《白い男》、という噂がある。
それは突如として現れては、犯罪者や得体の知れない怪物などといった闇の住人を討伐する何者か、というものだ。
先進国家の諜報・情報組織が行方を追い続ける重要人物。と、されている。
伝説の人物だった。
おとぎ話に過ぎない、と肩を竦める者も多い。
当然だ。現実として存在する犯罪者ならともかく、怪物を相手にするなど、子供が読む漫画本じゃあるまいに。
実際に遭遇したと語る目撃者は数多いて、中には名乗られたとも証言する者もいたが、どうにも、名乗ったのは過去の歴史上の人物のもの、つまりは偽名である。
まさか歴史上の人物名をそのまま指名手配できるはずもなく、当然の帰結として多くの者は眉唾物として聞き流す。
けれど、噂は確かに広がっている。
闇夜に現れ、悪を裁く、白き異装の男。その影を。
◆◆◆◆
男が所属する組織は、一般にその名を知られてはいない。
それは企業でも、法人でも、まして国家直属云々でもない。
男が所属しているのが、狂信的な宗旨を持った犯罪集団であるからだ。
名と存在を知るのは各国の情報・諜報組織や、それらの暗闘に関わる極一握りの者程度か。
つまるところ、男のいた組織とは、社会のどす黒い暗部のさらに底のあたりを這いうねる集団であった。
暗黒と陰謀を是とする秘密結社にあって尚、自滅的かつ破滅的な集団だった。生産性と呼べるものが欠片もなく、手段が目的となっているような刹那主義の集まり。
彼らの目的とは、つまりは殺人だ。市井の民や、あるいは情報組織同士の抗争において間抜けを晒した者を連れ去り、人知れず殺す。そこに殺人以上の目的などなく、故に彼らは躊躇というものを持ち合わせない。
同時に、彼らはそんな子供じみた稚気にあって、しかしそれだけでは終わらない《暗部》を抱えていた。
世の中には正気を疑う例外的存在や規格外と呼べる驚嘆すべきものが稀に存在する。
それは何処の国家のものとも知れない、アフリカ大陸の秘境だとか、古代のエジプトだとか、南極の古代遺跡だとか。
如何にも妖しげな出自を謳う組織や個人というのは何時の世にも必ず一定数存在して、それは件の殺人集団も例に漏れず、如何にも妖しげな出自を標榜していた。
とある神性の信仰及び魔術的な技術を有するというそれは、今や使い古された出来の悪い三流小説のようで、しかし集団内においてはこの世の真理として機能していた。
そして、幸か不幸か、その曖昧靄な謳い文句は現実のものであった。
かの組織はかつて大英帝国においてとある陰謀を企てたが、事前にこれを察知した国の保全組織、及び知られざる諮問探偵に対立し、結果として全組織が壊滅したという末路に至った。
それは紛れもない事実であり、構成員は皆等しく死したか投獄され、その活動は完全なる根絶を辿った。
そう、例外たる一人を除いては。
集団において真理とされた眉唾物の神秘、出自も知れぬ魔術書。それを手にしたことにより魔術的超人と化し、付け焼刃の妖術を駆使しまんまと逃げおおせた男を除けば。
「どうだ、キャスター。駒の補充は万全か」
問いかけるのは痩身の男だった。顔は死人のように青ざめ、頬はこけ、しかしフードの奥から垣間見える窪んだ眼球だけがぎらついた情熱を放っている。
彼こそが魔術師であった。殺人集団に奉じられていた供物を手に、ただ一人その恩恵にあずかることのできた落伍者だった。
神の恩寵を手にしたと盲信する男だ。その実足りない才能を補うため毎秒ごとに魂を削られつつある愚者だ。
対するキャスターは妖艶な女の姿をしていた。無論、それが彼女の手繰る魔術による見せかけであることは彼女しか知らない事実である。
黒のローブを纏った「如何にも」な外見は、正しくその印象を裏切ることのない魔術礼装である。人種さえもわからないその黒い姿は、一見するだけで異様さが際立つ。
彼女は気配の隠蔽や魔力向上の効果を持つそれを纏い、顔には侮蔑の表情を隠そうともせず浮かべていた。
