいいや。コイツ今アレ着けたばっかだし。つうか湯船無理だし」
葛「そうですね~。ではちょっと失礼して行ってきますね~」
そう言って、手早く着替えをまとめると、葛は部屋のドアを開けた。
はぁ~。やっぱりお風呂は広い方がいいですよね~。
湯船に浸かった私は、まだ誰もいない湯船に足を思い切りのばしました。
浴槽のふちに身を預けて、独り物思いに耽ります。
考えることといえば、あのお二人のこと。
――なんとか上手くまとまったようで、良かったです。
このところ順調なように見えて、実は距離が離れたみたいでしたし。
先生っていつも、問題を乗り越えることで成長してるんですよね~。
あのお二人も薄々は分かってるんでしょうけど、
最近はちょっと現状維持に甘んじているといいますか~。
それに今は悪役さんもいませんし~、私がやるしかないんですよね~。
セッティングにはなかなか苦労しましたけど、その甲斐もありました~。
でもちょっと痛いところをつっつき過ぎちゃったみたいですし、
フォローをしておかないと、今度は私の立場が危ういですね~……。
葛「まったく~、世話の焼けるお二人ですね~」
私はそう独り言を呟いて、お湯を手で混ぜました。
湯船に浸かった私は、まだ誰もいない湯船に足を思い切りのばしました。
浴槽のふちに身を預けて、独り物思いに耽ります。
考えることといえば、あのお二人のこと。
――なんとか上手くまとまったようで、良かったです。
このところ順調なように見えて、実は距離が離れたみたいでしたし。
先生っていつも、問題を乗り越えることで成長してるんですよね~。
あのお二人も薄々は分かってるんでしょうけど、
最近はちょっと現状維持に甘んじているといいますか~。
それに今は悪役さんもいませんし~、私がやるしかないんですよね~。
セッティングにはなかなか苦労しましたけど、その甲斐もありました~。
でもちょっと痛いところをつっつき過ぎちゃったみたいですし、
フォローをしておかないと、今度は私の立場が危ういですね~……。
葛「まったく~、世話の焼けるお二人ですね~」
私はそう独り言を呟いて、お湯を手で混ぜました。
943 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex76 投稿日: 2006/10/05(木) 03:33:20.47 ID:520wx1i00
結局あの後、俺らは普通に市街観光をして、3日目には予定通り自宅に帰ってきた。
いやしかし、俺らが旅行に行くと、なんでか初日がやたらと濃くなるなぁ……。
――まぁ、2日目以降も楽しかったには楽しかったんだが。
結局あの後、俺らは普通に市街観光をして、3日目には予定通り自宅に帰ってきた。
いやしかし、俺らが旅行に行くと、なんでか初日がやたらと濃くなるなぁ……。
――まぁ、2日目以降も楽しかったには楽しかったんだが。
帰宅するなり葛は、創作意欲だの修羅場だのがどうのとか言って、
自分の部屋に引っ込んでしまった。
アイツは今回の旅行を含めて半月間の長期休暇を取っていたが、
それを丸々消化する腹づもりらしい。
……そういや去年の今頃も休み取ってたな。
天「キョウコちゃん、何してるんだろうね」
俺「さぁなぁ……俺はロクでもない予感しかしねぇけど」
天「ちょっと見てみたいような気もしない?」
俺「……悪いこた言わねぇからやめとけ」
俺はきっぱりと天才の意見を却下しておいた。
つうか、アイツの部屋って18歳未満立ち入り禁止だしな。
そう? と首を傾げた天才は、俺のひざの上でフルーツ入りのカップアイスを一口。
…………。
俺「やっぱお前重たくなったよなぁ」
天「またそういうこと言う……失礼でしょ」
口先を尖らせた天才は、ばふっ、と俺に思いっ切り背中を倒れ込ませた。
そして、しばし考える素振りを見せてから、
天「君も太る?」
と、アイスが乗ったスプーンを差し出してきた。
俺「“君も”って――重くはなったけど太っちゃいねぇだろ、お前」
そう言いつつも、俺は練乳入りの白いみぞれとパインが乗ったスプーンを口に入れた。
