ひょんなことから女の子
クロ/クロ 2『XX XX』
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hyon
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170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 18:16:15.41 ID:nYzJQ3o+0
シャアアアアア……。
朝のシャワーを浴びる。
どうにも寝汗が気になってしょうがない。
朝のシャワーを浴びる。
どうにも寝汗が気になってしょうがない。
肩口にかかる髪を指ですく。
髪もかなり伸びたなぁ。
男だった頃は短髪だったのが、今では襟足にかかるくらいになっている。
髪もかなり伸びたなぁ。
男だった頃は短髪だったのが、今では襟足にかかるくらいになっている。
シャワーノズルを手にとって、壁の姿見に湯を浴びせる。
真っ白な曇りが晴れ、鏡に全身が映った。
出るとこはそれなりに出て、引っ込むところはすっと引っ込んでいる。
見事に女性のボディラインだ。
むしろスタイルは良い方だろう。
だが……
俺「……あんまり『ク』るものがねぇなぁ」
自分の体だからだろうか。
それとも、こういったことの感じ方まで女になってるのか?
綺麗だとは思うが、欲情するかと言われれば――
そりゃ、全くしないといえば嘘になるが――ほとんどしない。
真っ白な曇りが晴れ、鏡に全身が映った。
出るとこはそれなりに出て、引っ込むところはすっと引っ込んでいる。
見事に女性のボディラインだ。
むしろスタイルは良い方だろう。
だが……
俺「……あんまり『ク』るものがねぇなぁ」
自分の体だからだろうか。
それとも、こういったことの感じ方まで女になってるのか?
綺麗だとは思うが、欲情するかと言われれば――
そりゃ、全くしないといえば嘘になるが――ほとんどしない。
俺「…………」
むに。
おお、柔らけー。
むに。
おお、柔らけー。
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 18:21:17.90 ID:nYzJQ3o+0
むに、むに、ふに。
ぷに、むに、むにゅ。
あ、これはやべぇ、変な気分になりそうだ。
むに、むに、ふに。
ぷに、むに、むにゅ。
あ、これはやべぇ、変な気分になりそうだ。
リビングには天才がいる。
こんなトコで朝っぱらからナニを始める訳にもいかない。
俺は湯船にざばっと飛び込んだ。
さっさと上がろう。
この空気はまずい、色々と。
こんなトコで朝っぱらからナニを始める訳にもいかない。
俺は湯船にざばっと飛び込んだ。
さっさと上がろう。
この空気はまずい、色々と。
湯船に半分顔を埋めた状態で、鏡を一瞥する。
そもそもこの姿が悪いんだ。俺に断りもなく可愛くなりやがって。
そもそもこの姿が悪いんだ。俺に断りもなく可愛くなりやがって。
湯船から顔を出して、まじまじと自分の顔を見る。
にこっと笑ってみた。
俺「ぐあぁ!」
コレは失敗だった。
にこっと笑ってみた。
俺「ぐあぁ!」
コレは失敗だった。
――ヤバイくらいに可愛い。
あまりに恥ずかしすぎる心境になって、俺は思わず湯船に沈み込んだ。
174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 18:25:20.18 ID:nYzJQ3o+0
非現実感満載なこの世の中で信じうるものは何か。
それはデジタルなもの。そう、たとえば金だ。
なんて理論は、実は嘘っぱちで――
いきなり口座に500万円も振り込まれてるのを確認すると、それすらも信じられなくなるな。
これ、マジか?
非現実感満載なこの世の中で信じうるものは何か。
それはデジタルなもの。そう、たとえば金だ。
なんて理論は、実は嘘っぱちで――
いきなり口座に500万円も振り込まれてるのを確認すると、それすらも信じられなくなるな。
これ、マジか?
