0010:傷者、2人 ◆lEaRyM8GWs
地図と
参加者名簿を頭に叩き込み終えた
津村斗貴子は、コンパスを手に東西南北を確かめる。
彼女の考えた選択肢は三つ。
一つ、東へ行き東京で仲間を探す。
二つ、西へ行き大阪で仲間を探す。
三つ、ここ、名古屋に待機し仲間が来るのを待つ。
参加者の多くは街を目指すだろう、人探しをするなら大都市で行うべきだ。
畳の上に置いた鞄にコンパスを戻した斗貴子は、今度は鞄から小振りな剣を取り出した。
とても軽そうな剣だが、どんなに力を込めても抜けない。
一緒に入っていたメモ用紙に記されていたのは、たったの二行の文だった。
『ダイの剣
オリハルコンで作られた地上最強の剣』
この言葉を信じるならば、これは数ある支給品の中でも最高クラスの性能だろう。
だが、なぜ抜けない?
『ダイの剣』という名に見覚えがあった斗貴子は、
参加者名簿を読み直し確認する。
参加者の中にダイという名前がある。この剣はこのダイという人物の武器だろう。
そして……
――『オレの剣』…!……武器なんか、無くったって!――
あの大魔王バーンという老人に飛び掛かった少年。
バーンから『勇者』『竜の騎士』と呼ばれ、金色の光を放っていたあの少年。
彼こそ『ダイ』ではないだろうか? この剣の持ち主ではないだろうか?
津村斗貴子は考える。
もしこの剣が、本当に地上最強の剣なら――勇者と呼ばれたあの少年なら――
一つの結論に達した斗貴子ではあったが、だからといってこれから取る行動が変わる訳ではない。
結局は、探すべき人物が一人増えただけだ。
武藤カズキ、C・ブラボーに加え、勇者ダイを探す。
人を探すためには大都市にいるべきだ。
ならばここ名古屋か、大阪か、東京か、選択肢は三つのままだ。
しばし考え――斗貴子は名古屋に留まる事にした。
手がかりもなく移動し、無駄に体力を消耗し、危険に身を晒すより、何らかの情報が得られるまでここにいるべきだ。
ここを移動する時はカズキ達の情報を得た時か、もしくは――
斗貴子は鞘に収められたままの剣を持って立ち上がり、構えた。
人の気配がする、それもすぐ近くに。
張り詰めた空気の中、斗貴子は視線を巡らせた。
(誰だ? どこだ?)
殺気を放ち威嚇するも、相手は微塵も気配を晒さない。
背中から冷たい汗が噴出した刹那、暗闇から指が飛び出し斗貴子の右腕を突いた。
痺れるような衝撃に戸惑いながら、斗貴子は鞘のついたままの剣を襲撃者に向かって振るう。
だが突然右腕に力が入らなくなり、剣は襲撃者の服を小さく裂くだけに終わった。
「待ってくれ」
襲撃者は素早く後ろに下がって距離を取り、斗貴子を制止する。
斗貴子がそれに従ったのは、右腕の感覚が完璧に無くなってしまったからだ。
このまま戦い続けるのは得策ではない。
「すまない、念のため右腕の神経を一時的にマヒさせてもらった……君に訊きたい事がある」
「……何だ」
「戦う意志はあるか?」
「このゲームを開催した者と、このゲームに乗った者となら」
「そうか……」
男はゆっくりと斗貴子に歩み寄った。
天守閣の窓から入り込む月明かりに、男の姿があらわになる。
長身で筋肉質な男の胸には、北斗七星のような傷があった。
男が斗貴子の右腕を軽く指で押すと、電気が流れるような刺激の後、腕の感覚が戻ってくる。
「オレの名はケンシロウ。リンという少女を探している……君も誰かを探しているのなら協力しないか?」
斗貴子はしばし考え、ケンシロウの澄んだ瞳を見、うなずく。
「
武藤カズキという少年と、C・ブラボーという男を探している。
それからダイという名の……恐らく、バーンという老人に向かっていった少年だ」
【現在地:愛知県、名古屋城】
【津村斗貴子@武装錬金】
所持品:荷物一式、ダイの剣@ダイの大冒険
第一行動方針:ケンシロウと話す。
基本行動方針:カズキ、ブラボーを探す。勇者ダイの情報を集める
【ケンシロウ@北斗の拳】
所持品:荷物一式、支給品不明。
第一行動方針:斗貴子と話す。
基本行動方針:リンを探す
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最終更新:2024年08月11日 02:06