0041:(無題) ◆VRxUa0jeM.





 気づいた時、彼の身に纏っているものは全てなかった。
 ラッキーマンとの戦いの後、長年の傷も癒え、もう忌み嫌った身体ではなくなったが、やはり格好が気になる。
「私に与えられた支給品はこれか……この状況ではありがたいな」
 何か着るものが欲しい、と早速荷物の中からカプセルを取り出し支給品を見る。
 それはかつて彼がヒーロー神から奪い去った事のあるもの。
 読心マシーンだった。
 これがあれば、ゲームに乗ったものを直ぐに判別する事ができる。
「ううむ……しかしこの姿ではあまり人に会いたくない気が……っ!?」

―――誰かいるな。

 何者かの気配を察知したのと心の声が聞こえてくるのが重なる。
「誰だ!?」
 気配と声を感じる方へと世直しマンは振り向く。
 その先には……
「バレちまったか。まぁ、コソコソやるのは俺らしくねぇ」
 二本の角を持った屈強な超人、バッファローマンがいた。



「ボボンチュー!!!!!!!!!!」
 威声と共に繰り出される目にもとまらぬ殴打。
 常人から見れば無数に手が増えたかのような連撃。
「子供だましだな」
 だがそれすらもこの目の前の怪物には通用しない。
 全て片手一本で防がれると、デコピン一発で弾き飛ばされた。


 その前、森を彷徨っていたボンチューにとあるものが目に入った。
「こいつは……」
 左腕は千切れ、無残にも頭を潰された青年の死体。
 ソレは、このゲームを理解させるに十分過ぎるもの。
「ほう、追ってきてみれば既に死んでいたか。
 そして新しいザコか」
「!?」
(俺が気配を感じ取れなかった!?)
 突如、湧き上がる圧倒的で邪悪な殺意の塊。
 冷や汗がでるのが自分でも解る。
 ボンチューの本能が告げる。
 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
「殺す前に聞いておくが、変なハート型の顔をしたやつを見なかったか?」
 足がじりっと後退するのを踏みとどまる。

 ふざけるな。負けるな。俺はもう絶対に負けないと誓ったんだ!

「さぁ知らねぇな。知っててもてめぇなんかに教えるかよ!」
「いい度胸だ。後悔させてやろう」 


 そして時間は現在に戻る。
「がはぁっ!!」
 吹き飛ばされたボンチューが後方の木に叩きつけられる。
「何度やっても無駄だ」
 蟻を弄ぶかのようにピッコロ大魔王はボンチューで遊んでいる。
 貴様の命などいつでも消す事ができると。
 幾度となく、ボンチューが持てる力を振り絞り突撃をするが、目の前の怪物には通用しない。
(諦めてたまるか!)
 闘志は不屈なりも身体には蓄積されたダメージ。
(立て、立ってくれ!)
 必死に立とうとするも体が思うように動かない。
「最後に聞いておこう。先ほど言ったやつを知らないか?」
 ゆっくりとピッコロ大魔王が近づいてくる。
 彼の腕の筋肉が膨れ上がり、手に光が灯り始める。
 それでも、ボンチューは信念を曲げなかった。
 嘘でもいいから言えば、少しは延命できるかもしれない。
 だがどんな事があろうともこんなヤツの言いなりになる彼ではない。
「言っただろ? 知らねぇってよ……」
「では、さらばだ」
たけしマミー……後を頼む!)
 ピッコロの手がボンチューに向かって振られると閃光が走り、爆発が起きる。
 必殺の爆力魔波だ。


