0171:奔る、奔る ◆HKNE1iTG9I
【京都府/朝】
「城之内君…」
つい先程まで行動をともにしていた少年の名前を聞き、女性、
弥海砂はしばし顔を俯かせる。
確かに見捨てて逃げるような真似はしたが、それでも知り合いと言ってもいい人の死を知るのは、あまり気分のいいものではない。
(やっぱ、あの金髪のヒトにやられちゃったのかな。名前は、確か…チョウコウメイ、とか言ったっけ)
海砂は知らない。城之内の死に様も、その最期の言葉も。
城之内克也という少年のことは、ほとんど何も。
(城之内君が時間を稼いでくれたのかな?贅沢を言うなら、コッペパン以外の食べ物も遺してくれたらありがたかったんだけど。)
海砂にとって一番大事なのは、最愛の男性、
夜神月。彼に会うためには、こんなところで死ぬわけにはいかない。
それが海砂の全て。できるなら死人は少ない方がいいが、所詮は瑣末事。夜神月に会う。夜神月に会いたい。
会って、彼の力になりたい。何故なら彼は、弥海砂の全てなのだから。
夜神月は死んでいない。生きている。放送で名前を呼ばれなかったから、そう思っているのではない。
夜神月の生存。そのことは、海砂にとって、確信、いや信仰に近かった。
きっと会える。絶対会える。私は生きて、月に会える。
(うぇーん、月~、どこに居るの~)
弥海砂は歩き続ける。愛しい夜神月の面影を追いながら。
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【京都府/朝~午前】
(げ。何コレ)
趙公明に見つからないように息を潜めて、なるべく人目につかないように歩いていた海砂は、
一抱えはある大木の中程に刻まれた足跡を見て、思わず素っ頓狂な声を上げそうになる。
慌てて口を押さえて、辺りを見回すが、幸いなことに今の声を聞き留めた者は居なかったらしい。
自分の馬鹿さに呆れつつも、オーバーアクションで胸をなでおろす。
(なんか、ヤバ気な感じ~)
実際、今の海砂の手には武器になりそうなものが無い。
マシンガンが仕込まれていた傘は茶屋に置いてきてしまったし、流石に取りに戻る気にもなれない。
今の自分にあるものは、六角形の変な石(疲れを癒してくれるそうだが)と、数日分のコッペパン。
殺人者に襲われたら、一溜まりもないだろう。
事実、ゲームに乗っている人間が居るということは、先刻、嫌というほど思い知らされたばかりだ。
(こっちに行くのはやめとこ~っと)
もしかしたら、この先で殺人者が待ち構えているかもしれない。
一度だけ、大きく体を震わせると、躊躇うことなく、踵を返す。
東から、西へ。
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【京都府/午前】
(あー、神様仏様キラ様、ど~かチョウコウメイが降ってきませんように!!)
息を潜ませ、気配を殺し(たつもりになり)、海砂は一人で町外れを歩く。出来る限り迂回して。
無理なときは、建物の陰で小さく縮こまって。ソロリソロリと海砂は進む。
(う~、ストレスは美容の大敵なのに~)
それでも海砂は止まれない。海砂の気持ちは止まらない。月を想う、彼女の気持ちは止められない。
進む。進む。進んだ先に柔らかな月光があると信じて、海砂は確かに進んでいく。
そして、名残でも月光を偲ぼうと空を見上げたとき…
―――!!
空を飛んでいた。あの男が。チョウコウメイが。
(バカー!降ってこないでってお願いしたじゃない!)
海砂は駆け出す。震える足に檄を入れて。力の限り、走れる限り。
一歩でも、半歩でも、月の近くに行きたいがために。
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【大阪府/昼】
海砂の膝は笑っていた。体からは滝のような汗が流れていた。
たとえ核鉄を持っていたとはいえ、脇目も振らぬ全力疾走、ようやく彼女は京都から離れ。
今は大阪府に辿りついていた。
そして、彼女の目の前に居たのは。
なにやら驚いたような顔を向ける少年。だが、その腕には禍々しい刃物が装着されていて…
【大阪府/昼】
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]:重度の疲労
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、核鉄XLIV(44)@武装錬金
[思考]:1.目の前の少年は…?
2.夜神月との合流
3.夜神月の望むように行動
【武藤カズキ@武装錬金】
[状態]:健康
[装備]:ドラゴンキラー@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(一食分消費)
[思考]:1 目の前の女性は…?
2 正午の放送まで大阪探索。仲間と武器を集め、趙公明を発見したら倒す。
3 ゲームを脱出するため仲間を探す。斗貴子、ブラボー、杏子、海馬を優先。
4 蝶野攻爵がこの状況でも決着をつける気なら相手になる。
5 ゲームから脱出し元の世界へ帰る。
(リンの埋葬がちょうど終わりました)
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最終更新:2024年01月18日 23:35