ひょんなことから女の子
クロ/クロ 4『XX∋X』
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194 名前: 長目『クロ/クロ』4-1 投稿日: 2006/08/20(日) 00:31:10.09 ID:rTixoNyi0
その日は朝から調子が悪かった。
例の筋肉痛かと思ったが、それとも違うようだ。
腹でも冷やしたのか、どうにも下腹が重い。
季節の変わり目だし、風邪でもひいたのかもしれない。
その日は朝から調子が悪かった。
例の筋肉痛かと思ったが、それとも違うようだ。
腹でも冷やしたのか、どうにも下腹が重い。
季節の変わり目だし、風邪でもひいたのかもしれない。
天「おはよう。――どうしたの? 難しい顔して」
俺「あぁ、風邪ひいたかも知れん。だるいし、腹がなんか重い」
天「ああそっか」
俺「あぁ、風邪ひいたかも知れん。だるいし、腹がなんか重い」
天「ああそっか」
天才は部屋に上がり込み、トイレに入っていったかと思うとすぐに出てきた。
続いてタンスの下着の段を開けると、そこから下着を一着取り出す。
天「はいこれ」
俺「……何だコレ」
天「知らないの?」
流石に知ってる。知ってるし、置いてあることも気付いていた。
だが、何故かその存在を認めたくなかった。
続いてタンスの下着の段を開けると、そこから下着を一着取り出す。
天「はいこれ」
俺「……何だコレ」
天「知らないの?」
流石に知ってる。知ってるし、置いてあることも気付いていた。
だが、何故かその存在を認めたくなかった。
天「生理用品」
言いやがった。
言いやがった。
195 名前: 長目『クロ/クロ』4-2 投稿日: 2006/08/20(日) 00:32:44.20 ID:rTixoNyi0
俺「これ、着けなきゃ駄目か?」
天「服や部屋が血だらけになって困るのは君だよ?」
俺「まぁ、それはそうなんだが」
四角い紙の包みをくるんくるんとひっくり返す。
開けると、CMで見たことがある、ミニチュアのおむつのような物が出てきた。
ぺり、とシール面を少し剥がしてみた。
俺「……で、これ、どうやって着けるんだ?」
天「そこに書いてあるから読みなよ」
薄っぺらい取説のシートを指差す天才。
俺「まぁ、いいや、トイレ行ってつけてくる」
俺はそこらに転がる道具一式をかき集めると、トイレへよろよろと歩いていった。
俺「これ、着けなきゃ駄目か?」
天「服や部屋が血だらけになって困るのは君だよ?」
俺「まぁ、それはそうなんだが」
四角い紙の包みをくるんくるんとひっくり返す。
開けると、CMで見たことがある、ミニチュアのおむつのような物が出てきた。
ぺり、とシール面を少し剥がしてみた。
俺「……で、これ、どうやって着けるんだ?」
天「そこに書いてあるから読みなよ」
薄っぺらい取説のシートを指差す天才。
俺「まぁ、いいや、トイレ行ってつけてくる」
俺はそこらに転がる道具一式をかき集めると、トイレへよろよろと歩いていった。
なんにしても助かったことが一つある。
必要なものを最初に買いそろえておいてくれたことだ。
こんなの自分で買いに行くとかマジであり得ないしな。
天「あ、それ、足りない分は自分で買ってね。費用は持つから」
俺「待て。足りないのかよ」
天「消耗品だもん、補充はいるでしょ」
天「それに生理用ショーツも今2枚しかないし。あとはポーチもかな」
俺「ガッデム」
そんなに要るのかよ。
……今度、葛に協力を仰ごう。
必要なものを最初に買いそろえておいてくれたことだ。
こんなの自分で買いに行くとかマジであり得ないしな。
天「あ、それ、足りない分は自分で買ってね。費用は持つから」
俺「待て。足りないのかよ」
天「消耗品だもん、補充はいるでしょ」