天「どうしたの? さっきから通帳開いたり閉じたり」
俺「いや、なんでもない」
リビングではソファに腰掛けた天才が、足をぶらぶらさせながら牛乳を飲んでいる。
ラベルには『毎日カルシウムでぐんぐん伸びる!』とあった。
人の身体を派手に改造しときながら、自分は地道な努力をする奴だ。
俺「いや、なんでもない」
リビングではソファに腰掛けた天才が、足をぶらぶらさせながら牛乳を飲んでいる。
ラベルには『毎日カルシウムでぐんぐん伸びる!』とあった。
人の身体を派手に改造しときながら、自分は地道な努力をする奴だ。
俺「金おろして、ソバでも買ってくる」
俺は椅子から腰を上げる。とにかくこの部屋から抜け出したかった。
俺「隣の部屋に挨拶してくるわ」
天「いえいえ、お構いなく」
俺「お前じゃねえよ。反対側の部屋だって」
天「そう。じゃあ行こうか」
ぴょん、と天才がソファから立ち上がった。
俺「お前も来るのか」
嫌な予感がした。
俺は椅子から腰を上げる。とにかくこの部屋から抜け出したかった。
俺「隣の部屋に挨拶してくるわ」
天「いえいえ、お構いなく」
俺「お前じゃねえよ。反対側の部屋だって」
天「そう。じゃあ行こうか」
ぴょん、と天才がソファから立ち上がった。
俺「お前も来るのか」
嫌な予感がした。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 18:28:17.50 ID:nYzJQ3o+0
俺「……お前かよ」
?「はぁ~、どこかでお会いしましたっけ?」
俺「……お前かよ」
?「はぁ~、どこかでお会いしましたっけ?」
お隣に住んでいたのは、よく知った顔だった。
同じ研究室の葛(かつら)キョウコ。
コイツ、こんなトコに住むくらい金持ちだったのか?
そういやよく話はするのに、コイツのことほとんど知らないな。
同じ研究室の葛(かつら)キョウコ。
コイツ、こんなトコに住むくらい金持ちだったのか?
そういやよく話はするのに、コイツのことほとんど知らないな。
俺「あー俺だよ俺」
?=葛「あの、オレオレ詐欺は電話じゃないと意味ないですよ?」
俺「そうじゃねえ!」
?=葛「あの、オレオレ詐欺は電話じゃないと意味ないですよ?」
俺「そうじゃねえ!」
そこで初めて葛は、俺の背後に立っているチビッ子の存在に気付いたようだった。
葛「あれ、先生。こんにちわ~」
天「うん、こんにちは」
天「こちらは今回の実験の被験者で、えーと……」
天「ユウコちゃんよ?」
俺「待てぇ!」
俺「人の名前をコに変えるな! コに! しかも疑問形か!」
葛「あれ、先生。こんにちわ~」
天「うん、こんにちは」
天「こちらは今回の実験の被験者で、えーと……」
天「ユウコちゃんよ?」
俺「待てぇ!」
俺「人の名前をコに変えるな! コに! しかも疑問形か!」
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 18:31:35.91 ID:nYzJQ3o+0
葛「あぁ~、こちらが被験者の方ですか」
天「そう。よろしくしてあげてね」
葛「よろしくおねがいします~」
俺「あー……つまり、葛が、お前の言ってたもう1人のスタッフって訳か?」
天「そういうこと」
葛「あれ~? 私、名前いいましたっけ?」
俺「ああ、いや、知ってる。俺だよ、ユウキ、同じ研究室の」
葛「あぁ~。ユウキくんでしたかぁ」
葛「道理でどこか見覚えがあるな~と思いました、その眼鏡」
葛「しばらく見かけないと思っていたら、こっちの実験に参加してたんですねぇ」
葛「あぁ~、こちらが被験者の方ですか」
天「そう。よろしくしてあげてね」
葛「よろしくおねがいします~」
俺「あー……つまり、葛が、お前の言ってたもう1人のスタッフって訳か?」
天「そういうこと」
葛「あれ~? 私、名前いいましたっけ?」
俺「ああ、いや、知ってる。俺だよ、ユウキ、同じ研究室の」
葛「あぁ~。ユウキくんでしたかぁ」
葛「道理でどこか見覚えがあるな~と思いました、その眼鏡」
葛「しばらく見かけないと思っていたら、こっちの実験に参加してたんですねぇ」
葛「まぁまぁ、立ち話も難ですし、お上がり下さい~」
俺「あぁ、おう、邪魔するな」
天「お邪魔します」
俺「あぁ、おう、邪魔するな」
天「お邪魔します」
俺「あ、これ、引っ越しソバな」
葛「あらら、どうもご丁寧に~」
葛はソバを受け取り戸棚にしまうと、小さな包みを取り出してきた。
葛「こちら、引っ越しそばです、どうぞ」
