0012:史上最高に不幸な男





「ついてねぇーーーーーーーーーーー!!」
天を仰ぎ男は叫んだ。
彼、追手内洋一は世界一運の無い男だ。
現に今も最初に飛ばされた場所が富士の樹海という時点で終わっている。
手元にある配られた食料には限りがある。
「こんな所に飛ばすんだったら武器じゃなくて食料でも入れてろっていうんだ……」
そう愚痴りながらもバッグの中を漁る。
しかし、おかしい。
バッグの中には武器すらない。
あげくには鞄の中を全て地面の上に並べてみたがこれと言って武器らしい武器はない。
食料に水、コンパスに地図そして一冊のノート。
「それにしても趣味悪い柄だなぁ」
ぺらぺらとページを捲っている内にある重大な事実が解った。
どうやらこれは名前を書いただけでその人を殺せるノートらしい。
「おぉラッキー!今日の俺はついてるジャン!」
早速この馬鹿げた事態を引き起こしたバーンという名前を書き込んでみる。
「そしてこの馬鹿げた事を俺が終わらしたって事を宣伝して……ぐふふふふ」
いつも冴えない自分だったが今度こそ一躍ヒーローとしてもてはやされ、そして女の子が憧れの目で見てくれるようになってくれる筈。
「そして……見代ちゃんと……」
「この変態がー!!」
後ろを振り返ると5トンと書かれたハンマーを軽々しく持ち上げていた女性が仁王立ちしていた。
「げげーっ!」
慌てて逃げ出す洋一だったが至る所に張り巡っている木の根に躓き転んでしまう。
しかも勢い良く転んだ拍子に右手が身体の下になってしまったらしく鈍い音が静かな森に木霊した。

「ごめん、本当にごめん!!」
両手を合わせ謝る槇村香
「あはは、君の出しているオーラが知っている奴と似ていたからさ……つい」
「ついで人を叩き潰すんですか……」
すると香は自分のハンマーについて解説し出す。
「――要はフライパンと黒いビニールと金具と木で出来たがらくたですか……」
それを聞いて今度は自分のノートの存在を教えた。
「それって凄いじゃん!もしそれが本当だったらみんな争わずに済むんだし!」
「だけど、本当に終わったかどうかは次の放送まで解らないけどね……正直時間が経つに連れこのノートの効果も嘘臭く思ってきたし」
あまりにも強すぎるノート。
洋一はその存在を疑っていた。
偽物のハンマーが出回るくらいだ。別に偽った効果のただのノートが支給されていても不思議じゃない。
本当はそのノートはデスノートという紛れもない当たりアイテムであったりするのだが、
彼の運のなさはそれを疑ってしまう所にも影響していた。
それと勿論主催者側の名前を書いても効果はないとルール欄に書いてあったりするのだが、
それを見落としていたり、しかも既に一回書いてしまったので次の0時まで利用できなかったりもする。
つまりはとんでも無く運のない男なのだ。

右腕を犠牲にしてまで必死になって避けた自分。
現れたのは心強い仲間ではなく、配布された得物もハズレの怖い女性。
そして、その前にぐるぐると針が回っているコンパスで此処を脱出できるのかどうか……
洋一は今の自分を振り返ってみて再び天を仰ぎながら叫んだ。
「俺ってやっぱりついてねぇーーーーーーーーーーー!!!」
彼はまだこの樹海が自分の思っているより小さいということには気がついていなかった。




【現在地:山梨県、富士樹海】

【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
状況:右腕骨折
所持品:荷物一式、デスノート@DEATHNOTE
第一行動方針:らっきょを探すためにも森を脱出する
基本行動方針:らっきょ探し

【槇村香@CITY HUNTER】
所持品:荷物一式、ウソップパウンド @ONE PIECE
第一行動方針:洋一と行動する


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最終更新:2024年08月12日 19:23