0224:ほしのおうじさま~エビフリャー地獄変~  ◆HKNE1iTG9I





「むーん、キミは私に用があるのかな?」
「いかにもそうさ!僕は貴公子、趙公明。さぁ、エレガントな闘いを楽しもうじゃないか!」

 廃墟のような静けさを湛えた、街並みで。対峙するのは、二人の怪人。
ルナール・ニコラエフことムーンフェイスと、麗しの貴公子こと趙公明。

「キミ達は少し、下がっていてくれたまえ」
 と、徐に怪人の片割れ、月面の如き容貌を持つ男、ムーンフェイスが片手を挙げ、背後にいるL、洋一を制する。

「もう一つ聞いてもいいかな?キミは何故闘っているんだい?」

 そして、問う。この場には似つかわしくない、穏やかな声で。
この場に相応しい、何かを愉快がるかのような剣呑な雰囲気を、全身から漂わせて。

「それはモチロン!エレガントでゴージャスな闘いを繰り広げるためさ!他に何が要るというんだい?」

 返答するは趙公明。その姿、あたかも光り輝く、戦神の如く。
あたかも大量のカクテルライトを浴びているかのように見えるのは、果たして目の錯覚なのか。
それとも、趙公明が起こすことはすべて真実なのか。だが…


(むーん、この男は…ダメだね)
 異形、ムーンフェイスは判断する。
(この男は、確かに光り輝いている。まるで、豪華絢爛な星屑のようにね。でも、所詮、星屑は星屑。
 その光は自分だけしか照らせない、無粋な輝き。到底、私(月)を照らすに値しない)
「むーん、是非!!…って言いたいところだけど、今回は君の期待には応えられそうにもないよ。
 残念だけど、今回はパス」
 よって、ムーンフェイスは返答を返す。あくまでも、にこやかに。
「それは何故だい?」
 一転、肩を大きくすくめた相手を見て、険しい光を宿す趙公明。
それは、欲しがっていた玩具を理不尽に取り上げられた、子供のような怒り。

 空気が、僅かに。だが、確実に重さを増していく。

「まず第一に。私たちは丸腰だ」
 意に介した風も無く、飄々とムーンフェイスは言葉を繋いだ。
「なら、ボクの傘を使えばいい」
 待ちきれない、といった表情で、手にした得物を放ろうとした趙公明に対し、
「むーん、人の話は最後まで聞くものだよ。第二に、私は核鉄といった、非常に特殊な武器がないと真価を発揮できないんだ。
 掌大の六角形の金属でね。これが無い私は、著しく戦闘力に欠けるんだよ」
「核鉄?」
「あぁ、私や、錬金の戦士…ムトウカズキやツムラトキコ…かな?この場にいるのは。
 私たちが実力を十全に発揮するためには、それが必要なのさ」
「カズキ君が…!!いや、華麗なる敵であるボクに向かって、なんでそんなことを話すんだい?
 まさか、ボクにそれを持ってきて欲しいとでも?それは虫が良すぎるんじゃないかな?!」
 言うが早いか、趙公明は傘を無造作に構え直し、刹那、石突が火を噴く。
ムーンフェイスは、足元で舞う土埃に興味を抱いた風でもなく。
「むーん、最近の田舎貴族はノーブリス・オブリージュという言葉も知らないのかい?やれやれ、嘆かわしいことだね」
 口の端を歪めると、大仰にため息をついてみせる。
「まぁ、それならこの場で私たちはなす術も無く殺されるだけさ。
 …あ、そうそう、一番の理由を忘れていた」
 一転、ニヤリ、と笑い、
「決闘は、月の綺麗な晩に行うものと決まっている」

 趙公明は無言。それに合わせて、Lが声を掛けようとするが、
「少し…黙っていてくれないかな?今、ボクはこの月顔の紳士と話をしているんだよ」
 怒気とともに、上げられた傘…機関銃の銃口を見て、やれやれといった様子で言葉を呑み込む。
怒りとともに、Lを見据える趙公明。と、その顔に何かが投げつけられた。それは、ムーンフェイスの手袋。

