0226:狼の覚悟
「あら、また会ったわね…そう言えば名前も聞いていなかったわ」
「新撰組三番隊組長
斎藤一…貴様を斬る」
大坂の街で、大蛇と狼は再び出会った。
夜明け前と違っていたのは、なぜか狼が一匹だったこと。
そして、大蛇に先に見つけられてしまったこと。
それでも狼は、敵に背を向けることはしない。
狼はその牙を大蛇に向け、構えた。
――牙突!
(速いわね……でも!)
大蛇丸は迫り来る刃を横に避け、瞬時に肘打ちを繰り出す。
斎藤はそれを自らの左肘で打ち上げると、さらに剣で斬りつける。
大蛇丸はそれを避けながら印を結び、口に手を当てる。
――火遁・豪火球の術!
「…くっ!?」
大蛇丸の口から吐き出された炎は、それを辛うじて回避した斎藤の背後にあった民家を焼き焦がす。
(四国の時、そして今回の術……かなり多彩な術を操るようだな)
それでも斎藤は怯むことなく、再び牙突の構えをとる。
唯一と言っていい技。“牙突”に全てをかけて。
「ふっふっふ…またその技なの?嘗められたものね…」
斎藤は何も答えず、そのまま牙突を行う。
「…!?」
その突進速度は先ほどよりも、四国でのものよりも速く、鋭く、そして軌道もわずかに変化していた。
同じ技ばかり使う、と斎藤を侮っていた大蛇丸は、刃をなんとか回避したものの、わずかに脇腹を斬られてしまう。
「…ちっ……(少し嘗めてたのはこっちのようね…)」
印を結びながら大きく跳躍すると、大蛇丸は口から連続で炎を吐き出した。
――火遁・鳳仙火の術!
次に次に襲い掛かる炎を、斎藤は避け、切り払い、一つも直撃することなく回避に成功した。
だが、炎が地面に着弾したことによって発生した爆煙で、大蛇丸の姿は隠れてしまった。
(……また逃げたか?……いや、殺気は消えていない、近くにいるはず)
煙の中にゆらりと人影が見える。それも、ひとつではなく複数。
徐々に煙が晴れ、その姿が見えてくる。
「…これは……!」
気がつくと、斎藤は黒尽くめの集団に囲まれていた。
黒尽くめに囲まれた斎藤は、ジリジリとその包囲が狭まる中でも、冷静に自体を見極めようとしていた。
近づいてきた一匹を斬り捨てたが、それは分裂してしまい倒せなかった。
さらに、地面や壁から次々に現れる黒尽くめの人影。
それは斎藤を追い詰めるように、少しずつ確実に数を増やしながら囲んでくる。
「…………ふん」
斎藤は剣を構えたまま目を閉じると、動きを止めた。
どんな術かは判らないが、敵が攻撃する瞬間には必ず何らかの気配が生じるはず。
周りを囲んでいる黒い集団は、自分からは攻撃してこないようだ。
ならば本命のみに意識を集中すれば良い。
そして、そのまま一分ほどが過ぎた時……
不意に目の前に生じた禍々しい殺気。
斎藤はその気配目掛けて、全身全霊を込めた牙突を繰り出した。
「………がはっ…!!」
血反吐を吐きながらその場に倒れ伏したのは……斎藤だった。
斎藤を囲んでいた黒尽くめの正体は、『霞従者の術』と呼ばれる幻術。
視覚を絶って気配を頼りにする作戦は正しかったが、それでも大蛇丸の方が一枚上手だった。
牙突を変わり身の術で避け、背後から急所に貫き手を喰らわせたのだ。
必ずカウンターを合わせてくると分かっていれば、それに対処するのは容易い。
「ふっふっふ……惜しかったわね」
大蛇丸は斎藤の左腕に脚をかけると、一気に腕をへし折る。
「…ぐぅっ!」
さらに右脚に突きを打ち込み、大腿骨を折る。
「これであなたの牙は折れた…どうかしら、ご感想は?」
斎藤は何も答えない。
大蛇丸はしばらく黙って立っていたが、やがて腕を振り上げると、斎藤の心臓に狙いをつけた。
「ふっ、もう一人の仲間が来るまで遊んでいようかと思ったけど…来ないようね。さ、今楽にしてあげるわ…」
そして、今まさに腕が振り下ろされんとした時、
「おっと、そうはいかねぇぜ」
