0029:天才 ◆Wf0eUCE.vg





「晴子すわぁん! どこっすかぁ!?」
赤い髪を短く丸めた青年が、叫びながら夜の街中を走っていた。
「この桜木花道、今すぐお傍に行きますからね!」
叫ぶこの男、桜木花道は焦っていた。
突然訳のわからない場所につれて来られたかと思うと、おかしな三人組に殺し合えと命じられ、極めつけは大男の首が爆発する始末だ。
いくら花道といえど、この状況が異常なのは嫌というほど理解できた。
その後移動させられ、群馬県に降り立った花道は、まず支給品を確認し、参加者名簿を開いた。
そして、その名を見つけた瞬間、体は走り出していた。

可憐で繊細なあの人がこんな状況に耐え切れるわけが無い、きっとどこかで怯えている。
そして待っているはずだ、自分のことを。
すぐにでも自分がそばに行って守らねばならない。

「晴子さぁん! どこっすかぁ!?」
大声を張り上げながら花道は走る。
だが、その花道の足元に、突然建物の陰から何者かが滑り込んできた。
全力で走っていた花道は避けきれず、足を引っ掛け派手に地面に転がった。

「動くな」
背後からの声と同時に腕を固められ、花道は動きを封じられる。
そして、地面に突っ伏した花道の背中に、ゆっくりと硬い何かが突きつけられた。

うつ伏せながら、首だけを動かし花道は襲撃者を睨む。
かろうじて見えたその顔は、自分と同年代ほどの、日に焼けた狼の様な髪型の青年だった。
「…晴子さんが、俺を待ってるんだよ。こんなことしてる場合じゃねえんだ、この野郎」
銃を突きつけられたこの状況だというのに、気丈にも花道は咆える。
だが、睨みを利かせ凄んでみても、銃を突きつけられたこの状況は変わらない。
流石に動けばどうなるかくらいはわかる、このままではどうすることも出来ない。

男は花道を値踏みするようにマジマジと見つめ、考えるような素振りを見せた。
男は暫くしそうしていたが、何か納得したように口を開いた。
「お前は殺し合いをする気は無いんだな?」
「あたりまえだ」
「そうか、じゃあ行けよ」
そう言って男は、花道の背中から銃を下げ拘束を解いた。
「なぬ?」
あまりのあっさりとした解放に、思わず間の抜けた声を上げてしまう。

「俺だって殺し合いなんてする気はねえよ。ただ、黙ってやられる気もねえんでな、身を守ためとは言え、悪かったな」
男はショットガンを肩にかけ、バツが悪そうにそう言った。
「う、うむ、わかればいいんだ。急ぐんでな、じゃあな」
片腕を上げ、花道は早々に走り出した。
「待てよ、名前くらい名乗ってけ。オレは日向小次郎だ、お前は?」
その言葉に、走り出そうとした花道はピタリと止まり、振り向き胸を張ってこう答えた。
「ふふん、よくぞきいてくれた。この私こそ天才、桜木…」

パン

突然響き渡る小さな銃声、花道の言葉は銃声によって遮られた。
同時に花道の右肩から血が噴出す。

突然の襲撃、だが超一流のスポーツ選手としての反射神経と判断力が反射的に体を動かす。
咄嗟に二人は、近くの建物の陰に身を隠した。

「ん? 仕損じたかな。まあいい」
闇の中から、顎をさすりながら、小銃を持った白髪の男が現れた。
「ふむ、やはり銃はイカンな。フフ…この天才アミバ様の拳にかかれるのだ、光栄に思え餓鬼ども」
そう言ってアミバは銃をしまい、日向たちの隠れた建物に向かってゆっくりと歩いていった。

「おい、お前。こういう経験は?」
ショットガンを構え敵の様子を窺いながら、日向は花道に問いかける。
「喧嘩なら幾らでもある」
「チッ、それじゃオレと同じってとこか。支給品はなんだ?」
「…これだ」
花道は胸を張り、胸元に着けた、真ん中に『リ』と書かれたバッジを見せる。
「なんだそりゃ?」
「知らん」
「チッ、ようは、まともに使えるのはこれだけかよ」
再度日向は舌を打ち、ショットガンを強く握り締めた。

「よし、じゃあ俺が囮になってやる、その隙にそれで何とかしてくれ」
そう言って、花道は掌でこめかみから流れ落ちる汗をぬぐった。
「ああ、けどショットガンだからな、俺が合図出したら全力で弾の届く範囲から逃げろよ。出来るか?」
その言葉に、花道は迷いを振り切るように自信満々に胸を張った。
「フフン、誰に向かって口を聞いているのかね? この私こそ天才さ…」
「…来たぞ!」
日向が声を上げショットガンを構える。
花道は言葉を中断し、アミバに向かって駆け出した。