古来より貴族の間で交わされてきた、決闘の申し込み方法。

「むーん、私の話はまだ終わっていないよ…もしキミが、核鉄を手に入れて、また私の前に立ったとき…
 そのときは存分に闘おうじゃないか」
 趙公明は無言。
「そんな怖い顔しない!今のは決闘の前払いさ。スマイル、スマイル!」
 趙公明は無言…とおもむろに問いを発する。
「ムーンフェイス君…といったかな?君が逃げないという証拠は?」
「むーん、それこそ愚問!このような世界で、一体私がどこに逃げるというのかね?」
 呵呵大笑して、ムーンフェイスは応じる。その様子を見て…
「アーッハッハッハッハ!!素晴らしいよ!なら、君の言葉に免じて、この場はボクが退こうじゃあないか」
 同じような爽やかな笑顔で、趙公明は言葉を続ける。
「それと、そこの隈が酷いキミ!悪かったね!これほどの紳士とともに居るんだ、君も名のある従者なのだろう?」
「…いえ、そんなことはありませんよ。それよりも、いいんですか?この世界は、私達のいた世界を模しているようなのですが…
 その世界だと、貴方の持っていた棒が刺さった城、あれは巨大なロボットに変形して、悪と戦うんです。
 そこまで主催者が模しているとは思えませんが…
 天守閣に装備されている、エビフライ型のミサイルくらいは、もしかしたら再現されているかもしれませんよ?」
「ワンダフル!それは、つまり私の故郷、金鰲島のようなものだね?なんてエキゾチックな造型なんだ!」
「金鰲島…というものは私には分かりかねますが…貴方の言う、エレガントな戦いを演出するために、あの棒は必要なものなのでは?」
「おぉっと!確かにそうだね!ブリリアントな闘いの予感に、すっかり忘れていたよ!ありがとう!」
(嘘八百だ…!!従者呼ばわりを怒ってるのか?このLってひと…ちっちぇぇ~)
「むーん、それでは、綺羅星の貴公子!また会うときを楽しみにしてるよ」
「ボクもさ、三日月の紳士!キミとはゴージャスでノーブルな闘いで、是非また会おう!!」

 上機嫌で去っていく趙公明。一抹の不安を拭えない洋一。

ひとまずの幕間劇は、こうして演目を終えた。


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「…お疲れ様です、ムーンフェイスさん」
「む~ん…流石に神経が削れたよ…」

Lの言葉に、ムーンフェイスはへたり込むような声で答える。
「えっ?!でも、核鉄っていうものがあれば…」
「核鉄があっても、善戦はしてみせられるけれど、とても勝てるとは思えないね」
「えぇっ!じゃぁ、どうするの?!」
 驚く洋一。それに対し、
「むん!洋一君、心配することは無い!!次に出会う前に、とっくにLがこのゲームを終わらせているさ」
「そうです。起こりえないことを心配するのは現実的ではありませんよ」
 Lとムーンフェイス、二人が被せるかのように、その危惧を否定する。
「ところで、ムーンフェイスさん。さっきの妙な口調はやめたんですか?」
「むん…妙とはご挨拶だね。私なりに、キミに敬意を表そうとしたんだが…ゲンが悪くなってしまったからね」
「安心しました。私もそのほうがやりやすい。
 …しかし…貴方がゲンを担ぐとは以外ですね」
「無論!月は魔性の天体!ならば、月である私も、ゲンくらいは担ぐさ!!」
(この二人…なに考えてんのか分からねぇ~!!)

 いつの間にか、このあたり一体を支配していた緊張感は、跡形も無く風に溶けて…


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「L、肉体労働は私や洋一君に任せ、キミはキミのやるべきことをやるといい。
 なに、私は人ではなく超人。故に、人の身では到底不可能なことも容易い」

 怪人、ムーンフェイスの発する言葉。それは、言外に一つの疑問を。

(キミは、デスノートを主催者が危惧していると言った。
 だが、もし私が主催者なら、そのようなことは最初から想定しておく。
 キミが考えている策は、もう少しなにかあると思うんだけどね)

「お心遣い、痛み入ります。確かに、私はただの人間。元の世界で、ある人物を24時間監視し続けたとき…
 人間の耐久力の限界というものを思い知ったことがあります。その点では、素直に貴方が羨ましい」

 (ある意味)超人Lは、言外の疑問を察知し、そう返す。

 Lの策。それは、主催者の介入のみを求めているものではない。あくまで、それは全てが上手くいった場合のこと。
無論、自分が主催者だったら、デスノートの様な危険物は、それこそ細心の注意を払って調べ、
自分たちの安全が確保されると確信しない限り、この様な場に投下しない。