だが構うものか。どうせこの仮初のマスターなど、既に碌な視力すら有してはいないのだから。
「攫ってきたNPCのことなら、仔細抜かりはありませんわマスター。
既に100を超える子供たちを工房へと誘致しております。明日の朝にはある程度【形】になるでしょう」
「ならいい。俺は負けられんからな」
それっきり、男はぶつぶつと何やら呟きながら中空の一点を見つめるだけの置物に変じた。
キャスターを召喚した時から比べると随分悪化している。以前ならば、震える手で何かしらの作業くらいはできたのだが、とうとう死期も近づいているらしい。
ここらが潮時か、そうキャスターは内心で嘆息する。マスター代えの面倒を考えると憂鬱な気分になった。
既にキャスターの中でこの哀れなマスターを切り捨てることに躊躇いなどなかった。元よりキャスターは裏切りのサーヴァント。それも生半に魔術へ手を出し破滅する愚者など本来歯牙にもかけぬ塵屑でしかなく、故に良心の呵責など覚えない。
むしろ、僅かな間でも大いなる魔術師である自分の役に立ったことを光栄に思えばいいとさえ、キャスターは本気で思っていた。
尚も言葉にならない呻きを発し続ける男を無視し、キャスターは邸宅内部に作成した工房へと足を運ぶ。
扉を開けば、そこには生気を失った瞳をした子供たちが所狭しと並べられていた。
夜ごとに街へ出て子供を攫う黒衣の怪人物は、既に街角で語られるフォークロアとして成立していた。形振り構わないその有り様は、まさしく彼女のマスターたる痩身の男による強制である。
本来隠れ潜むことを常套とするキャスターにとっては自殺行為に等しいが、しかし降って湧いた万能感に酔いしれる男は聞く耳を持たなかった。
はっきり言って悪手の一言だが、こうして事が成されてしまった以上は先を見る他にない。
キャスターは言葉なく頷くと、黒外套の中からぬらりと重く鋭い凶刃を抜き払った。
それは恐ろしい武器であると同時に、ある種の魔術礼装でもあった。
感受性の強い人間であれば、その形状のおぞましさのあまり卒倒し兼ねないほどのものだ。
あるいは年若く弾力に富んだ感受性を持つ幼い者であれば、形状から放たれる原始的な力強さを感じ得たかも知れない。
アセイミナイフ。西洋魔術における儀式短剣だ。
それを使って、それを突き立てて、一体キャスターは何をしようというのか。
殺すのだ、子供たちを。
ある者は生贄に、ある者は礼装に、ある者は傀儡人形に。
用途の違いはあれど、作業の過程において殺されることは不可避である。
魔術的な条件が揃うこの日この時まで雌伏の時を過ごさねばならなかったが……しかしこの作業が成れば、自らよりも格上のサーヴァントに伍することも十分可能であるし、マスター不在でもある程度行動することもまた可能となる。
これでようやくクソッタレの愚物からはおさらばだ。
「黒き御身の名において」
「穢れし禍つの威に依りて」
「血を流せ、雫を垂れよ、心臓を捧げるのだ」
「捧げよ」
「捧げよ」
「捧げよ」
女は陶然と酔いしれるように何事かを口にする。
それは聞くだにおぞましい呪詛の羅列、あるいは彼女の信奉する神性へと捧げる言葉か。
いずれにせよ常人が聞けばそれだけで精神に異常をきたしかねないそれは無謬の悪風となって、精神を硬直させられているはずの子供たちでさえも無意識のうちに恐怖で打ち震える。
子供が発する恐慌の声を、女は決して忘れない。
決して悔恨や罪悪感などではない。その逆だ。
己のために、己が信奉する神性のために、捧げられる生贄たちの悲鳴と苦痛は、彼女にとっては小鳥の囀りにも等しい安らぎとなって現れる。
さあ、歓喜の時間の始まりだ。
これより自分は両手を血に染め、愚かなるマスターから解放される。
そして捧げるのだ、子供たちの柔肉を、魂を。
悲鳴を耳にしよう。
苦悶を目にしよう。
さあ、尊き神の御名をここに。
いざ。
いざ。
いざ。
いざ。
いざ。
―――いざ!
