0139:再会ならず ◆TfdSCmKbz6
こちらに歩いてくる男がただならぬ気配をまとっていることは、ただの中学生である洋一にも一目で分かった。
こいつは
勝利マンや変身した自分と同じく人外の存在だ。
「逃げよう…あいつは絶対やばいヤツだ」
「そうね、友好的とは思えないし」
「だが、そう簡単に逃がしてくれそうもないぜ…ほらきた」
洋一たちが逃げようとしていることに気づいたか、その男、
ダーク・シュナイダーは高く跳躍すると背後に回りこんできた。
逃げられない…そう悟った3人が身を強張らせていると、ダーク・シュナイダーはこちらをじろじろと見てくる。
いや、正確には香を見ていた。
「お前いい女だな。俺様のハーレムに加えてやろう!」
洋一や三井など眼中にない様子で、香に手を伸ばすダーク・シュナイダー。
だが、何者かがその手を横から払った。いや、払おうとした。
結果は逆に手を掴まれ、その男…三井は地面に倒されることになったが。
「弱わっちぃただの人間のクセに、死に急ぎてぇのか?大人しくしてりゃあ少しは生き延びられるのによ…
まぁ、どの道テメェら男は皆殺しだがな、ククク!」
「…くそっ!」
三井は空いた手でポケットから小瓶を取り出すと、中の丸薬を飲む。
それはすぐに効果を表した。
相手が何の力もない人間だと見くびっていたダーク・シュナイダーは、突然力を増した三井によって腕を振り払われてしまった。
「ん?なんだそれは、ドーピングか?…クックック、ハーッハハハハハハハッ!そんなもんで俺様を倒すつもりなのか!?」
(ちっ…確かにこんなもん気休めにもならねー。体勢を立て直せただけってヤツだな…)
仲間二人の様子を見ると、洋一はビビって動けないらしい。
そして香は、いつのまにかダーク・シュナイダーに腕を掴まれている。
何とか振り払おうとしているが、全く歯が立たない様子だ。
(なんとかヤツの気を引いて香サンの手を離させ、その間に洋一と一緒に逃がす…無理っぽいが、やるしかないな)
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
三井がダーク・シュナイダーに突撃しようとした瞬間、洋一の声が響き渡った。
全員の視線が洋一のいた場所に集中する。
そこに洋一の姿はなく、洋一は少し先を転びそうになりながら走っていた。
「ククク、逃がさねーぞ!…インテリペリ!!」
洋一の姿が爆炎に包まれる。思わず息を飲む香。
ニヤリと笑うダーク・シュナイダーだったが、次の瞬間その顔が歪む。
ドーピングで反応速度と筋力の上がった三井の蹴りが、首筋を直撃していたのだ。
「ぐ…キサマッ!」
「今のうちに…ぐはっ!」
香はダーク・シュナイダーの手を振り払うことに成功したが、反撃を受けた三井は血ヘドを吐きながらその場に転がった。
「二度も邪魔しやがって。てめぇは魔法でジワジワと…おっと、魔素の浪費は避けた方がいいか。じゃあこうするか?」
ダーク・シュナイダーは腹を押さえて倒れている三井に近づくと、その頭を踏みにじる。
そして、銃を取り出して三井の左腕を撃つ。
「ぐあぁっ!」
「ククッ、お前はこれで殺してやろう。派手さには欠けるがな」
さらに右腕に狙いをつける。
「や、やめなさい!」
背後で香がハンマー(ハリボテ)を構えて立っていた。
「何やってる…!早く逃げ」
「黙れよ」
「うぎぁぁぁぁっ!」
銃で撃たれた傷を踏みつけられ、悲鳴を上げる三井。
ダーク・シュナイダーは香の方を振り返ると、口の端をつり上げる。
「女、お前は俺様のモノになるんだ。そんなものでどうにかできると思ってるなら、せいぜい抵抗してみな」
「くっ…(せめて本物のハンマーなら…!)」
その時、何かが森の中から飛んできた。
「ちっ!」
ダーク・シュナイダーはそれを見極め、寸前で上体を反らして身をかわした。
さらにもう一発、下半身を狙って飛んできた。
ダーク・シュナイダーは、それも跳躍して避ける。