天「それに生理用ショーツも今2枚しかないし。あとはポーチもかな」
俺「ガッデム」
そんなに要るのかよ。
……今度、葛に協力を仰ごう。
196 名前: 長目『クロ/クロ』4-3 投稿日: 2006/08/20(日) 00:33:58.43 ID:rTixoNyi0
俺「それにしても、お前……よくあれだけで『あれ』って分かったな」
どうにかナプキンを装着することに成功した(と思う)俺は、
股間の慣れない感覚に何回も座りを直しながら、天才に聞いた。
天「うん、それはね」
天才は自分のバッグから手帳を取り出す。
付箋のついたページを開いて、こちらに見せた。
天「毎日体温計ってもらってたでしょ。これ、君の基礎体温表」
天「見た感じ、そろそろかなって」
俺「体温って……そのためだったのかよ……」
脱力した俺は、がっくりとテーブルに突っ伏す。
天「バイタル面の観察とか、他にも色々意味はあるけどね」
俺「それにしても、お前……よくあれだけで『あれ』って分かったな」
どうにかナプキンを装着することに成功した(と思う)俺は、
股間の慣れない感覚に何回も座りを直しながら、天才に聞いた。
天「うん、それはね」
天才は自分のバッグから手帳を取り出す。
付箋のついたページを開いて、こちらに見せた。
天「毎日体温計ってもらってたでしょ。これ、君の基礎体温表」
天「見た感じ、そろそろかなって」
俺「体温って……そのためだったのかよ……」
脱力した俺は、がっくりとテーブルに突っ伏す。
天「バイタル面の観察とか、他にも色々意味はあるけどね」
天「ところで、使い終わった物は、サンプル取るから渡してね?」
俺「……そこまで嫌なサンプル採取もねぇよな……」
天「それもそうかもね」
天「じゃあ、今から産婦人科へ行って直に――」
俺「いいから、渡すから、それは勘弁してくれ」
俺「……そこまで嫌なサンプル採取もねぇよな……」
天「それもそうかもね」
天「じゃあ、今から産婦人科へ行って直に――」
俺「いいから、渡すから、それは勘弁してくれ」
197 名前: 長目『クロ/クロ』4-4 投稿日: 2006/08/20(日) 00:35:24.38 ID:rTixoNyi0
夜、俺は天才の作った晩飯を、何ともいえない表情で見下ろしていた。
天「どうしたの? 食べないの?」
夜、俺は天才の作った晩飯を、何ともいえない表情で見下ろしていた。
天「どうしたの? 食べないの?」
俺「お前さぁ……」
天「なに?」
俺「ホントにアメリカ人か?」
天「見れば分かるでしょ」
俺「まぁ、日本人じゃねぇよなぁ」
葛「あらあら~、これはおめでたいですね~」
茶碗に盛られた“それ”を箸でつつく。
天「なに?」
俺「ホントにアメリカ人か?」
天「見れば分かるでしょ」
俺「まぁ、日本人じゃねぇよなぁ」
葛「あらあら~、これはおめでたいですね~」
茶碗に盛られた“それ”を箸でつつく。
どう見ても赤飯です、本当にありがとうございました。
天「おめでとう」
葛「おめでとうございます~」
俺「うるせぇぇぇ!」
葛「おめでとうございます~」
俺「うるせぇぇぇ!」
198 名前: 長目『クロ/クロ』4-5 投稿日: 2006/08/20(日) 00:36:04.60 ID:rTixoNyi0
風呂に湯を張ろうと湯沸かし器の前に立ったら、天才がそれを制した。
天「シャワーだけにしておいたほうがいいよ」
俺「ん?」
天「血がお湯に混じっちゃうから」
俺「あぁ、なるほど」
風呂に湯を張ろうと湯沸かし器の前に立ったら、天才がそれを制した。
天「シャワーだけにしておいたほうがいいよ」
俺「ん?」
天「血がお湯に混じっちゃうから」
俺「あぁ、なるほど」
できれば湯船に浸かりたいのだがしょうがない。