「待て」
と―――
女の背中に呼びかける声があった。
まさに、彼女が最初の子供の首にナイフをかけようという数瞬前のことだ。
狂信に酔う彼女は振り返った。
呼び止めたのは男だった。
己がマスターではない。
白い男、だった。
男は白い姿をしていた。
白色の服装は何処かの小国の海軍服のようにも見受けられる。
男だ。人間。
彼の瞳には揺るぎない意思があった。
頸部に巻き付けられた長い長い黒布は風もないのにはためいている。
「約定の輝きと、我が雷電の名の下に」
時折、黒布の周囲に光が疾る。
「罪業なるもの。疾く去れ」
──それは、夜闇のただ中でひときわ強く瞬く雷光の輝きに似ていた。
◆◆◆◆
「な、あァ!?」
突如として邸宅を襲った轟音と光に、キャスターのマスターは動揺を隠し切れなかった。
忘我のままに時を過ごしていた男に飛び込んできた極大の振動は男の体を持ち上げ、無様に転がって壁に頭を叩きつけるに至った。
錯乱した精神もこれにはたまらず正気を取り戻し、何事かと頭を上げて見やれば、そこには漆黒の帳があった。
【屋根が吹き飛んでいた】。跡形もなく、爆撃でも受けたかのようにすっぽりと。頭上にはただ満天の星空が広がっていた。
そして見たのだ。天頂へと駆け上る、御柱の如き雷を。
「ば、馬鹿な! キャスターはどうしたんだ!?」
男の混乱の無理はない。何故ならこの邸宅はキャスターの手により魔術的な要塞と化していたのだから。
邸宅全体には存在を検知できないよう認識阻害の結界が張られていたし、仮に近づく者があれば例えアサシンであろうと容易に検出できるセンサーも完備されている。
空間を異相にずらし、警備には使い魔を多数配置。単なる魔術師程度であれば100人押し寄せようと容易く撃退可能な戦力があったというのに。
何時の間に、それを突破されたというのか。
分からない、だから男は遁走を開始する。
如何に外法で頭をやられようと、己への脅威に敏感なのは生物としての本能が為せる業だ。
男は開け放たれた扉へ向かって、転びそうになりながら、それでも必死に足掻き駆け寄って。
「ッ、邪魔だ、どけぇ!」
だから、【扉の前で立ちふさがる誰か】を正確に認識することもなく、ただ我武者羅に魔術を放ったのだ。
粉砕される扉枠、舞い散る破片に焦げ付く悪臭。
一撃必殺の手応えと、人を殺したという確信が焦燥に沈む男の心を一時潤す。
恐怖に固まった口が少しだけ喜悦に歪み、そのまま外へ走り去ろうとして……
「待て、俺はまだここにいるぞ」
聞こえてきた声に、再び体が硬直する。
そこには、魔術で消し飛ばしたはずの人影が、しかし確かな実像を持って存在した。
「幕だ、コンラート・ベンソン。お前の妄執もここで終わる。
もはや何処にも逃げられんぞ」
ここでようやく、男―――コンラート・ベンソンと呼ばれた魔術師紛いは、己に相対する者の姿を確と認識した。
奇妙な風体の男だった。見たことのない意匠の服を纏い、背にはマントのようなものを羽織っている。軍帽にも似た帽子を被り、顔には眼鏡をかけていた。
ベンソンの知らぬことではあるが、それは書生服にも似た軍服であった。それも極東の島国の、半世紀以上も前のものとくれば、彼が知らぬのも無理はない。
そして、ベンソンは笑っていた。
なんだ、お前素人じゃないか、と。
軍服の男からは、魔術的な力の流れが一切感じられなかった。サーヴァントどころか魔術師ですらない。そして曲がりなりにも殺人集団で培った眼識から、目の前の男が銃器に相当する装備を一切所持していないことも即座に見抜いた。
端的に言って丸腰の間抜け、それがこいつだ。例え何某かの格闘術を修めていようが、今や神の御業を行使する己には敵うべくもなし。
そう判断し、ベンソンは優越と喜悦に口を歪めているのだ。