俺「お前も越してきたばっかかよ」
葛「あらら、どうもご丁寧に~」
葛はソバを受け取り戸棚にしまうと、小さな包みを取り出してきた。
葛「こちら、引っ越しそばです、どうぞ」
俺「お前も越してきたばっかかよ」
177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 18:35:46.13 ID:nYzJQ3o+0
結局、その日の昼飯は全員でソバをすすることになった。
結局、その日の昼飯は全員でソバをすすることになった。
向かいに座った天才を、ぼんやりとながめる。
コイツがソバを喰うのに四苦八苦している様は、なかなか面白い。
天「何?」
俺「いや、別に」
葛「あら~、駄目ですよ。お箸を逆手で持ったりしたら~」
葛「こうやって、こう持つんですよ~」
天「むむむ……」
こうしてると年相応に見えるな。
俺「くっくっく……」
天「わっ、笑うなぁ」
コイツがソバを喰うのに四苦八苦している様は、なかなか面白い。
天「何?」
俺「いや、別に」
葛「あら~、駄目ですよ。お箸を逆手で持ったりしたら~」
葛「こうやって、こう持つんですよ~」
天「むむむ……」
こうしてると年相応に見えるな。
俺「くっくっく……」
天「わっ、笑うなぁ」
いい加減麺がのび始める頃になって、ようやっと天才はソバを平らげることができた。
俺「ふぅ」
葛「ごちそうさまでした」
天「ごちそうさま」
俺「ふぅ」
葛「ごちそうさまでした」
天「ごちそうさま」
天「さて、お腹も一杯になったし」
天才は自分のバッグをごそごそやり始める。
取り出したのは、真新しいデジカメだった。
天「写真撮るから、脱いで」
待て、その流れはなんだ。
天才は自分のバッグをごそごそやり始める。
取り出したのは、真新しいデジカメだった。
天「写真撮るから、脱いで」
待て、その流れはなんだ。
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:05:53.52 ID:nYzJQ3o+0
葛「はい、撮りますよ。笑って~」
俺「……なぁ」
天「別に笑わなくても良いよ。資料用だし」
俺「……そうか、助かる」
葛「はい、撮りますよ。笑って~」
俺「……なぁ」
天「別に笑わなくても良いよ。資料用だし」
俺「……そうか、助かる」
パシッ! とストロボが炊かれ、デジカメのシャッターが切られた。
被写体は素っ裸で突っ立っている俺。
身体変化の経過を写真に収めるそうだ。
そういえば、手術(?)初日にも写真を撮られたな。
どんな趣味なんだよと思ったが、今にしてみれば納得だ。
……しかし、人には見せられん光景だな、これは……。
身体変化の経過を写真に収めるそうだ。
そういえば、手術(?)初日にも写真を撮られたな。
どんな趣味なんだよと思ったが、今にしてみれば納得だ。
……しかし、人には見せられん光景だな、これは……。
葛「う~ん……」
俺「どうした?」
撮影も終わり、俺が服を着込んでいると、隣で葛がしきりにうなっていた。
そして、突然、ポンと手を叩いた。
葛「ユウキちゃん、お買い物に行きましょ~」
俺「は?」
俺「どうした?」
撮影も終わり、俺が服を着込んでいると、隣で葛がしきりにうなっていた。
そして、突然、ポンと手を叩いた。
葛「ユウキちゃん、お買い物に行きましょ~」
俺「は?」
突然何を言い出すんだコイツは?
ていうか「ちゃん」てなんだ。
ていうか「ちゃん」てなんだ。
189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:09:22.13 ID:nYzJQ3o+0
葛の主張によると、俺の服装がなってないらしい。
ちなみに今の格好はTシャツにジーンズ。下駄箱にはサンダルが脱ぎ捨ててある。
葛「せっかく可愛くなったんですから、服も可愛くしないと駄目ですよ~」
いや、でっけえお世話だ。
葛の主張によると、俺の服装がなってないらしい。
ちなみに今の格好はTシャツにジーンズ。下駄箱にはサンダルが脱ぎ捨ててある。
葛「せっかく可愛くなったんですから、服も可愛くしないと駄目ですよ~」
いや、でっけえお世話だ。
俺「まぁ待て。服装なんて実験には関係ないだろ? 俺はコレで良いんだよ」
自分が可愛い服着てるとこなんか想像もしたくない。
――今の姿でそれを想像したら、負ける気がする。
風呂場でした表情が、一瞬脳裏をよぎった。
駄目だ! 元の姿を、男の頃の姿を思いだせ俺!