シャワーだけを浴びた俺は、浴室から出る。
トイレで『夜用』と書かれたナプキンを着けると、
さっきまで着けていた方を丸めて袋に入れ、天才に渡した。
俺「ほら」
天「うん、ありがと」
天才は受け取ったそれをジップのついた袋に入れる。
そして白いラベルに『Menstruationsblut』と走り書き、袋に貼りつけた。
それを眺めている俺は、傍目にも分かるほどに鬱々とした表情をしてるんだろう。
俺「……はぁ」
天「どうしたの?」
俺「あぁ、もう俺、本気で女になっちまったんだなぁ、と……」
天「何を今さら」
俺「いや、なんかこう、外見的なものだけじゃなく中身まで、というか」
血のついたアレを見た時に、「自分が子どもを産める身体になってしまったのだ」
と実感し、妙にブルーな気分になってしまったのだ。
天「そういう実験だからね」
素っ気なく言い放つ天才。
くそぅ……人の気も知らないで。
シャワーだけを浴びた俺は、浴室から出る。
トイレで『夜用』と書かれたナプキンを着けると、
さっきまで着けていた方を丸めて袋に入れ、天才に渡した。
俺「ほら」
天「うん、ありがと」
天才は受け取ったそれをジップのついた袋に入れる。
そして白いラベルに『Menstruationsblut』と走り書き、袋に貼りつけた。
それを眺めている俺は、傍目にも分かるほどに鬱々とした表情をしてるんだろう。
俺「……はぁ」
天「どうしたの?」
俺「あぁ、もう俺、本気で女になっちまったんだなぁ、と……」
天「何を今さら」
俺「いや、なんかこう、外見的なものだけじゃなく中身まで、というか」
血のついたアレを見た時に、「自分が子どもを産める身体になってしまったのだ」
と実感し、妙にブルーな気分になってしまったのだ。
天「そういう実験だからね」
素っ気なく言い放つ天才。
くそぅ……人の気も知らないで。
199 名前: 長目『クロ/クロ』4-6 投稿日: 2006/08/20(日) 00:39:00.95 ID:rTixoNyi0
翌々日。
翌々日。
俺「あーもう、なんもやる気しねぇー」
ソファに寝転がり、けだるさを誤魔化すようにTVのリモコンをいじる。
一昨日から段々と腹部の重みが増してきていた。腹の奥がしぼられてるみたいだ。
脂汗が額に浮く。
天「初めてだけど症状重いね。やっぱり産婦人科にいこうか?」
俺「それは研究のためか?」
天「ううん、苦しそうだからだよ。データも欲しいには欲しいけど」
俺「じゃあ断る」
俺「というか、そこまで行くのもキツい」
実際には、産婦人科なんかにかかりたくないというのが最大の理由だが。
天「そんなにつらいんだ」
俺「まぁ、お前には分かんねぇだろな……」
生まれついての女がどれくらいの歳で最初に『来る』のか知らないが、
コイツは見た感じまだだよな。
天「そう……だよね、ごめん」
うつむいて、服の裾をいじる天才。
またへこんでんのか。変なとこでメンタル面が弱い奴だな。
……まぁ、俺もツンケンしすぎたかな。
俺「まぁ、じきにお前にもこの苦しみが分かる日が来る……」
俺「楽しみにしておくがいいさ……」
天「……そう、だね」
無理矢理にでも笑顔になってやると、天才の表情も少しだけ明るくなった。
でもなぜか俺には、その弱々しい笑顔の奥に
俺の知らない様々な感情が押しこめられている気がしてならなかった。
ソファに寝転がり、けだるさを誤魔化すようにTVのリモコンをいじる。
一昨日から段々と腹部の重みが増してきていた。腹の奥がしぼられてるみたいだ。
脂汗が額に浮く。
天「初めてだけど症状重いね。やっぱり産婦人科にいこうか?」
俺「それは研究のためか?」
天「ううん、苦しそうだからだよ。データも欲しいには欲しいけど」
俺「じゃあ断る」
俺「というか、そこまで行くのもキツい」