彼は認識しない。たった今、ベンソンが神の御業を自称する半端な魔術をいとも容易く回避されたという事実を。
彼は理解しない。目の前の男が、たかが借り物の力に溺れる程度の愚物に劣るような存在でないことを。
彼は認めない。既に脳神経の大半をやられ、現実を正しく解さない彼に、そんな理性は残されていない。
だからこそ、この結末は不可避だったのだろう。
「ごばがァッ!?」
真っ直ぐに放たれた正拳が顎をかち上げ、硬直した隙に懐へ潜り込んでの肝臓打ち。くの字に折れた体の作用を利用し、そのまま一気に背負い投げ。
床に背を叩きつけられたベンソンは、今何が起こったのかさえ理解することが許されない。
拳の間合いに、歩法、理合、呼吸の妙。なんだそれは、理解不能だ。
力任せに魔術を振るうしか能のなかったベンソンの、これが限界である。
彼の手から零れ落ちた魔術書を、男は躊躇なく踏み砕く。
書の形をしていたそれは、しかし鉱石のような硬質の響きと共に砕け散り、破片は塵となって宙へと消えた。
瞬間、ベンソンの体は大きく痙攣し、一瞬の後に全ての動きを停止した。
死んでいた。ベンソンは、今や呼吸さえしていなかった。
いいや、とっくの昔に死んでいた彼を、魔術書の魔力が無理やりに生かしていたのだろう。
見れば、彼の肉体の一部は既に腐敗して、鼻に突き刺さるような腐臭が立ち込めている。
愚かにも禁断の魔書に手を出した者の、これが末路であった。
「そちらも終わったか、セイヴァー」
声のしたほうを見やれば、そこには白い男が佇んでいた。
軍服の男―――白い男に曰く、セイヴァーか―――は、振り返りもせずに答えた。
「ああ、仔細問題はない。それよりそっちはどうだったんだマスター」
「こちらも特に問題ないな。子供らも既に解放している。数人は少々催眠の根が深くはあったが……なに、私に不可能はない」
不遜に笑う彼に、セイヴァーは深く嘆息した。
別に嫌うわけではないが、この手のタイプの人間は生前の自分の周りにはいなかった。
故に、少々疲れる。
「故にこそ、だ。セイヴァー、私はこの聖杯戦争において無限の正義を成す。
不撓不屈の男よ。
尊くも輝く英雄よ。
私はお前に劣らぬほどに、いずれ万人を救ってみせるとも」
だが、これも悪くない。
人々の輝きを尊び、守り抜こうとする気概。
それはセイヴァーとて違いはないのだから。
セイヴァーは当初、サーヴァントとして呼び出された身の上に憤りを感じていた。
悪なる者に仕えるつもりは毛頭無く、そうでなくともマスターを勝利に導くために超常の力を振るうことを強制される可能性もあった。
けれど、現実にそうはならなかった。
セイヴァーとて、力なき者を救うためならば理想を曲げ力を再び得ることも辞さなかっただろうが。
それでも、この奇矯なるマスターにそんなものは不要であった。
故にこそ、セイヴァーはこのどこまでも青臭く、馬鹿としか言いようのない男をマスターとして認めたのだ。
真実、彼らは英雄であるために。
「それが、お前の見出す真か」
「そうだ。私はかつて人々を救えなかった。
かの者より鳳の雷とフランクリン機械帯を賜った私は、しかし、それによって誰をも救うことができなかったのだ。
そうだ。誰をも」
悔恨を口にする男は、しかし不屈の輝きを目に宿す。
それは、大空に輝く雷を、一つの形に押し込めたようで。
「故に」
「私は命尽きるまでに、かつて救えなかった百の倍の人々を佑けよう」
そうして、二人は揃って空を見上げた。
気付けば、既に日は昇っていた。
「陽が、出てきたな」
「ああ。本当の動乱はこれから始まる」
まさに光が立ち昇らんとする中で、二人は現実に立ち向かうため未来を見ていた。
朝へ―――かつて見た夢の日々へ至るために。
◆◆◆◆
某月某日、市内某所。
この数日間で予想もしなかった言葉を聞いて、その夫婦は耳を疑った。
