0080:竜と獅子の猛攻 ◆lEaRyM8GWs
斎藤の青雲剣は強力な武器ではあったが体力の消耗が激しく、沖田は刀ほど槍を使いこなせない。
ただでさえ全力を出し切れない状況下にあるうえ、
大蛇丸の人間離れした動きに翻弄され、二匹の狼は窮地に立たされていた。
大蛇丸はまず斎藤の消耗を狙い、持久戦に持ち込もうと回避行動に重点を置いている。捕らえるのは至難の業だった。
斎藤は生命力の消費を辞さず青雲剣による牙突を放つも、
大蛇丸は刃の届かぬ後方へと飛ぶ。
そこを狙って沖田は槍を払うも、
大蛇丸は蛇のように槍の間合いの内側へと潜り込みチャクラを込めた拳を腹部へ叩き込む。
機動性重視の鎧の魔槍は一部装甲が薄くなっており、沖田は内臓を揺さぶる衝撃に動きが止まる。
その隙をついて
大蛇丸は槍の柄を握り、続けざまに強烈な蹴りを鼻っぱしらに放った。
沖田は苦悶の声を漏らしながら、鼻を押さえて後ずさった。手の内にドロリとした液体がしたたっているのが分かる。
鼻血が出ると呼吸がさえぎられ、より体力の消耗が激しくなってしまう。
最悪の展開を心の片隅で覚悟しつつ、鼻から手を離し、右の鉄甲に左手をかぶせる。
次なる一手を打つための動作を取りながら、沖田は眉をしかめた。何かがおかしい、ダメージのせいか視界が暗い。
大蛇丸は奪った槍を横薙ぎに払い、再び青雲剣で攻撃しようとしていた斎藤は咄嗟に避けるも浅く腹の皮を斬られた。
戦闘に支障は無いものの、青雲剣のもたらす疲労はすでに全力の牙突を放てぬほどだ。
大蛇丸は蛙を喰らう蛇のような双眸で二頭の狼を見、魔槍を振り上げ斎藤に追撃を加えようとする。
槍の切っ先を見上げた斎藤は、空が暗い事に気づいた。星が無い、さっきまであったはずなのに。
二頭の狼と一匹の蛇の頭上に暗雲が立ち込めていた。
大蛇丸も小さな異変に気づいた。空気がピリピリと肌を刺激すると感じた刹那、空が光る。
沖田も斎藤も本能的に危険を察知し、
大蛇丸から離れるように後ろへ飛んだ。
大蛇丸もそれを察知して咄嗟にその場を飛びのこうとするも、振り上げたままの魔槍目掛けて暗雲から一筋の閃光が降り注いだ。
「ライデイン!!!!」
それは稲妻。人為的に
大蛇丸目掛けて放たれた正義の一撃。
肉と神経を焼く痛みに
大蛇丸は鋭い悲鳴を上げる。
思わず魔槍を取り落とし、
大蛇丸は先ほどの声がした方向を見た。斎藤と沖田も同様に稲妻の主を見た。
内陸側にある低い崖の端に、小振りな刃物を持ち大きな箱を背負った黒髪の少年が立っている。
二頭の狼も一匹の蛇も、その幼い外見の内にある不釣合いな凄まじい力を感じ取った。
――竜。
地を這う狼や蛇など歯牙にもかけぬ絶対の強者。
その力のほんの一端ですら、自分たちを凌駕しかねない。
大蛇丸は少年に興味を惹かれると同時に、絶対の不利を悟る。
この2人の戦士だけなら、多少消耗しても勝利を収める事自体はさほど難しくない。
だがあの少年は単騎で己を倒すだけの力を秘めている。
少年の正体は気にかかるが今はこの場から離脱すべきだと判断した
大蛇丸は、落としてしまった魔槍を拾おうとする。
刹那、少年は刃物を振るった。刃は当然届くはずもない、しかし真空の刃が
大蛇丸の手と魔槍の間に割って入る。
手を伸ばせば指を切断されると悟った
大蛇丸は慌てて手を引いたところへ、沖田が剣で斬りかかってきた。
(いったいどこから剣を!?)
切っ先に左肩の肉を削ぎ落とされながらも、
大蛇丸は地を蹴って小山の中に逃げ込もうとした。
しかしその逃げ込もうとした場所から、パンツ一丁の男が飛び出した。
(獅子!?)
