0038:物々交換、そして賭け死合 ◆lEaRyM8GWs
佐賀県北側海辺の崖をヒソカとパピヨンが歩いていると、突然声をかけられた。
警戒しながら振り向いた二人が見たのは、全身包帯の男と黒い着物を着た眼帯の男。
「よぉ、そこの変なマスクの兄ちゃん。いい物持ってるじゃねぇか、俺にくれよ」
「いきなり何だお前は」
不躾な頼みに眉をひそめたパピヨンは、手に持っていたムラサメブレードを構えた。
ホムンクルスの強靭な肉体とはいえ、病はまだ身体を蝕んでいる。素手での戦いは避けたいところだ。
なのに武器をくれとこの男は言う。ふざけるなとパピヨンは思った。
「見たところ侍か何からしいが、そんな奴にホイホイ刀をやる馬鹿がいると思うか?」
「別に力ずくで奪い取ってやってもいいんだぜ」
張り詰めた空気の心地よさに、剣八とヒソカは小さく微笑んだ。
「なかなか美味しそうな男だ。パピヨン、その剣をプレゼントしてあげたらどうだい?
何ならボクがすぐ取り返してあげるよ、力ずくでね」
「おうおう、そっちの兄ちゃんいい度胸してるじゃねぇか。気に入ったぜ」
ヒソカは余裕たっぷりの態度ではあったが、静かな殺気が瞳にギラギラと漂っていた。
それに気づいた志々雄は、念のためにと核鉄を取り出す。
これを持っていれば体力が回復するらしい。長時間全力で戦えない自分にとってはありがたい物だ。
そのありがたい物を見たパピヨンの目の色が変わる。
「核鉄……ッ!! LXX、ご先祖様のか!!」
「アン?」
ドブ川が腐ったようなドス黒い瞳で核鉄を見られた志々雄は、ふと説明書に書かれていた事を思い出した。
核鉄は治癒力を向上する他、真の力を発揮する事で強力な武器になるらしい。
武器にする方法が分からないためそのままにしていた志々雄だが、
核鉄を知っているこの蝶々マスクの男は真の力を発揮できる者という事か。
ならば、と志々雄は笑った。
「お前、これが欲しいのか」
「別にくれなくてもいい。どこぞの臆病者のように譲ってくれなどと頼まず、腕ずくでいただくからな」
「なんだとッ!?」
剣八は怒気を孕んだ声を投げつけるが、パピヨンは微塵も反応しなかった。
ターゲットは志々雄一人。核鉄さえ手に入ればそれでいいのだから。
刀を狙う剣八、核鉄を狙うパピヨン、心躍る戦いを欲するヒソカ。
三者が睨み合う中、志々雄は無防備にパピヨンへ歩み寄った。
「まあそう言うなよ。どうせなら物々交換といこうぜ」
「物々交換?」
その場にいる全員がいぶかしげに志々雄を見つめた。
視線を気にせず志々雄はパピヨンの前まで行き、核鉄を差し出す。
「俺達は刀が欲しい、お前はこの鉄の塊が欲しい、だったら交換すりゃいいじゃねぇか」
「……いいだろう」
互い右手に持った得物を差し出し、左手で同時に掴み、引き下がる。
志々雄の手にムラサメブレードが、パピヨンの手に核鉄が握られた。
「よかったじゃねぇか志々雄、これで後一本ありゃぁお前とやれるな」
「更木、よかったらこの刀、お前に貸すぜ」
受け取ったばかりのムラサメブレードを、志々雄は剣八の足元へ投げた。
魔性の刃は岩石で構築された地面にいとも簡単に突き刺さる。
「いいのか?」
「やりたいんだろ? こっちの男と」
志々雄は親指をクイッと上げてヒソカを指した。
剣八とヒソカは嬉しそうに唇を吊り上げる。
「くくく、ありがてぇ。志々雄とやり合うための準備運動としゃれ込もうか」
「準備運動か、悪くないね」
鞄を地面に下ろしたヒソカは、ズイッと前に踏み出した。
「そうだ、どうせなら一つ賭けをしないかい?」
「賭け?」
「君が勝ったらボクの支給品をあげよう、支給品が何かは秘密だけどね」
「ほぉ……で、お前が勝ったら何をやりゃぁいいんだ?」
「そうだな、別に刀なんて必要無いし……君達の食料でももらおうかな。彼、意外と大食いらしいんだよね」
チラリとパピヨンに視線を向けながら言う。ホムンクルスの彼は人間より食事の量が多い。
もっとも――本来ホムンクルスは人間を食べるものなのだが、不完全なホムンクルスであるパピヨンは人喰いの衝動が無い。
それが何を意味するのかは謎である。もしかしたら特に意味など無いのかもしれないが。
「ククク、いいだろう。楽しく戦おうじゃねぇか」
構え合う剣八とヒソカを鋭い眼差しで見つめる志々雄。一挙手一投足を見逃すまいと意識を集中していた。
いずれ戦うだろう剣八の戦いを見ておきたい、そういう気持ちがあった。
それに剣八がヒソカと戦いたいと思っていなくとも、志々雄は交換した刀を剣八に渡すつもりだった。
自分は全身大火傷のおかげで発汗作用を失い、体温調節ができない。
15分以上全力で戦ったらもう限界だ。
無理すれば限界を迎えても戦う事は可能だろうが、その結果自分の身体がどうなるかは分からない。
ならば戦いは自分以外の誰かに任せるべきだ。
国盗りだって、本来は志々雄一人で十分に行えた。
しかし己の身体がそれを許さぬため、十本刀や多くの配下を揃えたのだ。
まあそれはそれとして、今はいずれ決着をつける男の戦い振りをこの目に焼きつけよう。
(見せてみろ更木。お前の剣の腕を)
殺気が迸るさなか、パピヨンは考え事をしていた。
核鉄はもう手に入れた、ならばこんな茶番に付き合う必要はない。
しかしヒソカは自分同様主催者打倒を考えている男だし、何よりこのマスクのオシャレを理解できる奴だ。
もしヒソカが負けた場合、もしくは負けそうになった場合、どう行動したものか。
【佐賀県 北部海辺の崖/黎明】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:健康
[装備]:核鉄LXX@武装錬金
[道具]:荷物一式
[思考]:1.ヒソカが負けた場合の行動を考えながら観戦
2.知り合いとの合流、ヒソカと行動
【ヒソカ@HUNTER×HUNTER】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]:1.剣八と遊ぶ
2.知り合いとの合流、パピヨンと行動
【更木剣八@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:ムラサメブレード@BASTARD!! -暗黒の破壊神-
[道具]:荷物一式、サッカーボール@キャプテン翼
[思考]:1.ヒソカと遊ぶ
2.志々雄と決着を付ける
3.強いヤツと戦う
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式
[思考]:1.剣八の戦いを見る
2.刀を探す
3.剣八と決着を付ける
4.全員殺し生き残る
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2024年08月14日 18:44