0172:ブチャラティvsガラ 後編◆PN..QihBhI
「もう、逃げられねェな~」
ガラは勝利を確信していた。
傷を負い、追い詰められたブチャラティに、もう手は残されていないはずだ。
だが、そんな状況でありながらも、ブチャラティの目には不屈の光があった。
「逃がす?そんな心配はもうするな。
お前が心配する事は、ジッパーでバラバラにされて地面にコロがった後の事だけだ」
「減らず口を~、てめェは殺す!!」
力が満ちる。ブチャラティは動かない。観念したか、とガラは思った。
「砕け散れェ~ブチャラティー!!!!」
真
魔
神
人
剣
!!!!!!
技を放つ瞬間ガラは見た。
ブチャラティが何か宝石のようなものを、頭上に翳すのを。
直後、天地を揺るがす轟音と、巻き上げられた砂塵でみるみる視界が遮られていった。
友情マンと桑原はその轟音を聞いて思わず立ち止まった。大地が揺れている。
「どっひゃーー、こりゃ近ぇーぞー!
友情マン!何が起こったんだぁ~?」
「耳が変になりそうだ。ガラ君に何が・・・?」
「げほっげほっ、埃が凄くて何も見えねぇ」
「桑原君!少し様子を見よう!!いきなり敵が出てくるかもしれない。用心するんだ」
―――まずい、今からでも引き返すべきか?
しかし、桑原君が納得しないだろう。頼むガラ君、無事でいてくれ・・・!
肉の焼き焦げる臭い。砂埃の中、ガラは自分が倒れている事に気が付いた。
まず目に入ったのは、『真・魔神(人)剣』による亀裂だった。
深く長く地面を奔り、終点である場所には大きなクレーターが開いていた。
その亀裂に添うように、長い影がゆっくりと伸びて来た。
「・・・何よりも『困難』で、『幸運』無くしては近付けない道のりだった。
お前に一撃を入れる、という道のりがな・・・」
「ぐっ、ぐはっ、ごほっ。こ、こいつぁ、面白くねぇ事になっちまったぜぇ」
倒れ伏したまま血反吐を吐き、荒い息をつきながらガラは理解した。
『真・魔神(人)剣』を放つ瞬間、
ブチャラティの翳した宝石の様な物から発射されたレーザーが、ガラの腹部に命中し炸裂したのだった。
両手が万全なら白刃取りで、或いは技を放つ瞬間でなければ避けられたかもしれない。
だが、ブチャラティはここぞという時に
切り札を切った。
腹部に命中したレーザーは、その瞬間に爆発し、ガラの半身を焼き焦がしていた。
それでも理解出来ない事がある。
何故、この完全な『忍法七ツ見分身の術』を見破り、本体を攻撃する事が出来たのか。
何故、音速を超えるスピードで、地面にクレーターを空ける程の『真・魔神(人)剣』を回避出来たのか。
「・・・ほんの一瞬だったが、見てしまったな。まったく、同じ動きをする『分身』に助けられたよ。
『仲間』が来た時に、正確に『声』がした方向を見たのは、お前だけだった。
他の『分身』は皆違う方向を見ていた。オレを『円』で取り囲んでいたからな」
「ち、ちぃ。ミスったぜ・・・だが、何故『真・魔神(人)剣』を受けて立ってられるんだァ?」
「潜るだけが能力ではない・・・本体が判明してから、お前の死角になるよう、
予め地面にジッパーを敷いておき、閉じるジッパーに掴まって直撃を回避した。
それでも・・・完全に避わす事は出来なかったが。片手で威力が半減していなかったら死んでいたな」
「ぐほっ、ちィ、そういう事かい」
ブチャラティ。目の前に来た。足を止める。
「・・・もう時間いっぱいだ。仲間が来るまで、数秒後か或いは一分後か。
そのまま抵抗しなければ、『安らかなる死』を約束しよう」
「む、むぁてタコ!」
斬魄刀を支えにして、ガラは立ち上がろうとする。
酷い火傷だが、反射的に何とか致命傷は避けたようだ。
「ぐほっ、こっちはまだ売りたい物が残ってんだい!!」
「バカなッ!なぜ、そうまでして向かって来るのだ」
―――ダークシュナイダー、ネイ・・・
「・・・
へっ、なんとなくさ」
ガラは口の周りの血を拭き、何とか立ち上がって斬魄刀を構えた。
ブチャラティも立っているのが不思議なほど全身に傷を負っている。
ゴゴ
ゴゴ
ゴゴ ・・・ゴフッ、ハァ、ハァ。あの女達を殺したのは、お前じゃねぇな・・・
ゴゴ 何・・・?