一瞬
大蛇丸はそう思った。この男からは獅子のような力強さを感じる。
「
ターちゃんパーンチ!」
獅子のような男は鋭く重い拳を放ち、
大蛇丸は鞄でそれを受け止めるも衝撃を吸収し切れず後方へ吹き飛ばされる。
それでも何とか地面に着地した
大蛇丸だが、そこを狙って沖田は再び剣を振るう。
鼻血のせいで呼吸が上手く出来ず踏み込みが甘くなっていたため、
大蛇丸はその刃を何とか避ける事が出来た。
竜のような少年、獅子のような男、そしてこの狼のような男。
三人の強者に囲まれた
大蛇丸は、逃亡も困難と考え、もう一匹の狼を狙って飛び掛った。
あの生命力を力に変える剣を使い続けているあの男なら、何とか押さえ込んで人質に出来る。
無傷で捕らえるのは無理だろうが、他の連中に殺されるよりはいい。
だが、斎藤のかたわらにいつの間にか美女が立っていた。
稲妻、謎の少年、真空の刃、ありえぬはずの剣、小山から飛び出した男の拳、剣の追撃。
大蛇丸が数々の出来事に気を取られている間に、彼女は呼吸を乱しながらも斎藤に歩み寄っていた。
それに気づいた斎藤も、美女が何か企んでいる事に気づき、
青雲剣に体力を吸われた身体を引きずって彼女の方へと歩を進めていたのだ。
大蛇丸は長い黒髪の美女から、何ら脅威を感じなかった。
確かに力を秘めている感じはするが、すでに呼吸は苦しみに乱れている。
その身体で何が出来るのだと
大蛇丸は残忍な笑みを浮かべていた。
「おい、どうする気――」
「それを貸してくれ」
生命力を吸う武器を、自分以上に体力を消耗していそうな女に渡していいものかと斎藤は一瞬悩む。
しかし彼女から奇妙な自信を感じ取り、青雲剣を手渡した。
美女は小さく微笑むと、青雲剣を
大蛇丸目掛けて無造作に振るった。
刹那、無数の刃が斎藤の生み出したそれの倍近く現れ刃の壁を生み出した。
ギリギリ横っ飛びに避けたものの、光刃の先端は
大蛇丸の身体の前面の肉を浅く切り刻んでいた。
致命傷ではないものの出血が激しく、迅速な治療が必要な傷。
大蛇丸は自身の敗北を悟った。しかし――
「去れ、お主からは邪悪な気を感じる」
美女は毅然とした態度で
大蛇丸に言い放った。
「見逃す気か? 奴を逃せばまた人を襲うぞ」
「仙道に殺生は禁じられておる」
「ならば俺が悪・即・斬の信念の下に奴を斬る。その武器を返せ」
どうやら美女は人を殺すつもりは無いらしい。二人が言い合う隙に、
大蛇丸は印を結んだ。
「影分身の術!」
大蛇丸が叫んだ刹那、その場に煙が現れた。
咄嗟に美女から青雲剣を奪い取った斎藤が牙突を放つが、煙の中から三人の
大蛇丸が飛び出した。
一人は美女に向かって飛び、一人は小山に向かって飛び、一人は橋に向かって飛ぶ。
「糞ッ!」
斎藤の悪態を気持ちよさそうに聞きながら、
大蛇丸が美女の首を掴もうと手を伸ばす。
美女は身をすくませるだけで回避行動を取れずにいた。
大蛇丸の毒牙にかかろうとした刹那、閃光が走る。
「紋章閃!」
少年の拳から放たれた光が
大蛇丸の頭部を貫いたかと思うと、その
大蛇丸は煙となって消えた。
そして小山へと飛び込もうとした
大蛇丸は、パンツ一丁の男に道をさえぎられ、
背後から沖田の剣に心臓を貫かれ――煙となって消えた。
橋へと逃げた
大蛇丸は人間離れした速度で瀬戸大橋を駆け抜けていく。
「逃がすな、追え!」
叫びながら走る斎藤だが、青雲剣に体力を奪われたためその場によろけてしまった。
沖田も鼻血のせいで追う余裕は無い。
そして少年は崖から飛び降りている最中で、パンツ一丁の男が瀬戸大橋に足をかけようとするも、
瀬戸大橋を駆ける
大蛇丸が振り向いたかと思うと、凄まじい突風がパンツ一丁の男を襲った。
風遁・大突破の術と呼ばれるものだ。
ダメージを受けるような攻撃ではないが動きを止められてしまったせいで、もう
大蛇丸に追いつくのは不可能。
こうして、
大蛇丸はまんまと逃亡を果たしたのだった。
