0300:自演遊戯





(なんて足の速さだ・・・)

友情マンもヒーローの一人だ。
常人よりもはるかに速く走ることができる。
その友情マンが全力で走っているのに、ついていくのが精一杯。

しかも相手は障害物を破壊しながら進んでいるため、本来のスピードを出せていない。
それなのに、である。

(やはり僕の目に狂いはなかった。早く彼と友達にならなければ)

しかし、なかなか距離は縮まらない。
遂には海が見えてきた。

(仕方がない。少しベタな手を使うとするか)

友情マンは懐から三枚のカードを取り出した。


悟空は走っていた。
止まってしまうと自分が自分でなくなりそうで、とにかく走っていたのだ。

走り続けていると、前方に海が見えてきたので、海に突っ込まないよう方向転換しようとして、スピードを緩めた。

その時だった。

「黒魔法(ブラックマジック)!」

悟空の足元で爆発が起こった。
反射のみで身をかわし、臨戦態勢に入る。
攻撃をしてきたのは、黒装束の男だった。
杖を持ったその姿は、まるで魔術師のようである。

「なんだ・・・おめえ、オラと戦うっていうのか?」

悟空が魔術師の男に集中しようとしたとき、いきなり横から攻撃が来た。
即座に拳で叩き落し、横を向くと、魔術師の男と同じような姿をした女がいた。

「新手かっ!」

魔術師の男と魔術師の女は、まるで師弟のようなコンビネーションで悟空に攻撃を仕掛ける。
その動きはスピーディにしてトリッキー、人間にはまず対応できない動きである。

しかし、孫悟空の敵ではない。

「おめえらっ・・・邪魔だっ!」

一瞬で魔術師の男との間合いを詰め、
地面を踏みしめて一撃を食らわそうとしたその時、

踏みしめるべき地面が消失した。

「落とし穴、発動」

茂みに隠れた友情マンが罠カードを発動したのだ。

落とし穴に落ちる悟空。
慌てて上を見上げると、二人の魔術師が今まさに魔術を放とうとしている瞬間だった。

絶体絶命に思われたが―――――乱入者が登場した。
その乱入者は魔術師達に飛び蹴りを食らわせ、
二人の魔術師と乱入者は、落とし穴の底から見上げる悟空の視界からフェードアウトした。

しばらく争う音が聞こえた後に静かになり、
そして落とし穴の入り口からその乱入者―――――
さわやかな笑みを顔に貼り付かせた友情マンが悟空に手を伸ばした。
そのもう片方の手に、回収した「ブラック・マジシャン」「ブラック・マジシャン・ガール」のカードを握り締めて。

「大丈夫かい?今の奴らは僕が追い払ったよ」

落とし穴から引き上げられた悟空は、とりあえず友情マンに礼を言った。

「礼はいいよ、僕が勝手にやったことだし。それよりもどうしたんだい?
何やら追い詰められたような顔をしているけど」
「そ、そうだ・・・オラは・・・オラは人を・・・」
「人を?」
「殺しちまった・・・いや、地球人は殺さなきゃいけなくて・・・
でもそんなことオラは・・・したく・・・ない・・・?」

(混乱しているな。精神分裂病の一種だろうか?)

話を聞いていると、どうやら彼には二つの人格があるようだ。
戦士の人格と殺人者の人格。
友情マンにとっては殺人者の人格のほうが都合がいいようだった。
ターゲットは地球人のみのようなので、異星人である自分には関係ない。

「どうして地球人を殺さなきゃならないんだい?」
「それは・・・地球を売るのに邪魔だから・・・」
「なら何を迷うことがあるんだい?
殺しちゃえばいいじゃないか。全滅させればいいじゃないか」
「でもオラは・・・」
「それが母星の命令なんだろう?親には従うものさ」
「オラは・・・」
「僕も君と同じで地球人じゃないんだ、協力しよう。何、僕らはもう友達じゃないか!」
「・・・」
「さあ、共に戦おう!」

「そうだ・・・オラは何を迷っていたんだ?」

そこにもう、孫悟空はいなかった。

「地球人を全滅させることがオラの役割じゃないか・・・」
「よし、そうと決まれば早速出発しよう。そうだ、まだ名前を聞いていなかったね。
僕としたことが友達の名前を聞き忘れるとは、何と言うことだ!
僕は友情マン、ヒーローさ。君の名前は?」
「オラは・・・オラの名前はカカロット」

(カカロット?確かクリリン君は悟空と言っていた筈。
別人格の名前だろうか?だとしたら下手に突っ込まないほうがいいな)

せっかく友達になれたのだ。波風を立てることはない。

(それに・・・カカロット君はさっきまでとは完全に違う。
さっきまでのカカロット君は自分自身に怯えていて、本当の実力を発揮できていなかった。
だけど今のカカロット君は目的を持っていて安定している。
つまり実力を十二分に発揮できるということさ!)

目に見える程のオーラを纏い、大地に立つ孫悟空。
かくして最強最悪のマーダーがここに誕生したのであった。

(カカロット君なら確実に他の参加者を全滅させられるだろう。
地球人以外の参加者については、カカロット君に攻撃させるよう仕向ければいい。
カカロット君も攻撃されれば反撃せざるを得ないだろう。

何か危険なアイテムを持つ者がいたら、「光の封殺剣」で封じればいい。
「ブラック・マジシャン」「ブラック・マジシャン・ガール」はもうカカロット君の前では使えないな。
まあ、どうせ24時間は使えないんだけどね。

どうしても戦いを挑んでこない地球人以外の参加者がいたら、僕が始末すればいい。
そうして最後に二人になった後、
「お疲れ様」と言って青酸カリ入りの食料を渡す。
最後に残るのは、この僕だ)

しかし、その最強最悪のマーダーのヒザが折れる。

「ハラ減った・・・」

友情マンはすかさず食料セットを取り出す。

「食べ物なら、ほら、こんなにあるよ。僕が料理してあげよう」
「ホ、ホントかっ!わ、悪いなー何から何まで」
「気にしないでくれ、何せ僕達は友達、いや親友じゃないか!好きなだけ食べてくれ!」

数十分後、友情マンはこの言葉を大いに後悔することになった。





【石川県・海岸沿いの公園/夜】
【チーム名/異星人連合】

【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(千本ナイフ、光の封札剣)(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴は24時間後まで使用不能) @遊戯王
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、青酸カリ(食料セットはなくなりました)
[思考]:1.茫然自失(悟空の食いっぷりを見て)。
    2.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
    3.最後の一人になる。

【孫悟空(カカロット)@DRAGON BALL】
 [状態]腹八分目、顎骨を負傷(ヒビは入っていない)、出血多量、各部位裂傷(以上応急処置済・戦闘に支障なし)
    全身に軽度の裂傷、カカロットの思考
 [装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@DRAGON BALL
 [道具]荷物一式(水・食料一食分消費)、ボールペン数本、禁鞭@封神演義
 [思考]地球人を全滅させる。  


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282:狂乱サンドイッチ 友情マン 347:異星人コンビの貧困生活
282:狂乱サンドイッチ 孫悟空 347:異星人コンビの貧困生活

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最終更新:2024年06月20日 21:57