ゴゴ ・・・殺し方(やりかた)を見れば分かる・・・・・・お前は、イイヤツだな・・・
ゴゴ ・・・・・・
ゴゴ へ、ヘンな髪型だがイイヤツだ・・・首輪の話をした時に、一瞬女の方を見ただろ。
ゴゴ ・・・・・・
ゴゴ どうせ昨日今日会ったばかりの・・・どんな音楽が好みなのかも知らんよーな女だったんだろーが・・・
ゴゴ ・・・
ゴゴ あ、あの時の目を見りゃあ誰だって分かるさ・・・
ゴゴ ・・・戦う気はない、と言ったはずだ。
ゴゴ へっ、オレはなァ、今が面白ければ・・・後はど~でも良いのよ・・・
ゴゴ ・・・もう喋るな・・・ケリを、着けるぞ。
ゴゴ ガハッ、わ、忘れたのか、せ、接近戦でもオレの方が強えーって事をな・・・
ゴゴ かもな・・・どちらが先に、相手に攻撃を叩き込むかの勝負だ・・・
ゴゴ
ゴゴ
「い、いっけえええええ!!!『魔神(人)剣』!!!」
「『スティッキィ・フィンガーズッ』!!!」
ガラは『魔神(人)剣』を放つ事は出来なかった。
ブチャラティがジッパーで切り離していた腕が、一瞬早くガラの顔面に命中したのだ。
「ぐっ、なにィ・・・!?」
「借りていたものを返そう。お前の腕だ」
奪われた自身の右腕による致命的な一撃に、ガラの巨体が揺らいだ。
「・・・ひとつ。お前の言った事に『間違い』があったのを思い出した。
女が死んだ原因は・・・彼女を殺したのは、オレだ。
『解除』に『失敗』して『首輪』を爆発させて・・・当然、予想するべきだった。
『主催者』を甘く見ていたオレの、『ミス』だ」
「そッ、そーかい。ま、そんなに気にすんなよ・・・オレの腕、持っていきな・・・」
「グラッツェ。ガラ・・・お前の名、胸に刻んでおこう。そして・・・!!」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィィィィ!!!」
スティッキィ・フィンガーズ。拳を何度も何度も叩き込む。
「ぐはぁぁっ!」
『アリーヴェデルチ(さよならだ)!』
遠ざかる意識の中で、ガラは声を聞いた。
(オレと違ってテメーのよーな三枚目は死んだら二度と生き返れねーからなっ。気をつけろよっ)
―――フッ、そーだったな・・・ダークシュナイダー・・・
「・・・ガラ君!!!駄目だ、遅かったか・・・」
「くっ、ちっくしょう・・・」
それから二人は黙って三人の遺体を埋葬した。根本から倒されている木、大地に走る無数の亀裂。
中でも一際大きな亀裂の先に巨大なクレーターが出来ており、激闘の後を物語っていた。
ガラの体は焼き焦げ、更に全身を殴打されたような姿で死んでいた。
それでも、ガラの死に顔は満足そうだった。
「犯人は海の方へ向かっただって?桑原君!!」
「ああ、零していった“臭い”みてーなもんが漂ってるんだ。満員電車のすかしっ屁みてーにな」
「君、その(つぶれた)顔によらず結構スゴイな!もう少し詳しく分からないのかい?」
「なんか素直に喜べねーなクソ!!やれるかどうか念信してみる!!」
桑原は額に人差し指を当て集中する。見えてくる。これは・・・ガラの意識か?
『貴様が殺人犯・・・・・・か。悪いが・・・・・・』『戦う気・・・・・』ちっ、何を言ってるのか分かんねぇ。
『なにぃ!!?ブチャラティが消えた?』 ―――!!?