「まずは貴様か、赤頭?」
向かってくる花道に対し、アミバは構えも取らず余裕の笑みを浮かべる。
「フンフンフンフンフンフンフン」
近づいた花道は掛け声と共に、素早く左右上下に体を揺らし敵を翻弄する。
その動きのキレ、速さに常人ならば残像すら見えただろう。
だが、武道の天才アミバの目には、その程度の動きなどは止まって見える。
「遅いわ!」
アミバの掌が花道を捉える。
胸元に底掌をもらった花道の体が大きく宙を舞う。

「チッ!」
それを見た日向は咄嗟にショットガンの引き金を引いた。
しかし、アミバは素早い動きでショットガンの攻撃範囲から離脱する。
「ククク、このアミバにそんなおもちゃは当たらんよ」
日向は何発もショットガンを乱射するもの、アミバは見事に全てかわしきり、ジリジリと間合いを詰めてくる。
「こざかしいわ!」
間合いに近づいたアミバは、叫びと共にショットガンを蹴り上げた。
ショットガンは日向の手元を離れ地面を転がる。
「クソッ!」
唯一の武器を失い日向は歯噛みする。

その様子を悠然と見つめ、アミバの腕が振り上げられた。
「ククク、この私の手にかかることを光栄に思って死ね、小僧!」
突き出された二本の指が日向を襲う。
しかし、その攻撃は突然の後ろからの衝撃によって中断された。
何事かと、反射的にアミバは背を振り向く。
そこには先ほど吹き飛ばしたはずの花道が、空中で両足を揃えドロップキックをかましているのが見えた。

「な、何故赤頭がここにいるのだ!?」
耐え切れず、アミバの体は前のめりに倒れこむ。
「図に乗るなよ餓鬼ど…も、がッ!?」
体勢を立て直そうとするアミバだったが、その目に高々と天高く振り上げられた一本の足が映った。
それは、アミバが倒れるであろう場所で待ち構えている日向の姿だった。

振り下ろされた足が地面を擦る。
「まッ…」
「ウオオオオォォォォ!!」
叫びと共に振りぬかれたその足は、アミバの顔面に突き刺さった。


「大丈夫なのか?」
「うむ、攻撃はこのバッジに当たったんだが…結構丈夫みたいだなこのバッジ」
攻撃を受け止めたにもかかわらず、変形すらしてないバッジを見つめ花道が呟いた。
「そうか。で、どうすんだコイツ…殺すか?」
そう言って日向は、ショットガンを気絶した男に向ける。
「止めとけ、アホらしい」
「だな」
始めからそのつもりだったのか、日向はその言葉にあっさりと同意しショットガンを下ろした。
「でも、こんな危ねえ野郎、ほっとく訳にもいかねえだろ」
「ふふふ」
その日向の言葉に、花道はどこか自信ありげに笑いながら、どこで見つけたのか、ロープを取り出した。


「あんなもんどこで手に入れたんだ?」
夜の道を走りながら日向が疑問を口にする。
「ガソリンスタンド。ここら辺、生活感が無いわりに結構いろんなものがあるぞ」
花道は走りながら辺りを指差す。
「で、これからどうするんだ?」
「そんなもん決まってる、晴子さんを探すんだよ」
「当てはあんのか?」
「む…」
「まあ、そうだろうな。俺も手伝ってやるよ、人探し。俺も翼達と合流したいしな」
そう言って、二人は立ち止まり、固い握手を交わした。

「そういや結局、まだ名前聞けてなかったな」
その言葉に花道は、少し前の再現のように胸を張り、自らを指差しこう答えた。
「天才桜木花道だ、覚えておきたまえ日向小次郎君」




【群馬県(1日目)/黎明】

【チームスポーツマン】
【日向小次郎@キャプテン翼】
 [状態]:健康
 [装備]:ショットガン
 [道具]:支給品一式×2
 [思考]:知り合いとの合流、花道に協力

【桜木花道@SLAM DUNK】
 [状態]:少しダメージ、右肩から軽い出血、リーダーバッジの効果により身体能力が少しだけ上昇
 [装備]:リーダーバッジ@世紀末リーダー伝たけし! 、ワルサーP38(アミバの支給品)
 [道具]:支給品一式
 [思考]:晴子を探し合流する

【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:気絶、逆さ吊り
 [装備]:無し
 [道具]:無し
 [思考]:皆殺し


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GAME START 日向小次郎 131:孵化
GAME START 桜木花道 131:孵化
GAME START アミバ 119:ん?間違ったかな

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最終更新:2023年12月15日 08:52