0349:リフレイン ◆r4GvCZ7iKs
……ねばならない。
……ねばならない。
……ねばならない。
まもりは若島津の荷物を奪うと、誰にも見つからないうちに逃げなきゃ、と走り出した。
……なぜ?
さっきの男の子、志村さんが来るかもしれない。
……志村さん?来たら、殺せばいいじゃない?
若島津さんも志村さんも、こんな私に優しくしてくれた。
若島津さんは残念ながら殺してしまったけど、できたら志村さんは殺したくない。
……なぜ?殺したくなければ殺さなきゃいいじゃない?
私は出会った参加者を、セナを除く参加者を、殺し続けなければならない。
「まもりは手のかからない子で、お母さん助かるわ。」
「姉崎さんは品行方正、成績優秀で、クラスの人気者です。」
「姉崎先輩って、美人だし、頭もいいし、優しいし、素敵よね。」
「まも姉は頼りになるなぁ。」
「あの悪魔に対抗できるのは、風紀委員の姉崎まもりしかいねーよ!」
姉崎まもりは、いわゆる「優等生」であった。
勉強しなければならない。
規律を守らなければならない。
人のために尽くさなければならない。
手のかかる子の面倒を見なければならない。
……ねばならない。
……ねばならない。
……ねばならない。
知らず知らずのうちに、まもりは、たくさんの重圧を自分に課していた。
そしてこの世界において、まもりが自分に課したものとは……
殺さねばならない。セナを守るために。
殺さねばならない。ヒル魔を元の世界に返すために。
誰かと出会ったら、私はその人を……
……殺さねばならない。
まもりは走り続け、京都市へ着いた。
もうここまで来れば、若島津の死体と無関係を装えるだろう。
走り続けたおかげで、息も絶え絶えだ。
膝に手をかけ、前かがみとなって休んでいると、
前からモデル風のブロンド美女が声をかけてきた。
手にマシンガンを持っているが、攻撃の意図はないようだ。
「まあ、どうしたの?何かあったのかしら?」
「はぁっ、はぁっ、は、はい・・・・・・男に・・・襲われて・・・逃げてきたんです・・・」
まもりは咄嗟に嘘をついた。自分が「被害者」でなければ、逃げていることが不自然であったから。
「まあ、かわいそうに・・・・・・もう大丈夫よ。」
ブロンドの女性は、まもりの頬に手を当てると、まもりの頭を抱き寄せ、自分の胸に寄せた。
「怖かったわね・・・・・・でももう大丈夫。」
そう言って、まもりの頭を撫でる。
どうやら、彼女からしたら、自分は単なる女子高生。警戒はされていないようだ。
まもりはブロンドの女性に撫でられながらも、右手にハーディスを握りつつ、
あの言葉を頭に思い浮かべる。
・・・・・・誰かと出会ったら、私はその人を殺さねばならない。
・・・・・・誰かと出会ったら、私はその人を殺さねばならない。
・・・・・・誰かと出会ったら、私はその人を殺さねばならない。
右手に構えたハーディス。自分を撫でるブロンドの女性からは完全に死角。
警戒もされていない。チャンスだ。
銃口をブロンドの女性に向ける。そのとき――――
「おい!麗子!どうしたんだ!」
突然、怒鳴るような男の声が聞こえた。
ビクッ!思わず右手がブレる。
「もーう、両ちゃん、大きな声出さないでよ!びっくりさせちゃうじゃない!」
――――仲間がいたの?