まずしたことは、己の正気を疑うこと。次にこれが夢であること。最後に、自分が白昼夢を見ている可能性を考慮し、しかし全てがそうではないことを確かめると、呆けたように立ち尽くし、しかしすぐさま滂沱の涙を流し互いを抱きしめた。
己の子供の無事を喜び、歓喜に打ち震え、以前は信じてもいなかった神に感謝を捧げた。
ああ、どうか。
どうか私たちの子を助けてください、と。
そう願って良かった。
そう、彼らは見も知らぬ誰かに、感謝の言葉を送った。
『行方不明の子供たちを全員保護』
『犯人と思しき人物の自宅が半壊』
『首謀者と思われる男の行方は不明』
『目撃情報』
『事件現場付近で目撃される人影は、二人』
『必ず二名が目撃される』
『時代錯誤の旧日本軍の軍服』
『夜闇に目立つ、白色の服装』
一夜のうちに駆け巡ったニュースは、街の全てに伝播した。
それは人々の興味を呼び、幾つもの噂がまことしやかに囁かれた。
電撃的な行動。
恐れを感じるほどに激しい破壊行為。
建築物を圧壊させ、悪辣な者に容赦はしない。
あまりにも目立ちすぎるこの手口。
これは《白い男》の仕業である。
そう、結論付けるものも少なくなかった。
けれど真実を知る者はおらず。
結局、真相は闇の中である。
【クラス】
セイヴァー
【ステータス】
通常時
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力- 幸運EX 宝具-
邯鄲法
筋力B(可変) 耐久B(可変) 敏捷B(可変) 魔力A(可変) 幸運A+(可変) 宝具A
盧生
筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力EX 幸運EX 宝具EX
【属性】
中立・善
【クラススキル】
対魔力:-→A→EX
魔力ダメージに対する耐性。
通常時は一切の効果を成さないが、邯鄲法使用時及び盧生覚醒時には上記のランクに変化する。
カリスマ:C→C→EX
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
また、盧生とは人類の代表者であると共に全ての人間の夢を背負う者であるため、盧生として覚醒した場合最高ランクのカリスマ性を発揮する。
対英雄:-
セイヴァーはこのスキルを保持しない。そも、彼こそが英雄としての誇りを一身に背負うべき者である。
【保有スキル】
盧生:-→-→EX
ある種の"悟り"を開いた人間の証であり、人類の代表者とも称される「阿頼耶識を理解できる」資質を持つ者のこと。
盧生となった者は邯鄲の夢から己の思想に沿った神仏・超常的存在を呼び出すことが可能となり、阿頼耶識からのバックアップに加え、同ランクの菩提樹の悟りに匹敵する対粛清防御を持ち合わせる。
しかし盧生として覚醒しない限りそれらの効果は得られず、通常時及び邯鄲法使用時は単に悟りを開いたことによる絶対的な精神防壁のみが保障される。
邯鄲の夢:-→A→EX
夢界において発現する超常現象を制御する術。
この術は身体能力を増強する戟法、守りを司る楯法、能力射程を広げる咒法、力や物質等を解析・解体する解法、イメージを具現化し現実に創造する創法の5つに分かれる。
セイヴァーはこの5つ全てに高い適正を持つが、逆に一点特化の者には敵わない。端的に言ってしまえば器用貧乏に近い資質である。
通常時において一切機能しない。
変容:-→B+→-
筋力・耐久・敏捷・魔力・幸運の能力値を一定の総合値から振り分け直す。
元々はセイヴァーの保有する五常・破ノ段の一つだが、宝具には至らずスキルとして具現している。
通常時において一切機能しない。
無形の輝き:EX→-→-
常人の身で神々の黄昏を踏破したセイヴァーの生き様が現れたスキル。
時に不可能を可能とし、あらゆる難行を身一つで踏破できる可能性を保障する。
