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 学校が尊重されていた時代には、外部の者が学校に侵入して児童・生徒や教師を殺傷する事件が起きるなどということは考えられないことだった。しかし、池田小事件を嚆矢として、その後も外部の侵入者による事件が起こっている。そして、2005年3月31日の報道によると、文部科学省は学校の校門を原則施錠とし、教師立ち会いの下に開けるという指示を出したとされる。

  指針の「再点検ポイント」によると、まず不審者侵入防止では、(1)校門(2)敷地(3)校舎の3段階でチェック体制を確立すべきだと指摘。校門では、施錠を原則とし、登下校時は教職員や地域ボランティア、警備員が立ち会うことが望ましいとした。「危機管理マニュアル」では「登下校時以外は施錠するなど、適切に管理する」となっていたものを厳格化した形だ。 
  また、敷地では校舎入り口まで、職員室から見通しのいい順路を設定することを求めている。さらに、寝屋川の事件では職員室まで案内している最中に教師が刺されたことを踏まえ、受付近くに応接スペースを設けて対応すべきだとした。 72)朝日新聞2005年3月31日

 学校の中で、子どもの活動時間帯に殺害されるという事件は、1999年12月21日に、京都の日野小学校で起きた事件が最初だろう。傷害事件としては、88年7月神奈川県平塚市の市立山城中にカマとおのを持った男が乱入、授業中の生徒に切りつけ、8人が重軽傷を負う事件が起きている。しかし、その直後の2000年1月14日には、和歌山の中学で、外から侵入した男に、中学一年の生徒が包丁で切り付けられる事件が起きている。
 現場ではさまざまな対応がとられ始めた。

  京都市や静岡市などで、学校の敷地内で殺人などの事件が起きたことを受けて
 、子どもたちを守るために不必要な「人の出入り」を抑えよう、との動きが高ま
 っている。静岡市教委が市内の公立の小、中、高校を対象に、敷地内への無断立
 ち入りを禁じる看板を配布したのに続き、浜松市教委も二十八日、看板などを設
 置したり、学校内外の安全を点検したりしていくことを明らかにした。
  浜松市教委が作ったのは、「無断で校内(園内)へ立ち入ることを禁止します
 」と書かれた看板と、「用事のある方は、職員室(事務室)にお寄りください」
 という張り紙の二種類。市立の幼稚園や小、中学校、高校計百二十一カ所を対象
 に、今週中にも配り始める予定だ。73)「事件から子ども守ろう 「校内無断立ち入り禁止」浜松市も /静岡」朝日新聞00/02/29}

 次のような対応もある。

\begin{quotation}
  京都の児童刺殺事件や新潟の少女監禁事件など子どもを狙った犯罪が全国的な
 問題となっている中で、事件を未然に防ごうと、下町の小学生に防犯ブザーやリ
 ーフレットを渡す動きが出ている。
  防犯ブザーを渡したのは、江東区富岡の区立数矢[[小学校]]のPTA。六日、全児
 童五百六十三人に防犯ブザーを渡した。
  ブザーは緑色の筒型のホイッスルタイプで、重さ二十二グラム。上部のふたを
 あけると、「ウィウィウィ」とサイレンのような耳に残る音が鳴る。ただし「ブ
 ザーの音を聞いたら自分で助けに行かないで、まわりの大人に知らせてほしい」
 (立中幸江校長)という。74)「地域で守る子どもの安全 防犯ブザー、対応例の冊子配布など/東京」朝日新聞00/03/08

 このような事件を受けて、文部省は学校の安全対策の指針の作成に入る。しかし、それが十分な成果をあげないうちに、2001年6月8日に大阪で大阪教育大付属池田小学校で20数名が殺傷される大事件が発生してしまった。
 事件の翌日の毎日新聞は次のような記事を掲載している。

  同省は事件発生を受けて、即座に「対策本部」を設置。職員を現地に派遣して情報収集にあたるとともに、各学校に対して安全管理の徹底を指示した。 
  99年12月京都市の小学校の事件で、事態を重視した文部省は、省内で学校の安全管理の強化を検討し、00年1月、各都道府県[[教育委員会]]などに「幼児児童生徒の安全確保および学校の安全管理について」とする通知を出した。学校と教育委員会、家庭・地域がともに連携して行う、日常時と非常時に分けての点検事項を列記した。 
  通知では、来訪者の入り口を明示し、外部からの出入りの確認を実施しているか、不審者が入った場合、子供たちの避難や警察への通報体制が整っているかなど、具体的な項目を例示して、実施状況や改善計画を書き込むようになっている。実際の対応は各学校や教育委員会に任されており、対応はまちまちという。75)http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/osaka/200106/09-7.html\footnote{