実際には、産婦人科なんかにかかりたくないというのが最大の理由だが。
天「そんなにつらいんだ」
俺「まぁ、お前には分かんねぇだろな……」
生まれついての女がどれくらいの歳で最初に『来る』のか知らないが、
コイツは見た感じまだだよな。
天「そう……だよね、ごめん」
うつむいて、服の裾をいじる天才。
またへこんでんのか。変なとこでメンタル面が弱い奴だな。
……まぁ、俺もツンケンしすぎたかな。
俺「まぁ、じきにお前にもこの苦しみが分かる日が来る……」
俺「楽しみにしておくがいいさ……」
天「……そう、だね」
無理矢理にでも笑顔になってやると、天才の表情も少しだけ明るくなった。
でもなぜか俺には、その弱々しい笑顔の奥に
俺の知らない様々な感情が押しこめられている気がしてならなかった。
200 名前: 長目『クロ/クロ』4-7 投稿日: 2006/08/20(日) 00:40:43.36 ID:rTixoNyi0
俺はソファの上で目を閉じて、とにかくこの苦行が終わるのを待っていた。
と、不意に額にひやりとした感覚が。
俺「ん……」
薄目を開けると、天才がこちらを覗き込んでいた。
濡らしたタオルが額に当てられている。
いつかのように、天才の手が優しく額をなぞり、汗を拭き取っていく。
俺はソファの上で目を閉じて、とにかくこの苦行が終わるのを待っていた。
と、不意に額にひやりとした感覚が。
俺「ん……」
薄目を開けると、天才がこちらを覗き込んでいた。
濡らしたタオルが額に当てられている。
いつかのように、天才の手が優しく額をなぞり、汗を拭き取っていく。
俺「お前……」
はーっ、と自分の手にあたたかい息を吐きかける天才。
天「症状を軽くするには、お腹をあたためるといいんだって」
告げて、あたためたその手をゆっくりと包むよう俺の下腹部に置いた。
天「私は君の苦しさは分からないけど……」
天「私には知識だけしかないけど……」
天「けど、何かしてあげたいんだよ」
それきり黙った天才は、優しく下腹をなぜる。
――あったかい。
不思議なもので、ただそれだけで本当に気分が良くなってきた気がする。
緊張の糸が切れて、まぶたが重くなってくるのを感じた。
穏やかなまどろみの中で、ふと思う。
この心地よさは、温度だとか知識とかそういうものではなく、
コイツの優しさのおかげなのかもな、と。
はーっ、と自分の手にあたたかい息を吐きかける天才。
天「症状を軽くするには、お腹をあたためるといいんだって」
告げて、あたためたその手をゆっくりと包むよう俺の下腹部に置いた。
天「私は君の苦しさは分からないけど……」
天「私には知識だけしかないけど……」
天「けど、何かしてあげたいんだよ」
それきり黙った天才は、優しく下腹をなぜる。
――あったかい。
不思議なもので、ただそれだけで本当に気分が良くなってきた気がする。
緊張の糸が切れて、まぶたが重くなってくるのを感じた。
穏やかなまどろみの中で、ふと思う。
この心地よさは、温度だとか知識とかそういうものではなく、
コイツの優しさのおかげなのかもな、と。
201 名前: 長目『クロ/クロ』4-8 投稿日: 2006/08/20(日) 00:42:23.33 ID:rTixoNyi0
…………。
…………。
天「……寝ちゃった?」
ぼんやりした意識の中で、天才の声が聞こえる。
静かに、お腹にタオルケットか何かがかけられる感覚。
ささやくような、天才の声が聞こえる。
天「君の気持ち……分かってあげられなくてごめんね」
なんだよ、気にすんなって……。
俺だって、お前のこと……
天「私も、もうすぐ……もうすぐ、ね……」
そこで天才が沈黙したのか、俺の意識が落ちたのか、
それ以降の言葉は、もう聞こえなかった。