0042:坊っちゃん ◆Gmt858lT6.





「ぼくは…何をしているんだ?」
ゲーム開始から三十分、中川圭一は未だ自分の置かれた状況を理解できずにいた。
幸いにもここ、山口西部の森に、他の参加者の影は確認されていない。
そして一時間が経過し、木々がざわめき、夜が深まった所で彼の記憶は少しずつ蘇ってきた。
突然洋館の様な所に飛ばされたこと。
そこで異星人のような男に殺し合いをしろと言われたこと。
その男に逆らった大男が殺されたこと。
最後に自分がここに飛ばされたこと。
警察官である中川だが、命の危機に一人で直面したことはない。
そのため、自らの命を挺して市民を守る。という警察官本来の目的も、己の生存を優先するあまり忘れてしまったのだ。
「そうだ。水、食料、武器!この三つがないと生き残れない!」
ゲーム開始から一時間と二十分。ようやく彼は自分の置かれている状況を理解し、アイテムを確認し始めた。
水、食料があることを確認し、ここがどこであるかも理解した彼は、祈るような気持ちでカプセルを投げ付けた。
お目当ての武器は銃だ。
(僕はアメリカの大会で何度も優勝している。だから銃さえあればどんな敵が出てきたところで瞬殺できる)
中川の強運は並大抵の物ではない。
例えばリアル人生ゲームではどんな設定でも金持ちになったし、大貧民をしたときは最小の手札は11だった。
さらに数人の参加者が殺されている現在でさえ彼は安全な所に出現した。
そして今回も幸運の女神は彼に微笑んだ。中川が手にした武器、それは…
スナイパーライフルだ。
「おおっ。神よ。感謝します。やはりこの僕に優勝しろ。と言うんですね?」
中川はライフルを手に取り、天に向かって何度も礼をした。
そして不意に立ち上がり、西へ向かって走りだした。その目付きは獣のように鋭い。
「とりあえず、福岡へ。近くの街へ。ビルへ。大会社の社長の僕にこんな薄汚い場所は似合わない」
彼の目は欲望で渦巻いており、爽やかな警官のイメージのかけらも無くしていた。
そう、彼もまた、優勝するために人を殺すバトル・ロワイアルの参加者の一人となったのだ。





【山口県西部の森(一日目)深夜】

【中川圭一@こち亀】
状態:精神が不安定
装備:スナイパーライフル
所持品:荷物一式
思考:1福岡へ行き、ビルを占拠する。
   2優勝する。


時系列順で読む


投下順で読む


GAME START 中川圭一 092:決意

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2024年08月13日 08:54