0217:新たな出発  ◆Wv7hRKzBHM





両津・サクラ・乾・ヤムチャの4人組は、とりあえずぬ~べ~と合流するために兵庫県へと向かっていた。
ヤムチャはすぐにでも悟空を探しに行こうと強く主張したが、結局は他の3人に押し切られる形で彼らに従った。
前衛をサクラと両津、少し離れて後衛をヤムチャと乾という並びで兵庫へと歩みを進める4人は、
何事も無く順調に歩き続け、兵庫県に入ってしばらく経ったころに放送が始まった。

「中川が死んだ…」
昼の放送が終わって、両津は放心したように空を見上げる。
「中川…さんって、両津さんのお友達だったんですよね…」
サクラが遠慮がちに話しかけると、両津は彼女の方に振り向きながら、力なく笑った。
「あぁ、アイツは超がつくほどの大金持ちでな、ギャンブル好きなワシはよく金を借りていたものだ。
 …思えばいろいろ無茶な頼みをしてきたが、アイツはそれでもワシと親しくしてくれていた…」
中川との様々な思い出が両津の脳裏をよぎる。
いろいろな大会に二人で出場したり、外国に行ったり、バカな遊びをやったり…
「両津さん……」
「なに、心配するな。わしは大丈夫だ。警官がこんな事でくじけてはおれんからな。
 …それにあいつも警官だ。戦う力のない一般人を守るために戦って立派に殉職したと信じている」
「…そうですね」
両津は「さて」と話をそこで区切ると、後ろの二人に向かって呼びかけた。
「おーい、ちょっと来てくれ」
乾とヤムチャが合流すると、両津は話を切り出した。
「午前中にも言ったように、これから鵺野先生という人と合流する予定だ。
 さっきから時々スカウターをチェックしていたが、鵺野先生は兵庫県から動いていな……ん?」
両津はスカウターに眼を凝らす。
…おかしい。ぬ~べ~と思われる反応の戦闘力がさっきよりもかなり上昇している。
誰かと戦闘中かとも思ったが、近くにそれらしい反応はない。
「どうしたんです?なにかおかしな情報でも…」
乾が質問すると、サクラも疑問の表情を浮かべて両津を見る。
「……いや、鵺野先生の様子がちょっとおかしいんだ。戦闘力が高まっているが、戦闘中ではないらしい」
「修行でもしてるんじゃないのか?俺や悟空なんかは、修行中に気を高めたりするからなぁ」
ヤムチャだけは大して気にしてない様子だ。
「それならいいが……よし、ワシが様子を見てくる。鵺野先生が警戒するといけないから、あんたたちはここにいてくれ」
「私も行きます!もし怪我をしてたりしたら、私は役に立てますから」
「……わかった、サクラも来てくれ。ヤムチャさん、すぐに戻ってくるから乾を頼む」
「…OK。何か異変を感じたらすぐに駆けつける」
両津は小さく頷くと、サクラと共にスカウターの反応に向かって走って行った。

一歩、また一歩。
踏みしめるように足を進めて行く、鬼の形相をした独りの教師ぬ~べ~。
その呼吸は荒く、顔には汗が流れ、拳は血が出るほど握り締められている。
「………誰だ!?」
極限まで研ぎ澄まされた感覚が、森の中からやってくる人の気配を捕らえた。
「鵺野先生、ワシだ。両津勘吉だ」
「両津さん……ふぅ…」
知り合いに会えたことでほんの少しだが安心感を覚えたぬ~べ~は、両津の側へ駆け寄った。
「両津さん、無事でよかった…ん、こっちの女の子は?」
「春野サクラです。両津さんと一緒に行動しています。あ、仲間はあと二人いますけど」
幼さと女らしさを併せ持つサクラの面立ちに、ぬ~べ~は自分の教え子たちの姿を重ねる。
あいつらも中学生くらいになったら、この子みたいになるのだろうか、と。
(郷子も、あと何年かしたら…………っ!)
いきなり近くの木に拳を叩きつけるぬ~べ~。
それを見て、両津が心配そうに声をかける。
「鵺野先生、あんた大丈夫なのか?スカウターで見ていたら、戦闘力がいきなり上がっていて驚いたぞ」
「………」
「鵺野せん…」
「…ゆきめが!……なんで彼女が!…うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こらえきれなくなったのか、ぬ~べ~はその場に崩れ落ちると、背中を振るわせた。
しばらく突っ伏していたぬ~べ~だったが、やがて起き上がると手短にゆきめのことを話した。
「そうか…それはなんと言っていいのか…」
「……無理に慰めてもらわなくても大丈夫だ。両津さんだって、上司と部下を亡くしているんだから」
「それはそうだが…」
「…今は、一刻も早くこんな馬鹿げたゲームとやらを止めさせることだ。それが郷子やゆきめへの供養になると思う。
 そしてそのためには、このゲームに乗っている殺人者どもを…殺さなくては」
最愛の人を失った悲しみと怒りが、今のぬ~べ~の心には満ちていた。
「…早く、残りの仲間を連れてきてくれ。時間が惜しい。その後は玉藻と伊達くんを探す。
 そうしたら、殺人者どもと主催者とかいう奴らを殺して、ゲームを終わらせる」
鬼のような顔で虚空を睨みながら、ぬ~べ~は噴出しそうな怒りを必死にこらえ、そう言った。
両津はそんなぬ~べ~を辛そうに見る。
「鵺野先生…いや、なんでもない」
「? 何かあったらはっきり言ってくれ」
「…今はいい」
今、憎しみや復讐のために行動するのはやめろと言っても、恐らくは聞き入れないだろう。
時間をかけて、ゆっくりと対処するしかない。
もし、今のまま憎しみに囚われて続ければ…最悪は死ということもありうる。