それに可愛い服を着せる! どうだ!
俺「……げふっ」
……やらなきゃよかった。ダメージ受けたわ。キメェ……。
自分が可愛い服着てるとこなんか想像もしたくない。
――今の姿でそれを想像したら、負ける気がする。
風呂場でした表情が、一瞬脳裏をよぎった。
駄目だ! 元の姿を、男の頃の姿を思いだせ俺!
それに可愛い服を着せる! どうだ!
俺「……げふっ」
……やらなきゃよかった。ダメージ受けたわ。キメェ……。
俺「とにかく、これでいいんだよ」
葛「え~、でも~」
天「領収書は私の個人宛てで切ってもらってね」
俺「ってコラ、そこのガキ! 勝手に決定事項にしてんな!」
天「あまり遅くならないようにね」
俺「聞けぇ!」
葛「え~、でも~」
天「領収書は私の個人宛てで切ってもらってね」
俺「ってコラ、そこのガキ! 勝手に決定事項にしてんな!」
天「あまり遅くならないようにね」
俺「聞けぇ!」
結局、民主主義的意思決定(通称・多数決)に押し切られる形で、
俺は葛と街まで出かけることになった。
俺は葛と街まで出かけることになった。
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:12:32.02 ID:nYzJQ3o+0
時刻は2時を半分ほど回った頃。
街へ向かうバスの乗客はまばらだった。
……にも関わらず、
?「あれ? キョーコじゃん」
げ、アイツは同じ研究室の……。なんてタイミングの悪い。
葛「あら~、こんにちわ」
?=同「どうしたの? 先生と出張って聞いたけど」
葛「出張っていってもすぐ近くだよ。今日はちょっと部屋に戻ってたんだ~」
同「ふーん。そっちの人は? 知り合い?」
うわ、こっちみんな。話ふんな。
葛「うん、出張先の子~」
よし、ナイスフォロー。
俺は無言で会釈をする。
葛「今から一緒にお買い物なんだ~」
同「いいなー。こっちなんか先生の残してった実験で休みなしだよ」
葛「いやいや~、こっちはこっちで大変ですよ~」
同「そっかー。まーねー、あの先生だもんねー、キツそー」
同「あ、あたしここだから。じゃーねー」
葛「はい~、じゃあまた~」
時刻は2時を半分ほど回った頃。
街へ向かうバスの乗客はまばらだった。
……にも関わらず、
?「あれ? キョーコじゃん」
げ、アイツは同じ研究室の……。なんてタイミングの悪い。
葛「あら~、こんにちわ」
?=同「どうしたの? 先生と出張って聞いたけど」
葛「出張っていってもすぐ近くだよ。今日はちょっと部屋に戻ってたんだ~」
同「ふーん。そっちの人は? 知り合い?」
うわ、こっちみんな。話ふんな。
葛「うん、出張先の子~」
よし、ナイスフォロー。
俺は無言で会釈をする。
葛「今から一緒にお買い物なんだ~」
同「いいなー。こっちなんか先生の残してった実験で休みなしだよ」
葛「いやいや~、こっちはこっちで大変ですよ~」
同「そっかー。まーねー、あの先生だもんねー、キツそー」
同「あ、あたしここだから。じゃーねー」
葛「はい~、じゃあまた~」
そいつがバスから降りるのを見届けて、俺は大きく息をついた。
俺「っはぁ~……」
葛「ハラハラしましたねぇ~」
ちっともハラハラした風には見えない顔で、葛は笑った。
俺「っはぁ~……」
葛「ハラハラしましたねぇ~」
ちっともハラハラした風には見えない顔で、葛は笑った。
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:17:20.27 ID:nYzJQ3o+0
葛「さぁ、行きましょうか~」
行きがけですでに疲れ気味の俺を引っ張って、葛はずんずん街中へ進んでいった。
葛「さぁ、行きましょうか~」
行きがけですでに疲れ気味の俺を引っ張って、葛はずんずん街中へ進んでいった。
午後の街。
平日だというのに人通りはそれなりに多い。