星の開拓者や奇蹟とも類似したスキルであるが、本質的には異なっている。
それは誰しもが持つことの許された信念と努力。
現実にない異能などただの夢であり、世の行く末を憂うなら自分ひとりの力でなんとかしてみせろという、只人としての輝きである。
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
【宝具】
『犬田小文吾悌順』
ランク:-→B 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:不定(仲間の数だけ)
セイヴァーの保有する五常・破ノ段の一つ。その能力は「仲間たちの間で成立する意識の完全同調」及び「仲間同士で成立する全能力の共有化」。
前者は簡単に言ってしまえば仲間同士で使用可能なテレパシー。特に集団での戦いにおいては高い長所になり得る。
後者は英霊固有のものも含めたスキル・宝具のシェアリング。他者のスキル・宝具をセイヴァーが使用したり、逆にセイヴァーのスキルを他者に譲り渡すこともできる。
ただし他者のスキル・宝具を使用する際には全てのステータスがその他者のものに置き換わってしまう。セイヴァーのスキル・宝具を譲り渡す場合においても、その相手のステータスはセイヴァーと同一のものになる。
更にこの宝具で使用できるスキル・宝具は一度につき一つきり。複数のスキル・宝具を同時使用することはできない。
この宝具の対象になるのは「セイヴァーとの間に相互の信頼関係を結んだ人物」に限られる。
通常時において一切機能しない。
『犬江親兵衛仁』
ランク:-→A 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000
セイヴァーが保有する五常・急ノ段。
セイヴァーの思想に賛同する者を強制協力に巻き込み、セイヴァーの戦闘ボーナスを強化する宝具。上昇率は巻き込んだ人数に比例する。
協力強制の条件は「勇気」を抱くこと。ただしその勇気は憧憬や標といった正道への希求によるものに限られ、例えば恐怖や忌避感から引き出された勇気は対象外となる。
通常時において一切機能しない。
『終段顕象・仁義礼智忠信孝悌』
ランク:-→-→EX 種別:神霊宝具 レンジ:1~999 最大捕捉:8
セイヴァーの保有する五常・終ノ段。その力は集合無意識の中から人々の思い描いた神格を召喚するというもの。
この宝具においてはセイヴァーとの相性が最も良い八犬士が召喚される。彼らの原典はあくまで架空の英雄譚であるが、集合的無意識の海において人々に思われることにより神格に相当する力を持ち合わせている。
原典通り、あるいは原典以上の能力を持ち、それぞれが怪力無双を誇る剛拳、火遁の術、戦況を見通す戦略眼、魔性に対する特攻等を有している。
通常時及び邯鄲法使用時において一切機能しない。
『仁義八行・如是畜生発菩提心』
種別:人意 レンジ:0 最大捕捉:1
セイヴァーが希求の果てに辿りついた真理。盧生として獲得した唯一無二の悟り。
人生の無常、真理、そしてそれに立ち向かう勇気。すなわち無形の輝きであり、その誇りこそを強さとする人の意志。
つまるところセイヴァーの得た悟りとは、「盧生としての力の全てを捨て去り、ただの人間として生きていく」というもの。
この意思があるかぎり、セイヴァーは盧生や邯鄲法行使者としての権能を一切使用しない。「できない」のではなく、「しない」。
セイヴァーは通常時において生身の人間と同程度の身体能力しか持ち合わせず、霊体化などといったサーヴァントとしての基本的な力すら行使できない。一切の魔力を持たず、その身は神秘を含まない物理攻撃にすら容易く傷つけられる。
