0034:切り札
「霊剣!!」
「おおー、素晴らしい!」
桑原の手に金色の刃が生まれるのを見て、
友情マンは小さく拍手をした。
「いやぁ、本当にすごいよ桑原くん。これなら武器が無くても存分に戦えるね!」
「ワッハッハ! まぁな。そういう訳だから、そいつはお前が使ってくれていいぜ」
桑原が支給された武器は、モンスターを召喚できる『遊戯王カード』だった。
ブラックマジシャン……攻撃力が高く、魔法カードとのコンボが強力なモンスターカード。
ブラックマジシャンガール……ブラックマジシャンが墓地にある時、攻撃力が上昇するモンスターカード。
千本ナイフ……ブラックマジシャンが場にいる時、千本のナイフで相手を攻撃する魔法カード。
光の封札剣……相手のカード1枚を3ターン封印する魔法カード。これは相手に支給された武器に対しても有効である。
落とし穴……指定した相手の足元に落とし穴を生み出す罠カード。
このすべてが
友情マンの手に握られていた。頭の悪い桑原と違い、
友情マンなら使いこなす事ができるだろう。
「すまないね、私も戦いに役立つ物を支給されていればよかったんだが……」
「いいって、気にすんなよ。信用できる仲間ができただけで十分だぜ」
「ありがとう桑原君。君と友達になれて本当によかったよ」
時はわずかにさかのぼる。
桑原が青森県の平野を歩いていると、
友情マンと名乗る正義のヒーローが現れた。
その外見はいかにもヒーロー、少年漫画にでも出てきそうなヒーロー。
友情マンは名前の通り友情に厚いヒーローらしく、出会ったばかりの桑原に好意的に接してきてくれた。
顔も髪型も完璧な不良である自分にこうも馴れ馴れしく声をかけるのは危険じゃないかと桑原が心配するほどに。
2人は近くにあったリンゴ農園の倉庫に入り、互いの情報交換をし、友情を深めたのだった。
「それにしても、その
ピッコロって化け物……何とか倒さねぇとヤバイな」
「ええ。友達のペドロさんが身を呈して守ってくれなければ、私も危な……うっ、すみません」
友情マンは目頭を押さえてうつむき、涙をこらえるように震えた。
自分同様、出会ったばかりのペドロという男のために涙するとは。まさにヒーローの鑑。
「よぉしっ! ペドロって奴の仇を討つためにも、何とか
ピッコロって奴を倒そうじゃねぇか!」
「はいっ! ですが奴の強さは相当のものです、桑原君からもらったカードがあっても倒せるかどうか……
ここはやはり、強くて頼りになって信頼できる仲間を集めるべきです!」
「それならいい奴がいるぜ! 浦飯と飛影って奴らだが、こいつらの強さは相当のもんだ。
まぁ、片方は性格悪くて悪人面で、協力してくれるか分かんねーけど……」
「なるほど。君の友達の浦飯君と飛影君も、君のような力が使えるのかい?」
「ああ。浦飯は霊気を弾丸にして撃ったり、飛影は……」
自分達の事を何でもかんでも教える桑原の話を聞きながら、
友情マンは嬉しそうに頷く。
強い仲間は多いに越した事はない。この桑原という男もそれなりに強いが、彼よりもっと強い男も仲間になるかもしれない。
そうやってたくさんの仲間が集まれば……
「仲間が集まればこのゲームから抜け出して主催者の糞野郎どもをぶちのめしてやるぜ!」
「ええっ! みんなで力を合わせで脱出しましょう!!」
こうして――
友情マンは桑原の知るほぼすべての事を知った。
浦飯という男は相当の強者だが、桑原同様単純馬鹿。利用するのは簡単だろう。
飛影という奴は信用しがたいが、変にプライドが高いらしいのでその辺を突いて操作できるかもしれない。
その二人に加えて桑原の得意技や戦法も理解した。
仮に、あくまでも仮に彼等と戦う事になったとしても、
友情マンは非常に有利な立場に立てる。
そして桑原は
友情マンの真実を何一つ知らない。
仲間を集めるのは脱出のためではなく、自分を守らせ最後に皆殺しにするためだという事。
ペドロにとどめを刺したのは他ならぬ
友情マンだという事。
そして――
「それにしても災難だったな、せっかく支給された武器を落としちまうなんて」
「ええ。でもペドロさんの荷物が無事でよかったですよ」
桑原にはそう説明してある、
ピッコロに襲われた時に自分の支給武器を落としてしまったと。
友情マンに支給された武器、それは青酸カリだった。
匂いがあるため、毒に詳しい者や匂いに敏感な者には使えまい。
だがこの桑原という男を殺すくらいは簡単にできる。
青酸カリの入ったビンは、自分の鞄の奥底に隠してある。必要な時がくれば、ビンの蓋を開ける事になるだろう。
そしてペドロの鞄に入っていた支給品は大量の食料が入った冷蔵庫だった。
今はホイポイカプセルにしまってあるが、これだけの食料があればゲーム終了まで尽きる事はあるまい。
全員に支給されているだろう食料と違い、冷蔵庫の中には肉、魚、野菜、果物、お菓子、ジュースと、様々な物が揃っている。
これを餌に食糧不足で悩む者を仲間にする事もできる。
また、これだけ材料があれば、美味しい料理も作れるだろう。
例えば匂いが濃い料理や、アーモンド臭を隠せるような料理が。ちなみに青酸カリからはアーモンド臭がする。
友情マンは何一つ、重要なカードを教えていない。
自分が優勝者になろうと思っている事も、青酸カリを持っている事も、自分が本当は
勝利マンのように強い事も。
切り札はこちらにある。
友情マンは心の内で邪悪な笑みを浮かべていた。
しかし、これは桑原にも自覚が無い事だが、彼には次元刀という能力がある。
今はまだその能力に覚醒しておらず、使いこなす事はできない。
次元刀に目覚めた時、桑原はゲーム脱出の切り札となるのだ。
【青森県南東部、リンゴ農園/黎明】
【チーム名:偽りの友達】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)@遊戯王
[道具]:荷物一式、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分)、青酸カリ
[思考]:1強い者と友達になる。
2最後の一人になる。
【桑原和真@幽遊白書】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式
[思考]:1ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
2ゲームを脱出する。
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最終更新:2024年08月13日 09:50