「しかし、助かったぞ。バッファローマン、お前の支給品がまさか私の鎧だったとはな」
「いやなに気にするな。俺には無用の長物だからな」
 読心マシーンのおかげでバッファローマンにゲームに乗る気がないのを読み取った世直しマン
 直ぐさま、彼に自分も戦う意志がないのを伝えた。
「あの野郎どもをぶったおすために強いパートナーが欲しかった所だ。
 その点、世直しマンは合格だ」
 ただ素直に信じ、認めたバッファローマンではない。
 見るとバッファローマンの頬には一発の拳の痕がついていた。
 そう彼等は殴り合って互いを認め合ったのだ。
「さて、これからどうする? いきなりヤツラを倒しに行くわけにもいくまい」
「そうだな。俺は小難しいことは解らないが、まずはこの首輪を解除しねぇとな」
「首輪を解除か……」
 あいつならどうするだろう? ラッキーマン、彼の持つ運ならきっと首輪も解除しているのではないか?
「私の知り合いに一人思い当たるのがいる」
「お、本当か? そいつは有り難いな」
「そちらで探すべき仲間はいるか?」
 返されたバッファローマンも考える。
 キン肉マン、あいつの火事場のクソ力は邪悪な神すらもノックアウトしたものだ。
 戦力としてはこれほど心強い仲間はいない。
 ラーメンマン、かつてモンゴルマンとして共にタッグを組んだ仲間。
 冷静な彼の持つ戦術と知識は、きっと役に立つ。
 そしてウォーズマン。
 しかし、首輪の解除やバーン達の場所へ行く方法、脱出方法となると分野が違う。
 ここは世直しマンの仲間を優先するべきだろう。
「いや、心強い仲間はいるんだが、首輪の解除と脱出を優先すべきだな。
 まずはその世直しマンの知り合いを探そう」
「解った……そいつの名前はラッキーマンと言うのだが……」
 ドーン!! と大気が揺れるような爆発音が聞こえる。
「この音は!」
「戦闘か? 行ってみよう」
 こちらには読心マシーンがある。
 相手がゲームに乗ってる者か、乗ってない者か調べるには打って付けだ。
 そしてどちらとも腕に自信はある。
 1000万パワー、今は制限されてるとはいえ本来は光速で動けるバッファローマン
 此方も制限されてるとはいえ本来の全力世直し波は惑星すらも砕き、神すら一度は倒した世直しマン
 彼等は爆発音のした方へと向かっていった。

「ゴミクズの癖に煩わせおって……
 しかし大分威力が落ちているな……」
 本来なら都市ごと破壊する広範囲の爆力魔波も目の前の土煙程度の威力に落ちている。
「まぁ、いい次のザコを探すか……」
 次なる獲物を探すべく身体を翻そうとしたその時だった。
 土煙が晴れて様子が明らかになる。
「ば、ばかなっ!? アレを喰らって無事だというのか!?」
 影だ。
 何かがボンチューを守っている。
「こ、こいつは……」
 死を覚悟したボンチューの前に光り輝く何かがある。
(そうだ。これは俺の支給品―――蟹座(キャンサー)の黄金聖衣(ゴールドクロス)!!!)
「ええい、ならば今度はそれごと吹き飛ばしてくれるわ!!」
 ピッコロが再び爆力魔波を放とうとする。
 まるでそれを再び防ぐかのようにゴールドクロスが光り輝いた。
「おのれ!」
 光が辺りを包み、眩く輝く。
「こ、これは!?」
 分解され、一つ一つのパーツが次々とボンチューの身体に装着されていく。
 目の前の悪を倒そうとするボンチューの心にクロスが反応し、仮の主と認めたのだ。
 かつて星矢が射手座の聖衣を借りた時のように。
「今更、鎧を纏った所でどうとなるわけでもあるまい!」
 間髪いれず、ピッコロは爆力魔波を放つ。
 爆音と噴煙が再び巻き起こる。

「ボボボンチュー!!!!!!」
「な、なんだと!?」
 ピッコロの後ろからボンチューが掛け声と共に連打を入れ込む。
 先ほどと比べ物にならない程の速度と威力で。
 さしものピッコロもそれを受けて前へ飛ばされる。
(身体が羽のように軽い! 力が全員から湧き上がってくる! いける!)
「ぐぅ!? 今のは驚いたぞ! だが付け焼刃でどうとなることでないのを教えてやろう!」
 ピッコロが全力を出す。目の前の人物がもう遊びで殺す事はできないと判断したのだ。
 彼等の戦いは、今本当に始まろうとしていた。




【現在地:青森県】

【ピッコロ@DRAGON BALL】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:ゲームに乗る。/最終的に主催者を殺す。

【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]:ダメージ大(クロスのおかげで動ける)
[装備]:蟹座の黄金聖衣@聖闘士星矢
[道具]:デイパック(荷物一式)
[思考]:ピッコロを倒す。ゲームからの脱出。

【世直しマン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:世直しマンの鎧@とっても!ラッキーマン、読心マシーン@とっても!ラッキーマン
[道具]:支給品以外の荷物一式
[思考]:ラッキーマンを探す。ゲームから脱出しバーン達を倒す。

【バッファローマン@キン肉マン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品以外の荷物一式
[思考]:ラッキーマンを探す。ゲームから脱出しバーン達を倒す。


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020:暗き友情 ピッコロ 100:遠い空の君へ
GAME START ボンチュー 100:遠い空の君へ
GAME START 世直しマン 100:遠い空の君へ
GAME START バッファローマン 100:遠い空の君へ

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最終更新:2024年08月14日 21:30