「ほう、まさか避けるとはな。タダモノじゃねえヤツは他にもいるってことか」
そう呟きながら森から出てきたのは、不敵に笑う銀髪の男だった。
「邪魔ばかり入りやがるな。うっとうしいから消えろ!…インテリペリ!」
銀髪の男とその周辺に爆発が起こり、周囲の木を焼き払う。
…が、その男は立っていた。
「…なに!?クソッ、まさか威力がこんなに落ちてるとはな!」
「気を落とさなくてもいいぜ。俺は黄金聖闘士、蟹座の
デスマスク。普通の人間じゃねえからな」
デスマスクはそう言いながら一瞬で接近すると、拳を繰り出した。
ダーク・シュナイダーはそれを受け止めようとするが、間に合わず殴られてしまう。
「うおっ!(ちっ、随分と速ぇな。俺様と同じく能力が制限されてるはずじゃねぇのか!)」
黄金聖闘士が本来ならば光速で動けることなど知るよしもないダーク・シュナイダーは、デスマスクのスピードに焦りを隠せない。
もっとも、デスマスクとてダメージがないわけではない。そこそこのダメージを受けているようだ。
そして、ダーク・シュナイダーには豊富な魔法がある。
近づかせなければ十分に勝てると読んだ。
「…くそっ。中々近づけねえな。積尸気冥界波さえ使えりゃこっちのモンなんだが」
「クククッ、お前の取り得はスピードだけか?殴るしか能がないんじゃあ勝てるモンも勝てねえなぁ!」
周囲の魔素にはまだ余裕があった。
あと一撃でいいから強力な魔法を叩き込めば、素手でトドメを刺すこともできるだろう。
「くらえっ!ダムド!!」
「マズイか!?」
デスマスクとて、今の状態でダムドを受ければ大ダメージは必至だった。
が、その時デスマスクとダーク・シュナイダーの間に割って入った人影があった。
デスマスクの目に入ったのは、14番のユニフォームだった。
(へっ…ガラでもねぇ。見ず知らずの銀髪ヤローを助けるために命を張るとはな…
花道…みんな…生きてたら、あとは頼むぜ……ン…あれは仙道?何で最後に仙道が出てくるんだ?
まぁいいや…仙道、がんばって生き延びろよ…)
「三井くん!」
三井だった死体に駆け寄ろうとする香を、誰かが押さえた。
「今は駄目だ」
小さくそう囁かれると、不思議に安心感を感じた。
「デスマスクさん!」
「来たか!足止めしといたぜ!」
デスマスクは、あとから来たこの男と知り合いらしい。
だが、このジャージを着た――スポーツマンっぽいところが三井と似てる――ただの学生に何ができるというのだろうか。
「また男か…だが、大したこと無さそうなヤツにしか見えねぇが…」
ダーク・シュナイダーとしては、魔素を消費しつつあるこの地域で、さらに敵の増援が来るのは好ましくなかった。
「先に殺す!」
呪文を唱え始めるダーク・シュナイダー。
しかし、それが完成するより早く、仙道はカードを取り出した。
「六芒星の呪縛!」
「アンセムッ!」
仙道のカードが効果を発揮する方が一瞬早かった。
ダーク・シュナイダーの魔法は効果を発揮せず、声だけが空しく響き渡る。
「どういうことだ!まだ魔素は残っているのに!」
簡単に言えば『六芒星の呪縛』とは攻撃を封じるカードである。
「魔法が使えなければ…!」
直接殴りかかろうとするが、やはり殴れない。
「デスマスクさん、今のうちに!」
「殺していいんだな!?」
仙道は一瞬考え、目の前の死体に目を向ける。
相手は人を殺した。仕方なくという様子でもない。
殺されたのがあの
三井寿かもしれないということを除いても、倒しておく必要があるのかもしれない。
「……お願いします」
頷きながら小さくそう答える仙道。
デスマスクもそれに応えて頷くと、ダーク・シュナイダーのほうへ向き直る。
「…攻撃できねえだろ。そういうカードなんだよ。悪く思うな」
殴る。防御。殴る。防御。殴る。防御。
防御に専念している分、ダーク・シュナイダーは直撃だけは避けることができていた。
(クソッ、だがこのままじゃあ撲殺されちまう!逃げようにも隙がねぇ!)
