0223:魁!一護100%~Frame framin' SAITAMA MIX~







            ―我等は 姿無きが故に
                       それを畏れ―





 ここは、県境。僅かな木々と、熱い大地。
目の前に広がるのは、この”殺し合い”ゲームに似つかわしくない静まりきった、都市の影。
いや、むしろ、ふさわしいと呼ぶべきものなのか…

 また、大勢の人が死んだ。殺された。顔も知らない殺人者に。護れなかった、俺は。誰も。
護られた、俺は。江田島のオッサンに…何も、できなかった。
そして、大勢の人が死んだ。殺された。この”クソッタレ”な殺人ゲームとやらに。奪われた、自分には分からない、遠い場所で。

 俺は、誰も護れなかった。ただ、護られるだけだった。
知っているはずなのに俺は。幽霊を見ることが出来る俺は。死神をやってきた俺は。”死”というものを知っているはずなのに。
死んだものの悲しみも、遺されたものの哀しみも。俺は厭というほど知っているはずなのに。

 幸いなことに、放送にルキアの名前は無かった。幸いなことに。
そして、幸いなどといった言葉を使わざるを得ない今の自分を嫌悪する。
14人、14人も死んだ。俺は、護ってやれなかった。ルキアも、他の弱い奴らも、皆、俺が護ってやると誓ったはずなのに。

 それなのに、今の俺は。両膝を撃ち抜かれたぐらいで、もう立ち上がることすら出来ない。誰かを護ることすらできない。
むしろ、真中や江田島のオッサンの足手まといになっていると言ったほうが正しいか。

 ―どちらにせよ。俺は、護れなかった。死んでいった奴らを。俺には、力があるはずなのに―

 木々は揺れて、思いを呑み込む…姿も見えない、遠い場所へ――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 そこは、更地とでも呼ぶべき場所か。二人の青年、黒崎一護真中淳平は二人、その場で、しばしの休息を取っていた。
巨漢、江田島平八の姿は、今、ここにはない。
黒崎一護と、真中淳平の強い要望で、この周辺に、誰か襲われているものは居ないか、怪我をして助けを待っているものは居ないかを探りに行っているために。
本来なら、自分が行きたい…と一護は考えていたが、先程の暴漢に撃たれた傷のため、思うように動けない。
ならば、自分のことはいいから、せめて―――

それが、一護の要望。

 と、唐突に、同行者が声を掛けてくる。

「なぁ、黒崎君…」
「一護でいいよ、なんだ?」
「分かった。なぁ、黒崎苺…」
「って、何でフルネームなんだよ!そっちは嫌だよ!つーか、イントネーションがおかしくねぇか、オイッ!!」

 響く声は、静寂を破る…が、それを聞き咎めるものはこの場にはいない。誰も。

「苺君は、ここに来る前、一体何してたんだ?」
「俺は…高校生だったよ、アンタと同じな。つーか、君は要らねぇ。つーか、明らかに発音おかしいだろーがッ!!」
「俺は、普通の高校生だったんだ。ただ、少し映画が好きな、ね。だから、どうしても時間が湧かないっつーか」
「一等賞の一に、守護神の護!黒崎一護!!リピートアフターミー!!」
「なんつーか、これも映画の撮影みたいな気がするんだよなぁ」
「オーイ、ガン無視かよッ!!だから、苺じゃねーっつーの!!!」

 響く声は、まるで戯れるように。声の主は、オレンジ色の頭髪の青年と、黒髪の青年。
二人が居るのは、東京と埼玉、千葉の県境の更地。

「つーかさ、これがハロウィン映画の撮影だって言われたら、俺、嬉しくて泣き出すかも」
 黒髪の青年は語る。在りし日の、穏やかな姿を懐かしむような、遠いまなざしで。
「だーかーら、苺じゃねぇっつってんだろ!!」
 オレンジ髪の青年は叫ぶ。在りし日の、都市の喧騒を思い出させる声質で。
「なんか、ちょうどいい具合なオバケもいたし…これがトリック・オア・トリートだったらどんなに良かったんだろうな」
「…これは、そんな生易しいもんじゃねェよ。もう32人も死んでるし、アンタだって殺されかけただろ?」
「というかさ、トリック・オア・トリートって立派な脅迫じゃね?お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ…って、なぁ?」
「オーイ、話が噛み合ってねーぞ…というか、それぐらいいいじゃねーか…」
「いや、駄目だね。俺がこの行事の発案者だったら、”お菓子をくれたら、悪戯してもいいわよ”に変えてるのに!!」
「ってソッチのが駄目だよ!お菓子一杯やっちゃうよ!じゃねぇ、そんな誘惑には屈しない男だ、俺は!!」

