0358:窮極のメニュー
カカロットの犠牲となるべき参加者と食料を探しながら、慣れ親しんだ街、越谷市をさまよう
友情マン。
その表情はどこか冴えない。右手で腹部を押さえ、肩を落とし、足取りも重い。
「・・・・・・まるで・・・・・・パシリ1号だな・・・」
自嘲気味につぶやく。
しかし彼は、そんな境遇に置かれながらも、今後のことを計算していた。
最も安全に、効率的にこのゲームで勝ち残るには、どうするべきか。
(僕の現在の
切り札は、「光の封札剣」と青酸カリ。
理想的な作戦は、カカロット君に僕以外の参加者を殺してもらい、
2人残ったところで、カカロット君を毒殺すること。
しかし、食料は無い。仮に食料を手に入れたとしても、
このゲームで支給されている食料はパン類だ。
青酸カリを染み込ませたパンなど不自然だし、
毒殺するためには、「調理」できる食材の方が好ましい。)
あの大喰らいの馬鹿猿なら、そんなこと気にせず食べるかも知れない。
そんな考えもあったが、万が一のリスクを考えると・・・
あのカカロットを敵に回すわけにはいかない。そのためには、最善手を選ばなければ。
(光の封札剣。これは素晴らしいアイテムだけど、一度使うと24時間使えないのがネックだな・・・
仮にカカロット君にこれを使ったとしても、動きを封じている間に仕留め切れなければ、反撃を食らってしまう。)
友情マンにも「友情の鬼」という能力があるが、カカロットの本気がどの程度か分からない以上、
やはり危険を冒したくはない。
「う~ん、食材、か・・・・・・」
冷蔵庫を手に入れた時点で、
友情マンの作戦は完璧なはずだった。
しかし、彼の唯一の誤算は、悟空の前で冷蔵庫を開けてしまったこと。
せめて、一部の食料を隠しておけば、食料で苦労することはなかった。
まさか全部食べられてしまうとは、夢にも思わなかったのだが。
(・・・・・・それに、カカロット君の元に参加者を連れて行ったとしても、
さっきの様子では僕に食料を回してくれることはなさそうだ。
しかし・・・・・僕も何か食べないと・・・身が持たない・・・・・・)
先ほどは幸運にも
勝利マンの荷物を拾うことができたが、
死亡者の荷物が手付かずで残してあることは、ほとんどないだろう。
かといって、この段階まで残っている参加者は、よほどの強者か、
優れたアイテムを持っているか、徒党を組んでいるか・・・
よほど条件が整った場合でない限り、自ら手を下すわけにはいかない。
そのためのカカロットだ。
(・・・どこか、食材のありそうな場所はないかな。)
友情マンはこれまで通った地を思い返してみて、3つ気づいたことがあった。
ひとつ。主催者が支給した以外の食料は、全く用意されていないこと。
この世界には商店やレストランなどがあったが、どの店にも飲食物は一切置かれていなかった。
これは、生存に必要なものは全て支給品で賄え、ということなのだろう。
殺し合いに拍車をかけ、ゲーム見物を面白くするためか。
ふたつ。動植物は、実際に生息している量からすればずっと数少ないながらも存在していること。
これは何故用意したのか、よく分からない。サバイバルの要素でも加えたつもりか。
畑や果樹園、養鶏場などは見かけなかったが、鳥や犬猫、自然に生えた栗の木などは見かけた。
みっつ。この世界は日本列島を縮小したものだが、有名な観光スポットは省略されずに残されていること。
例えば、宮城県では青葉城を、石川県では兼六園を見た。これも、ゲーム見学を面白くするための演出か。
(・・・・・・となると、この近くで食材がありそうな場所は・・・千葉県の「マザー牧場」だ。)
友達の多い
友情マンは、観光スポットにも詳しかった。
マザー牧場ならば牛や豚、羊がたくさんいるはずだ。
「よし、行ってみるかな。」
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数時間後。
友情マンは、東京ディズニーランド内のベンチに座り、頭を抱えていた。
「まさか・・・マザー牧場は用意していても、家畜は一匹もいないとは・・・」
よく考えれば、当然のことかもしれない。
しかし、わずかな可能性に光明を見出していた
友情マンにとって、その可能性を失った落胆は大きかった。
何も食べないよりはマシかと思い、ナズナなどの野草を摘んで食べたが、大した腹の足しにはならなかった。
「雀でも捕まえて食べようかな・・・」
そんなことを考えていると、突如、轟音が耳をつんざく。
「な、なんだ・・・?あれは、東京ドームの方向か・・・・・・」
参加者同士の戦闘があったのだろうか。何か爆弾の類を使ったのか。
だとしたら、あの威力では使用者も生きてはいまい。
「うまく行けば、荷物が拾えるかも・・・。」
しかし、もしあれが参加者の「技」だとしたらどうか。
この不思議な制限のある世界で、あれほどの技を繰り出せる者は、そうはおるまい。
が、この世界にはカカロットや
世直しマンの様なツワモノもいる。
もっと強い参加者がいてもおかしくないかもしれない。
「ふむ、ここはカカロット君をけしかけて、様子を見てみるかな。」
カカロットは単純だ。強い奴がいると言えば、相手が地球人でなくても喜んで戦いたがるだろう。
もし、あれほどの技の持ち主がいたとしたら、いずれ大きな障害となる。
カカロットと潰し合ってくれたら、それに越したことはない。
できれば、投資した分の見返りがほしいところだが・・・食料確保という悩みから解放されるメリットもある。
誰もいなかったらいなかったで、食料を得られる可能性が高いから、満足してくれるだろう。
「どちらに転んでも、損はない・・・」
そう判断すると、
友情マンはカカロットの元へと走り出した。
【千葉県浦安市・東京ディズニーランド/早朝(放送直前)】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労、空腹(野草を食べてほんの少しは回復)
[装備]:遊戯王カード@遊戯王(千本ナイフ、光の封札剣)(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴、は24時間後まで使用不能)
[道具]:荷物一式(食料なし)、ペドロの荷物一式(食料なし)、勝利マンの荷物一式(食料なし)、青酸カリ
[思考]:1.悟空を東京ドームへとけしかける。
2.食材・食料の確保。できれば力づくで奪うような手段は取りたくない。
3.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
4.最後の一人になる。
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最終更新:2024年06月28日 23:14