 池田小の事件は、京都日野小よりももっと大きな衝撃を教育関係者だけではなく、社会全体に与えた。校庭での殺害ではなく、授業中の教室に入り込んでの大量の殺害だったからである。この後、文部省が進めている「開かれた学校」づくりの政策にも関連して、学校の安全の根本的な議論が進んでいる。
 7月12日に文部科学省は、安全管理の対策のために財政補助を行うことを公表し、以下の項目とした。

  【費用負担を伴う主な緊急対策】
  ○ 特別交付税により対応
     ・監視カメラ等の防犯設備の設置
     ・ブザー等の非常通報装置の設置   等
  ○ 地方債により対応
     ・校門やフェンス等の整備
     ・教室や職員室の配置の変更 等76)http://www.mext.go.jp/b\_menu/houdou/index.htm\footnote{

 これを受けて、地方の教育委員会も安全対策の具体的な措置を決めていった。一例をあげておこう。

  大阪教育大付属池田小学校の児童・教師殺傷事件を教訓に、学校がとるべき安
 全対策を話し合う金沢市教委の諮問機関「学校安全管理総合対策検討委員会」(
 座長・金子劭栄金沢大教授)が開かれた。前回の議論を踏まえ、校内の定期巡回
 などを盛り込んだ対策案が提示された。
  設備面では、モニター付きドアホンの設置▽小学校低学年の教室を職員室のそ
 ばや上階に移動▽警備会社(警察)と学校を結ぶ非常通報装置の設置▽催涙スプ
 レーなどの防犯道具の配備――などが挙げられた。人的な防犯策は、学校安全協
 力員(仮称)らによる校内定期巡回▽名札の着用▽来校者の身元確認▽防犯訓練
 の実施▽子ども110番の周知――など。必要に応じて順次実施する。
  委員からは「防犯マニュアルの作成が必要」「職員室を1階にした方がいい」
 などの意見が出た。
  早期に必要な防犯策については、金子座長が8月初旬に市教委に提出する提言
 書に盛り込み、長期的な取り組みは9月上旬に話し合うという。77)定期巡回など提示 金沢市教委が学校安全対策委 /石川 朝日新聞01/7/27

 さて、最後にこの点について考察しておこう。
 学校が安全な場所でなければならないことは言うまでもないが、外部からの侵入者を対して完全に排除することはできない。100%の安全はありえないだろう。しかし、建物の構造などによって、かなり防げることも事実である。
 欧米の建築物と日本の建築物は、外部との境界に対して異なった造り方をしている。日本は塀で外部と遮断するが、欧米は通常建物で遮断する。したがって、欧米の建物にはあまり塀が見られない。これは王宮なども例外ではなく、一般市民も王宮の広大の庭で散歩したり、運動したりすることが可能である。
 欧米の学校は、玄関に鍵がつけられて、始業時間になって生徒が入ると、鍵をかけ、アポイントがない限り、外部の者が入れないようにする。また終業時間になると、生徒は全員帰宅しなければならない。
 放課後のスポーツなどの扱いは国によって違うが、通常は管理体制が代わる。
 このようにして、授業中の安全を確保しているのである。少なくとも外部からの侵入者に対する安全は、こうした欧米流の管理の方がすぐれているかも知れない。
 日本のように塀で仕切る場合には、門での管理になるが、塀を乗り越えられたら侵入を防ぐことはできないわけである。しかし、体育を校庭でやることを考えれば、建物を境界とすることは、日本の場合困難であろう。すると、現在教育委員会が進めている監視カメラやブザーなどの方式にならざるをえないのだろうか。
 論点のもうひとつは、学校を地域に開かれたものにすると、危険なのか、あるいは逆に安全なのか、大阪池田小の事件以後、多くの議論がなされた。
 危険論は、誰でも入れる状況にすれば、不審な者も入る可能性が高まるから、危険が増大するという見解である。それに対して、常に大人がたくさん学校に存在する状態になれば、包丁をもった大人がいればすぐに周囲に知られ、対策も可能だし、たくさんの人がいるところに、子どもを襲うために侵入する人もいないだろう、というのが、安全論の立場である。
 どちらが正しいのか、あるいは学校の安全を高めるためには何が有効なのか、各自考えてみよう。
最終更新:2008年07月25日 21:39