俺「ん。んまい」
なんだか、とても甘い味がした。
自分の部屋に引っ込んでしまった。
アイツは今回の旅行を含めて半月間の長期休暇を取っていたが、
それを丸々消化する腹づもりらしい。
……そういや去年の今頃も休み取ってたな。
天「キョウコちゃん、何してるんだろうね」
俺「さぁなぁ……俺はロクでもない予感しかしねぇけど」
天「ちょっと見てみたいような気もしない?」
俺「……悪いこた言わねぇからやめとけ」
俺はきっぱりと天才の意見を却下しておいた。
つうか、アイツの部屋って18歳未満立ち入り禁止だしな。
そう? と首を傾げた天才は、俺のひざの上でフルーツ入りのカップアイスを一口。
…………。
俺「やっぱお前重たくなったよなぁ」
天「またそういうこと言う……失礼でしょ」
口先を尖らせた天才は、ばふっ、と俺に思いっ切り背中を倒れ込ませた。
そして、しばし考える素振りを見せてから、
天「君も太る?」
と、アイスが乗ったスプーンを差し出してきた。
俺「“君も”って――重くはなったけど太っちゃいねぇだろ、お前」
そう言いつつも、俺は練乳入りの白いみぞれとパインが乗ったスプーンを口に入れた。
俺「ん。んまい」
なんだか、とても甘い味がした。
944 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex77 投稿日: 2006/10/05(木) 03:34:37.50 ID:520wx1i00
俺は天才を隣に下ろすと、葛所有のガイドブックを広げる。
天「どうしたの、それ?」
俺「ん、借りた。どっか近くに良いとこはねぇかなぁと思ってな」
天「珍しいね、君から外に行きたがるなんて」
俺「待て。人を引きこもりみたいに言うな」
たしかに俺は日頃、必要がない限り表には出ないが、
それは単に知り合いに会った時に、今の状況の説明がめんどくせぇからだ。
――まぁ、そりゃ、インドア派だってのもあるにはあるんだが……。
天「ごめんごめん。でも、どうしたの?」
俺「ん? あぁ――せっかく葛がいないんだしな」
天「?」
俺「二人で遊びに……あぁー……じゃねぇや」
俺「デート、行きてぇだろ」
天「――あ」
少し驚いたような声を上げた天才は、かすかに頬を染めながら頷いた。
天「うん」
天「行きたい……かな」
俺「よし、決まりだ」
俺と天才は顔を突き合わせて、ガイドブックを覗き込んだ。
俺は天才を隣に下ろすと、葛所有のガイドブックを広げる。
天「どうしたの、それ?」
俺「ん、借りた。どっか近くに良いとこはねぇかなぁと思ってな」
天「珍しいね、君から外に行きたがるなんて」
俺「待て。人を引きこもりみたいに言うな」
たしかに俺は日頃、必要がない限り表には出ないが、
それは単に知り合いに会った時に、今の状況の説明がめんどくせぇからだ。
――まぁ、そりゃ、インドア派だってのもあるにはあるんだが……。
天「ごめんごめん。でも、どうしたの?」
俺「ん? あぁ――せっかく葛がいないんだしな」
天「?」
俺「二人で遊びに……あぁー……じゃねぇや」
俺「デート、行きてぇだろ」
天「――あ」
少し驚いたような声を上げた天才は、かすかに頬を染めながら頷いた。
天「うん」
天「行きたい……かな」
俺「よし、決まりだ」
俺と天才は顔を突き合わせて、ガイドブックを覗き込んだ。
946 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex78 投稿日: 2006/10/05(木) 03:38:15.04 ID:520wx1i00
俺「おーい、行くぞー」
玄関で靴を履き終えた俺は、まだ部屋で仕度をしている天才に声をかける。
天「ちょっと待ってよー」
慌て気味な声と共に、天才が姿を現した。
普段とは少しだけ違う雰囲気の格好。
天才はこちらへ駆けてきて、玄関マットの上でちょこん、と真っ直ぐに立った。
天「どう?」
俺「そんなスカート持ってたんだな」
天「持ってるよ。ていうか一緒に買ったでしょ?」
天「って、そうじゃなくてー」