 だが、イレギュラーな発言を、他でもない自分がすることにより、主催側に動揺を与えられる可能性はゼロではない。
そして、動揺を与えられたならば。主催の監視の目を、自分たちに惹きつけることは、決して可能性が低いことではない。

 監視するということは、異常な体力の消耗を、被監視者のみならず、監視者にも強いるもの。
ならば、自分たちが注意を惹き付けることが出来れば、他の脱出を考えている参加者に向けられている注意を、何分の一かでも削ぐことが出来る。

 今、自分たちは移動しかしていないのだ。ならば、移動時間も活用させてもらう。
ただ、それだけ、かつ、無駄の無い伏線の一手。

「それに、洋一君も役に立ってくれていますよ。彼の能力は非常に貴重だ」

 洋一の運の無さ。それは、殺人者を惹きつけるといった作用で現れてくる、ということを先程、実感した。
隠密行動、双眼鏡…それらがあるにも拘らず、空、といった思いもよらないところから現れた殺人者を見て。

 もし、自分が主催者ならば…絶対に、ゲームが動くところを見たいと考えるはず。
そして、ゲームを動かすのは…現時点では、間違いない。殺人者である。

 つまり、洋一の存在は、否が応にも、主催者の目をこちらに惹きつけることができる、裏返せば、不可避の重要能力。
主催者さえ抗えない、「運」というもの…これは、完全に管理されたかのような世界で、確実に存在する綻びが一つ。

 そして、自負。自分たちなら、殺人者を切り抜けられるという、確かな思い。

 そして、これは。盗聴、監視に拘わらず、決して主催者に知られてはならないこと。だから、言わない。だから、書かない。
出鱈目を並べ倒した、先程の会話の中で、それは、実在した真実の一片(ヒトカケラ)。

(む~ん、そういうことか)

 だから、相手がそれを察してくれるのを、ただ、待つ。
そして、Lが有能な主導者であるのと同様に、ムーンフェイスもまた、有能な補佐役である、ということへの確かな信頼がその根底には流れている。


「ね~ッ!ちょっと、もう一度休憩しようよ~ッ!!」

後ろから響く、洋一の声。それに対して振り返ると、ムーンフェイスは駆けていく。

「む~ん、急ぐから、私が背負って行ってあげよう!!」
「ゲッ!!いいです!大丈夫です!!!っていうか、ツいてねぇ~~~~!!」

(む~ん、素晴らしいね!
 …太陽は、常に輝いていればいい。陰は、月(私)が引き受けよう…)

「むん!遠慮は無用!さぁ、急ごうじゃぁないか!!」

 星は去った。闇は去らない。

 だが、光は常に在る。





【愛知県/日中~午後】
【チームL】
【ルナール・ニコラエフ(ムーンフェイス)@武装練金】
 [状態]:健康
 [装備]:双眼鏡
 [道具]:荷物一式(食料一食分消費)
 [思考]:1、有用な人材のスカウトと支給品の収集
     2、Lを補佐する
     3、生き残る

【L(竜崎)@DEATHNOTE】
 [状態]:健康
 [道具]:荷物一式 (食料少量消費) 、護送車(ガソリン無し、バッテリー切れ、ドアロック故障)@DEATHNOTE
     デスノート(0:00まで使用不能)@DEATHNOTE
 [思考]:1、名古屋駅を目指し、参加者のグループを捜索。合流し、ステルスマーダーが居れば其れを排除。
     2、出来るだけ人材とアイテムを引き込む
     3、沖縄の存在の確認
     4、ゲームの出来るだけ早い中断
     5、デスノートは可能な限り使用しない

【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
 [状態]:右腕骨折、左ふくらはぎ火傷、疲労
 [道具]:荷物一式(食料少し消費)
 [思考]:1、とりあえずLたちに付いていく
     2、死にたくない

【趙公明@封神演義】
 [状態]:左足に軽傷
 [道具]:荷物一式×2(一食分消費)神楽の仕込み傘@銀魂
 [思考]:1、核鉄を見つけて、錬金の戦士やムーンフェイスと華麗に闘う準備をする。
     2、ディズニーランドでラーメンマンを待って煌びやかに闘う。
     3、エレガントな戦いを楽しむ。太公望、カズキ、ラーメンマンを優先。

【如意棒@DRAGON BALL は名古屋城天守閣に突き刺さってます】


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最終更新:2024年03月26日 17:00