0037:漆黒の瞳、歪な瞳、救われない瞳
「どんな時でも俺は勝ーーーつ!!!」
男は森の中で叫んだ。
「勝負を挑んできた者には勿論勝つ!そしてあの黒幕をぶっ倒して勝つ!!……ふふふ完璧だ、完璧すぎる」
細かいことは考えず、取り敢えず何にしろ勝とうと目標に掲げる。
そのヒーローの名は
勝利マン。
ガサッ
近くの茂みがわずかに揺れる。
「誰だっ!出てこい!」
勝利マンはいつでも戦闘に入れるように構える。
どんな奴にでも勝つ自信はある。
勝つためなら何をやったって良いのだから。
正義は勝つ。
つまり勝つ即ち其れ正義!!
「降参よ、つまりは貴方の不戦勝で良いわ」
そう言って木の陰から黒い服の女性が両手を上げて出てきた。
手にはバッグすらない完璧に無防備な状態だ。
「――わかった」
勝利マンも歴としたヒーローの一人。
この状態で人殺しゲームに乗っていない女性を攻撃する技は持ってはいない。
しかし、非戦闘員を護っていたら、これから襲いかかってくる厄災に勝てなくなるかも知れない。
多少考えた後に勝利マンは決断を下した。
「残念だが、俺は君を常に護るということは出来ない。あくまで安全な場所まで送るだ……」
背中が熱い。
目の前の女性と話している内に、どうやら刃物で後ろから斬られたようだった。
しかし殺気も気配も全く感じてはいない。
「だ……だれだ……」
振り向けば其処――自分の背中に生えている一本の手。
そしてそれに握られている一振りの剣。
「ば、馬鹿な……この俺が……しかし、まだ死んだわけではない!つまり負けてはいない!!」
叫びながら辺りを見回す勝利マン。
彼の瞳にはまだ勝利の念が燃えていた。
そして視線を目の前に戻したときに、その女の笑みが目に入った。
「ごめんなさいね、でも決して殺した訳じゃないわ」
次第に勝利マンの顔から精気が失われていく。
「私の手伝いをして貰うわよ」
背中に生えた手は消え、どさりと剣が落ちる。
その剣の名前は降魔の剣。
斬った物を魔物に変える霊界の三大秘宝の一つ。
もう勝利マンは彼女――
ニコ・ロビンの手下となっていた。
「別に気にする事じゃないわ……これは不意打ちだから勝負は貴方の勝ちのまま」
そしてまだ暗い夜空を悲しげな目で見つめながら呟いた。
「――私だって、生き延びたいのよ……」
自分を利用価値云々の前に信じてくれる絶対に裏切らない仲間。
小さい頃からお尋ね者の彼女はただそれが欲しかっただけ。
それでいて、強く死なない仲間。
もう疫病神を演ずるのには疲れてしまった。
それが彼女の歪な理由。
そして彼女の夜空のような瞳から零れた涙を見た者は、勝利マンの頭の上で固まっている勝利(かつとし)くん唯一人。
【群馬県/黎明】
【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:降魔の剣@幽遊白書
[道具]:荷物一式
[思考]:1絶対に裏切らない(妖怪化)仲間を増やす
2死にたくない
【勝利マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:妖怪化
[装備]:勝利くん
[道具]:荷物一式、支給武器は不明
[思考]:妖怪化しロビン絶対
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最終更新:2024年08月14日 18:03