瀬戸大橋周辺を見張れる小山の森の中で、五人の男女は木の根や岩に腰を下ろしていた。
斎藤と沖田は自身の服の袖を破って包帯代わりとし、斎藤は腹部の傷に、沖田は自身の鼻に巻いた。
そして彼らは互いに自己紹介をする。
少年の名はダイ。竜の騎士と呼ばれる超戦士であり、大魔王バーンと敵対する異世界の勇者。
パンツの男の名は
ターちゃん。アフリカのサバンナで動物達を守る正義感の強い男だ。
美女の名は
竜吉公主。古代中国にある崑崙山に住まう純血の仙女だ。
竜吉公主にとって人間界の空気は毒も同然で、さっきの戦いで埃を吸ったためダイの水でうがいをしている。
おかげでダイの水はまだ夜明けさえ迎えていないのに、ペットボトル一本分使い果たしてしまった。
「なるほど……こいつはダイ君のお友達の武器なんですかィ」
「色々武器が仕込まれてるとは知ってたけど、まさか鉄甲が剣になるとは思わなかったよ」
話をしながら、沖田がいずこかから取り出した剣の正体が明らかになった。
鎧の魔槍には数多くの武器が仕込まれており、鉄甲は簡単な操作で剣となるのだ。
今までそれを使わずにいたのは、
大蛇丸の隙を狙うためだったらしい。
隠し武器としての剣なので仕掛けがほどこされている分強度は落ちるが、
それでも特殊な金属で造られているため通常の鉄の剣よりははるかに丈夫だ。
「沖田。悪いがその剣、俺に譲ってくれ」
「旦那にですかィ?」
「こんな物を使っていては長期戦は無理だからな」
斎藤は青雲剣を
竜吉公主の足元に放る。
すでに宝貝の説明は受けており、
竜吉公主ならほとんど消耗せず青雲剣を使えるからだ。
「……気持ちはありがたいが、私に剣を使いこなす腕はない。本来使っておった宝貝も水を操るものじゃからな」
「それでも生命力をほとんど消耗せず使えるのならお前が持っていた方がいいだろう。
もっとも――その剣を使うより、ただ呼吸をするだけの方がつらいようだがな」
痛いところを突かれ、公主はうつむいた。
宝貝を手にし、足手まといではなくダイの力になりたいと思っていた公主の願いを叶えるように宝貝が手に入ったが、
青雲剣という近距離用の宝貝では必然的に格闘を行う必要がある。
そんな真似をすれば公主は激しい運動に呼吸を乱し、毒の空気をますます吸い込んでしまう。
遠距離用の宝貝が手に入れば……と思わずにはいられなかったが、宝貝が手に入っただけでも僥倖だと気を取り直す。
「フッ。どうやらそちら側は武器不足のようだな」
斎藤はダイの出刃包丁を見て言った。
すでにダイからは竜闘気について説明を受けている。
竜闘気を使った攻撃に耐えられるのはオリハルコン製の武器だけだと。
ダイの強さを知った斎藤と沖田は、もしオリハルコン製の武器を手に入れたらダイに渡すと約束した。
ダイが全力で戦えば
大蛇丸など敵ではないが、武器の無い今では勝利するのは少々手こずりそうらしい。
ちなみに
大蛇丸はダイの全力の強さを嗅ぎ取っていたため、武器無しのダイの強さを測り違えていたのだ。
「さて、治療も済んだ。これからどうする?」
「とりあえず……公主さんが落ち着くまでもうしばらくここで休みます。
もしかしたらおれ達の仲間か誰かがあの橋を通るかもしれないし……」
ダイの答えに斎藤は眉をしかめる。
「さっきの稲妻でここに人がいる事はバレている。もしかしたらゲームに乗った奴が来るかもしれんぞ」
「ここでじっとしていれば多分大丈夫だと思うし、さっきの奴程度なら何とか倒せるよ」
「フンッ。付き合ってられん、俺はあの蛇のような男を追う」
「そいつァ無理ですぜ、旦那」
くぐもった声で沖田は言った。鼻が痛むらしく、微妙に表情が歪んでいる。
「見たところ旦那はあの青雲剣ってのに力を吸われすぎちまってる。しばらくここでダイ君と一緒に休みましょうぜ」
「……チッ、仕方ないな」
沖田のもっともな言葉に斎藤は従った。事実、こんなに消耗していては
大蛇丸を討てまい。
ここに身を潜めて休息し、人が来たら仲間に加えるか倒すかしようと意見がまとまったと思いきや、突然
