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 教師は学校にとって不可欠のものであると考えられている。どんな教育を受けたか、という印象は、どんな教師に習ったかということによって大きく左右されるだろう。通常いい意味でも、また悪い意味でも教師は大きな影響を与える。とくに小学校など子どもの年齢が低いほど影響力は大きい。教師は知識を教えるとともに、また人格的な存在でもある。ある科目が好きになるか、嫌いになるか、その原因が教師にあったという人も多いだろう。
しかし、そうした授業などの教師の仕事そのものではなく、教師をめぐる制度的な側面についてこの章では扱うことにする。
 教師は専門職であると考えられている。1966年のユネスコ、「教員の地位に関する勧告」は、教師が専門職であることを宣言し、さまざまな教師の権利について勧告をした。しかし、実際の日本の教師は、その勧告の内容からみると、専門家としての扱いが低いと考えられている。
 専門職とは、(1)活動の自主性の尊重、(2)自主的な研修の責務と権利、(3)免許制、(4)身分保障などが柱となっているとされる。\footnote{兼子仁『教育法新版』有斐閣 昭和53年。p311}この柱の構成自身が多少古い気がするが、この点でも日本の教師の権利・権限の保障についてはかなりの検討の余地のあることがわかる。
 さて長い引用になるが、以下の資料を読んでほしい。ここには実に大きな考察すべき問題が含まれている。

平成12年5月26日     問い合わせ先

監 査 事 務 局      監査事務局総務課調査係

        住民監査請求(区立学校事務職員の休憩時間)監査結果

      都費負担の区立小中学校事務職員の休憩時間の設定に違法・不当があるとしてその是正等を求める住民監査請求監査結果

第1 請求の受付

 1 請求人(略)

 2 請求書の提出 平成12年3月31日

 3 請求の内容
(1) 主張事実

 都内の区立小・中学校の給食は「教育の一環」として「給食指導」と位置づけられている。そのため、教師は給食を生徒と食べるため、昼休み(一般の昼食時間の昼休み)は仕事(給食指導)と位置づけられ、正規の昼の休憩は午後4時から4時45分とされ、午後の休息時間15分をその後に持ってきて午後4時から5時までが昼休みとなっている。教師は当然、午後4時以降には仕事がないので帰ってしまう。
 都事務職員は教師と同じ都の職員のため、教師と同じ東京都教職員組合の各区支部に属しているため、教師と同じ待遇を求める。都事務職員は教師でないのだから、給食指導などあるはずがない。そして、帰宅時間を教師と同じ午後4時と主張し、そのとおり、午後4時に帰宅しているとのことである。
 都事務職員は昼食を「昼(12時頃)」に食べている。昼食はいくら早く食べても「15分」はかかる。にもかかわらず、昼の休憩を午後4時から所定の45分取っている。ということは、都事務職員は所定の45分とプラス「15分」、つまり、昼の休憩を2回に分けて合計「1時間」の休憩をとっていることになり、「職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例」第2条、第3条、第6条に違反している。
 行革一一0番が都事務職員のカラ残業を調査し始めたので、午後4時からの昼休みの改善に乗り出したが、現在世田谷区内の小中学校の内6校が正規の昼休みに改善したとのことである。

(2) 措置要求
 本件財務会計職員は、速やかに勤務時間中の昼食時間(違法な休憩時間)「15分」を改善すること。また、過去1年間に遡り違法に支払われた給与を本件財務会計職員、又は、給与を不当に利得した本件都事務職員に返還させろ。
 損害賠償の対象の学校は、請求人の仲間が各区を調査した結果、杉並、港、渋谷、豊島、練馬の各区は区立小中学校の全校、及び、世田谷区は中丸、松が丘、深沢の各小学校、北沢、富士、砧南の各中学校を除く全校である。*27)http://www.t3.rim.or.jp/~110ban/Goto/KANSA/03Toshifutan.html

 学校には主に教員と職員というふたつの異なる職種の労働者が存在するが、その勤務形態や条件は同じものではない。原則的なことをいえば、そもそも「勤務時間」とは何かという問題が、教員には存在する。民間企業の場合には、非雇用者は雇用者との契約に基づいて、原則的に労働時間をまず決め、その中で職務命令に基づいて仕事を遂行することになる。「初めに時間ありき」であるから、勤務時間の解釈が問題となる余地は少ない。
 しかし、教師の場合には、拘束時間としての勤務時間と実際に教職労働を行う時間との間に大きなずれが存在するのである。大学の教師の場合、そのずれは極めて大きい。大学の教師の場合で見ておこう。例えば現在の文教大学の必要最低限の授業コマ数は5コマである。これは週7時間半に相当する。これは通常の週40時間労働に著しく不足している。しかし、その授業を行うために、かなり多くの準備労働が必要であるが、それは厳密に時間に換算することはできない。したがって、ほとんどの大学では、教師の勤務時間を決めることはせずに、授業時間数を基準に給与等を決めているのである。
 小学校や中学校の教師については、準備時間は大学ほどではないにせよ、基本的に同じ構造をもっているが、これまでは通常の労働者と同じく、出勤時間と退出時間を決めてきた。ところが、
 都条例によると、休憩時間については、「勤務時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間、継続して一昼夜にわたる場合は1時間30分以上の休憩時間を勤務時間の途中に置く。」(東京都勤務条例7条1項)となっており、休憩時間を勤務の終わりに置くこともできるとされている。
 教職員は8時間勤務であるから、当然途中昼食および昼休みの時間が必要となる。しかし、教師は給食指導をしなければならず、昼食も子どもたちと一緒に給食を食べ、その時間も「勤務時間」であると位置付けられ、その分とれない昼休みを勤務の終わりに設定して、4時に帰宅することが、認められてきた。
 それに対して、職員たちも同様に4時に帰宅しているが、職員は給食指導をしていないからそれは不当であるというのが訴えの内容である。この請求事件についての裁定は、時間の割り振りは不適切であり改善が必要であるが、職員も昼休み中生徒たちの応対が必要である場合もあり、給与を返還せよという要請は合理的でないとしている。
 さて、更に最近では新しい動向がある。
 東京の公立学校では、教員たちも給食指導によって不足する昼休み時間を、勤務の終わりに振り替えることは認めず、帰宅時間は5時である、とする措置がとられた。その影響はまだ十分に把握されていないが、教師の疲労がより蓄積されることは十分に予想される。
最終更新:2008年08月04日 21:27