セイヴァーはかつて最強の盧生を相手に夢の力を捨て去り、世の行く末を憂うのならば自分の力だけで立ち向かえと諭した。
そして事実、セイヴァーは生身の人間のまま第二次世界大戦を未然に防ぎ、その意思を示している。
『人よ、不撓なる閃光であれ(グレイテスト・シャイニー)』
ランク:EX 種別:対神秘宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
セイヴァーが保持する最大最後の宝具。それは阿頼耶に匹敵、あるいは凌駕する意思力による幻想支配。
かつてセイヴァーは神々の黄昏に単身挑み、正しく人の身でこれを打ち破った。魂すら打ち砕く神威の嵐を己が肉体と意思のみによって踏破したセイヴァーの行いにより、「人類種は己が力のみで全ての神秘と神威を打倒することができる」ということが証明された。
人理に刻み込まれた最も新しき真理たるこの逸話は、宝具となった現在においては「あらゆる幻想をその手で打破できる」という規格外の神秘否定として機能する。
スキル:無形の輝きの効果が最大限に発揮された瞬間に自動発動。相手が保持する幻想・神秘・権能に至る全てを、あらゆる条件を無視して自壊させる。対象の持つ神秘、神性が高いほど効力は上昇するためランクの高さによる無効化は事実上不可能。
また、セイヴァーは現実を生きる無辜の人類種の代表者たる存在であるため、この宝具が最大活性化する対象=あまりにも高い神秘性を持つ対象に対しては、星の知性体の総数分のダメージを与える効果が付随する。
人が人としてあるために現出した最も新しき悟りであるため、当然ながらセイヴァーが「人」である時にのみ発動することができる。
現実にない幻想に縋る限り、万物は決して人には及ばない。前人未到の境地に至る人間の強さの集大成。それこそがこの宝具である。
【weapon】
邯鄲法使用時においては創法により作られたトンファーを使用する。
【人物背景】
質実剛健な正義の仁。曲がったことや非合理なこと、怠慢その他の締まらない諸々が嫌いで自他共に厳しいが、その辛辣な言動は冷淡さの表れではなく困った者を放っておけない面倒見のよさの裏返しである。
戦神館學園の特科生であり、甘粕事件に際し邯鄲の夢に潜航、最終的に最強の盧生とされた甘粕正彦を打倒する。
盧生として抱く属性は「英雄」。甘粕事件の後は盧生としての力の全てを捨て去り、真実生身の人間のまま、未来の可能性を知った者としての責任を果たし、第二次世界大戦の未然の防止に成功する。
【サーヴァントとしての願い】
人々の安寧。しかし彼は聖杯の恩寵を求めない。
【運用法】
単純なスペックだけで言うならば、あらゆる聖杯戦争において最弱のサーヴァントと言えるだろう。
なにせその身体スペックは生身の人間と変わらず、一切の異能を行使しない。戦力としてはこの上なく脆弱で、戦闘はマスターに依存する。
しかし英霊としての格は間違いなく最上級であるし、積み重ねた鍛錬は並みの英霊では追随できない域に在る。あらゆる難行を不可能なまま乗り越える様は、正しく英雄と呼んで過言ではない。
なお令呪一画で邯鄲法の解禁、令呪三画で盧生として一時的な覚醒が可能となるが、それはセイヴァーの意志を捻じ曲げる行為であり、彼が英雄として在る根源そのものを凌辱する蛮行であることを忘れてはならない。
【マスターとしての願い】
聖杯戦争そのものの破壊。
【weapon】
フランクリン機械帯・フランクリン機械腕:
テスラの雷電能力を制御し、時に拡大応用させる碩学機械式ベルト。
電界の剣:
周囲に浮かぶ5本の剣状の発光体を操る。
その核は深淵の鍵と呼ばれ、その正体は黒の王(ニャルラトテップ)の暗黒物質そのもの。神々の残骸である。
【能力・技能】
バリツ:
遠い過去に友より学んだ武技であるとのこと。よく分からんがすごい。
碩学:
