0301:アトランティスの浮遊金属





ドゥン—————

「なっ、ななな何っ!?」

リンスレットが寝ていると、突然隣の部屋からくぐもった爆発音が聞こえてきた。
慌てて隣の部屋の前へ行き、ドアを勢いよくノックする。

「アビゲイルッ!何かあったの!?」
「うーむ…あ、お嬢さん、起こしてしまったようですね。どうぞ、入ってください」

リンスレットが部屋の中に入ると、何かが焦げたような臭いが鼻をついた。

「うっ…一体どうしたの?」
「いえ、首輪を雷神剣でこじ開けようとしたら爆発しましてね」
「首輪が!?…それにしては部屋が綺麗ね。思ったより爆発力が小さいのかしら?」
「いえ、それはおそらくこの貝の効果でしょう。
この貝が外側への爆発を無効化したため、爆発力が全て内側に向かったのです。
首輪は跡形もありません。人一人殺すのには十分過ぎるほどの威力です」

アビゲイルが手に握っているのは排撃貝だった。

「この貝は衝撃を吸収する性質を持っているようです。さきほどかなり強い打撃を加えても無効化しました。
この貝を接触させれば、首輪の爆発をキャンセルできるかと思ったのですが、そう簡単にはいかないようです。
外側への爆発は抑えられても、内側———つまり首側への爆発は無効化できないようです。これでは意味がありません。
やはり無理矢理開けるのは無理ですか。他のスマートな開け方を考えないといけませんね」
「内部構造が見れないんじゃ解体の糸口も見つけられないじゃない!一体どうすればいいってのよ…」

悩むリンスレットはつい部屋をぐるりと見回し———あるものを発見した。

アビゲイル…あれはブルマのドラゴンレーダー?何で分解してあるの?」
「ああ、あれはですね、何か有効活用できないものかと改造していたのですよ。
お嬢さんが気絶している間、時間がありましたからね。
ブルマさんが亡くなる前に一通り説明は受けていたので構造は把握しています」
「ふーん、どんなふうに活用するの?」
「フフフ…これを使います」

アビゲイルが取り出したのは漆黒のトンファー。

「あーっ!それってナイザーのディオスクロイじゃない!」
「おや、このトンファーはお嬢さんの世界のものなのですか?」
「そうよ。そのトンファーはクロノ・ナンバーズのナイザー=ブラッカイマーって奴が使ってた、
私の世界で最も硬い金属であるオリハルコン製の武器よ」
「そう!それです!オリハルコンですよ!
私の世界にも同名の金属がありましてね。まあ、色は違いますが。
かの英雄ラーズ・ウル・メタ=リカーナの愛剣、超絶聖剣ヘヴィ・メタルもオリハルコンで出来ているのです!」
「いや、そんな奴知らないんだけど…ところで、そっちの世界のオリハルコンってどんな色なの?」
「透明です」
「全然違うじゃない!黒と透明って真逆の色よ?それって本当に同じ金属なの?」
「いえいえお嬢さん。確かにこの黒いオリハルコンと私の世界の透明なオリハルコンは違う金属ですが、
この閉鎖空間内においては”同じ”なのですよ」

「?」と首を傾げるリンスレット。

「私の見る限り、この黒いオリハルコンは、本来は違うはずである私の世界のものと”同じ”なのです。
前々から思っていましたが、この閉鎖空間内では『名前』という概念が重要な意味を持っているようですね。言霊というやつです。
名前を呼ばないと発動しないスペルカード然り、定期的に流される死亡者の名前然り…
これは推測なのですが、その世界の魔法名を記した”教本”などの特殊なアイテムがあれば、
違う世界の魔法も使えるようになるのではないでしょうか。素質がある者が行えば、の話ですが。
大体、違う世界に住む私達が普通にコミュニケーションがとれていること自体が異常なことなのです。
私達は何らかの力によって同じ土俵に立たされています。戦闘力の制限もその延長線上でしょうね。
まあ、その辺りは今は置いておくとして、
この閉鎖空間内で”オリハルコン”と名付けられた物は全て”オリハルコン”なのですよ」

一方的にまくし立てるアビゲイル
ややうんざりした顔のリンスレットは質問を続ける。

「…で?そのオリハルコンをどうする気よ?」
ブルマさんによると、ドラゴンレーダーはドラゴンボールの発する特殊な波動を感知することで、
ドラゴンボールのある場所を調べる装置だそうです。
しかし、この閉鎖空間内にはドラゴンボールがない。故にドラゴンボールを探知できない。
故に役に立たない。三段論法ですね」
「そんなことはいいから!だからどうするのよ」
「お嬢さん、慌ててもいいことはありませんよ?
つまり『ドラゴンボールを探知する』機構を『オリハルコンを探知する』機構に変えてしまうのです。
オリハルコンは魔法金属ですので、その魔力を探知できるようにします。
これにより、他のオリハルコン製の武器の有無、もしあったとしたらその数、位置、
そして所有者の同行を知ることが可能になるのです」

