ひょんなことから女の子
『おわりのうた』
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hyon
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382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/16(水) 21:25:03.59 ID:LhiDT4W60
『おわりのうた』
終わる世界に、私たちはいる。
朝、目を覚ませば、いつもと同じように君が隣で寝息を立てていた。
さらりと髪をなぞる。
栗色の髪が、朝日を反射して黄金色に光る。
さらりさらり。
さらりと髪をなぞる。
栗色の髪が、朝日を反射して黄金色に光る。
さらりさらり。
君「……ん」
私「ん、おはよう」
君「……どうしたの?」
枕に頬をうずめたままに、君は聞いてくる。
私「髪、こうすると綺麗だなって」
君「ふふっ、くすぐったいよ」
耐えきれなくなった君が、笑いながら私にしがみついてきた。
私と同じシャンプーの香り、その奥にほのかに君の香りがした。
私は君を胸に抱く。
そして片手で髪をすき、もう片方の手は腰の曲線をなぞる。
私「ん、おはよう」
君「……どうしたの?」
枕に頬をうずめたままに、君は聞いてくる。
私「髪、こうすると綺麗だなって」
君「ふふっ、くすぐったいよ」
耐えきれなくなった君が、笑いながら私にしがみついてきた。
私と同じシャンプーの香り、その奥にほのかに君の香りがした。
私は君を胸に抱く。
そして片手で髪をすき、もう片方の手は腰の曲線をなぞる。
君「やだ、起きたばっかなのに……もうするの?」
くすくすと笑う君は、言葉とは裏腹に、私の胸に一層強く顔をうずめた。
くすくすと笑う君は、言葉とは裏腹に、私の胸に一層強く顔をうずめた。
383 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/16(水) 21:27:54.27 ID:LhiDT4W60
それは突然のことだった。
今まで積み重なってきた人類の歴史が、
とてもとても危ういバランスの上に成り立っていたのだと、
その時になるまで誰も気付きはしなかった。
それは突然のことだった。
今まで積み重なってきた人類の歴史が、
とてもとても危ういバランスの上に成り立っていたのだと、
その時になるまで誰も気付きはしなかった。
3年前、崩壊は不意に訪れた。
――地球規模での突然変異。
それはあっという間に社会を、未来を、人間そのものを作り替えてしまった。
それは私も例外ではなかった。
それは私も例外ではなかった。
ある日、『ボク』は突然、『私』になった。
同じことは地球のいたる所で起きた。
同じことは地球のいたる所で起きた。
――今や、この世界には女性しかいない。
384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/16(水) 21:30:23.38 ID:LhiDT4W60
世界は、ゆるやかに死へ向かっている。
世界は、ゆるやかに死へ向かっている。
あきらめずに足掻く人々もいる。
神に祈る人々もいる。
でも、人類の大多数はこのどうしようもない現実を受け入れ、
そして、死んでいった。
神に祈る人々もいる。
でも、人類の大多数はこのどうしようもない現実を受け入れ、
そして、死んでいった。
この星に住む人々の誰も、子どもを生むことができない。
今を生きても、それを語り継いでいく者がいない。
未来を作ることができない。
それはある種の絶望だった。
今を生きても、それを語り継いでいく者がいない。
未来を作ることができない。
それはある種の絶望だった。
私はベッドから這い出ると、椅子の上に脱いであったワンピースを引っかけ、
テラスへと向かった。
黄金色の陽光に、主のいないビルたちが染められている。
私たちが、この街で残った最後の人間だった。
テラスへと向かった。
黄金色の陽光に、主のいないビルたちが染められている。
私たちが、この街で残った最後の人間だった。
私「人がいないだけで、こんなにも早く風化するんだ」
ボロボロの廃墟と呼ぶにふさわしい建物たちを眺め、独り呟く。
君「どうしたの?」
シーツを身体に巻いた君が、テラスにやってきた。
ボロボロの廃墟と呼ぶにふさわしい建物たちを眺め、独り呟く。
君「どうしたの?」
シーツを身体に巻いた君が、テラスにやってきた。
387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/16(水) 21:33:27.26 ID:LhiDT4W60
私「……私たちが死んだらさ」
君「うん」
私「このビルたちと同じ速さで、なくなっていくのかな」
君「……かも、ね」
私「そっ、か」
私「……私たちが死んだらさ」
君「うん」
私「このビルたちと同じ速さで、なくなっていくのかな」
君「……かも、ね」
私「そっ、か」
私は、君を後ろから抱く。
首をすくめて、頬をすりあわせた。
君がついと首を曲げる。
私はそれにあわせて、唇を重ねた。
首をすくめて、頬をすりあわせた。
君がついと首を曲げる。
私はそれにあわせて、唇を重ねた。
たとえばそれは宇宙人でもいい。
遠い時の彼方で、人と同じように進化した誰かでもいい。
私たちがここに生きて、ここで死んでいったのだと、
そして何より、ここで愛し合ったのだと、
それを伝えたい。
遠い時の彼方で、人と同じように進化した誰かでもいい。
私たちがここに生きて、ここで死んでいったのだと、
そして何より、ここで愛し合ったのだと、
それを伝えたい。
私はついに、それを口にしてしまった。
私「私たち、何かを遺せないのかな?」
君「…………」
私「私たち、何かを遺せないのかな?」
君「…………」
388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/16(水) 21:35:40.56 ID:LhiDT4W60
君「あっ!」
君は、ぱっと表情を輝かせると、身をひるがえす。
テラスに君の髪が踊った。
君「ねぇ、歌を遺そう」
君「私たちが愛し合ったっていう、とびっきりの歌」
歌、か。いいかもしれない。
でも、それを遺す術そのものが分からないんだ。
私「…………」
君「ね?」
君「あっ!」
君は、ぱっと表情を輝かせると、身をひるがえす。
テラスに君の髪が踊った。
君「ねぇ、歌を遺そう」
君「私たちが愛し合ったっていう、とびっきりの歌」
歌、か。いいかもしれない。
でも、それを遺す術そのものが分からないんだ。
私「…………」
君「ね?」
だけど――輝いた君の笑顔は、それくらいの現実ははねのけてしまいそうな気がして――
私「そう、だね」
私は、頷いた。
私「うん、歌おう」
私は、頷いた。
私「うん、歌おう」
389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/08/16(水) 21:38:21.98 ID:LhiDT4W60
部屋に戻って、携帯カメラをテーブルの上に置き、スイッチを押す。
そして、私たちは歌い出した。
楽譜なんかない。楽器もない。音程も、テンポも、正しくなんかない。
ただ、手を叩いて、ハミングを重ねて、
へたくそな、不器用な、けれども、とても素晴らしいメロディで、
私は歌う。
私「君が好き」
君も歌う。
君「あなたが好き」
部屋に戻って、携帯カメラをテーブルの上に置き、スイッチを押す。
そして、私たちは歌い出した。
楽譜なんかない。楽器もない。音程も、テンポも、正しくなんかない。
ただ、手を叩いて、ハミングを重ねて、
へたくそな、不器用な、けれども、とても素晴らしいメロディで、
私は歌う。
私「君が好き」
君も歌う。
君「あなたが好き」
それは結局のところ、いつしか風化していくんだろう。
でも、たしかにここにある。
君と私の愛の歌。
でも、たしかにここにある。
君と私の愛の歌。
そして、世界は終わる――
きっといつかどこかに伝わっていくメロディをその身に抱いて。
- f i n -