沢山の人とすれ違う。
思えば、女の身体になってから、街中まで出るのはこれが初めてだ。
ソバの時はたまたま近所に店があったからそこで済ませたし……。
平日だというのに人通りはそれなりに多い。
沢山の人とすれ違う。
思えば、女の身体になってから、街中まで出るのはこれが初めてだ。
ソバの時はたまたま近所に店があったからそこで済ませたし……。
俺「…………」
人の視線が気になる。
すれ違う人とちょっと目が合うだけで、どこか変じゃないか気になってしまう。
気がつけば、シャツの裾を強く握っていた。
葛「そんなに人目を気にしなくてもいいですよぉ」
俺「人の心を勝手に読むんじゃないエスパーめ」
葛「エスパーじゃないですけど、分かりますよ~」
葛「さっきからおどおどきょろきょろして、まるで不審者ですよ~?」
俺「不審者……」
ちょっと傷付いた。
葛「あ、ここに入りましょう~」
へこむ俺をよそに、葛は雑貨屋を指差した。
人の視線が気になる。
すれ違う人とちょっと目が合うだけで、どこか変じゃないか気になってしまう。
気がつけば、シャツの裾を強く握っていた。
葛「そんなに人目を気にしなくてもいいですよぉ」
俺「人の心を勝手に読むんじゃないエスパーめ」
葛「エスパーじゃないですけど、分かりますよ~」
葛「さっきからおどおどきょろきょろして、まるで不審者ですよ~?」
俺「不審者……」
ちょっと傷付いた。
葛「あ、ここに入りましょう~」
へこむ俺をよそに、葛は雑貨屋を指差した。
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:20:52.21 ID:nYzJQ3o+0
葛「あ、これ。可愛い~」
そういって葛が手にしたのは、ペンギンのクッションだった。
俺には目が死んでるように見えるんだが、このペンギン。
葛「ほらほら~、ちょっと触ってみてください。気持ちいいですよ?」
目の前に突き出されたので、手でなぞってみる。
生地がさらさらしていて、たしかに触り心地は絶妙だった。
俺「おぉ、なんかいいなー」
葛「ですよね~。これ買いましょうよ~」
俺「雑貨とか買っても良いのか? どこまで金が下りるのか知らねえぞ」
通帳の中身を考えれば、仮に自腹でも別に痛くも痒くもないんだが。
むしろ、あまり可愛い系統の物を買いたくないという心理から出た言葉だった。
葛「あ、これ。可愛い~」
そういって葛が手にしたのは、ペンギンのクッションだった。
俺には目が死んでるように見えるんだが、このペンギン。
葛「ほらほら~、ちょっと触ってみてください。気持ちいいですよ?」
目の前に突き出されたので、手でなぞってみる。
生地がさらさらしていて、たしかに触り心地は絶妙だった。
俺「おぉ、なんかいいなー」
葛「ですよね~。これ買いましょうよ~」
俺「雑貨とか買っても良いのか? どこまで金が下りるのか知らねえぞ」
通帳の中身を考えれば、仮に自腹でも別に痛くも痒くもないんだが。
むしろ、あまり可愛い系統の物を買いたくないという心理から出た言葉だった。
と、葛は笑顔でそのペンギンを手渡してきた。
葛「じゃ~、これは私からプレゼントということで」
葛「大事にして下さいね?」
葛「じゃ~、これは私からプレゼントということで」
葛「大事にして下さいね?」
リボンつきの包装紙でくるまれたペンギンを両手で抱えて道を歩く。
俺「な、なんか女の子からプレゼントをもらうってのも照れくさいな」
葛「何言ってるんですか。ユウキちゃんも女の子じゃないですか~」
俺「いや、たしかにそうなんだけどな、でも……」
葛「あ、今度はあそこの店に行ってみましょう~」
俺「な、なんか女の子からプレゼントをもらうってのも照れくさいな」
葛「何言ってるんですか。ユウキちゃんも女の子じゃないですか~」
俺「いや、たしかにそうなんだけどな、でも……」
