0249:崖っぷちの正義と悪<前編> ◆kOZX7S8gY.
麦わらの少年は、息を吸い込む。空気を蓄え、それを発するエネルギーとする。
「――どぉこだぁぁぁっ!! 悟ぉぉぉ空ぅぅぅぅ!!」
ルフィの雄叫びは、微かな山彦となって返るのみ。
「ウキ、ウキキキウキィ!(なんつー大声出してんだバカ! 近くにヤバイ奴がいたらどうすんだよ!)」
「ん? なんだ猿、腹減ったのか? あーそういや俺も腹減ったなぁ。なんか食いもんねぇかなぁ」
「ルフィさん、そのセリフもう三十回目」
ルフィ、
エテ吉、イヴ。
それぞれの仲間を探す中、三人はどことも知れない山の中に迷い込んでいた。
とりあえずは、まだ近くにいるであろう悟空の名前を叫ぶも、反応が返ってくるわけもなく。
かといって無闇に歩き回ってみても、食べ物も探し人の姿もなく。
空腹の辛さも無視できない現状。
エテ吉にいたっては、ルフィに自分の分まで食われ、かなり参っている。
完全に手詰まりになり、少し休憩を取ることにしたのだが、どうにもここは休憩所としては適していないようであった。
生い茂る木々、岩と石ころによる無法地帯。山道とは呼べない獣道の数々。平面など存在しない、立体空間。
まるでジャングルを思わせるような、それほどまでに険しい山林だった。
カサッ、
「ウキ?」
山林を行く中、生い茂る草むらが微かに揺れたのを感じた。
もっとも、気づいたのは
エテ吉のみのようで、ルフィとそれに背負われたイヴは、まるで気にする素振りも見せなかった。
「ウキ……(ありゃあ……)」
「おおぉ! すんげえぇぇっ!!」
山林を抜け、ルフィの瞳に映ったのは、広大に広がる街々の光景。
そこは、山のふもとの町が一望できるほど絶景の――断崖絶壁。
「うおお! たっけぇぇぇー!?」
「ちょ、ちょっとルフィさん」
イヴが背にいることも忘れ、興奮しながら崖の下を覗き込むルフィ。
海賊であり、また「バカ」である彼は、こういった「眺めのいい高い場所」が大好きだった。
「ウキキ、ウキキウキキウキィ(おいルフィ、さっき食いもんっぽいやつ見かけたから、ちょっと探してくる)」
「ん? なんだ、食いもん探してくるのか? そうだよなー腹減ったもんなー」
森を指差す
エテ吉のジェスチャーでその意図を理解したルフィは、途端に、へなっ、と座り込む。
「あーもうだめだ。猿ぅー俺の分もたのむよ」
「ウッキィ……(こんにゃろう……)」
なんとも傲慢なルフィの態度に、一瞬カチンときた
エテ吉だが、それを抑えて再び山林へ向かった。
今は、ルフィもイヴもいないほうが都合がいい。
エテ吉は猿である自分の特長を生かし、高くそびえる木々の間を駆け抜けていく。
さっき、音がした場所へ――
「どうした助平! 歩みが遅いぞ! これしきで根を上げるつもりか!?」
「うるせー! 俺はおまえみたいにチビじゃねぇから、こういう道は苦手なんだよ!」
生い茂る草むらに足を取られる
ボンチュー。それとは対照的に、軽々と山道を進むルキア。
「どうした
ボンチュー? わざわざ気遣った私たちを制し、この道を進むと言い出したのはおまえだぞ?」
「おーいだからってルキア、おまえもあんまり行き過ぎるな!」
そして、二人の中間の距離であたりを警戒しながら進む、
世直しマンと
バッファローマン。
四人は今、密林と言っても言い過ぎではない、山林の中を歩いていた。
市街地ではなく山道を通っているのは、この山のどこかに、彼らの探し人がいる可能性があるから。
関東方面へ向かって南下してきた途中、一行が見つけたのは、山から立ち昇る小さな煙。
駆けつけ調べてみれば、山の木々が数箇所、不自然に燃やされている部分があった。
同時に、焼け焦げた小動物らしきものの焼死体も。
一行には、進行の邪魔だったから燃やされた、ように見えた。
本来なら、まだ本調子ではないルキアと
ボンチューを連れて、このような険しい山道を進むべきではないのだろうが、
この道を選択したのは他でもない
ボンチュー本人。
目の前の超人二人に対し、足手まといになりたくないという気持ちの表れだった。
「くそっ……こんなはずじゃ……」
しかし、自信を持って挑戦した山道は、
ボンチューの予想を大きく超える厄介さだった。
しかも、自分よりデカい、巨人の体格を持つ
バッファローマンが問題なく進めているというのに、
自分は無惨にも草などに足を取られている。加えて
ピッコロ戦のダメージの残り。
体力には自信があった