すぐさまハーディスを後手に隠す。
「おう、誰かいたのか?」
「暴漢に追われていたらしいのよ。」
「こんなか弱い少女を・・・・・・許せんな!」
警察官の制服を着た中年男性が近づいてくる。
その後ろにも、2人の少年が。1人は見覚えがある。バーンに「竜の騎士」と呼ばれていた少年だ。
「わしの名は
両津勘吉。警察官をしている。」
自己紹介が始まった。他の3人も口々に名前を告げる。
私に向かって色々と話しかけるが、どこか上の空で聞いていた。
ブロンドの女性は麗子さん、竜の騎士はダイ君、もう一人の少年は星矢君というようだ。
私も自己紹介をしたあと、まずセナについて聞いたが、誰も知らなかった。
次に私を襲った人物について尋ねられたが、
ヤムチャさんの外見を告げておいた。
ヤムチャさんは私が殺人者であることを知る、唯一の生存者。何としても消さなければ。
それから、越前リョーマという人物について尋ねられた。
恐らく、志村さんの探していた男の子のことだろう。
しかし、知らないと答えておいた。
「心配いらん、市民を守るのが警察官の役目だ。どーんと大船に乗った気でいたまえ!」
「あーら、両ちゃん。若い女の子の前だとやけにかっこつけるのね。いやらしい!」
「おい!わしの好みは30代くらいの脂の乗ったいい女だ。女性高生には興味ないぞ!」
「へ~え、その割には制服姿の日光ちゃん月光ちゃんのこと、いやらしーい顔で見てたわよね~」
「何を言うんだ!変な言いがかりはよせ!・・・・・・ははーん、麗子、妬いてるな?」
「バカ言わないでよ!両ちゃんみたいな不潔なゴキブリ男、誰が妬くもんですか!」
「ゴキブリ男ぉぉぉ~?麗子、てめえ・・・・・・言っていいことと悪いことがあるんじゃねぇか?」
両津さんと麗子さんがケンカを始めた。ダイ君は慌てて止めようとしている。
星矢君は、ケンカをする麗子さんを、少し嬉しそうな表情で見ている。
目の前の出来事なのに、なぜかその4人の姿をブラウン管を通して見ているような感じがした。
私と4人との間に、見えないヴェールがある。見えないけれども、間違いなく存在している。
この4人は、あと1時間ほど、リョーマ君を捜索したあと、香川県のアジトに戻るらしい。
香川県には他にも仲間がいるようだ。ようやく、この時限爆弾を使うチャンスが巡ってきた。
アジトに仕掛けてもいいし、四国が閉鎖になる頃を見計らって、瀬戸大橋を壊すのもいい。
そういえば星矢君が、ハーデスには何人でも生き返らせる力がある、と言っていた。
だから、ハーデスを倒して屈服させれば、今まで死んだ人たちを生き返らせることができる、という。
でも・・・・・・首輪はどうするの?こんな不思議な力を持つ人たちを相手に、戦いを挑んで勝てるの?
勝てるわけないじゃない。
広間に集められたこと、首輪を着けられたこと、この舞台に散りばめられたこと。
私達はコマに過ぎない。
ハーデス達が用意したゲームの舞台は、あくまで優勝者が1人。ご褒美も1人。
そのルールに乗るしかない。だから私は殺さねばならない。
……殺さねばならない。
……殺さねばならない。
……殺さねばならない。
私とセナ、2人きりになるまで。
【京都府 京都市南部/深夜】
【姉崎まもり@アイシールド21】
[状態]:中度の疲労、殴打による頭痛、腹痛、右腕関節に痛み(痛みは大分引いてきている)
右肩の軽い脱臼、不退転の決意
[装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
[道具]:高性能時限爆弾、アノアロの杖@キン肉マン、ベアークロー(片方)@キン肉マン
荷物一式×4、食料五人分(食料、水は三日分消費)
[思考]:1、両津達4人に付いていく。大量殺戮のチャンスを狙う。
2、殺戮を続行。自分自身は脱出する気はない。
3、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
4、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。
5、セナを優勝させ、ヒル魔を蘇生して貰う
【リョーマ捜索隊】
共通思考1・仲間が死んでも泣かない。
2・出来る限り別行動はとらない。
3・リョーマを探す
4・ハーデスに死者全員を生き返らさせる
【両津勘吉@こち亀】
【状態】健康、額に軽い傷
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式(一食分の食料、水を消費)
【思考】1・鵺野先生が心配(一刻も早く四国に向かいたい)
2・仲間を増やす
3・三日目の朝には全員で兵庫に。だめなら琵琶湖に集合する。
4・主催者を倒す。
【秋元・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】中度の疲労(若干行動に支障あり)
【装備】サブマシンガン
【道具】食料、水を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・リョーマが心配
2・藍染の計画を阻止
3・主催者を倒す。
【ダイ@ダイの大冒険】
【状態】健康
【装備】出刃包丁
【道具】荷物一式(2食分消費)、トランシーバー
【思考】1・四国の死守(一刻も早く四国へ向かいたい)
2・公主を守る
3・ポップを探す
4・主催者を倒す
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】ペガサスの聖衣@聖闘士星矢、食料を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・弱者を助ける
2・藍染の計画の阻止
3・藍染を倒す
4・主催者を倒す
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最終更新:2024年06月20日 17:49