何度もパンチやキックを出そうとしているのだが、なぜか出来ないでいる。
残るは逃げるだけなのだが、一瞬でも隙が作れない限り、逃げられそうもなかった。
「…待てよ?……そうか………ダムド!」
「なにっ!?」
爆煙が消えた時、ダーク・シュナイダーの姿はなかった。
…確かに攻撃はしなかった。自分の足元に魔法をぶつけることを攻撃とは言わない。
しかし、それによって生じた爆煙に隠れて逃げることはできた。
「…まだ遠隔視なら探せるかも知れねえ」
「じゃあ、しばらく探していてください。俺は…」
「あぁ、そっちの連中は頼むぜ」
デスマスクが周囲を遠隔視能力で探しているうちに、仙道は香と共に三井の死体を埋葬することにした。
「じゃあ、やっぱり俺の知ってる三井さんだったのか…俺がもう少し早く来ていたら……」
「あなたのせいじゃないわ…最初は私を助けるために怪我したんだから。私がもっとしっかりしてたら…」
「三井さん…三井さんのおかげで、俺たちあの男に殺されずに済みました…ありがとう」
そして、
追手内洋一だが…なぜか彼の死体は見つからなかった。
コナゴナに消し飛んでしまったのかもしれないと、香は悲しみに暮れた。
「普段はついてないけどラッキーマンになればツキまくりだって言ってたのよ…それなのに、ついてないままで死んじゃうなんて…」
「…(ラッキーマンがそんなにラッキーなら、首輪も外せたのかもしれない)」
「…ダメだ。野郎、かなり足が速いな。まぁ、遠隔視の範囲もかなり狭められてるから無理もねえがな」
10分ほどして、デスマスクは諦めた顔でそう言った。
「そうですか…じゃあここから離れましょう。さっきの戦いでかなり派手に爆発が起きてたから、誰かやってくるかもしれない。
それにカードの効果がいつまで続くのか分からないし。もしかしたら、ある程度距離が離れたら消えてしまうかもしれない」
「俺もこの場を離れた方がいいと思うぜ。サガのヤツも殺されちまったからな。さっきの男よりも強いヤツがいるかも知れねえ」
香はこの場を離れると言う仙道、デスマスクと行動を共にすることにした。
また、三井が身につけていた兵糧丸はなくなってしまったが、地面においてあった他の荷物は失われずに残った。
「そうだ、デスマスクさん。さっきの戦いで怪我してたみたいすけど平気ですか?」
「…まぁな。さっきくらいのやつがまた襲って来たらヤバイが、歩くくらいなら問題ねえさ」
「そうですか…スイマセン。俺がもう少し早く着いてたら…」
「なに、先に敵を見つけて飛び出してったのは俺だ。気にすんな」
デスマスクは軽く首を振って背を向けると、先に歩き始めた。
仙道、香は三井を埋葬した場所を振り返ると、頭を下げる。
そうして3人は、東京方面へ向かって歩き始めた。
一方、先ほどの戦場から程近い樹海沿いの道路。
追手内洋一は、ふらふらと道路を歩いていた。
背中には荷物を、手にはデスノートをしっかりと握り締めているが、その表情はどこか虚ろだ。
「……らっきょ…らっきょ…」
それだけをブツブツと呟きながら、左足を引きずって歩いている。
左足のふくらはぎは火傷を負っているようだ。
どうやら、ダーク・シュナイダーに魔法を撃たれた際、怪我と衝撃でショック状態になり、意識が朦朧としているようだ。
不運なことに、彼は仙道たちとは逆方向へと足を進めていた。
【山梨県樹海沿い/午前】
【仙道彰@SLAM DUNK】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード@遊戯王
「真紅眼の黒竜」「光の護封剣」「闇の護風壁」「ホーリーエルフの祝福」…未使用
「六芒星の呪縛」…翌日の午前まで使用不可能
[道具]:支給品一式
[思考]:知り合いを探す/首輪を解除できる人を探す
【デスマスク@聖闘士星矢 】
[状態]:そこそこのダメージ(戦闘に若干の支障あり)
[装備]:アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険
アイアンボール×2
[道具]:支給品一式
[思考]:仙道に付き合う
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:精神的に疲労
[装備]:ウソップパウンド@ONE PIECE
[道具]:荷物一式(食料二人分)
[思考]:海坊主、冴子を探す
メンバー全員の思考:東京方面へ向かう
【山梨県樹海沿い/午前】
【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
[状態]:右腕骨折、左足ふくらはぎ火傷
[装備]:デスノート@DEATHNOTE(次の0時まで使用不能)
[道具]:荷物一式(食料少し消費)
[思考]:らっきょ(朦朧としてます)
【山梨県(樹海からやや離れた地域)/午前】
【ダーク・シュナイダー@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
[状態]:左腕に銃創、魔力消耗、右腕打撲
『六芒星の呪縛』による攻撃封印(翌日の午前まで)
[装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
[道具]:荷物一式(食料二人分、支給品未確認)
[思考]:攻撃できないことに苛立っている
男は殺す、女はハーレムに加える
ゲームを脱出して主催者殺害
【三井寿@SLAM DUNK 死亡確認】
【残り…106人】
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最終更新:2024年03月14日 20:18