ヤムチャたちと合流し、さて出発しようというところで問題が。
「冗談じゃないぜ!主催者と戦うっていうなら悟空の力は絶対必要だ!」
「だが、どこにいるのか分からないじゃないか。スカウターを使っても『この反応が悟空だ』と断言できるような強い反応はない。
 それよりも、近くにいるであろう玉藻たちを探す方が確実だ!」
「それは悟空が気を抑えているからだ!気を解放すれば、おそらくこのゲームにいる誰よりも強いはずだ!」
こんな言い争いがもう何分続いただろうか。
ゲームを終わらせるためには悟空を探すべきだというヤムチャ。
見ず知らずの相手を信用するより、自分が知っている相手を探したいぬ~べ~。
ヤムチャとぬ~べ~の激しい言い争いは、全くの平行線だった。
見かねた乾が口を挟む。
「二人とも落ち着いてください。今までの話から判断すると、確かに悟空さんという人の強さは桁違いに思えます」
我が意を得たりとばかりに得意げな顔をするヤムチャ。
「しかし、確かにどこにいるのか今ひとつハッキリしない。これでは探すことができません」
今度は少ししょんぼりするヤムチャ。
「なので、二手に分かれましょう」
「…つまり、鵺野先生と一緒に玉藻さんたちを探す班と、ヤムチャさんと一緒に悟空さんを探す班に分かれるのね」
「そうです。お二人はそれぞれの探し人を知っているわけですから、一緒に行動しては意味がない」
「さらに、ヤムチャさんの方にはスカウターが必要なわけだ」
両津はスカウターを外すと、ヤムチャの前に置く。
「これから先、あちこちで戦闘が起こるだろう。それをしっかりチェックして、一番強い反応を探す…そうだな、乾?」
「はい。もちろん、強力なマーダーに当たってしまう可能性も高い…しかし、スカウターを使えば敵の接近を事前に察知できます」
「お、俺がチェックするのかよ…自信ないぜ」
ヤムチャはそんな言い訳をして、スカウターを着けようとしなかった。
サイヤ人が着けていた機械なんて着ける気にならないというのが本音であるが。
「じゃあ」と、乾はスカウターをサクラの前に置く。
「春野さんがチェックしてください」
「え、つまりそれって、私がヤムチャさんと組むってこと?」
乾は頷いて、自分の支給品を取り出してみせる。
「俺の支給品はこの通り弾丸です。俺は両津さんと一緒にいた方がいいでしょう。
 それと…いえ、なんでもないです。異論がなければこれで決めたいと思いますが」
実は乾は、「鵺野先生は両津さんと一緒の方が良さそうなので」と言いかけたのだがやめておいた。
最愛の人を失って精神状態が不安定と思われるぬ~べ~には、恐らく両津の存在が助けになるはずだと思っていたが、
そんなことを言うと本人が反発するかもしれない。
「じゃあ、これを渡しておくわ」
サクラは自分の銃を乾の前に置く。
「私は武器が無くても戦えるから、あなたが持っていて」
「…わかりました。必ず、後でお返しします」
次にサクラは、両津からスカウターの使い方を教えてもらうと、さっそくそれをチェックしてみた。
「大阪にたくさん反応がある…かなり強いのもいるわね」
「あぁ、もし大阪に行くなら気をつけた方がいいな」
「両津さん、鵺野先生、今までに気づいた範囲で良いんですけど、一番強かった反応ってどこにありました?」
二人は少し話し合っていたが、やがてぬ~べ~が「見間違いかもしれないが」と前置きをしてから言った。
「ほんの一瞬だが、長野県に凄い反応があった…と思う。もう一つ強い反応があったから戦っていたのかもしれない。
 だが、少し後に両方とも反応が小さくなってしまった。その後はチェックしてないから分からない…」
「それ、いつ頃でした?」
「まだ夜のうちだった…それを探してみるのか?」
「えぇ。ちょっと距離はありますけど、私とヤムチャさんなら行けない距離じゃありませんし…それに、賭けてみたいんです」
サクラの真っ直ぐな瞳に、再び教え子のことを思い出すぬ~べ~。
(こんな瞳を持った子供たちを守るために俺は……殺人者たちを殺さなくては…)
子供たちのために。
本当にそうなのかは、ぬ~べ~自身にも分からなかった。

