【名前】神輿庭麒太郎(みこしば きたろう)
【性別】男
【所属】科学
【能力】千乗練磨(パワフルリファイン)level3
【能力説明】
芸術・芸能・スポーツ等のあらゆる方面の技術・技能の会得に際して、「飲み込み」が早く「物覚え」が良くなる能力。
麒太郎は能力開発時点で運動の「慣れ」を司る「手続き記憶」が深化しており、脳内の未使用領域にて独自のイメージトレーニングを行っている。ある技術を習得する時に意識を集中する事で能力が発動し、体験で得た拙い技を高速で何千何万回と繰り返す事で無駄を省き、リファインしたテクニックを“慣れ親しんだ”動きとして肉体へと還元する。ただしスポーツ等では高レベルのパフォーマンスを再現するだけの肉体が要求されるため、それが不足している場合は宝の持ち腐れになる。
この能力で一度習得した技術は特殊な未使用領域内に分類・格納されるので、通常の記憶のように他の記憶素材との相互干渉によって忘却する事はなく、劣化もしないため定期的に「再生」や「再認」といった確認をせずとも瞬時に想起する事ができる。したがって「腕が鈍る」という現象は彼には無縁である。
その学習効率は最大で常人の平均値のおよそ1000倍。習得に十年を要するような技術ですら三日で己がものとする事が可能。ただしとある理由から、いくつかの例外を除けば能力の継続使用は長くて三日(一般的な修行換算で十年分)までに抑えている。
例外の一つである合気道は幼少の頃から腐らずに続けている数少ない稽古であり、能力開発以降は急速に上達し、既に老練の域を超えた達人クラスの腕前。
【概要】
明知中等教育学院の3年に在籍する男子生徒。一部クラスに所属している事が多いが、成績不振で二部に降格する事も間々ある。その度に双子の姉である
麟子がマンツーマンで勉強をみてやるのがお約束でもある。
品行方正な姉とは対照的にかなりの捻くれ者であり、彼の本心を良く理解している一部の友人を除けば、周囲の評価は「根拠のない自信を並べる割に動こうとしない口だけの奴」と中々に辛辣である。それもこれもやはり姉であり明知の生徒会長でもある麟子の存在があるだけに、期待を裏切られた反動として「不出来な弟」というイメージが浮き彫りになるからなのだろうが。
神輿庭姉弟はかつて「麒麟双児」と並び称された神童だったが、実は幼少期の二人を比較すると麟子の圧倒的なカリスマを除き、他のポテンシャルでは麒太郎が上回っていた。麒太郎は何事にも要領が良く、あらゆる状況でセンスを光らせる天才タイプであり、麟子はそんな良く出来た弟に置いてかれないように努力を重ねた秀才タイプであった。
だが物心がつく頃、麒太郎は周囲の双子に対する見方が異なるという事実に気がついてしまう。神輿庭家の家督を継ぐ事を義務付けられ、周囲の期待に答えようと帝王学に励む健気さがますます彼らを惹きつける麟子に対して、自分は要領は良いが自惚れがちで人としての魅力に欠ける存在。
ある時親戚の誰かが何気無く言った「お前は才能があって何にでもなれるだろうから、将来が楽しみだな」という言葉は楔となって彼の心に今もなお突き刺さっている。何にでもなれるという事は、裏を返せば何になろうが構わないという事と同義ではないか。結局一族に必要とされるのは天賦の才であるカリスマを備えた姉であり、他のあらゆる才能で優っていてもーーー優っているが故に将来に関心すら持たれない哀れな弟の成長した姿が、現在の麒太郎である。
自分の新しい生き方を期待して欲した能力は、皮肉にも姉と同じく自身の生まれ持った才能と根本で同質のものであり、姉はその現実に人知れず慄いたが弟ははっきりと落胆した。どんな事でもすぐに覚えて“出来るようになってしまう”のなら端からやらなくてもいいじゃないかーーーどうせやろうと思えば何時でも出来てしまうのだから。そんな風に考えた彼は何事にもやる気を見出せなくなり、「努力」を止めた結果どんどん凡人に成り下がっていった。
落とした成績を補填するために学外のスポンサーと提携し、伝統芸能の技術伝承や専門技術のバックアップを買って出る事で学校側に働きかけて貰う事もあるが、それらの習得も彼には機械的な作業でしかなく(上記の三日ルールも要はただの三日坊主で、単に飽きるから)鬱屈した日々を過ごす。見兼ねた麟子が半ば強引に生徒会執行部員に取り立てたものの、当初は天才の中に凡夫である自分が混ざっている居心地の悪さから「反りが合わない」と言い捨て生徒会室にも中々顔を出さなかった。
そんなある日、気晴らしに始めたアクロバイクツーリングの最中に作務衣ライダーの
帝白紫天にお互いの素性を知らず出会い、麒太郎のサイクルアーツに惚れ込んだ帝白にゲッツされて彼の