ボンチューだが、邪魔な草と慣れない山道、戦闘のダメージがたたり、かなりの疲労を強いられていた。
そして意外だったのは、ルキアの予想外の身体能力。
この山道でも苦しい顔を見せず、むしろ涼しい顔で、一行の先頭を行っている。
おそらく、身軽さではこの中でトップに違いない。これは
ボンチューだけではなく、二人の超人も同じことを思っていた。
(なんだよこれ……こんなんじゃ全然だめじゃねぇかよ)
心の中で、自分を不甲斐なく感じる
ボンチュー。
戦闘では
世直しマンに足手まといと言われ、身体能力ではルキアにも置いていかれている。
こんな調子では、また
ピッコロ戦のようなピンチが訪れたとき……
(本当に、見ているだけしかできねぇじゃねーか!)
悔しさを心の奥で噛み締め、
ボンチューは走り出す。
「おらぁ、あんまり調子にのんなよ!」
「むう、この私と張り合う気か貴様!?」
追い上げる
ボンチューに反応して、ルキアもスピードを上げる。
「あ、こら! まったくあいつら、今誰を追ってるかわかってんのか?」
「言ってもしょうがないだろう、
バッファローマンよ。それより、もたもたしていると我々も遅れるぞ」
「マジかよ……」
ため息を吐き捨て、
バッファローマン、
世直しマンも走り出す。
皆、この山の中に危険人物がいることを承知の上で――
「ウキィ! ウキキキキィ!!(なんだよあれ! 期待はずれもいいところだぜ!!)」
山林を歩く
エテ吉は、えらく不機嫌だった。
原因は、さっきの物音。
最初にあの音を聞いた瞬間、
エテ吉にはその正体がわかっていた。
それは、自分たち以外の存在。
しかし、参加者ではない。参加者であれば、わざわざ
エテ吉一人で出向くはずもない。
では参加者ではないという絶対的な自信を与えたのはなにか?
それは、匂い。
物音がしたときに嗅ぎつけた匂いは、人間のものではなく、明らかな獣のもの。
もしかしたら……と、期待して行ってみたのだが……
「ウキキキ、ウッキィィ!!(メスでもいるのかと思ったら、狸かよ!!)」
この山林の情景がどことなくジャングルに似ていたところから、
もしやメスのチンパンジーでもいるのでは、という期待を生んだのだが、見事にはずれだった。
もちろん食べ物なんかも見つかるはずもなく、結局
エテ吉は手ぶらで帰ってきた。
「ウキィ~(おーい、ルフィ~)」
手を振ると、崖の近くで座って休んでいる二人が、こちらに顔を向けた。
と、イヴの様子がなにかおかしい。
なにやら顔に緊迫感が浮かび、驚いた目でこちらを見ている。
「ウキ?」
不審に感じている
エテ吉の上空が、突然暗くなった。
「――近いな」
大人気なくも本気を出し、先頭を独走した
世直しマンが、急に足を止めた。
「はっ、近いって、はっ、なにが?」
息を切らしながら尋ねるのは、根性で二番手をキープした
ボンチュー。
「聞くまでもなかろう? 私たちが今追っているやつらを忘れたのか?」
三番手に現れたのは、たいして疲れたようにも見えないふうのルキア。
「炎と氷の化け物、だろうな。ほら……噂をすれば影だぜ」
最後に現れたのは、
バッファローマン。
そして彼が示した先には、もうもうと立ち昇る煙が。
「あやつが……あの先にいるのか」
ルキアが噛み締めるは、北海道で出会った異形の化け物の想像図。
自分を二度も窮地に追いやり、銀時、海馬を惨殺した――氷炎将軍
フレイザード。
あの煙は、
フレイザードの放つ炎によるものか、それとも奪われた火竜鏢によるものか。
「あまり気負いするなよルキア。
ボンチューも。戦闘は俺たちに任せてもらう。そういう約束だったな?」
バッファローマンの言葉は、あくまで最終確認。
足手まといにはならない。そういう約束で同行した。
だから、返事も決まっている。
「「ああ……」」
二人とも、心では納得しきっていないのが、見え見えの言葉だったが――
麦わらの少年が、問いかける。
「おい……なに、してんだよ」
炎と氷、そして緑肌の、異形者二人が、笑う。
「ヒャハハハハハハハハ! こいつぁよく燃えるぜ! おもしれぇ、おもしれぇなぁ!!」
麦わらの少年が、再度問いかける。
「おい……なにしてんだよ、おまえら」
炎に包まれたチンパンジーが一匹、叫ぶ。
「ウキャァアァァァアアァアァァァァ!!?」
麦わらの少年が、三度問いかける。
「 な に し て ん だ て め ぇ !!! 」
【山形県南部・山中の崖付近/夕方】