電気学を修めた天才碩学。
《蒸気王》チャールズ・バベッジと《雷電公》ベンジャミン・フランクリンに師事した彼は世界でも最高峰の頭脳を持つ。
雷電魔人:
あらゆる電気・電力・電子を操るという異能。
雷の鳳と呼ばれる新大陸の祖霊から与えられた永劫の呪詛にして祝福。いわば神霊の権能そのものである。
亜光速による移動、大都市全域をカバーする索敵能力、電送による時間軸すら超越する特殊回避、雷化による透過、他者の精神操作、キロ単位の空間転移、電磁力による虚空跳躍、強靭な再生能力、完全な0秒思考に相当する高速思考と応用範囲は広い。専ら使われるのは雷電による攻撃。
雷電の一つ一つが神霊級の魔力行使であり、十万都市さえ鏖殺する黄金王や惑星をも滅ぼし尽くすクトゥルーの神体《星砕きし水の塊》すら一撃で打ち砕く。それは相手が非実体でも例外とはならない。
本来であるならば世界に存在しないはずの幻想である彼は人との縁が無ければ即座に消滅する運命にあるが、本聖杯戦争においては電脳世界であるからか、何かの力が働いているからか、それとも《世界の外側》にあるからか。理由は分からないが存在の確立に問題はない模様。
ただし、その影響か現在はある程度の制限がかけられている模様。
《世界介入》:
基底現実を限定的に書き換える、云わば世界改変能力の一種。
元から保有する再生能力と相まって、例え全身を砕かれ霊核を抹消され存在否定の咒を重ねがけされようと平然と復活できる。
ただし本聖杯戦争では上手く機能していない模様。
電気騎士:
第3次テスラ・コイル実験の折にテスラが製作した巨大な戦闘機械人形であり、雷の鳳が残した永遠の呪いの一つ。
普段は世界の果てに隠しており、フランクリン機械帯に5本の“深淵の鍵”を差し込むことで呼び出すことができる。
大味すぎる設計がたたってちゃんと完成しておらず、理論上は如何なる動力を以てしても動かすことができないが、テスラ自身が動力となることで、初めて“神経が通った”状態となって稼働する。
機械として動いているのではなく、テスラの電気エネルギーを全身に巡らせて無理矢理に動かしているだけ。
騎士の全身をかけ巡る雷電の擬似神経を動かすには弛まぬ集中が必要となり、雷電の身でなければ刹那の内に絶命してしまう。
雷電魔人としての権能を極限まで増幅させ、十万都市を鏖殺する薔薇の視線を更に億倍強化した攻撃すら防ぐ毎秒2万枚の雷電防御膜を構築し、専用の武装を獲得する。
基本的に対人や等身大の相手には使わず、超質量の存在と相対する場合にのみ使用する。
本聖杯戦争においては呼び出す際の消耗が上昇している。
【人物背景】
狂気なりし雷電王。正義を為すために世界中の犯罪組織を潰して回る怪人物《白い男》その人。
天才碩学であり、少年時代にはカダス北央帝国にて《蒸気王》チャールズ・バベッジに多くを学び、その後合衆国に渡り《雷電公》ベンジャミン・フランクリンに師事する。
20歳の時に行ったフランクリン雷電実験の際に雷の鳳に接触。かの存在に無限の正義を為すことを誓い、鳳の呪いを一身に受けた。
そして1902年、ニューヨーク現象数式実験を阻むために《時計人間》ロード・アヴァン・エジソンに戦いを挑むも敗北、アルカトラズ時間牢獄に囚われる。
正義を為せなかった自分に生きる価値はないと時間牢獄の中でうなだれていたが、そこを訪れた黄金に輝く薔薇の魔女に叱咤・激励されたことで奮起。
自身の助けられなかった数百万の100倍の人々を助けると誓い、活動を開始。最初に《血塗られた舌》と呼ばれる邪神崇拝集団を壊滅させた。
「私は貴女より祝福を賜った。
なれば、私は、此より先は何者にも屈しはしない」
「たとえ、万象が立ち塞がろうとも」
ちなみに御年92歳である。
【方針】
聖杯戦争の破壊。
最終更新:2016年04月29日 02:17