サーカス団に入れられてしまう。初めは乗り気でなかったが、そこでの帝白やサーカス団員たちとの交流を通じて少しずつ心を開くようになる。特に帝白に「あれこれ小難しく考えずに、自分の才能を自分のためだけに使い潰すのではなく、周りの皆を笑顔にするために使ってみたらどうじゃ」と言われた事は、表には出さないが麒太郎にとって確かな「救い」だった。
捻くれた性格が少し軟化してからは生徒会室にも顔を出すようになり、生徒会役員や執行部員とも交流を持つようになった。そこで出会った副会長の
殊玉竜胆に自身に近い波長のものを感じ、同じように何かを抱えている事を知りつつも互いを「親友」と呼び交わす間柄となり、その豹変ぶりは麟子を驚かせた。
双子の姉である麟子は神輿庭家の中でも唯一自分に対等に接してくれた、彼にとって掛け替えのない存在。普段は素っ気ない態度で煙に巻いているが、明知のエリート教育から落伍しそうになる度に勉強をみてくれる面倒見の良い姉に胸の内で感謝している。もし麟子に直接危害が及ぶような事態になれば、どんな手を使ってでも元凶を叩き潰す覚悟がある。
帝白サーカス団での彼の担当は、アクロバイクのサイクルアーツを駆使した曲芸や帝白直伝の手品。ただし手品は帝白から能力による学習を禁じられており、純粋な努力によって上達を目指している。ちなみに彼のセンスは既に枯れ果てており、幼少期のような飲み込みの良さはなくなっていた事にこの時気づいたが、驚きはしたものの腐る事なく気概のある熱心さで徐々に腕を上げている。手品の技法であるミスディレクションは決闘にも応用されている。
明知の裏側については麒太郎もしばしば耳にしていたが、愛校心がそこまで強くなかったのでこれまで我関せずのスタンスを貫いてきた。しかし最近帝白が以前から明知の内情を窺っていた事を知り、自分を団員に誘ったのは明知の生徒会長であり彼の姉でもある麟子に接触する足掛かりとするためだったのではないかという疑念が生まれた。二人の出会いは全くの偶然であり誤解はすぐに解けたものの、この帝白との衝突が期せずして麒太郎にとって明知の現状と真剣に向き合う契機となった。一方で憎まれ役となった帝白だったが、麒太郎自身がこれから始まる戦いの中で彼の「本当になりたい自分」を見つけられるだろうと、若人の成長を暖かく見守っている。
【特徴】
身長170センチで麟子より頭一つ大きい。濃いブラウンの瞳、山吹色のツンツン頭。普段は締まらない顔だが、ここぞという時は瞳に決意を宿した精悍な顔つきになる。
着痩せするタイプのため分かりづらいが、長年に渡る合気道の鍛錬によって体幹と足腰を中心とした引き締まった肉体を持つ。
ブレザーには袖を通さず、肩に引っ掛けるようにして羽織るだけ。生徒会執行部の腕章は身に付けず鞄の中に放り込んでいる事が良くあり、会長に見咎められてしぶしぶ付けるのもお約束。
決闘では多数のスポンサーから補助装置を提供されているが、非殺傷性のダーツ矢を好んで飛び道具として使用する。
【台詞】
人称は俺、お前/アンタ、あいつ等。麟子の事は呼び捨て、姉貴、からかう時の「お姉様」等バリエーションに富む。粗野な口調の中に諺や名言を引用する癖がある。
「昔『自分の才能が恐ろしい』ってどこかの誰かが言ったんだと。蓋し至言だよ、クソッタレ」
「十で神童十五で才子二十過ぎればただの人、なんだとよ。お互い『ただの人』にはならないように精々努力しようじゃねーの、姉貴」
「知ってるか?合気道の『開祖』は15mの距離を一歩で詰めたんだそうだ。所謂『縮地』ってやつだなーーーこんな具合に。おいおい、そう驚く事はねぇだろ。俺の練度が常人のそれとは違う、ただそれだけの話じゃねぇか」
「勘違いすんなよジジイ!ここに来てやってるのはお前ら団員のためだとか、居場所がほしかったからだとかそんなんじゃ断じてねぇ‼俺はただ、俺のマジックで客が笑うのを見るのが嬉し……、いや趣味になってた、みたいな……。とにかくなんかそんな感じだよ。だーもう、何か文句あんのか⁉」
「才子才に溺れる、か……。認めるよ。確かにアンタの言う通り、俺はある意味じゃ自分の才能に胡座をかいてた。勝手に失望して、不貞腐れてたよ。でも、だからってなぁ!俺の学院で起きてるゴタゴタに、卒業生であるアンタが出しゃばるってのは、見過ごせねぇんだよ!理由なんて俺にも分かんねぇよ、あんな学院に愛校心なんてねぇし。けど何か違ぇんだ、納得出来ねぇんだよ‼これは、俺が、俺たち今の明知がテメェで解決しなきゃいけない事なんだ!だからあんましゃしゃり出てくるんじゃねぇぞ、Gさん‼」
「俺とお前は似た者同士だと思ってた。だから薄々勘付いてはいたんだ……お前の素顔はソレじゃない、って。でもやっぱ、俺とお前は違ったみてぇだな。ーーーケリを着けようぜ、『親友』」
【SS使用条件】
なし