0142:起と承と ◆HKNE1iTG9I
「成程…悪くないな」
場所は兵庫と滋賀を結ぶ道中、京都府。風情ある街中の一角。一棟の民家の中にその男はいた。
―――死神、
藍染惣右介。和室に、誂えたかのような着物姿。
人が見たら、彼の穏やかな風貌と相まって、まるでこの民家自体が彼のために拵えられたかのような錯覚を受けたことだろう。
新八たちと別れてからしばらく。策が効するのを待つ意味を兼ねて、藍染は呪文を扱うための試行錯誤を重ねていた。
その結果、習得した呪文がマヌーサを含め、三つ。思いついた仮説が一つ。それは。
(使えるようになった初級呪文の傾向から鑑みるに…
どうやら、私の資質は僧侶寄り…ということになるみたいだね。死神が僧侶とは、皮肉なものだ)
あの時、窮地(というほどでもないが)に陥った自分の逃亡の一助となった”マヌーサ”の呪文。
そして、先刻まで負っていたダメージをある程度、癒してくれた”ホイミ”の呪文。
そして…もう一つ。それは、使用者の速度を増幅させるという…ピオリムの呪文。
(とはいえ、盤古幡で消耗した今、慣れない呪文を使用するのはあまり得策ではないな…外傷は塞げたが、精神力の消耗はそれ以上だ。
マヌーサは鏡花水月で代用できるし、今の時点では鬼道のほうがコストパフォーマンスに優れている)
最も、初級の攻撃呪文である”メラ”でさえ、いまだに種火のひとつも起こせないのだから、呪文が効果を発揮してくれただけでも僥倖というものだろう。
そう藍染は気を取り直し、疲労の残る身体に鞭を打つかのように立ち上がる。と、歌うように言の葉を紡ぎだした。
「南の心臓 北の瞳」
静謐な空気の中、一つの声が流れ行く。
「西の指先 東の踵(きびす)」
声を発するは男性、藍染惣右介。低く響く言葉は、死神のみが扱える術、鬼道の言霊。
「風持ちて集い 雨払いて散れ」
その声はまるで詩のように。声の主はまるで影のように。
「縛道の五十八、”掴趾追雀”」
「ふむ…志村君も越前君も順調にやっているようだね。なによりだ」
先程の鬼道、”掴趾追雀”は一度対面した相手を捕捉するための術。
男、藍染惣右介は、
「
太公望とは別れたようだが…キルア君たちにも大過ないようだし」
その術を連続して使い、
「おや、
大蛇丸も京都にいるのか…賑やかなことになりそうだね」
参加者の動向を探っていく。その表情はわが子を見守るかのような慈愛に満ちて。
数秒の後、まるで初めからそこには誰も居なかったかのように、藍染は和室から姿を消した。
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「一体…あれはなんなの?」
「…………?!」
男性、
進清十郎と女性、
神谷薫は思わず自分の目を疑い、自分の正気を疑い、この世界を疑った。
「人が棒に跨って飛んでいるように見えるが」
「偶然ね、私にもそう見えるわ」
埋葬が終わって。進と薫が何気なく空を見上げたとき、最初に目に入ったのがその光景だった。
軽い立ち眩みがする。今までの陰惨な光景とは、180°別な方向….いや、四次元的に捻じ曲がった方向に常軌を逸した目の前の現実。
一体、あれはなんなのか?いや、これは現実なのか?悪い夢ではないのか?
