0245:日が暮れて





両津一行はヤムチャ達と別れた後、西へと進んでいた。
しかし、今までのようなハイペースで進むことなど出来はしない。
「うーむ。矢張りスカウターが無いと不安になるものだな。
香川まで行くのにこのスピードではな。」
両津はこれまでの移動の際、常にスカウターの加護を受けていた。
故に少し進んでは索敵、という行動はやり辛い。
「しかし、中国地方は山地が殆どですからね。
脇からズドン。なんてことも十分に考えられますよ。」
「あぁ。それにこういう所にマーダーは潜んでいるものだ。」
このチームの参謀である乾は答える。
鵺野もまた、この行動には賛成らしく、相槌をうった。
そうやって三時間ほど移動を続けて、ようやく四国への橋、瀬戸大橋が見えてきた。
時刻は17:00くらいになるだろうか。
太陽は沈みかけ、空にはカラスの鳴き声が聞こえてくるという不気味な雰囲気が醸し出される。
「なんとか日没までには辿り着けたな。」
「いえ、まだです。あの建物を見てください。
何かが狙っている気がしませんか?」
乾の指差した先には、ぽつんと古びた小さなビルが一つ聳え建っている。
暗くて遠くは分からないが、建物はそれ一つのみだろう。
「確かに…しかし、こんな所でもたもたしていても仕方がない。
わしが突っ込む!!」
「えっ。ち、ちょっと。両津さん!」
乾の台詞の前に既に両津は駆け始めてていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
このゲームが始まり既に沢山の人が死んだ。
両津もまた、大原部長、中川という大事な仲間を失っている。
それら全てを吹き飛ばすかのような大声で両津は叫んだ。
右手に中川も愛用していたマグナムを握り締めて。
百メートル10秒4の俊足は、縮小された橋を瞬く間に駆け抜け、ビルの中へと突入していった。
しばらく茫然と見送っていた鵺野の心も熱くなってきた。
「ビルの中に敵がいたら両津さんが危ない。乾!俺たちも行くぞ!」
「え?鵺野先生まで…」
鵺野も叫び声をあげ走りだす。
乾も仕方なくそれに続く。
(いくら暗いとはいえこれでは只の的に…)
しかし、乾の心配もすぐに安心に変わる。
「大丈夫だ。このビルにはだれもいない。安全だぞーーっ!!」
両津は屋上で手を振り、ビルの前ですぐに三人は合流した。
「危ないじゃないですか。両津さん!
もしマーダーがいたら殺されていたかも知れないんですよ?」
「いやぁ。すまんすまん。わしは咄嗟のとき考えるより先に手が出てしまうんだ。
それより、大体見当はつくがお前の策を教えてくれ。」
あまり悪怯れた様子もなく逆に乾に質問する。
「全く…今ので分かったかと思いますが、ここは守りやすく攻めにくい。
この広い日本列島、人一人探すのは不可能に近いでしょう。
ここは前方を海、左右後方は山で覆われています。
そこで、近づいてくる人に一人が接触し、もう二人がもしもに備え屋上で銃を構え待機する…」
「ちょっと待った!!」
その時突然両津が声を張り上げ立ち上がった。
「その交渉の役は誰がやるんだ?」
「勿論俺がやりますよ。二人は上で… 」
「何を馬鹿なことを言っとるんだ?それは警察官であるわしの役目だ。」
「いや、この三人の中で一番戦闘力の高いのは俺だ。それは俺がやらせてもらおう。」
三人はそれぞれ自分こそが交渉に当たるに相応しいと主張する。
その議論を終わらせたのは乾の一言だった。
「ちょっと二人とも落ち着いてください。
俺が交渉に相応しいと言える理由は三つあります。
一つ。俺は銃を扱ったことがありません。
ですから両津さんにはスナイパーになってもらいます。
二つ。失礼ですが今鵺野先生は興奮されてます。
その状態で交渉は不可能だと思います。
ですから、先生には白兵戦になった時に役にたってもらいます。
三つ。参加者の中には疑心暗鬼になっている人もいるでしょう。
そんな時、大人のあなた達では警戒して心を開いてくれないかもしれません。
以上の三つが俺の言い分です。」
「しかし…一番危ないのがその役だ…矢張りお前に任すわけには…」
両津は先程とは違い、小さな声で尋ねた。
「危険は承知のうえです。恥ずかしいことですが、この中では俺が一番役に立ちそうにありません。
それに…もし死んだとしてもあなた達が仇をとって下されば…
この世界に一人でもマーダーがいなくなるのならば……
大勢の命が救われるのならば……
この俺一人の命など安いものです。」
乾が喋り終わった後、両津と鵺野は泣いていた。
この殺し合いの中、幾度となく流し、
(特に鵺野など既に泣かないと天国の二人に誓ったはずだが)
枯れ果てたはずの涙が再び二人の頬を流れ落ちている。
「乾…お前に交渉を任せるには条件が二つある。
一つ。俺を配置するのは一階にしてくれ。
屋上では戦いになった時、間に合わないかもしれない。
二つ。お前を殺そうとする奴は俺が容赦無く殺す。
もう、これ以上悲しみは増やしたくないんだ。いいな?」
しゃっくりが混ざった声で鵺野は喋る。再び悲劇が繰り返されないためにも。
「勿論。俺だって簡単には死にたくありませんからね。では両津さん。この弾を。先生はこの銃を。」
「いや、俺には銃は不要だ。護身用にお前が持っておけ。」
「分かりました。」
乾は自分の選択が間違っていなかったことに満足し、喜んだ。
(よかった。この二人で。ヤムチャさんと組んでいたらこうはならなったはずだから)
陽は沈み、月が昇る。秋の瀬戸内は既に真っ暗だ。
時刻はまもなく18:00を迎えようとしている……





【初日香川県瀬戸大橋@夕方】
チーム【公務員+α】
【共通思考】1、仲間を増やす。2、三日目の朝には兵庫県へ戻る。ダメなら琵琶湖へ。

【両津勘吉@こち亀】
【状態】健康
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式(一食分の水、食料を消費)
【思考】1、他の参加者の発見。
    2、伊達、玉藻と合流
    3、主催者を倒す。

【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】健康
【装備】コルトローマンMKⅢ@CITY HUNTER(ただし照準は滅茶苦茶、残弾30)
【道具】支給品一式(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る)
    手帳、弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、他の参加者への接触
    2、越前、跡部と合流し、脱出を目指す。

【鵺野鳴介@地獄先生ぬ~べ~】
【状態】怒りで霊力上昇、反動で体力消耗
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ~べ~
【道具】支給品一式(水を7分の1消費)
【思考】1、戦闘になった場合、相手を殺す。
    2、武器を探し玉藻、伊達と合流。
    3、マーダーを全員殺す(主催者を含む)。
※(乾の言葉により落ち着きを取り戻しました。)

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217:新たな出発 両津勘吉 275:ある中学生男子の考察
217:新たな出発 乾貞治 275:ある中学生男子の考察
217:新たな出発 鵺野鳴介 275:ある中学生男子の考察

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最終更新:2024年04月06日 09:39