0028:二頭の狼、一匹の蛇




 闇の中、一人の男がひとりごちつつも歩いていた。瘴気のような気配を身に纏った、死人のような男が。
毒蛇を連想させるその男、名を大蛇丸という。
「ウフフ……アイツラが誰だか分からないけど、感謝しなければね」
 この舞台は大掛かりな蟲毒のようなもの、と大蛇丸には映っている。
自分が転生するために行う術法、それの準備と、この状況は非常に似通っているために。
「サスケ君も捨てがたいけど、この場にも面白そうなコがたくさんいたわ……」
 ならば自分のすることは決まっている。
色々な術のデータを集めながら、最後に生き残った一人を自分の新しい身体となすのだ。
無論、その身体が自分の眼鏡に適えば、だが。
大蛇丸は思考を楽しみながら、ゆっくりと自分の歩を進める。目前には巨大な橋が一つ、闇の中に浮かび上がっている。
近づくにつれ、どうやらあれはより大きな島へと渡る手段だと見えてくる。
お誂え向きだ。ここで張っていれば、確実に他の参加者と接触できるだろう。


「ここは四国か」
「そうみたいですねェ」
 剣客二人、新撰組の斎藤一、真選組の沖田総悟は、本州に渡る手段を探している。
「旦那の支給品は一体なんなんですかィ」
 沖田の呼びかけに応じ、斎藤は自分の支給品、青雲剣というらしいそれを眼前に掲げる。
説明書によれば、一振りで無数の切っ先を作り出す、妖の剣らしい。
「俺の?俺のはこれでさァ。って、まぁ、見れば分かるか」
 沖田はその身を鎧で包んでいる。鎧の魔槍、それが彼に与えられた武器の名称であった。
「お互い、武器が支給されたのは重畳でしたねェ」
「フン。こんなくだらないゲームに巻き込まれた時点で、重畳も何もなかろう」
「違えねェ」
 口を開けばこの調子だが、意外と二人はウマがあった。
聞けば、世界の違いがあるとはいえ、共に”シンセングミ”という名称の組織に属していたこと。
互いに警察のような仕事をしてきたこと。剣客であること。
等と、偶然にしては出来すぎているかのような共通点があったためであろう。

「時間が惜しい。二手に分かれて本州へ行く方法を探す」
「了~解」
 どうやら、議論の結果、二手に分かれて脱出方法を探すことになったようだ。斎藤は東に。沖田は西に。

 そして。
「「!」」
 先に本州へ渡る手段を発見したのは斎藤。彼は前方に大きな橋、そして異様な存在感を持つ男を見つけた。
身構えつつも、その蛇のような男、大蛇丸に声をかける。戦闘は避けられないであろうという予感を抱きながら。

 大蛇丸は、自分に近付いてくる一人の男を見つけた。
チャクラは感じないが、なにか変わった空気を持つ剣のような、杭のようなものを携えている。
少し興味を引かれ、相手の出方を待つと、出し抜けに声をかけられた。

「貴様はゲームにのっているのか?」
「えぇ。このゲームは私にとって願ってもないコト。そういうアナタはどうなのかしら?」

 一呼吸分の沈黙。全ての音を覆い尽くすかのように、空気が重さを増していく。

「阿呆が……」

一薙ぎの風が流れ……

「「行くぞ!」」

 二人の男は同時に構え、地を蹴る。先手を取ったのは斎藤。自分の唯一、そして絶対の武器、片手平突き”牙突”。
猛々しい獣の牙のように、刃が、大蛇丸を食い千切らんと迫る!
迅い!だが、大蛇丸にとっては、その攻撃は充分に回避可能、反撃も容易い範囲の一撃……のはずであった。が。

「何ッ!!影分身かッ!」
大蛇丸は一瞬、己が目を疑う。刃が自分に到達しようとしたその時、無数の剣閃に増殖したのだ。
チャクラを消費し、刃を増殖させる!これがあの武器の能力!これは……避けきれない!!
驟雨のような剣戟に襲われ、数条の傷を負う。たまらず、横方向に跳び、回避をしようとするが…
「詰めが甘い!」
斎藤の剣閃が、間髪入れずに横薙ぎへと変化し、大蛇丸の後を追う。横方向への回避は不可能!ならば!
上に跳ぶッ!!少しでも長い時間、回避し続けることさえできればッ!!

「見え見えなんだよ、阿呆が……!?」
 牙突参式、対空迎撃用の牙突で追撃をかけようとした瞬間、突然、斎藤の膝が笑った。
その様子を尻目に、悠々と大蛇丸は大地に降り立つ。泰然と構えながら、不気味な笑みを浮かべると、斎藤に向かって話しかけた。

「あら、その様子じゃ気付いていなかったのね。その武器、どうやら使用者の命を吸って力を発揮しているみたいよ」
「……フン」
「まぁ、チャクラも使えないのに、1対1でここまでやれたのは褒めてあげるわ。それじゃ、さようなら」

 攻守反転!刹那の間をおいて大蛇丸の腕から毒蛇が流れ出す。全ての蛇は、あやまたず斎藤の喉笛に。







「じゃ、1対2ならどうでェ」

━━━━━━一閃!!

斎藤に喰いつこうとした無数の蛇が、肉片になって宙を舞った。
毒蛇を切り払ったのは槍。槍を駆るは鎧に身を包んだ男。茶髪のその男、沖田総悟。

「旦那ァ、そんな恐い顔しなさんな。あっちの方には山しかありませんでしたぜ」
「あそこに橋がある」
「マジでか。ま、まぁ、同じシンセングミ同士、仲良く行きましょうや」
「……フン、阿呆が……」

斎藤一は立ち上がり、武器を構える。狼の牙、今、大蛇の喉笛を喰い破るために。
沖田総悟は油断なく、槍を構える。侍の刃、今、大蛇の肢体を引き裂くために。

大蛇はいまだ、不敵な笑みを浮かべ続けている……





【場所:香川北部/黎明(一日目)】

【大蛇丸@NARUTO】
 [状態]:全身に軽傷(戦闘続行に問題なし)
 [装備]:不明
 [所持品]:荷物一式
 [思考]:1.斎藤たちの実力を見る(殺すことに躊躇はないが、執着しない)
     2.人の通りそうな場所(今は瀬戸大橋)に網を張り、より多くの参加者のデータを集める
     3.生き残り、自分以外の最後まで残ったものを新しい依り代とする

【斎藤一@るろうに剣心】
 [状態]:体力消耗
 [装備]:青雲剣@封神演義
 [所持品]:荷物一式
 [思考]:1.大蛇丸の殺害
     2.主催者達を悪・即・斬の信念に従い切り捨てる

【沖田総悟@銀魂】
 [状態]:健康
 [装備]:鎧の魔槍@ダイの大冒険
 [所持品]:荷物一式
 [思考]:1.大蛇丸を倒す
     2.真選組として主催者を打倒する


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GAME START 大蛇丸 0080:竜と獅子の猛攻
GAME START 斎藤一 0080:竜と獅子の猛攻
GAME START 沖田総悟 0080:竜と獅子の猛攻

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最終更新:2023年11月19日 12:48