創作発表板 私メリーさん まとめ @ ウィキ

ふと携帯を見ると着信が一見有った

最終更新:

iammary

- view
だれでも歓迎! 編集
140 :創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:41:03 ID:vP3L3foC

ふと携帯を見ると着信が一見有った
確認をしてみると実に妙な事が書いてある。
『件名 私メリーさん』
『内容 このメールを見て振り向いたときアナタは―――』

『死ぬ』

振り向いたら、死ぬ。実に奇妙な話だ。
私は横目で周囲の様子を確認した。
(……紫鏡には何も写ってはいない)
人面犬も変わった様子はない。鼻には特に異常を感じてはないようだ。
(やはり、イタズラか……)
そう自嘲すると、私は連れのカシマさんに声をかけようと後ろを向いた。
振り向いた私の目に、とても奇妙な光景が見えた。
少女が笑っていた。それも、顔だけで。
金髪の、年端もいかない少女の顔が虚空に浮かび、こちらを見て笑っていた。
いや、顔だけではなかった。
首から、肩、手や胴体がうっすらと浮かび上がってくる。
(な、なんだコイツは? さっきは、確かに! 何もいなかった筈!)
私は反射的にカシマと人面犬を突き飛ばした。
「カシマ! 人面犬! あぶない!」

ガォン!!!

「な、なんだ!クチサケ! どうした!?」
「……クチサケは、粉みじんになって死んだ」


145 :創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 23:02:52 ID:vP3L3foC

カシマと人面犬の前に一人の少女が立っていた。
青白い顔をした、酷薄な笑みを浮かべた、ワンピースの少女。
その手には携帯電話が握られている。
そしてその足元には、足が転がっていた。
太ももから上が綺麗に無くなっている、綺麗な両脚。
カシマにはそれが誰の脚なのか理解したが、それを受け入れる事は瞬時には出来なかった。
「お、おいクチサケ! どこにいるんだ! クチサケ!」
カシマの空しい叫びが辺りに響く。
人面犬が情けない声で鳴いた。
少女は彼らに納得させるように、あるいは覚悟を決めさせるかのように、
ゆっくりと、地面に転がっている脚を掴んで、持ち上げた。
そして、口の端を歪めて微笑み、彼らに告げた。
「もう一度言うわ。クチサケは粉みじんになって死んだ」
「な、なに!?」
少女が脚を携帯電話の液晶に近づけると、次の瞬間、脚が画面へと吸い込まれていった。
「私の携帯は、私自身も知らないけど亜空間に通じているの。クチサケはそこに放り込まれちゃった」
少女はそう言いながらもう片方の脚を掴むと、同じ様に液晶に押し付け、消し去る。
「思い上がりは消さなければいけない。私以上に知名度がある都市伝説の輩なんて―――だから消した」
一歩、また一歩と、少女はカシマと人面犬の元へゆっくりと歩を進めていく。
「一人一人、確実に確実に、このメリーさんの携帯亜空間にばら撒いてやる」


152 :創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 23:20:41 ID:vP3L3foC

「…・・・を、つく……な」
「あらら、なに?」
可愛らしくメリーは微笑む。
その表情に反して、カシマは叫んだ。
「クチサケが死んだなどと……嘘をつくなーーーーーっ!!!!」
激昂してメリーに近づき、両脚をひきちぎろうと腕を伸ばす。
「無駄無駄無駄無駄」
メリーは携帯を開くと、そこに自分の指を近づける。
液晶に指が触れるとそこから画面へと吸い込まれ、身体が消えていく
メリーの身体が消えると携帯が折りたたみ、たたまれた瞬間携帯も消えうせる。
カシマの双腕は虚空を掴んだだけだった。
「ちっくしょーーーーっっっ!!!」
腹立ち紛れに地面へ一撃をあたえると、人面犬に目をむける。
「人面犬! アタシの背後に回れ!アタシは前方を見る!」

(メリー!お前がどこにいるかは知らないが、これだけは言える!)
荒い息を吐きながら、カシマは全神経を周りに集中させる。
(次にお前がその姿を現したとき、アタシは……プッツンするだろうという事だぜ!)