「分かったぜ!!ヤツの名前はブチャラティだ!!」
「『ブチャラティ』!凄い!!確かに名簿に載っている名前だ!」
額に指を当てたまま桑原は念心を続ける。
「ヤツは、『おたまじゃくし柄のスーツ』を着てやがる」
「うんうんそれでそれで?」
「そいつは、『おかっぱ頭』だ。間違ぇねぇ!頭に『ダンゴ虫みてぇなブローチ』を着けてやがる!」
「犯人は女性なのか!特殊な感性の持ち主だね・・・おたまじゃくしにダンゴ虫か・・・」
「いや!こりゃ『男(ヤロー)』だ・・・なんつーかよ、すんげぇ『濃い~ツラ』だぜ」
「桑原君・・・それは変態というヤツでは・・・?」
「・・・駄目だ、もう何も見えねぇ。だが分かったぜぇ。ガラのお陰で・・・サンキュな・・・ガラ」
二人はブチャラティを追跡する事にした。
友情マンは考える。間に合わなかったのは、幸か不幸か。
友情マンは考える。あのガラが倒せるようなマーダーがいるのかと。
――――本気で戦う事も、考えなければならないな・・・
松島を、『美しい』とブチャラティは素直に認めた。
これからも松島は、ただ松島としてあり続けるのだろう。
それにしてもガラ、恐ろしい程の強さだった。あのレベルのヤツが他にもどれだけいるのか。
深く傷を負ってしまった。とりあえずジッパーで応急処置はしたが、止血程度にはなるだろう。
いずれ『主催者』は倒す。
だがやはり『仲間』は必要だ。探して、集めよう。共に『主催者』を倒すという者がいるのなら。
そして『首輪』の解除方法も、必ず見つける。
『首輪』
そこまで考えて、ブチャラティは目を閉じた。
『――確かに私は怖い、怖いです!足だって震えていて・・・・・・
こうやって立つのも精一杯です。でも、ブチャラティさんに死んで欲しくないんです』
『でも、ブチャラティさんにしか・・・・・・その能力は使えないと思います』
『それに・・・・・・ブチャラティさんが失敗したら誰がみんなの首輪を外せるんでしょうか?』
(・・・晴子)
(・・・オレは生き返ったんだ。解除に失敗して、死ぬはずだったオレの命は―――)
ブチャラティは薄く瞼を開いた。
松島の青い海が、太陽に照らされて、白く輝いていた。
何故、命というものがあるのだろう。死があるのだろう。
そして、想いというものがあるのだろう。
生きている限り、死者の分まで生きなければならないのだろうか。
彼女よりは長く生きる事になった。
潮の香りがする風。吹き散らされて思考は切れ切れになる。
青い空が、今にも落ちて来そうな青い空が、眩しくてまた目を細めた。
もし、太陽から降り注ぐこの光のように、想いが遥か遠くまで届く事があるのなら、
せめて、彼女には届け。とブチャラティは思った。
―― To be continued ―→
【宮城県宮城郡松島町/西行戻しの松公園(松島海岸)/昼】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)@遊戯王
[道具]:荷物一式、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ
[思考]:1.負傷しているはずのブチャラティを追跡する。
仲間にするのは無理だと思っているので、殺せるようなら殺す。
2.強い者と友達になる。ヨーコ優先。
3.最後の一人になる。
【桑原和真@幽遊白書】
[状態]:健康、怒りと悲しみ、ブチャラティのいる位置がなんとなく分かる
[装備]:斬魄刀@BLEACH
[道具]:荷物一式
[思考]:1.ブチャラティを追跡。怒りに燃えている。ガラの仇をとる。
2.ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
3.ゲームを脱出する。
【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:ガラの右腕をジッパーで固定(スタンドの右腕は復旧不能)
全身に無数の裂傷(とりあえずジッパーで応急処置。致命傷ではないがかなりの重症)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考]:1.『主催者』は必ず倒す。そのために『仲間』を集め、『首輪』の解除方法も見つける。
2.死者の分まで『生きる覚悟』『も』決めた。
3.移動する。
※友情マンはガラ、ヂェーン、晴子の死因と死亡時期がそれぞれ違うことを見抜いています。
少なくともブチャラティは単独犯で傷を負っていると思っています。
しかしまだそのことを桑原に話すつもりはありません。桑原を利用してブチャラティを始末しようかと考えています。
※斬魄刀はブチャラティに時間が無かったからか、それとも証拠になると思ったからか、その場に放置されていました。現在は桑原が装備。
※桑原はブチャラティが3人を殺したマーダーだと思い込んでいます。
※ガラの遺体は「右腕」以外、五体満足でした。ブチャラティが自分の能力がばれることを恐れたためです。
『右腕』はブチャラティのものになっています。
【ガラ@BASTARD!! -暗黒の破壊神- 死亡確認】
【残り98人】
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2024年08月18日 19:02