話し合いが終わり、二手に分かれたグループは、それぞれの目的に向かって歩き始める。
「鵺野先生・ワシ・乾のグループは玉藻と伊達を探す」
「私とヤムチャさんは、悟空さんを探す」
「合流は明後日の朝、この場所で…無理なら琵琶湖で」
「…全員生きてればいいな」
「……これ以上、誰も殺させない!」





【兵庫県中央/1日目・日中】
【公務員チーム+α】
 共通思考:3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。

【鵺野鳴介@地獄先生ぬ~べ~】
 [状態]:怒りで霊力上昇、反動で体力消耗
 [装備]:御鬼輪@地獄先生ぬ~べ~
 [道具]:水を七分の一消費した支給品一式
 [思考]:1.武器を探しながら、伊達、玉藻と合流する
     2.ゲームに乗っている人を全員殺す(主催者含む)

【両津勘吉@こち亀】
 [状態]:健康
 [装備]:マグナムリボルバー(残弾30)
 [道具]:支給品一式(一食分の水と食料を消費)
 [思考]:1.伊達、玉藻と合流する。
     2.時間をかけて鵺野の心をなんとかケアしたい。
     3.仲間を増やし主催者を倒す。

【乾貞治@テニスの王子様】
 [状態]:健康
 [装備]:コルトローマンMKⅢ@CITY HUNTER(ただし照準は滅茶苦茶)
 [道具]:荷物一式(一食分の食料と水を消費。半日分をヤムチャに譲る)、手帳、弾丸各種
 [思考]:1.両津、鵺野と共に仲間を増やす。
     2.越前、跡部と合流して脱出を目指す。


【兵庫県中央/1日目・日中】
【ヤムチャとお守り】
 共通思考:3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。

【春野サクラ@NARUTO】
 [状態]:若干の疲労
 [装備]:スカウター@DRAGON BALL
 [道具]:荷物一式(一食分の食料と水を消費。半日分をヤムチャに譲る)
 [思考]:1.スカウターを使って隠密行動をしながら、ヤムチャと共に悟空を探し仲間を増やす。
      とりあえず強い反応があった長野県に向かってみる(強い反応の正体は悟空の界王拳です)。
     2.ナルト、シカマルと合流して脱出を目指す。
     3.大蛇丸を見つける

【ヤムチャ@DRAGON BALL】
 [状態]:右小指喪失、左耳喪失、左脇腹に創傷(全て治療済み)
     超神水克服(力が限界まで引き出される)、五行封印(気が上手く引き出せない)
 [装備]:なし
 [道具]:乾とサクラから貰った一日分の食料(一食分の水と食料を消費)
 [思考]:悟空を探す。


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0195:鬼人となりて悪を討つ 鵺野鳴介 0245:日が暮れて
0176:歓喜する飢狼 両津勘吉 0245:日が暮れて
0176:歓喜する飢狼 春野サクラ 0243:小休止
0176:歓喜する飢狼 乾貞治 0245:日が暮れて
0176:歓喜する飢狼 ヤムチャ 0243:小休止

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最終更新:2024年04月06日 09:38