大蛇丸の背後から槍が突き出された。
現れたのはもう一匹の狼、
沖田総悟。
その槍こそ避けられだが、大蛇丸は沖田の攻撃から逃れるように距離をとったため、斎藤を助け起こすことができた。
「…ふふ、私がかけた幻術で随分と迷っていたみたいね」
そう。狼は大蛇の幻術でバラバラに行動させられていたのだった。
二人同時に相手をしても負けることはないと思っていた大蛇丸だが、余計な邪魔が入らないとも限らなかったからだ。
「…なるほど、道理でおかしいと思ってたぜ」
「でも、ちょっと遅かったわね。その彼はもう戦えないわ。それどころか、放っておいたら命に関わるほどの重傷…
さて、どうするの?私と戦うか、その壊れたオモチャを背負って逃げるか………」
沖田が斎藤の様子を覗うと、腕と足が折れていて、血を吐いてることから内臓にも損傷がありそうだ。
確かに放っておいたら危険かもしれない。
「…ぐっ…沖田、俺には構うな……」
「しかし旦那が勝てなかった相手だ。俺一人でどうにかなるとは思えませんぜ」
「……ならば、どうする」
「旦那を背負って一度退きまさァ。その怪我はかなりヤバイですぜ」
「…阿呆が」
斎藤は、大蛇丸がそんなに甘い相手ではないことは察していた。
沖田が自分を背負って逃げようとすれば、間違いなく二人とも殺されるだろう。
ではどうするか。
(……俺が、もはや満足に戦えない俺が、体を張って沖田を逃がすしか…あるまい)
斎藤は剣を杖代わりにして無理やり身体を起こそうとする。
「だ、旦那。何してんですかィ」
「いいから…ぐふっ、肩を貸せ」
沖田の肩を借り、斎藤はなんとか立ち上がる。
「いいか…俺が時間を稼ぐ……その間にお前は逃げろ」
「な、なに言ってんですかィ。そんなこ…」
「ヤツを甘く見るな…いいか、ヤツは底が知れん。まだどんな奥の手があるか判らん。
……このままでは共倒れだ。それに…ぐっ…俺はもう長くない…」
「……」
黙り込む沖田。斎藤はもう一度念を押すと、顔を上げて大蛇丸を見た。
「ふっふっふ…別れの挨拶はそろそろ済んだかしら?」
ゆっくりと歩み寄る大蛇丸。
斎藤は決意を秘めた顔で、その前に立ちはだかった。
【大阪府市街地/1日目・日中~午後】
【大蛇丸@NARUTO】
[状態]:全身に火傷(ある程度は治療済み)、かすり傷数ヶ所、チャクラを小程度消耗
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(一食分消費)、岩鉄斬剣@幽遊白書
[思考]:1.目の前の二人を殺す。
2.まず大阪、その後東へ移動しながら他の参加者(できれば弱い相手)からアイテムや情報を入手。
3.多くの人間のデータを集め、場合によっては誰かと共闘する(もちろん利用する形で)。
4.生き残り、自分以外の最後まで残ったものを新しい依り代とする。候補としてダイを考えている。
【チーム名=壬生狼】
【斎藤一@るろうに剣心】
[状態]:左腕骨折、右大腿骨骨折、内臓重傷(放っておけば死ぬ可能性大)
[装備]:魔槍の剣@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料一食分消費)
[思考]:1. 体を張って大蛇丸から沖田を逃がす
2.ダイの使える武器を探す
3.主催者の打倒
【沖田総悟@銀魂】
[状態]:健康(鼻はほぼ完治)
[装備]:鎧の魔槍(右鉄甲無し)@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料一食分消費)
[思考]:1.勝ち目がないので斎藤を助けて逃げたいが、二人では逃げ切れそうにないことも理解している
2.主催者の打倒
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最終更新:2024年03月20日 00:46