そうしてバラバラだったドラゴンレーダーを組み立てていくアビゲイル

「だけど、そんなことが本当にできるの?」
「フッフッフ、このアビゲイル、伊達に『冥界の預言者』と呼ばれておりませんよ」
「預言者ってあんまり関係な」
「ハイ!出来ました!
名付けて『アビゲイル・レーダー「目指せオリハルコン!巨人の星君グレート」』です!」
「普通にオリハルコンレーダーでいいと思」
「でわ!スゥイィィィイッッッチィONッ!」

レーダーに表示されたのは、画面上に散らばる10の光点だった。

一つはアビゲイルの持つディオスクロイ
一つはまもりの持つハーディス
一つはキルアの死体横に放置されているクライスト
一つはトレインの持つウルスラグナ
一つは飛影の持つマルス
一つは承太郎の持つシャハルの鏡と双子座の聖衣
一つは斗貴子の持つダイの剣
一つはケンシロウの持つフェニックスの聖衣
一つはボンチューの持つ蟹座の聖衣
一つはダイの持つペガサスの聖衣

「ほう、結構ありますね」
「この中にはトレイン君のハーディスもありそうね、あの銃もオリハルコン製だから。
…そうだ!トレイン君はあの銃じゃないと実力が発揮できないんだったわ。
まだ見つけていないかも知れないから探すべきかしら…?
もう見つけているなら、この中の点のどれかがトレイン君かもしれないわね」
「はて?銃という武器はオリハルコンだと威力が変わるのですか?」
「トレイン君の早撃ちは、あまりにも早過ぎて普通の銃じゃ耐えられないのよ。
でもハーディスの真の威力は接近戦で発揮されるわ。
オリハルコンの銃身を使った打撃は真空状態をも生み出す程の威力よ」
「ううむ、遠距離用の武器を鈍器としてメインで使うとは…何とファンタスティックな…
まあ、それはともかくお嬢さんはこれを持っていてください」

アビゲイルがリンスレットに渡したのはディオスクロイの片方だった。

「これを持っていればレーダーで探知できます。『漂流』などを使って私と離れ離れになったとしても再会が可能です。
私とはぐれた場合、できるだけじっとしていてください。迎えに行きますので。
もし私の名が放送で呼ばれたときは―――」
「わかってるわよ。一人になっても必ず主催者を倒す!」
「…いい返事です。ではこれも渡しておきましょう」

次に取り出したのはヒル魔のマシンガン。

「私のクラスは暗黒僧侶です。銃は得意武器ではありません。
私の戦闘スタイルは魔法と魔法アイテムを使ったものでしてね。
それにお嬢さんの銃弾が切れたとき、他の武器がないと不便でしょう。
この貝と怪しい水は私が預かっておくということでよろしいですね?」
「うん、それは問題ないけど・・・何か貰ってばっかで悪いわね。
そうだ、アビゲイルにもカードを渡しておくわ。緊急の脱出手段は必要でしょう」
「ええ、それはありがたいですね。それなら『衝突』を貰っておきましょう」
「どうして『衝突』なの?」
「『漂流』と比べて『衝突』は確実に他参加者とぶつかり危険です。
お嬢さんを危険な目に遭わせる訳にはいきませんからね」

(おおっ、ちょっと格好良いかも)

「まあ、このアビちゃんはそう簡単にはやられませんからね。イイ~ッヒッヒッヒ!」

(うん、やっぱり気のせいね)

奇声を発する怪人を見て、リンスレットはアビゲイルへの評価を元に戻した。





【福井県・民家の中/夜】
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
 [状態]少々の精神的疲労
 [装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
 [道具]荷物一式、ディオスクロイ(片方)@BLACK CAT、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)
    【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER】
     漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
     左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす                ×1
 [思考]1、いいかげん休息したい。
    2、トレイン達、協力者を探す。
    3、ハーディスを探す。
    4、ゲームを脱出。

【アビゲイル@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
 [状態]健康
 [装備]雷神剣@BASTARD!! -暗黒の破壊神-
 [道具]荷物一式、ドラゴンレーダー(オリハルコンを探知可能)@DRAGON BALL
    ブルマの荷物一式、クリリンの荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ(片方)@BLACK CAT
    海坊主の荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@DRAGON BALL、排撃貝(リジェクトダイアル)@ONE PIECE
    【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER】
     衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす       ×1
 [思考]1、首輪を解体するのに役に立つ道具、人材を探す。
    2、ヨーコ達、協力者を探す。
    3、ゲームを脱出。

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282:狂乱サンドイッチ リンスレット・ウォーカー 305:静夜のシ者~アビゲイルvs飛影~【上】
282:狂乱サンドイッチ アビゲイル 305:静夜のシ者~アビゲイルvs飛影~【上】

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最終更新:2024年05月19日 18:21