159 :創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 23:47:49 ID:vP3L3foC

メリーが姿を消してから、三秒、五秒と、カシマにとって長い時間が過ぎてゆき
十秒に達した時、カシマの肩先に何かが触れた。
(……埃?)
見上げると、空中高くにメリーが出現していた。
その姿を視界に入れたとき、カシマは「プッツン」した。
「メリーーーーーーー!!!」
カシマの叫びを受け流し、メリーは薄ら笑いを浮かべ携帯を開いた。
車体が写っている待ち受け画像。
いや、待ち受け画像ではなかった。
携帯の画像から、車の一部分が外へと現われ始める。
「入る事が出来るのならば出す事も可能! それは私以外にも例外無し!」
カシマの頭上に、質量を持った巨大な物体が出現する。
「ロードローラーだっ!」
「オラオラオラオラ!!!」
カシマは両腕を振り回し、機械の部品を引きちぎっては投げ捨てる。
「もう遅い!脱出不可能よ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
MERYYYYYY! ブッ潰れよーーーーっっ!!!」
ロードローラーがカシマの姿を覆い隠し、そして―――地面に着地した。
埃が巻き上がった後、静寂が辺りを支配した。
その静寂を打ち消すかのようにメリーは哄笑した。
そしてロードローラーから地面へと降り、死体を確認しようとする。
「都市伝説の輩は妖怪だから……死んだ振りをしてるかもしれないわ」
ロードローラーの真下へと顔をむけると、そこには確かに
血まみれのカシマの顔があった。
「アハハ、これで都市伝説ヒロインは私一人……以前、変わりなく!」


166 :創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:24:47 ID:kQBIwetk

ロードローラの前で笑うメリーの肩を誰かが叩いた。
「え?」
振り向くメリーの片足に、灼熱の痛みが走る。
「あぐぁっ!」
その痛みに、たまらずメリーは倒れた。
「あたしカシマさん。いま、あなたの後ろにいるの」
メリーの後ろには、カシマが立っていた。
そして、その手にはメリーの片足が握られている。
メリーが振り向いた瞬間に、カシマが脚を引きちぎったのだった。
「う、嘘だ!」
メリーはロードローラの方へと目をむける。
そこには確かに、下敷きになったカシマの顔があった。
「人面犬の顔をアタシに変えて身代わりにした……潰される寸前でな。
そしてやれやれ……間に合ったぜ」
興味なさそうに脚を投げ捨て、カシマはメリーを見下ろす。
「その携帯から今度はどうする気だ? また携帯を開いて逃げる気か?
……やってみな、アンタが携帯を開いた時が合図だ。どっちが早いか―――
勝負といこうじゃないか」
悠然と両腕をのばし、カシマは構えた。
メリーはうずくまりながら舌打ちする。
(コ、コケにしやがって……ビッチ!)
メリーは怒りと痛みで顔を歪ませたが、やがてその顔は笑みへと変わった。
(だが、ここにきて……やはり貴女は甘ちゃんだわ。
『あと味のよくないものを残す』とか『人生に悔いを残さない』だとか…
便所ネズミのクソにも匹敵する、そのくだらない物の考え方が命とりよ!
このメリーにはそれはない…あるのはシンプルなたったひとつの思想だけ…
たったひとつ!『私メリーさん』!それだけよ…それだけが満足感よ!)
両手と片足でバランスを取り、メリーさんはフラフラと起き上がる。
(過程や……!方法なぞ………!)
呼吸を整え、カシマを見つめ返す。
「どうでもよいのだァーーーーーーっ!」
メリーが叫び、次の瞬間、引きちぎられた脚から血が迸った。
迸る血が、カシマの視界を遮る。
「どうだこの血の目潰しは! 勝った、死になさい!」
勝利を確信し。メリーは携帯を開こうとした。


172 :創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:57:34 ID:kQBIwetk

だが開こうとした手を、カシマに掴まれる。
そしてそのまま携帯ごと手首から引き千切られる。
「おせろっとーーーっっっ!!!」
訳のわからない悲鳴を上げてメリーはのけ反った。
片足でバランスを支えきれずに、そのまま地面へとまた倒れる。
「ひるむ……!と、思うのか……これしきの……これしきの事でよォォォオオオ
あたしはよォ……この都市を……何事もなく…一人で脱出するぜ。
それじゃあな……」
ゆっくりと近づくカシマに、メリーは哀願した。
私のそばに近寄らないでええーーーーーーーーーッ!」
「自分を知れ…そんなオイシイ話が……あると思うのか? おまえの様な人間に。」
冷たくカシマは言い放った。
「なんてひどい野…」
「亜空間にはばら撒けないけど、消してやるよ。この世からな、
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ―――」
カシマの手が触れる度に、メリーの身体が消え去っていく。
両腕をつかい、次々と引き千切っているのだ。
細切れになっていくメリー。
すでに、悲鳴を上げる事さえ出来なかった。
「アリーヴェデルチ! 《さよならだ!》」
カシマが腕を動かすのを止めると、そこにはもう誰もいなかった。
血だまりの中にひとつ、携帯電話があるだけだった。
深呼吸をしカシマは呟いく。
「てめーの敗因は…たったひとつだぜ…メリー…
たったひとつの単純な答えだ…『カシマのマは悪魔の魔』」
カシマは目を瞑った。
死んだ友人の為の黙祷なのか、それとも緊張の糸が解けて疲れたのか
それはわからなかったが、カシマはそのまま、ずっと立ちつくしていた。



KASIMA WIN!      -第三部 完-
ウィキ募集バナー