0140:それは人への鎮魂歌 ◆Oz/IrSKs9w





「何?あれ…」

川の土手を並んで早足に歩いていた一組の男女の内の一人である神谷薫は、遠くに小さく見えるよくわからない謎の塊に目を止めてふと立ち止まった。

「?」
その声に気付いた進は後ろで止まっている薫に顔を向けた後、その視線の方に自らも視線をやる。

「…!?まさか、あれはっっ!!」

突然薫が血相を変え、その塊のある河原へと降りていく。
軽く息を切らせながらそこへとたどり着き、そして見る。

「……焼…死体!?ウッッ!!」
「な…!!?」
それは、無惨にも全身がまっ黒な炭になるまで焼け焦げた…
『元』人間の、成れの果て。

その人型の黒い残骸の凄惨さ、さらには人が焼けた後の独特の異臭に当てられて薫はこみ上げる物を草場の陰に嘔吐し、進は歯を食いしばりながら呆然と立ち尽くす。

「……」
この殺人ゲームに放り込まれてから、既に幼い少女の遺体を目にはしていた。
だがその少女の体は確かに生きた『人間』であった。
しかしこの目の前に存在する物体は…人としての
『顔』『髪』『肌』
それら全てが失われ、人という生物であった名残りを全く残していない。
人としての『かろうじての原型』しか残していないのだ。
一面に漂う鼻に付く異臭さえ無ければ、ただマネキンが焼けただけに思えたかもしれない。

しかし…これは確かに人間である事は間違いない。
辺りには大量の血痕も残されている事から、この人物が凄まじい殺され方をしたのは二人には想像に難くなかった。


「……」
薫は胃の中の物を全て吐き出し終わり未だ血の気を失った青い顔のままだが、
それでも確かめずにはいられない万が一の可能性を確認するべく、気力を振り絞って遺体へと再び目を向ける。

「…?」
何か言いたげな進の様子にも反応を返さず、遺体の顔をじっと眺める薫。

「…十字傷は無い…顔の輪郭が…斎藤さんとも違うわ」
「……」
「あなたの知り合いとは…どう?」

屈んで遺体の特徴を目で探りながら頭上の進の顔を不安げにちらりと見上げる。

「…違う」
「そう。良かった…と言うべきかしら。この人には悪いけれど…」

二人の知り合いとは違う人物である事を確認し合い、小さくため息を付いた後に遺体に視線を戻して手を合わせて黙祷する薫。
しばらくの無言の時が過ぎた後、薫が目を開けて立ち上がり進に顔を向ける。

「穴…掘るの、手伝ってもらえる?」
「…ああ」




河原の端に二人掛かりで手で小さな穴を掘り『自分がしたい』と自ら申し出て、
嫌な顔一つせずに黒い炭と化した遺体を素手で直接小分けにしながら穴へと運び込む薫。
真摯な眼差しでそれを見つめ続ける進は、ふと遺体のあった場所に何かを見つけてそれを手に取る。
「これは…」
「どうしたの?」
「…首輪だ」

それは煙や熱に燻されて真っ黒に変色してはいたが、しっかりと元の形を保ったままである『参加者に着けられている首輪』であった。

「首輪?一緒に埋葬なんてしたらこの人も安らかに眠れないだろうし…捨てた方がいいわよね?」
「……」

進は首輪を握りしめ見つめながら薫の言葉を聞くが、しばらく何かを考えた後に自分のカバンの中にその首輪をしまい込む。

「え?どうして?」
「…一応、だ」
「???」

進の行動の意味がよく理解できない薫だが、ひとまずはあまり気にも止めずに埋葬作業を再会する。

墓と言える程の立派な物ではないが、大きめの石を墓石代わりに乗せて埋葬を終えた後に二人で再び手を合わせ、気持ちも新たに再び東京へ向けて出発する。


首輪を手にした意味。

これから先にまた人の死を目の当たりにする回数。

そして、この先の結末。


まだ何も見えないまま、それでも希望はあると信じて…未来へと向かう為に。





【京都府/午前】

【神谷薫@るろうに剣心】
[状態]疲労
   肋骨にヒビ
[装備]クライスト@BLACK CAT
[道具]荷物一式(食料・水、一日分消費)
[思考]自分と進の知り合いとの合流
   東京の神谷道場へ向かう

【進清十郎@アイシールド21】
[状態]軽い疲労
   右鎖骨にヒビ
[装備]マグナムスチール製のメリケンサック@魁!!男塾
[道具]荷物一式(食料・水、一日分消費)
   焦げた首輪(サガの遺体から入手)
[思考]自分と薫の知り合いとの合流
   東京の泥門高校へ向かう


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082:誤解・展開・収束・休息 神谷薫 142:起と承と
082:誤解・展開・収束・休息 進清十郎 142:起と承と

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最終更新:2023年12月16日 22:04