葛「あ、今度はあそこの店に行ってみましょう~」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:23:52.49 ID:nYzJQ3o+0
葛「これなんか似合いますよ~」
俺「なんでさっきからそう可愛い系の服ばっかり持ってくるんだよ」
葛「似合うからですよぅ」
俺「そ、そうなのか……?」
俺「なぁ、ちょっと女の視点から意見を聞いてみたいんだが」
俺「俺の今の見た目って、可愛いのか?」
葛「可愛いですよ~」
葛「これなんか似合いますよ~」
俺「なんでさっきからそう可愛い系の服ばっかり持ってくるんだよ」
葛「似合うからですよぅ」
俺「そ、そうなのか……?」
俺「なぁ、ちょっと女の視点から意見を聞いてみたいんだが」
俺「俺の今の見た目って、可愛いのか?」
葛「可愛いですよ~」
葛「ユウキくん格好良かったですしね~。素材が良いのかも~?」
葛「女の子になっても可愛いですよ~」
俺「失礼、今なんと?」
葛「可愛いですよ~」
俺「いや、そこじゃなくてだな」
葛「? 女の子になっても?」
俺「……あぁ……いいや、やっぱり」
今となっては意味のない話だしな……。
格好良い、か。
初めて言われたな。
葛「女の子になっても可愛いですよ~」
俺「失礼、今なんと?」
葛「可愛いですよ~」
俺「いや、そこじゃなくてだな」
葛「? 女の子になっても?」
俺「……あぁ……いいや、やっぱり」
今となっては意味のない話だしな……。
格好良い、か。
初めて言われたな。
あきらめようとしてたことのはずなのに――
少し、女の身体になってしまったことを後悔しそうになった。
少し、女の身体になってしまったことを後悔しそうになった。
葛「あ、あれもいいかもですよ~」
俺「まだ選ぶのかよ……しょうがねぇなぁ」
俺「まだ選ぶのかよ……しょうがねぇなぁ」
195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/15(火) 19:28:09.31 ID:nYzJQ3o+0
俺「……乗せられた……」
夜、部屋に戻った俺は、絶望的な気分で本日の戦果を眺めていた。
俺「……乗せられた……」
夜、部屋に戻った俺は、絶望的な気分で本日の戦果を眺めていた。
俺の……俺の部屋が……ファンシーな内装になっている……。
ソファの上にはピンクと水色のペアクッション、チェストの上には小さな花瓶や写真立て、
小花柄のテーブルクロスに、小振りなキッチンツールにその他諸々。
とどめに足下の袋には可愛い服が満載だ。
やっちまった……。
ソファの上にはピンクと水色のペアクッション、チェストの上には小さな花瓶や写真立て、
小花柄のテーブルクロスに、小振りなキッチンツールにその他諸々。
とどめに足下の袋には可愛い服が満載だ。
やっちまった……。
俺「やれやれ……」
シャワーで汗を流し、疲れ果てて寝室へ入る。
そして、手に持っていた“それ”を抱え上げ、目を合わせた。
俺「よー、ペン助」
黒くのっぺりしたボタンの瞳が、俺の顔を映し込んでいる。
その顔に、ふと、葛の笑顔が重なった。
ぼふっと、枕代わりに頭の下に敷いてやる。
さらさらした生地が頬に心地良い。
俺「…………」
腕の中に抱き込んでみた。
やはり心地良かった。
シャワーで汗を流し、疲れ果てて寝室へ入る。
そして、手に持っていた“それ”を抱え上げ、目を合わせた。
俺「よー、ペン助」
黒くのっぺりしたボタンの瞳が、俺の顔を映し込んでいる。
その顔に、ふと、葛の笑顔が重なった。
ぼふっと、枕代わりに頭の下に敷いてやる。
さらさらした生地が頬に心地良い。
俺「…………」
腕の中に抱き込んでみた。
やはり心地良かった。
俺「――まぁ、いいか」
そしてそのまま、俺は穏やかな眠りについた。
そしてそのまま、俺は穏やかな眠りについた。