0125:プリンと宝石 ◆Wv7hRKzBHM





「……プリン…ですか?」
明るくなるまでに互いの支給品を確認しようということになった。
ブチャラティがカプセルから取り出したそれを見て、晴子は問いかける。
どう見てもただのプリンだ。
とってもおいしそうで、思わず食べたくなるプリンが5つも。
添えられていたメモには、以下のように書かれていた。
『名シェフ、トニオ・トラサルディの作ったプリン。
 水虫を治す効果もさることながら、味の方も素晴らしい』
「…お、おいしそうですね」
「毒かもしれないぞ」
「…っ!」
プリンに無意識のうちに手を伸ばしかけた晴子は、ブチャラティの言葉を聞いてビクッとして手を止める。
「ど、毒って…」
「冗談だ。可能性はゼロとは言えないが、おそらく奴らは参加者の『殺し合い』を楽しんでいるはずだ。
 だから、毒なら毒と書いておくだろう。支給された者が『毒殺』に使えるように」
淡々と語るブチャラティ。
その平然とした語り口にかえって恐ろしいものを感じた晴子は、手を伸ばしかけた体勢のまま固まってしまう。
「…あぁ、食べたいなら食べても構わない。今言ったように毒の可能性は低い。水虫も治るそうだ」
「べ、別に水虫じゃありません!」
晴子は手を引っ込めると、ちょっと怒ったように頬を膨らませる。
そして、自分のバッグからカプセルを取り出した。
「私はまだ中を見てないんです。出してみてもらえますか」
ブチャラティは頷くと、プリンをカプセルに戻して晴子に渡し、引き換えに晴子のカプセルを受け取った。
中から出てきたのは、赤い宝石が一つ。
『エイジャの赤石の中でも最高の結晶、スーパー・エイジャ。
 波紋エネルギー増幅装置であり、また太陽光をこの宝石に通すと、レーザーのような光線となる』
「…よく分からんが、武器として使えないこともないようだな」
ブチャラティの故郷であるイタリアには、『波紋』と関連のある施設が存在するのだが、彼はそれを知らない。
当然、何十年も前のイタリアに波紋の達人(リサリサ)がいて、それがこのゲームに参加してることも知らない。
「綺麗な宝石ですね」
と、ちょっともの欲しそうに宝石を見る晴子だが、
「欲しければ君が持っていても構わない。ただし、いざという時はレーザーを撃ってもらうことになるかもしれないが」
「え、いえいえ、ブチャラティさんが持ってて結構です!」
…あっさり引き下がった。
ブチャラティはエイジャをポケットにしまうと、次に地図を広げた。
「人が集まる場所…大都市には、ゲームに乗ってない奴も乗った奴も集まるはずだ。この近くではどこだか分かるか?」
「え? えーと…一番大きな都市はここ、東京ですけど…この近くだと仙台…かな?」
「よし、明るくなったらまずは仙台へ、そして東京を目指す。
 ゲームに乗った奴と会う危険はあるが、君の仲間や、ゲームに乗っていないグループと会えるかもしれないからな」


しばらくして…ブチャラティは明るくなった外を見た。
そろそろ時間かと時計を見たところで――

―――諸君、ご苦労。
…爽やかな朝だ。よく眠れたかね?

「これが放送か。直接脳に響くような感覚だな…」
次々と読み上げられる死亡者。
ブチャラティには元々知った名前は無い。晴子の様子を覗うが、こちらも知り合いの名前は呼ばれなかったようだ。
禁止エリアもチェックするが、こちらも特に問題ある地域でもない。
そして…

……脱落者の中には、その『仲間』に裏切られて命を落とした者もいるのだぞ?

(なるほど…こちらの動きは筒抜けらしいな)
「もう18人も、し、死んじゃったんですね…」
「そうだ。次に呼ばれるのが君の知り合いでないという保障は無い」
ブチャラティはそう言いながら立ち上がり、窓の外を覗う。
そして、ドアには寄らずに反対側の壁に手をつけた。
「だから…俺たちもそろそろ動く必要がある。とりあえずは、君の仲間を探すために。そして…」
いつの間にか壁にジッパーがついており、ブチャラティはそれを引いて壁を開く。
「最終的にはゲームから脱出するために」
いきなり壁が開いて、ワケが分からないという顔の晴子。
ブチャラティは指を口の前に立てて静かにするよう促すと、晴子の手を引いて壁の穴から外に出た。
「誰かがドアを見張ってるかもしれないから、こうして裏から出る。俺の『スタンド』を使って」
小声で晴子に説明する。スタンドとは一種の超能力だと簡単に説明しておいた。
こうして二人は、なるべく人目につかないように仙台へと向かい始めた。





【岩手県(森)/朝】

【チームおかっぱ】
【赤木晴子@SLAM DUNK】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式、トニオのプリン(水虫回復、超美味しい)×5@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考]:1.ブチャラティと行動を共にする。
     2.現在地→仙台→東京と向かいながら、流川、桜木、三井を探す。 

【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式 スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考]:1.現在地→仙台→東京と向かいながら、晴子の仲間を探す。
     2.生き残り、故郷に帰る。


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030:赤木晴子について 赤木晴子 145:甘い果実
030:赤木晴子について ブローノ・ブチャラティ 145:甘い果実

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最終更新:2023年12月09日 02:20