微かに聞こえる高笑い。自分の足元が崩れていくような思いに囚われながら、薫は進に向き直る。
「…どうする?あの人が飛んでいったほうに行ってみる?最短で東京に行くなら、あの方向なんだけど……」
「………」
進は無言。だが、薫には、表情から彼が何を考えているのか、朧気ながら読み取れた…気がした。
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「ハハハ、天の高みから美しい町並みを愛でる。これもまたゴージャスだね」
翔る、翔る、天を翔る。翔るは仙人、
趙公明。口に頬張るチョココロネ。
このような状況下でさえ、優雅さを感じさせるのは、才能か、人徳か、むしろ異能と称すべきものか。
「さて、エレガントでブリリアントな闘いを楽しませてくれそうな、我が好敵手殿はいるかな?」
呟きながら、下界を見回す。無論、チョココロネは咥えたままで。言うまでもなく、優美な気品を身にまといながら。
そして、彼の目に留まったのは、一人の男性。その身のこなしには隙がなく、その眼光に慈悲はなく。
趙公明は含み笑いを漏らすと、その好敵手(暫定)の元へと降り立つために、如意棒を操作する。
伸びる方向に少し角度をつけてやれば、その程度のことなら造作もない。ただし、趙公明にとっては、という注釈は必要だが。
突然目の前に降ってきた趙公明に対して、さして動じた風も見せないその男。その身のこなしに油断なく、その眼光に甘えなく。
はやる気持ちを抑え、趙公明はその好敵手(暫定)に声をかける。
「やぁ、僕の名は趙公明。君の名前はなんだい?」
「私の名は藍染惣右介。君達の支給品と能力を教えてくれないか?」
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――おい、どうすんだよ旦那ァ!あの袴野郎、どうみてもこっちに気づいてるぜ!
(そのようだな)
――それに、今、空から降ってきたのって趙公明様じゃねーか!ヤバイ、ヤバイって!
(静かにしろ、飛刀。どうやら、二人ともかなりの実力者のようだ)
――旦那、今、二人ともって言った?言った?言ったよな?!趙公明様だけでもヤバイのに、あの袴野郎もヤバイってこと?!そうだよな!?
(それに、二人とも、既に誰かを殺してきたようだ。血の匂いが酷い)
――逃げよう、脱兎のごとく逃げよう。蝶のように逃げ、蜂のように逃げよう。そうしよう、それがいい、そうしようぜ、旦那ァ!!
(少し黙っていろ、飛刀)
建物の陰、裏路地の奥。
ラーメンマンは考える。眼前の二人は、かなりの使い手。
しかも、双方ともに既に誰かを殺めている可能性が高い。
野放しにすれば、更なる犠牲者が出るのは確実。
だが――
ラーメンマンの脳裏には、惨殺された少女の遺体と髪飾りが浮かび………
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【京都府市街地/午前】
【藍染惣右介@BLEACH】
[状態]:わき腹に軽い負傷、骨一本にひび、中度の疲労(戦闘に軽い支障あり)
[装備]:刀「雪走」@ONE PIECE、斬魄刀@BLEACH
[道具]:荷物一式(食料二人分(一食分消費))、スーパー宝貝「盤古幡」@封神演義
ウェイバー@ONE PIECE
[思考]:1.目の前の男、隠れている存在への対処。できれば琵琶湖に向わせたい。
2.琵琶湖へ向かう
3.出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼を求めている。
4.計画の実行
【趙公明@封神演義】
[状態]:左足に軽傷
[装備]:如意棒@DRAGON BALL
[道具]:荷物一式×2(一食分消費)、神楽の仕込み傘@銀魂
[思考]:1.目の前の男が戦うに足るか確かめる。
2.エレガントな戦いを楽しむ。太公望、カズキを優先。
【ラーメンマン@キン肉マン】
【状態】健康、深い悲しみ、強い怒り
【装備】飛刀@封神演義
【道具】荷物一式
*髪飾りの欠片を持っています。所持の理由は以下の通り。
・形見として少女の仲間、家族に届けるため
・殺人犯を見つける手がかりにするため
【思考】1:弱き者を助ける。(危害を加える者、殺人者に対しては容赦しない)
2:正義超人を探す。
3:ゲームの破壊。
【神谷薫@るろうに剣心】
[状態]:疲労、肋骨にヒビ
[装備]:クライスト@BLACK CAT
[道具]:荷物一式(食料・水、一日分消費)
[思考]1.上空を飛んでいった不可解な男への対処
2.自分と進の知り合いとの合流
3.東京の神谷道場へ向かう
【進清十郎@アイシールド21】
[状態]:軽い疲労、右鎖骨にヒビ
[装備]:マグナムスチール製のメリケンサック@魁!!男塾
[道具]:荷物一式(食料・水、一日分消費):焦げた首輪(サガの遺体から入手)
[思考]1.上空を飛んでいった不可解な男への対処
2.自分と薫の知り合いとの合流
3.東京の泥門高校へ向かう
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最終更新:2023年12月17日 05:48