頬を膨らませる天才。
俺はそれを突っついて空気を出させながら笑った。
俺「あぁ、似合ってるよ」
天「本当?」
俺「本当」
天「どういう風に?」
俺「……あー……」
天「…………」
俺は頬をかきながらそっぽを向くと、小さく告げた。
俺「――可愛い」
天「そう」
天才は俺の答えを聞くと、満足げに笑った。
俺「おーい、行くぞー」
玄関で靴を履き終えた俺は、まだ部屋で仕度をしている天才に声をかける。
天「ちょっと待ってよー」
慌て気味な声と共に、天才が姿を現した。
普段とは少しだけ違う雰囲気の格好。
天才はこちらへ駆けてきて、玄関マットの上でちょこん、と真っ直ぐに立った。
天「どう?」
俺「そんなスカート持ってたんだな」
天「持ってるよ。ていうか一緒に買ったでしょ?」
天「って、そうじゃなくてー」
頬を膨らませる天才。
俺はそれを突っついて空気を出させながら笑った。
俺「あぁ、似合ってるよ」
天「本当?」
俺「本当」
天「どういう風に?」
俺「……あー……」
天「…………」
俺は頬をかきながらそっぽを向くと、小さく告げた。
俺「――可愛い」
天「そう」
天才は俺の答えを聞くと、満足げに笑った。
948 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex79 投稿日: 2006/10/05(木) 03:42:02.78 ID:520wx1i00
ドアを開けて、外へ出る。
天「うわ、暑いね」
俺「だなぁ」
じりじりと太陽が照りつける夏の日。
晴れ渡る空の色は濃い群青色。
青々とした山の向こうには、入道雲がどっかりと腰を下ろしている。
蝉の大合唱が陽炎となってアスファルトをゆらめかせているかのようだった。
ドアを開けて、外へ出る。
天「うわ、暑いね」
俺「だなぁ」
じりじりと太陽が照りつける夏の日。
晴れ渡る空の色は濃い群青色。
青々とした山の向こうには、入道雲がどっかりと腰を下ろしている。
蝉の大合唱が陽炎となってアスファルトをゆらめかせているかのようだった。
俺「――じゃぁ、行くか」
俺はそう言って、天才に手を差し出し
――天才が手を伸ばし返すのを待つことなく――
そのまま手を取って腕を絡ませた。
天「あ……」
小さく驚きの声を漏らした天才に、俺は笑いかける。
そして、もう一度言う。
俺「行こう」
天才は少しの間きょとんとしていたが、やがて目を伏せて微笑し、
そして、ぱっと顔を上げた。
満面の笑みで頷く。
天「うん!」
俺はそう言って、天才に手を差し出し
――天才が手を伸ばし返すのを待つことなく――
そのまま手を取って腕を絡ませた。
天「あ……」
小さく驚きの声を漏らした天才に、俺は笑いかける。
そして、もう一度言う。
俺「行こう」
天才は少しの間きょとんとしていたが、やがて目を伏せて微笑し、
そして、ぱっと顔を上げた。
満面の笑みで頷く。
天「うん!」
俺が女になって――天才との暮らしが始まってから、早1年が経った。
今日まで、普通では体験できないような色々な出来事があった。
そしてきっと、これから先もたくさんの出来事があるんだろう。
そんな日々を、俺はコイツと過ごしていこう。
辛いことは一緒に乗り越えて、楽しいことは一緒に笑って。
今日まで、普通では体験できないような色々な出来事があった。
そしてきっと、これから先もたくさんの出来事があるんだろう。
そんな日々を、俺はコイツと過ごしていこう。
辛いことは一緒に乗り越えて、楽しいことは一緒に笑って。
今日もそんな思い出の一つになっていくことを願いながら――
俺たちは手を繋いで歩き出した。
949 名前: 長目 『クロ/クロ』Ex80 投稿日: 2006/10/05(木) 03:44:46.21 ID:520wx1i00
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Extra『XX XX XX』
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