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]空腹、わき腹に軽いダメージ
[装備]なし
[道具]荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、目の前の二人をぶっ飛ばす。
2、自分と悟空と猿とイヴの仲間・食料を探す。
3、悟空を一発ぶん殴る。
【エテ吉@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]空腹、炎上
[装備]パンツァーファウスト(100mm弾×4)@DRAGON BALL
[道具]荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、熱い。
2、ルフィに同行。
3、ターちゃんとの合流。
【イヴ@BLACK CAT】
[状態]胸に刺し傷の重傷(応急処置済み。血は止まっている)、貧血
[装備]いちご柄のパンツ@いちご100%
[道具]無し
[思考]1、目の前の二人に不審感。
2、トレイン・スヴェン・月との合流。
3、ゲームの破壊。
【フレイザード@ダイの大冒険】
[状態]若干の疲労、成長期、傷は核鉄で常時ヒーリング
[装備]霧露乾坤網@封神演義、火竜鏢@封神演義、核鉄LXI@武装錬金
[道具]支給品一式、遊戯王カード1枚(詳細は不明)@遊戯王
[思考]1、体力を回復させる。
2、隙あらばピッコロを倒す
3、優勝してバーン様から勝利の栄光を
【ピッコロ@DRAGON BALL】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:荷物一式、前世の実@幽遊白書
[思考]:1、目の前のやつらを殺す。
2、フレイザードを利用してゲームに乗る。とりあえず南下。
3、残り人数が10人以下になったら同盟解除。バッファローマン、悟空を優先して殺す。
4、最終的に主催者を殺す(フレイザードには秘密)。
【山形県南部・山林/夕方】
【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]ダメージ中、重度の疲労
[装備]なし
[道具]荷物一式、蟹座の黄金聖衣(元の形態)@聖闘士星矢
[思考]:1、世直しマン、バッファローマンの戦いには参加しない。
2、ルキアを守る。
3、もっと強くなる。
4、これ以上、誰にも負けない。
5、ゲームから脱出。
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:若干の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:コルトパイソン357マグナム、残弾21発@CITY HUNTER
[道具]:荷物一式、遊戯王カード(青眼の白龍・次の0時まで使用不可)@遊戯王
[思考]:1、世直しマン、バッファローマンの戦いには参加しない。
2、黒崎一護、武藤遊戯(カードの使用方法を知る者)を探す。
3、とりあえず関東方面へ移動。
4、ゲームから脱出。
【世直しマン@とっても!ラッキーマン】
[状態]健康
[装備]世直しマンの鎧@とっても!ラッキーマン、読心マシーン@とっても!ラッキーマン
[道具]荷物一式
[思考]:1、煙の立ち昇るほうへ移動。
2、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
3、関東方面へ移動。
4、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
5、ゲームから脱出し主催者を倒す。
【バッファローマン@キン肉マン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式
[思考]:1、煙の立ち昇るほうへ移動。
2、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
3、関東方面へ移動。
4、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
5、ゲームから脱出し主催者を倒す。
※夕方ごろ、山形県南部の山に小規模な煙が立ち昇りました。
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最終更新:2024年06月04日 09:26