ターちゃんは言った。
「私は……向こうの島に渡ってみようと思うのだ」
これだけ仲間がいれば
竜吉公主も安全だろうと判断したための言葉だった。
ならばしばらく一人で本州へ渡り、自分の仲間を探したいと
ターちゃんは説明する。
「俺達は傷が癒えたら
大蛇丸を追う、こいつらの面倒を見る気は無いぞ」
「だから6時までには戻ってくるのだ。私がいなくなっては公主さんを背負う人がいなくなってしまう」
「なるほど……ならば俺達もお前が帰ってくるか6時を回るまでここで待っていてやる。
出来る限り向こう側の情報を集めて戻ってこい。ただし、6時を過ぎたらお前は死んだものとして置いていくぞ」
「それでかまわないのだ」
ターちゃんは公主のデイバッグをダイに渡す。
「
ターちゃん……」
「君は強い、公主さんをしっかり守るのだ」
ダイは約束するようにうなずき、公主は心配そうに言う。
「無事、戻ってきてくれ……」
「もちろん」
ターちゃんは自分に少し打ち解けてくれた公主に感謝し、ほっとするような柔らかい笑顔を浮かべた。
本州へ渡れば
大蛇丸の攻撃を再び受けるかもしれない、もしくは他のマーダーと相対するかもしれない。
それでも――
仲間を探すため、本州の偵察を行いダイ達の安全を図るため、
ターちゃんは瀬戸大橋へと向かった。
【黎明~早朝】
【岡山県、瀬戸大橋付近】
【大蛇丸@NARUTO】
[状態]:前半身に無数の裂傷。全身に落雷による火傷。チャクラを微消耗。迅速な治療が必要。
[装備]:不明
[所持品]:荷物一式
[思考]:1.本土にて身を隠し傷を癒す。
2.回復したら人の通りそうな場所に網を張り、より多くの参加者のデータを集める。
3.生き残り、自分以外の最後まで残ったものを新しい依り代とする。候補としてダイを考えている。
【香川県、瀬戸大橋付近の小山の森】
【チーム名=壬生狼】
【斎藤一@るろうに剣心】
[状態]:腹部の皮一枚切れている。体力消耗、戦闘に支障有り。
[装備]:魔槍の剣(鎧の魔槍の鉄甲が変形した物)@ダイの大冒険
[所持品]:荷物一式
[思考]:1.ターちゃんの帰還or6時まで休み、大蛇丸を追う。
2.オリハルコン製の武器を手に入れたらダイに渡してやる。
3.主催者達を悪・即・斬の信念に従い切り捨てる。
【沖田総悟@銀魂】
[状態]:鼻を傷めているが骨に異常は無し。
[装備]:鎧の魔槍(右の鉄甲無し)@ダイの大冒険
[所持品]:荷物一式
[思考]:1.ターちゃんの帰還or6時まで休み、大蛇丸を追う。
2.オリハルコン製の武器を手に入れたらダイに渡す。
3.真選組として主催者を打倒する。
【チーム名=勇者一行】
【ダイ@ダイの大冒険】
[状態]:健康
[装備]:出刃包丁
[道具]:荷物一式(水残り半分)、公主の荷物一式、ペガサスの聖衣@聖闘士星矢(ダイを仮初の主と認めつつある)
[思考]:1.竜吉公主と共にターちゃんの帰りを待つ。
2.竜闘気に耐えうる武器を手に入れる。
【竜吉公主@封神演義】
[状態]:疲労。普通の空気を吸っている限り、数日後には死んでしまう。
[装備]:青雲剣@封神演義
[道具]:無し。
[思考]:1.ダイと共に行動する。
2.可能なら遠距離用宝貝を手に入れる。
【ターちゃん@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、恥ずかしい染みのついた本@ジャングルの王者ターちゃん
[思考]:1.本土へ偵察に行き6時までにダイ達の所へ戻る。
[共通思考]:アバンの使途、太公望、アフリカの仲間を探す。他、仲間になってくれそうな人を集める。
[備考]:近くの県からなら稲妻が落ちただいたいの場所を把握出来ます。
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最終更新:2023年11月19日 10:30