 青年、真中淳平の要望。それは、少しでも自分の同行者の力になること。
自分には、力が無い。あくまで、平均的な高校生男子レベルの身体能力しかない、自分には。
同行者、黒崎一護も、江田島平八も、自分より遥かに強い、これは現実。
もし、東城や西野、さつき達に巡り会えたとして、自分ではどこまで彼女達を護りきれるのか怪しい。
いや、先程のように、何も出来ずに嬲り殺されるのがオチだろう。
幸運にも、まだ自分の知り合いは誰も死んではいない。殺されてはいない。でも、本当は。しかし、本当は。
本当は、今すぐにでも探しに行きたい。探し出したい。支えてあげたい。
真中は、心の底から、そう願う。だが、それは土台不可能なこと。

助けられ、護られているばかりの自分では。

 探している女性を護りきることも。

そう、それは不可能なこと。助けてもらい、護ってもらっているばかりの自分では。

 動けない仲間を見捨てて、一人、ここから去っていくことも。

 せめて、緊張をほぐすだけでも。この場で、この戦場で、もう姿も見えない、遠い日常を思い出してもらうだけでも。
そう思い、真中淳平はお道化続ける。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「だから、そのイントネーションで俺を呼びつつ、苺パンツについて語るなァッ!!」
「えー、でも苺君のパンツが苺パンツってわけじゃないだろ?」
「………初めてですよ。この私をここまでコケにしてくれたお馬鹿さんは」

 口論は続き、そして、どちらからとも無く大きく息をつく。

 喧騒が去り。穏やかな風があたりを薙いで。遠くに聞こえるは、山鳥の声か。
この縮小された日本では、これが海鳥の声でも不思議ではないが。
二人の青年は、暫しの風に身を任せる。その目が見つめるものは、遠い、遥か遠い彼方の景色。

「…満足したか」
「それなりに…」

 ひとしきりの会話が終わり、互いに沈黙する。
オレンジ色の髪をした、ヤンキー然とした青年と、黒髪の平凡な造作をしている青年。一見、異色の取り合わせに見えるこの二人。
だが、その心中は同じ。互いに、歯噛みしたくなるような不甲斐なさに苛まれている、という現実は同じ。
今の現状に対するやるせなさ。このゲームに対する憤り。そして、自分自身に対する、泣きたくなるような無力感。

 風が吹く。二人の誓いを運び去るが如く、風が吹く。

 誓いは。それぞれ、自分の大切な人を死なせないこと。仲間の大切な人を護りぬくこと。

 二人の意思は、風のみが知り…

「オイ、真中」
「ああ、なんかキナ臭い匂いがする」

 二人の元へ、戦火が届く。それは、姿も見えない、遠い彼方での闘いの狼煙。





【埼玉県(県境)/日中】

【いちご100%@真中淳平】
【状態】手首捻挫
【装備】無し
【道具】無し
【思考】1.江田島が戻るのを待ち、炎に対処。戻らなかった場合、一護を連れて避難
     2.知り合いとの合流
     3.東京を目指す

【黒崎一護@BLEACH】
【状態】両膝破壊 (名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック藍染かは知らない)
【装備】シャハルの鏡@ダイの大冒険
【道具】支給品一式
【思考】1.江田島が戻るのを待ち(自力移動できないため)、炎に対処
     2.目の前で襲われている奴らがいたら助ける
     3.朽木ルキアとの合流
     4.東京を目指す


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165:魁!一護100%~戦う壮年~ 真中淳平 238:魁!!一護100%~火炎交響曲―ReMIX―~
165:魁!一護100%~戦う壮年~ 黒崎一護 238:魁!!一護100%~火炎交響曲―ReMIX―~

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最終更新:2024年03月11日 09:03